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【20-05】中国企業3社にとどまる 最も革新的企業トップ100

2020年2月21日 小岩井 忠道(中国総合研究・さくらサイエンスセンター)

 米国の学術・特許情報調査・コンサルティイング企業「クラリベイト・アナリティクス」は2月19日、保有する特許の価値から最も革新的とみなされる世界の100企業・研究機関を「Derwent Top 100 グローバル・イノベーター2020」として発表した。日本は昨年より7社減らし32社。昨年から6社増やして39社・機関となった米国にトップを奪い返されたが、日米で全体のほぼ4分の3を占める状況に変化はない。中国は昨年同様3社にとどまっている。数多く引用される論文の数からみた研究力では、近年、日本は米中両国に大きく水をあけられているとされている。しかし、どれだけ多くの重要特許を抱え、活用しているかという観点から評価される革新的企業の数では、日米両国が突出して多い現実があらためて明らかになった。

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初めてトップ100に選ばれたフジクラの和田朗専務(右)にトロフィーを渡す櫻井諭クラリベイト・アナリスティクス・ジャパン代表取締役(左)

 中国は、昨年に引き続き華為技術(HUAWEI)と小米科技(Xiaomi)が選ばれ、昨年初選出された比亜迪汽車(BYD)が漏れた代わりに、騰訊(テンセント)が初めて選ばれた。「クラリベイト・アナリティクス・ジャパン」は、取得した特許が他社の発明の中で引用されている数の多さを見る「影響力」と、米国、欧州、中国、日本の4主要市場に出願された特許の数をみる「グローバル性」の二つの指標で中国企業が見劣りするのが、3社にとどまっている理由とみている。

 米国39社・機関、日本32社に続く、各国・地域別の選出数はフランス5、ドイツ、台湾各4、韓国、中国、スイス各3、オランダ2、フィンランド、アイルランド、ロシア、スウェーデン、カナダ各1となっている。

国・地域別内訳(右側の数字は昨年との増減)

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(Clarivate Analytics「Derwent Top 100 Global Innovators™ 2020」から)

 分野別でみると、一番多いのはハードウェア・電子部品製造分野で昨年から3社増えて38社。続いて製造・医療機器製造が昨年から1社増えて16社、ソフトウェアが2社増えて8社、通信が3社増えて同じく8社となっている。製薬も2社増えて6社となった。逆に減ったのは化学工業・化粧品が3社減の7社に、自動車関連製造が3社減って4社、家電製品製造も2社減って4社となった。昨年トップ100に入っていたのに今回漏れた日本企業は8社で、化学工業・化粧品4社、自動車関連製造2社、家電製品製造1社、ハードウェア・電子部品製造1社。新しく入ったのはハードウェア・電子部品製造分野のフジクラ1社だけとなっている。

