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【24-09】北京大学14位 アジア勢上昇 QS世界大学ランキング

小岩井忠道(科学記者) 2024年06月14日

 英国の高等教育評価機関「クアクアレリ・シモンズ(QS:Quacquarelli Symonds)」は5日、「世界大学ランキング2025」を公表した。今年も欧米の大学が上位を占める中、シンガポール国立大学が前年と同じ8位を維持し、前年同様、アジア勢で唯一10位内に入った。上位200位内に入ったアジア地域の大学は前年より2校増えて41校。このうち32校が前年より順位を上げているのが目を引く。中国からは北京大学が前年より順位を3つ上げ、アジア地域でシンガポール大学に次ぐ14位に浮上したのをはじめ、前年より1増の9校が200位内に入り、うち6校が前年より順位を上げた。

前年の落ち込みが回復

 シンガポール大学、北京大学に次いで、南洋理工大学15位(同26位)、香港大学17位(同26位)、清華大学20位(同25位)、ソウル大学31位(同41位)、東京大学32位(同28位)、香港中文大学36位(同47位)、復旦大学39位(同50位)、上海交通大学45位(同51位)、香港科技大学47位(同60位)、浙江大学47位(同44位)とアジア地域の大学が高順位に並んだ。

 上位200位内の大学は、日本が前年より1増の10校、次いで中国が同じく1増の9校、以下韓国7校、香港、マレーシア各5校、シンガポール、インド各2校、台湾1校となっており、新たに200位内に入った日本、中国の2校を除く39校の顔触れは前年と全く変わらない。

 前年のランキングでは上位200位内に入ったアジア地域の大学の大半が前々年より順位を落とし、近年、各種大学ランキングで目立つアジア地域の大学の評価上昇傾向も小休止か、ともみられる結果となっていた。しかし、今年は41大学中、韓国、香港、インド、台湾の大学すべてを含む32校が前年より順位を上げ、順位を下げたのは7校にとどまる。さらに32校中15校(香港3校、中国、韓国、マレーシア、インド、日本各2校、シンガポール、台湾各1校)が、前々年の順位も上回っている。

順位低下目立つ日本

 一方、日本で最高位の32位となった東京大学は、前年の28位、前々年の23位から3年連続の順位低下となった。アジア勢で上位11校中、前年と同順位のシンガポール国立大学と東京大学を除く中国、シンガポール、香港、韓国の9校すべてが前年より順位を上げており、東京大学の順位低下が目立つ。東京大学以外では、京都大学50位(同46位)、東京工業大学84位(同91位)、大阪大学86位(同80位)、東北大学107位(同113位)、名古屋大学152位(同176位)、九州大学167位(同164位)、北海道大学173位(同196位)、早稲田大学181位(同199位)、慶応義塾大学181位(同214位)と、200位内の10校中4校が前年より順位を落とした。200位内のアジア勢で前年より順位を下げたのは7校だけなので、日本の4校という数字が目立つ。

「QS世界大学ランキング2025」上位200位内のアジア地域大学

(THE2024順位:タイムズ・ハイヤー・エデュケーション「世界大学ランキング2024」順位)
(QS World University Rankings 2025、QS World University Rankings 2024、QS World University Rankings 2023、Times Higher Education World University Rankings 2024から作成:=は同順位の存在を示す)
世界順位 前年順位 前々年順位 THE2024順位 大学名 国・地域
8 8 11 19 シンガポール国立大学 シンガポール
14 =17 12 14 北京大学 中国
15 =26 19 32 南洋理工大学 シンガポール
17 =26 21 35 香港大学 香港
20 25 14 12 清華大学 中国
31 41 29 62 ソウル大学 韓国
=32 28 23 29 東京大学 日本
36 =47 38 53 香港中文大学 香港
39 50 =34 44 復旦大学 中国
45 51 46 43 上海交通大学 中国
=47 60 40 =57 香港科技大学 香港
=47 =44 =42 =55 浙江大学 中国
=50 46 36 =55 京都大学 日本
53 56 =42 83 KAIST(韓国科学技術院) 韓国
56 =74 73 76 延世大学 韓国
57 =65 =65 =87 香港理工大学 香港
60 =65 70 251-300 マラヤ大学 マレーシア
62 70 54 82 香港城市大学 香港
67 79 74 201-250 高麗大学 韓国
68 69 77 =152 国立台湾大学 台湾
=84 =91 55 =191 東京工業大学 日本
86 80 68 175 大阪大学 日本
98 =100 71 149 浦項工科大学 韓国
107 113 79 =130 東北大学 日本
118 =149 =172 インド工科大学ボンベイ校 インド
=127 =145 99 =145 成均館大学 韓国
=133 =137 94 57 中国科学技術大学 中国
138 =159 =129 401-500 マレーシア国民大学 マレーシア
145 =141 133 73 南京大学 中国
146 =137 =143 401-500 マレーシアサインズ大学 マレーシア
157 158 123 501-600 マレーシアプトラ大学 マレーシア
=150 197 =174 インド工科大学デリー校 インド
=152 =176 =112 201-350 名古屋大学 日本
162 =157 157 301-350 漢陽大学 韓国
=167 =157 135 301-350 九州大学 日本
173 196 =141 351-400 北海道大学 日本
=181 188 =203 401-500 マレーシア工科大学 マレーシア
=181 =199 =205 801-1000 早稲田大学 日本
188 214 =197 601-800 慶応義塾大学 日本
192 216 =212 =185 同済大学 中国
=194 194 194 =157 武漢大学 中国

