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第30回中国研究サロン 中国知網共催「中国を知る―中国研究のための知識情報サービスの展望」(2020年1月15日開催)

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開催日時・場所: 2020年1月15日(水)14:30 - 17:30
科学技術振興機構(JST)東京本部別館1Fホール

主催: JST中国総合研究・さくらサイエンスセンター/同方知網(北京)技術有限公司

後援: 株式会社東方書店

講演資料:下記プログラム内に記載

演題「中国を知る―中国研究のための知識情報サービスの展望」

プログラム

14:30~14:35 主催者あいさつ
米山春子(JST中国総合研究・さくらサイエンスセンター副センター長)

14:35~14:40 主催者あいさつ
関暁嵐(同方知網(北京)技術有限公司国際本部副総経理)

14:40~15:05 報告1「CNKI科学技術イノベーション知識サービスプラン」
周宝栄(同方知網(北京)技術有限公司国際本部政府科学技術機関部総経理)
講演資料PDFファイル 6.10MB )

15:05~15:30 報告2「国立国会図書館関西館アジア情報室の中国研究支援の取組」
丹治美玲(国立国会図書館関西館アジア情報課アジア第二係)
講演資料PDFファイル 3.60MB )

15:30~15:55 報告3「中国の知識情報サービス ~研究評価への活用」
澤田裕子(ジェトロ・アジア経済研究所・学術情報センター主幹)
講演資料PDFファイル 1.61MB )

15:55~16:20 報告4「宇宙開発分野におけるデータベースの構築と利用」
辻野照久(元宇宙航空研究開発機構国際部参事)
講演資料PDFファイル 12.1MB )

16:20~16:45 報告5「デジタル化時代の漢籍書誌学」
上原究一(東京大学東洋文化研究所新世代アジア研究部門准教授)

16:45~17:10 報告6「中国に対する理解促進のために~CRSCの中国情報サービス~」
石川晶(JST中国総合研究・さくらサイエンスセンターフェロー)
講演資料PDFファイル 3.32MB )

17:10~17:30 質疑応答

研究評価の活用進む中国 知識情報サービス研究会で報告

小岩井忠道(中国総合研究・さくらサイエンスセンター)

 研究成果の質と数の向上に、数量的指標を重視した研究者評価や学術ジャーナル評価が一定の効果をもたらしている。こうした中国の現状が、1月15日に科学技術振興機構(JST)で開かれた中国研究サロン「中国を知る―中国研究のための知識情報サービスの展望」で報告された。国・地域の研究の水準を計る重要な指標とみなされている高被引用論文数の比較などからみても、近年、中国の躍進は目覚しい。米国に次ぐ世界2位に浮上し、研究分野別ランキングでは米国を抜いて一位になっている分野もある。評価を重視する中国の学術政策もその理由の一つといえそうだ。

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大学院、大学、教員それぞれを対象に評価制度

 知識情報サービスを中国がいかに研究評価に活用しているかを詳しく報告したのは、澤田裕子日本貿易振興機構(JETRO)アジア経済研究所図書館情報課主幹。中国では研究評価をともなう評価制度が導入されている。そのひとつとして、教育部の学位・大学院教育発展センターが学位授与資格を持つ大学院を対象に実施している評価制度がある。学位授与機関にふさわしい教育・水準を保持しているかを評価するのが目的だ。

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日本貿易振興機構(JETRO)アジア経済研究所図書館情報課の澤田裕子主幹

 さらに各大学や学部・学科がそれぞれの教員、研究者を対象に行っている教員業績評価がある。こちらは採用、契約の更新、昇進の判断材料にするのが目的。さらに教育部とその他の政府機関による大学助成プロジェクトという評価制度がある。多くの国家予算を投入するに値する大学や学部・学科を選ぶために、活用されている。

 近年、教育、研究などいろいろな観点から大学の実力を評価し、順位付けした世界大学ランキングに対する関心が高まっている。英国の大学評価機関「クアクアレリ・シモンズ社」(QS)や同じく英国の教育情報誌「タイムズハイヤーエデュケーション」(THE)による世界大学ランキングがよく知られているが、中国には上海軟科による世界大学ランキングがある。上海軟科は、世界の大学を独自の手法で評価し、ランキングを公表していた上海交通大学の作業を引き継いだ有限公司。高被引用論文をどれだけ出しているかを重要な評価指標とする点は、QSやタイムズハイヤーエデュケーションの世界ランキングと共通だが、「ノーベル賞、フィールズ賞を受賞した同窓生の数」といった独自の評価指標もとりいれている。

国内の人文・社会科学ジャーナルも重視

 各大学や学部・学科が実施している教員の研究業績評価にも、中国独自の手法がとられている。外国の評価基準を取り入れるのと同時に、人文・社会科学を対象とする国内学術ジャーナルも重視していることだ。上海外国語大学の教員教育研究業務評価システムでは、教員の著作や論文に対する点数を積み上げる手法がとられているが、「中国社会科学」という国内誌が論文の評価では最も重視されている。同誌に論文が載るとその教員には1本につき100点という最高点が付与される。

