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【20-32】中国の高被引用論文著者数さらに増加 清華大学も初の所属機関トップ10入り

2020年12月14日 小岩井 忠道(中国総合研究・さくらサイエンスセンター)

 国際学術情報サービス会社「クラリベイト・アナリティクス」は、論文が他の研究者に引用された数が特に多い研究者6,167人の名前を「高被引用論文著者リスト2020版」として公表した。最も多かったのは米国の2,650人で全体の41.5%を占める。ただし、昨年の2,737人、44.0%に比べると数、比率とも低下した。昨年初めて英国を抜いて2位に浮上した中国が770人(全体に占める比率12.1%)と、昨年(636人、10.2%)から数、比率ともさらに増やしているのが目を引く。

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(クラリベイト・アナリティクス社ニュースリリース「高被引用論文著者リスト2020版」から)

 中国の躍進は、高被引用論文著者が所属する研究機関のランキングからも明確に見て取れる。昨年上位10位に入った米国以外の機関は、3位の中国科学院と4位のマックス・プランク研究所(ドイツ)だけ。今年は昨年19位(高被引用論文著者数42人)だった清華大学が著者数を55人に増やし、順位も9位と初のトップ10入りを果たした。昨年3位(高被引用論文著者数101人)だった中国科学院も高被引用論文著者数を124人に伸ばし、順位も米国スタンフォード大学を抜いて2位に上がった。1位は、昨年同様、米国のハーバード大学(203人)。高被引用論文著者が数多く所属する機関を国・地域別で見ると、トップ10は米国が昨年より一つ減らし7機関、中国が一つ増やして2機関、ドイツ1機関となっている。

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(クラリベイト・アナリティクス社ニュースリリース「高被引用論文著者リスト2020版」から)

 このほか今年の特徴として、中国で北京大学、浙江大学も高被引用論文著者数が多く存在する機関の上位に浮上していることと、アジアでは南洋理工大学やシンガポール国立大学が存在感を示していることを、クラリベイト・アナリティクス社は挙げている。欧州で昨年高被引用論文著者数が減少していたドイツ、オランダが増加に転じたことも特徴としている。日本からの選出は91人と昨年の98人を下回り、国・地域別順位でも昨年同様、上位10位内に入れなかった。

 クラリベイト・アナリティクス社のプレスリリースは、中国の躍進が続くことに関し、サイエンス事業部幹部の次のようなコメントを載せている。

「世界の科学論文と発展は、主に米国と中国の貢献によって推進されている。過去20年間にわたり研究開発に対して進歩的な姿勢をとる中国は、引用数が多く、影響力の大きい論文を発表し、国際協力を強化し、その研究を貴重な知的財産とイノベーションに変換してきた。中国の研究者はグローバルな研究コミュニティに関与することが奨励されているため、米国は大学院の学位を求める留学生の主要留学先となっており、米国で最も多い留学生は中国の学生。彼らの成功と未来は絡み合っている」

 クラリベイト・アナリティクス社の高被引用論文著者リストは、同社の学術文献、引用情報データベース「Web of Science」に蓄積されている前年12月までの11年間に作成された1,200万件を超える論文の中から、他の研究者に引用される回数が21分野でそれぞれ上位1%に入る論文の著者と、複数分野を合算した業績が高く評価された著者の中から毎年、選ばれる。

関連サイト

クラリベイト・アナリティクスプレスリリース「科学・社会科学分野における世界最高峰の研究者を選出した高被引用論文著者リスト2020年版発表

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