変わるランキング評価手法

 QS世界大学ランキングの評価手法は前年から変更されている。それまでは「学術関係者からの評判」(配点比率40%)、「教員一人当たりの論文被引用数」、「学生一人当たりの教員比率」(同それぞれ20%)。「雇用者からの評判」(同10%)、「外国人教員比率」、「留学生比率」(同それぞれ5%)という6項目の評価指標の合計点数で順位付けしていた。「学術関係者からの評判」と「雇用者からの評判」は20万人を超す世界の学術関係者、雇用主を対象に実施した調査結果に基づいている。

 変更されたのは、「学術関係者からの評判」の配点比率が40%から30%、「学生一人当たりの教員比率」が20%から10%へとそれぞれ10%ずつ下がった。代わりに「雇用者からの評判」が5%増えて15%になり、さらに「持続可能性」、「雇用成果」、「国際研究ネットワーク」という3指標が追加され、それぞれ5%が割り振られている。「持続可能性」は環境問題など社会的課題への取り組みを重視する最近の学生の意向に大学がいかに対応しているかを評価する。「国際研究ネットワーク」は研究がいかに国際的につながっているかをみる。過去20年間に起こった高等教育の変化に対応し、学生が自分にとって重要な分野で優れた教育機関を特定するのにより役立つようにした。評価法変更の狙いをQSはこのように説明している。

 QSと並んで関心を集めている英教育誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション」(THE)の世界大学ランキング評価手法との違いはどうか。こちらも昨年公表した「THE世界大学ランキング2024」から評価法が一部変わっている。変更された一つが、配点比率30%の「論文被引用数」で、これまでのように被引用数の多い論文の数で評価するだけでなく、引用された論文の重要性など研究の質をより重視する評価指標「研究の質」に変わった。さらに「企業からの収入」は、大学の研究が引用された特許の数という新しい項目が加えられ、評価比率も2.5%から4%に高まっている。代わりに「教育(学習環境)」では「博士号授与数と教職員数の比率」と「博士と学士の比率」といった項目の評価比率が下がり、全体で30%から29.5%へ、「研究環境」でも「研究助成金」と「論文数」の評価比率がそれぞれ下がり、全体の評価比率が30%から29%へとそれぞれ低下している。

 このようにQS、THEとも高等教育の変化に対応して大学評価法を修正しており、昨年9月公表の「THE世界大学ランキング2024」では、近年、低迷が続いていた日本の大学に対する評価も幾分、上昇する結果となっている。上位200位内に前年を3校上回る5校が入った。東京大学の29位をはじめ京都大学、東北大学、大阪大学、東京工業大学の5校すべてが前年より順位を上げている。しかし、中国、香港、シンガポールの大学に比べ日本の大学がさまざまな世界大学ランキング、特にTHE世界大学ランキングで見劣りする状況は、今回のQS世界大学ランキングの結果からも大きな変化が見て取れない。

関連サイト

クアクアレリ・シモンズ「QS World University Rankings 2025: Top GlobalUniversities

タイムズ・ハイヤー・エデュケーション「World University Rankings 2024

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