Derwent Top 100 グローバル・イノベーター 2020 受賞企業 日本企業32社
(英文社名のアルファベット順、右列は日本語の正式名称)
*は9年連続受賞企業(11社)
日本企業(アルファベット順、右列は日本語の正式名称)
Aisin Seiki Co., Ltd. アイシン精機株式会社
AGC Inc. AGC株式会社
CASIO COMPUTER CO., LTD. カシオ計算機株式会社
DAIKIN INDUSTRIES,LTD. ダイキン工業株式会社
FUJIFILM Corporation 富士フイルム株式会社
Fujikura Ltd. 株式会社フジクラ
Fujitsu Limited 富士通株式会社*
Furukawa Electric Co., Ltd. 古河電気工業株式会社
Hitachi, Ltd. 株式会社日立製作所*
Honda Motor Co., Ltd. 本田技研工業株式会社*
Japan Aviation Electronics Industry, Limited 日本航空電子工業株式会社
JFE Steel Corporation JFEスチール株式会社
Kawasaki Heavy Industries, Ltd. 川崎重工業株式会社
Kobe Steel, Ltd. 株式会社神戸製鋼所
Komatsu Ltd. 株式会社小松製作所
Mitsubishi Electric Corporation 三菱電機株式会社
Mitsubishi Heavy Industries, Ltd. 三菱重工業株式会社
NEC Corporation 日本電気株式会社*
NICHIA CORPORATION 日亜化学工業株式会社
Nippon Steel Corporation 日本製鉄株式会社
NISSAN MOTOR CO., LTD. 日産自動車株式会社
NIPPON TELEGRAPH AND TELEPHONE CORPORATION 日本電信電話株式会社*
Olympus Corporation オリンパス株式会社*
OMRON Corporation オムロン株式会社
Panasonic Corporation パナソニック株式会社*
Renesas Electronics Corporation ルネサスエレクトロニクス株式会社
Shin-Etsu Chemical Co., Ltd. 信越化学工業株式会社*
Sony Corporation ソニー株式会社*
TDK Corporation TDK株式会社
TOSHIBA CORPORATION 株式会社東芝*
Toyota Motor Corporation トヨタ自動車株式会社*
YASKAWA Electric Corporation 株式会社安川電機
その他の国/地域の受賞企業 68社(英文社名のアルファベット順)
(クラリベイト・アナリティクス・ジャパンプレスリリースから)
Organization Country/Region
3M USA
ABB Switzerland
Abbott USA
Alstom France
Amazon USA
AMD USA
Analog Devices USA
Apple USA
AT&T USA
BASF Germany
Bayer Germany
BD USA
Blackberry Canada
Boeing USA
Boston Scientific USA
Cisco Systems USA
Commissariat à l'EnergieAtomique France
Corning USA
Dolby Laboratories USA
Dow USA
DuPont USA
Eaton USA
Emerson USA
Ericsson Sweden
Facebook USA
Foxconn Technology Group Taiwan
Fraunhofer-Gesellschaft Germany
GE USA
Google USA
Honeywell USA
HP USA
HTC Taiwan
Huawei China, Mainland
Immersion USA
Intel USA
ITRI Taiwan
Johnson & Johnson USA
Johnson Controls Ireland
Kaspersky Lab Russia
LG Electronics South Korea
LSIS South Korea
Medtronic USA
Merck Germany
Microchip Technology USA
Micron Technology USA
Microsoft USA
Nike USA
Nokia Finland
Novartis Switzerland
NXP Semiconductors Netherlands
Oracle USA
Qualcomm USA
Quanta Computer Taiwan
Raytheon USA
Roche Switzerland
Royal Philips Netherlands
Saint-Gobain France
Samsung Electronics South Korea
Schneider Electric France
Symantec USA
TE Connectivity USA
Tencent China, Mainland
Texas Instruments USA
Thales France
University of California USA
Xerox USA
Xiaomi China, Mainland
Xilinx USA

 今年の全体的傾向として、クラリベイト・アナリティクスは、規模の小さい企業や起業家が生み出す特許が増えていることを指摘している。特許勢力図で大手企業のシェアが低下しているということだ。基礎科学と工学分野の関連性が強い複合的な特許が増えている。さらに発明市場の競争激化を裏付けるものとしてトップ100に入るために必要な基準スコアが前年より2割くらい高くなっていることも明らかにしている。「クラリベイト・アナリティクス・ジャパン」の小島崇嗣IPソリューションズ日本部門代表は「大企業が1社でイノベーションを担う時代ではなくなっている。評価指標のうち『影響力』を上げないとトップ100には入れない。日本が7社減った理由と考えられる」と語った。

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小島崇嗣クラリベイト・アナリティクス・ジャパンIPソリューションズ日本部門代表

 トップ100グローバル・イノベーターの選出方法は、クラリベイト・アナリティクスが持つ大規模な特許データベースが基になっている。選定の第一条件は、クラリベイト・アナリティクスが「ベーシック特許」と名付けている重要特許を最近の5年間で100件以上取得していること。ベーシック特許とは「新技術や医薬品、ビジネスプロセスなどの特許公報で最初に公になった特許」を指す。さらに最近5年間で、公開された特許出願数のうちどれだけベーシック特許に登録(取得)されたかをみる「成功率」、四つの主要市場の特許当局(中国専利局、欧州特許庁、日本特許庁、米国特許商標庁)全てに出願されたベーシック特許の数をみる「グローバル性」、最近5年間に他社の発明の中で引用されているベーシック特許数をみる「影響力」の合計四つの評価軸から、革新性の高さを判定している。

 中国企業の革新性については、1月29日、日本記者クラブで記者会見した李雪連丸紅経済研究所シニア・アナリストが、次のような見方を示している。「大学と企業がうまくリンクしていないこともあり、商業化に発展するような付加価値の高い成果は日本や欧米に比べると少ない。売り上げの1割を研究開発に投資している企業もファーウェイ(華為)くらい」

関連リンク

2020年02月19日 クラリベイト・アナリティクス社プレスリリース
発明市場の競争激化により大手企業のシェアが低下、世界の特許勢力図の細分化が進む

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