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【24-20】中国、研究影響力さらに強める 英教育誌世界大学ランキング

小岩井忠道(科学記者) 2024年10月18日

 英教育誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション」(THE)は10月9日、「世界大学ランキング2025」を公表した。1位の英国オックスフォード大学、2位の米国マサチューセッツ工科大学以下、最上位10大学を英米2カ国が占めるなど欧米主要国の有力大学が高評価を得ている結果は前年と同じだが、12位の清華大学、13位の北京大学をはじめ中国の大学の高い順位が目を引く。日本は、28位の東京大学をはじめ前年同様、5校が200位内に入った。一方、近年、高い評価が目立つオーストラリアの大学は、上位5大学が軒並み順位を下げた。ブラジル、サウジアラビア、アラブ首長国連邦の大学が新たに上位200位内に入ったことも今回のランキングの大きな特徴、とTHEは強調している。

中国は200位内13校中10校が順位上昇

 上位200位内に入った大学数を見ると、国・地域別の比較は前年までとほとんど変わらない。米国が前年より1校減ったものの55校と今回も最多。2位は英国で前年と同数の25校、3位は26位のミュンヘン工科大学をはじめとする20校(前年21校)のドイツと続く。次いで多いのは、中国本土。13校と校数は前年と同じだが、清華大学が前年同様12位を維持し、北京大学が前年より順位を一つ上げて13位となり、上位10校にさらに迫った。このほか復旦大学が36位(前年44位)、浙江大学47位(同55位)、上海交通大学52位(同43位)、中国科学技術大学53位(同57位)、南京大学65位(同73位)と100位内に7校が並ぶ。

 また、武漢大学134位(同164位)、北京師範大学146位(同177位)、ハルビン工業大学152位(同168位)、同済大学154位(同185位)、華中科技大学166位(同158位)、南方科技大学183位(同201-250位)と、200位内に入った13校中、10校が前年より順位を上げた。THEは中国が世界的な研究の影響力をさらに高めている、とみている。

オーストラリア有力校は順位低下

 THEの世界大学ランキングで中国とともに近年、躍進が目立つのがオーストラリアだ。上位200位内に入った校数も10校と、米、英、ドイツ、中国、オランダに次いで多い。ただし、メルボルン大学39位(同37位)、モナシュ大学58位(同54位)、シドニー大学61位(同60位)、オーストラリア国立大学73位(同67位)、クイーンズランド大学77位(同70位)と上位5校が軒並み前年より順位を落としているのが目を引く。世界の研究者たちの評判と国際性に関する評価が低下したため、とTHEは言っている。

日本は200位内に前年と同じ5校

 近年、低迷が続いていた日本は、前年のランキングでは幾分、改善が見られた。前々年に200位内に入ったのは東京大学と京都大学の2校のみだったのが、前年、東北大学、大阪大学、東京工業大学が200位内に浮上し、5校に増えた。この理由はTHEの評価法が一部変更されたためとされており、今回も同じ5校が200位内に並んだ。東京大学は5つの評価指標のすべてで前回と同等か上回る評価を受け、順位も一つ上げて28位となった。以下、京都大学55位(前年55位)、東北大学120位(同130位)、大阪大学162位(同175位)、東京工業大学195位(同191位)となっている。

 10月1日に東京医科歯科大学と統合し、東京科学大学として新しい歩みを始めた東京工業大学は今回のランキングも前年同様、東京工業大学として評価された。「教育(学習環境)」と「研究環境」で前年より評価を挙げたものの「研究の質」と「国際性」で評価を下げたのが響き、前回より順位を四つ落とした。東京工業大学と統合した東京医科歯科大学も元の大学として評価対象となっている。順位は、前年と同じ401-500位で、日本の大学では10番目の評価だ。東京医科歯科大学以外では、名古屋大学201-250位、九州大学301-350位、北海道大学351-400位、筑波大学351-400位が500位内に入っている。東京医科歯科大学を含めいずれも前年のランキングと順位は変わらない。

