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【21-07】中国電信技術科学院が初選出 最も革新的企業・機関トップ100

2021年03月02日 小岩井忠道(アジア総合研究センター準備・承継事業推進室)

 米国の学術・特許情報調査・コンサルティイング企業「クラリベイト・アナリティクス」は2月24日、保有する特許の評価から最も革新的とみなされる世界の100企業・研究機関を「Top 100グローバル・イノベーター2021」として発表した。2019年に国際特許出願数が1位になった中国からは、昨年に続き選出された華為技術(HUAWEI)、小米科技(Xiaomi)、騰訊(Tencent)の3社に加え、中国電信技術科学院(Chinese Academy of Telecommunications Technology)が、中国の研究機関では初めて選ばれた。しかし、100社・研究機関のうちの7割を米国と日本が占める図式に変化はない。

※Top 100グローバル・イノベーター2021企業・研究機関の一覧表は、文末 に掲載。

 最も選出企業・研究機関数が多かったのは、米国で昨年から2社増えて42社・大学。一昨年1位で昨年米国に1位を奪い返された日本は昨年より3社減って29社となった。3位以下はこれまで同様、大きく引き離されて、台湾(5社・研究機関)、韓国(5社・大学)中国(4社・研究機関)、フランス(3社)、ドイツ(3社・研究機関)、スイス(3社)、オランダ(2社)カナダ、スウェーデン、フィンランド、英国それぞれ1社となっている。

「Top 100グローバル・イノベーター2021」国・地域別数

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(「Clarivate Top 100 Global Innovators 2021」から)

「Top 100グローバル・イノベーター」は、保有する特許からイノベーションを起こす能力度合いを評価、上位100に入る企業や研究機関、大学を選んでいる。評価の対象は直近5年間に登録された特許で、登録された特許の数だけではなく、質をより重視しているのが特徴だ。特許に関わる新発明を年100件以上(合計500以上)出願している「数量」条件をまず満たすことが求められる。さらに、他社による後続の特許出願で何回それらの特許が引用されたかという「影響力」、出願された特許のうち登録された発明の数の割合をみる「成功率」と「グローバル性」を加えた四つの指標によって評価される。

「グローバル性」は、中国、欧州、日本、米国という四つの主要市場の特許庁に出願された発明の割合をみる。出願にはそれぞれ費用がかかることから、これによって企業や政府機関、大学が特許取得に資金投入を惜しんでいないかを判断している。Top 100グローバル・イノベーターは毎年、発表され今回が10回目。こうした選出法が妥当だとする根拠として、クラリベイト・アナリティスク社が挙げているのが、10年連続でTop 100グローバル・イノベーターを受賞した企業(28社)と、2013年または2014年に Top 100グローバル・イノベーターから姿を消した企業(24社)とにみられる時価総額に大きな差。2014年10月から2020年10月までの時価総額成長率を比較すると、連続受賞企業の伸びが顕著で2020年10月時点の時価総額は姿を消した企業の2.5倍という大きな差がついている。

イノベーション文化の強さに関する指標

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2013 年または2014 年にTop 100 グローバル・イノベーターから姿を消した企業(24 社)と2014 年10 月から2020 年10 月までの10 年連続でTop 100 グローバル・イノベーターを受賞した企業(28 社)の時価総額成長率の比較。ダウ平均株価およびS&P 500 の構成企業の時価総額成長率も表示(2014 年の値を100 とする)。
2013 年または2014 年にTop 100 グローバル・イノベーターから姿を消した企業と10 年連続でTop 100 グローバル・イノベーターを受賞した企業の2010 年から2019 年までの平均年間特許出願状況の比較(2010 年の値を50 とする)

(「Clarivate Top 100 Global Innovators 2021」から)

 一方、両グループの特許数は2010年から10年間、ほとんど差がみられない。革新性の強い企業は特許の数ではなく特許の質がすぐれていることが分かる、とクラリベイト・アナリティクス社は言っている。

 今回、昨年から受賞企業・機関を増やしたのは、米国(40社・大学→42社・大学)、台湾(4社→5社・研究機関)、韓国(3社→5社・大学)、中国(3社→4社・研究機関)、英国(0→1社)。中国電信技術科学院は、台湾の工業技術研究院(ITRI)、米国のカリフォルニア大学、ドイツのフラウンホーファー研究機構、韓国のKAISTと五つしか選ばれていない研究機関・大学の一つで、かつ唯一の初選出というのが目立つ。

 分野別でみると、一番多いのはハードウェア・電子部品製造分野で昨年から3社増えて21社。続いて半導体が2社増えて12社、産業システムが1社減って10社、通信が昨年と変わらず10社、化学薬品・材料が2社減の7社、ソフトウェア・メディア・フィンテックが1社減の7社、自動車関連が2社増の6社、製薬が1社増の6社、エネルギー・電気が1社減の4社、医療・バイオテクノロジーが昨年と変わらず4社、航空宇宙工業・防衛が1社減の3社、複合企業、鉱業・金属がそれぞれ1社減の2社、消費財・食品が昨年と変わらず1社、残る五つが研究機関・大学となっている。

Top 100 Global Innovators 業界別内訳

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(「Clarivate Top 100 Global Innovators 2021」から)

 最も多かったハードウェア・電子部品製造と2位の半導体業界には、英国から唯一かつ初めて選出された半導体企業のアーム(Arm)のほか、台湾の金宝電子(Kinpo Electrionics)、華碩電脳(ASUS)さらに米国の3社が初選出企業に名を連ねている。

 もう一つクラリベイト・アナリティスク社が注目するのが、自動車関連業界の変化。昨年はアイシン精機、本田技研工業、日産自動車、トヨタ自動車と日本企業が4社選ばれていたが、今年は4年ぶりに矢崎総業が入ったほか、米国のボルグワーナー(BorgWarner)が初選出された。両社が他社ブランドの製品を製造する企業ではなく大手部品提供企業であることから、両社の選出は自動車関連業界でもイノベーションの重要性が浮き彫りになったことを示している、とクラリベイト・アナリティクス社はみている。

 

Clarivate Top 100 Global Innovators 2021(アルファベット順)

図1

(「Clarivate Top 100 Global Innovators 2021」から作成)
※図をクリックすると、ポップアップで拡大表示されます。

関連サイト

「クラリベイト・アナリティクス」プレスリリース「Clarivate Top 100グローバル・イノベーター2021

クラリベイト・アナリティクス「Clarivate Top 100 Global Innovators 2021

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