 論文掲載の場として人文・社会科学の国内学術ジャーナルも重視する研究業績評価は、教員に対する奨励制度にも連動している。上海交通大学の「人文社会分野の学術ジャーナルの等級と学術奨励ガイドライン」によると、最も高い等級とされている学術ジャーナルは「中国社会科学」。そこに論文が掲載された教員に対する奨励金は2万元で、クラリベイト・アナリティクス社の「社会科学に関するジャーナルの引用索引データベース」(SSCI)など国際的に評価の高い引用索引データベースに採録されているジャーナルに論文が記載された教員に対する奨励金1万元の倍額だ。

 国際的に名が通っている学術ジャーナルに掲載された論文の価値は認める一方、人文・社会科学研究においては、研究課題が欧米の学術ジャーナルの関心に偏ってしまうのではないかという懸念がある。人文・社会科学における中国の特色を重視し、国内学術誌も評価している、と澤田主幹はみている。

 中国国内の学術ジャーナルに対する評価には、南京大学の「中国社会科学引用索引データベース」や北京大学図書館の「中国語コアジャーナル要目総覧」に採録されているかどうかが重視されている。コアジャーナルの定義は、「ある学術分野における論文が比較的多く掲載され、その分野の最新の成果と動向が反映されている雑誌で、利用率が高く、学術的な影響力が強い、その分野に携わるものが重視している雑誌」となっている。コアジャーナルの選定に当たっては27の機関が協力した。

 学術ジャーナルの評価には、被引用数、被索引採録数なども含まれる。こうした数量的指標と定性評価を組み合わせたものになっているのが、中国の学術ジャーナル評価の特徴。大学の評価指標や教員に対する奨励金制度の基準にもなっており、中国の学術ジャーナル自体の質向上にも貢献している、と澤田主幹は指摘した。

日本国内の取り組みにも進展

 研究サロンでは、国立国会図書館の関西館アジア情報課員、丹治美玲さんから中国研究支援の取り組みに関する報告もあった。同館アジア情報室は、中国語で書かれた図書が36万冊、雑誌が4,400タイトル、新聞が370タイトル所蔵されている。蔵書目録はインターネット上で検索でき、雑誌、新聞の主要タイトルリストもインターネット上で見ることが可能だ。「リサーチ・ナビ」というウェブ上での発信サービスをしており、こちらから、インターネット上で閲覧できる中国語新聞を探すようなこともできる。

 アジア情報室はJETROアジア経済研究所図書館との共催で、毎年1回「アジア情報研修」を開いている。数年に一度は、中国関係をテーマにしており、2019年12月には、千葉市のJETROアジア経済研究所で「中国の法令・政府情報と統計を調べる」をテーマに開催したことが紹介された。

 一方、研究者の立場から、元宇宙航空研究開発機構(JAXA)国際部参事の辻野照久氏は、JAXAが運営する宇宙科学のデータアーカイブ「Data ARchives and Transmission System (DARTS)」や、月周回衛星「かぐや(SELENE)」が観測したデータを公開している「かぐや(SELENE)データアーカイブシステム」などの活用を紹介するとともに、中国の宇宙開発に関する研究をどのように進めているかなどを説明した。また東京大学東洋文化研究所新世代アジア研究部門准教授の上原究一氏は、漢籍書誌学についてデジタルアーカイブを利用した研究事例を取り上げながら、漢籍のデジタル化を背景とした漢籍書誌学の展望や今後の関連アーカイブ事業に対する要望などについて議論した。

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元宇宙航空研究開発機構国際部参事の辻野照久氏

 中国研究サロンの主催者は、同方知網(北京)技術有限公司とJST中国総合研究・さくらサイエンスセンター。同方知網が中国学術ジャーナル(CD版)電子雑誌社有限公司と共同で創立した「中国知網」(CNKI)は中国最大の知識情報サービスプラットフォームだ。北京大学がコアジャーナルとして選定した237誌をはじめとする学術ジャーナルのほか学術論文、会議論文、新聞、科学研究プロジェクト情報、特許、著作、年間、辞書、政府公報など所有文献の総数は2億8,000万に上り、毎年320万件が追加されている。

 周宝栄同方知網(北京)技術有限公司国際本部政府科学技術機関部総経理から、中国知網のさまざまな知識情報サービスの内容が紹介されたのに続き、石川晶JST中国総合研究・さくらサイエンスセンターフェローが、中国総合研究・さくらサイエンスセンターの知識情報サービスについて報告した。石川フェローによると2016年1月のスタート時点で2,200本だった「中国・アジア研究論文データベース」の掲載論文は2010年1月に6,000本を超えている。さらにページビューも2016年度は月平均約8,200件だったのが2018年度は約11,800件、2019年度約13,400件と増え続けている現状が報告された。

(写真 CRSC編集部)

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