「世界大学ランキング2025」トップ200に入った大学数が上位14の国・地域
(タイムズ・ハイヤー・エデュケーション「World University Rankings 2025」「World University Rankings 2024」から作成):数字の前の=は、同順位(タイ)を示す
国・地域 大学数(前年) 最上位大学名 最上位大学の世界
ランキング順位
米国 55(56) マサチューセッツ工科大学 2
英国 25(25) オックスフォード大学
ドイツ 20(21) ミュンヘン工科大学 26
中国 13(13) 清華大学 12
オランダ 11(11) デルフト工科大学 =56
オーストラリア 10(11) メルボルン大学 39
カナダ 8(8) トロント大学 21
スイス 6(7) スイス連邦工科大学チューリヒ校 11
韓国 6(6) ソウル大学 =62
日本 5(5) 東京大学 28
香港 5(5) 香港大学 35
スウェーデン 5(6) カロリンスカ研究所 49
フランス 4(4) PSL研究大学 42
ベルギー 4(4) ルーベン・カトリック大学 43
「THE世界大学ランキング2025」トップ200内のアジア・太平洋大学
(タイムズ・ハイヤー・エデュケーション「World University Rankings 2025」「World University Rankings 2024」、「QS World University Rankings2025」から作成)
世界順位 前年順位 QSランキング
2025順位
大学名 国・地域
12 12 20 清華大学 中国
13 14 14 北京大学 中国
17 19 8 シンガポール国立大学 シンガポール
28 29 =32 東京大学 日本
30 32 15 南洋理工大学 シンガポール
35 35 17 香港大学 香港
=36 44 39 復旦大学 中国
39 37 13 メルボルン大学 オーストラリア
44 53 36 香港中文大学 香港
=47 =55 =47 浙江大学 中国
52 43 45 上海交通大学 中国
=53 57 =133 中国科学技術大学 中国
55 =55 =50 京都大学 日本
=58 54 37 モナシュ大学 オーストラリア
61 60 18 シドニー大学 オーストラリア
=62 62 31 ソウル大学 韓国
65 73 145 南京大学 中国
66 =64 =47 香港科技大学 香港
=73 67 30 オーストラリア国立大学 オーストラリア
77 70 =40 クイーンズランド大学 オーストラリア
=80 82 62 香港城市大学 香港
82 83 53 KAIST(韓国科学技術院) 韓国
83 84 19 ニューサウスウェールズ大学 オーストラリア
=84 =87 57 香港理工大学 香港
=102 =145 =127 成均館大学 韓国
=102 76 56 延世大学 韓国
120 =130 107 東北大学 日本
=128 =111 =82 アデレード大学 オーストラリア
=134 =164 =194 武漢大学 中国
=146 =177 271 北京師範大学 中国
=149 =143 77 西オーストラリア大学 オーストラリア
151 149 98 浦項工科大学 韓国
=152 =168 =252 ハルビン工業大学 中国
=152 =150 65 オークランド大学 ニュージーランド
=154 =185 192 同済大学 中国
=154 148 88 シドニー工科大学 オーストラリア
162 =175 86 大阪大学 日本
=166 =158 300 華中科技大学 中国
=172 =152 68 国立台湾大学 台湾
178 180 =133 マッコーリー大学 オーストラリア
=180 =193 245 マカオ大学 マカオ
=183 201-250 284 南方科技大学 中国
=189 201-250 67 高麗大学 韓国
195 =191 =84 東京工業大学 日本

評価手法にも変化が

 THE世界大学ランキングの評価法は、「教育(学習環境)」(配点比率29.5%)、「研究環境」(同29.0%)、「研究の質」(同30.0%)、「企業との関係」(同4.0%)、「国際性」(同7.5%)の五つの指標をさらにそれぞれ複数の項目(全体で18)に分けて点数(100点満点)をつけ、総合点で順位づけしている。前々年までの評価法との最も大きな変更は、研究の質がより重視されたこと。被引用数の多い論文の数だけでなく、引用された論文の重要性が評価されるように変わった。さらに「企業との関係」では、大学の研究が引用された特許の数という新しい項目が加えられ、評価比重も2.5%から4.0%に高まった。こうした変更が前年のランキングで見られた日本の大学の順位向上に影響したとみられる。

 世界大学ランキングでは、英国の高等教育評価機関「クアクアレリ・シモンズ(QS:Quacquarelli Symonds)」が毎年、公表しているランキングもよく知られる。こちらも前々年から評価法が一部変わっている。「学術関係者からの評判」(配点比率30%)、「教員一人当たりの論文被引用数」(同20%)、「雇用者からの評判」(同15%)、「学生一人当たりの教員比率」(同10%)。「外国人教員比率」(同5%)、「留学生比率」(同5%)、「持続可能性」(同5%)、「雇用成果」(同5%)、「国際研究ネットワーク」(同5%)という配点比率となった。

 THE世界大学ランキングはQSランキングと違い評価指標が18項目と倍以上多い。「博士号取得者と学士号取得者の比率」や「博士号取得者数と教職員数の比率」、さらに教員一人当たりの研究助成金などの収入、論文数、国際共著論文数、産業界からの収入といったQSランキングにはない評価項目が含まれている。学術関係者や雇用主に尋ねた結果が大きな配点比率となっているQSランキングと異なり、数字ではっきり示される定量的な評価指標が多い評価手法ともいえる。

 オーストラリアの大学が今回、順位を下げた理由の一つとされた「評判」は、「教育(学習環境)」と「研究環境」に対して世界の有力な研究者を対象に実施した調査で大学に対する評価を尋ねた結果を基にしており、配点比率はそれぞれ15.0%と18.0%という大きな比重を占める。

関連サイト

タイムズ・ハイヤー・エデュケーション「WorldUniversity Rankings 2025

タイムズ・ハイヤー・エデュケーション「WorldUniversity Rankings 2024

タイムズ・ハイヤー・エデュケーション「World University Rankings 2023

クアクアレリ・シモンズ「QS WorldUniversity Rankings 2025: Top Global Universities

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