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第65回CRCC研究会「中国のエネルギー政策および発展動向」/講師:白 泉(2013年10月17日開催)

演題:「中国のエネルギー政策および発展動向」

開催日時・場所

2013年10月17日(木)15:00-17:00

独立行政法人科学技術振興機構(JST)
東京本部別館1Fホール

講演資料

中国のエネルギー政策および発展動向」( PDFファイル 2.76MB )

詳報

第65回研究会速報」( PDFファイル 7.60MB )

『エコ文明』建設中国新指導部の重要方針に

 小岩井忠道(中国総合研究交流センター)

写真

 中国国家発展・改革委員会エネルギー研究所の白泉・エネルギー効率センター副センター長が10月17日、中国総合研究交流センター主催の研究会で講演し、「エコ文明」建設が習近平政権のエネルギー政策における重要な柱となっていることを強調した。

 「2000-2012年のエネルギー消費増加率は、年平均8.9%」「年間消費量は米国を超え、欧州全体を上回る」など、白氏はまず、短期間のうちに世界最大のエネルギー消費国になった中国の現状を詳しく紹介した。併せて「石油・天然ガスの可採埋蔵量は世界の1.3%、石炭も12.6%でしかない」「2012年の石炭産出量36億トンのうち、3分の1は危険を冒して採掘された」など、国内エネルギー資源が不足している実態も詳述にした。

 「国民経済と社会発展・第十二次五カ年(2011-2015年)計画」で、中国は「経済発展方式の転換」を加速することを柱に据えている。白氏は「今後、これまでの経済発展モデルは適用できない」と延べ、「経済構造を改革し、科学技術とイノベーションを重視し、国民生活の保障・改善と、省エネ・環境保護を経済発展方式転換の大きな原動力とする」ことが、同五カ年(2011-2015年)計画にも盛り込み済みであることを紹介した。

 氏が特に強調したのが、「エコ文明」建設の方針を中国政府が明確に打ち出していること。習近平氏を党総書記に選出した昨年11月の中国共産党第18回全国代表会議の党大会報告で、独立した章が割かれたのに加え、さらに「党規約」にも初めて盛り込まれた。この「エコ文明」建設の鍵を握るのが「省エネ」と「環境保護」とされていることを指摘し、「グリーン、循環、低炭素社会の発展を推進するには、いろいろな技術や経験を持っている日本に学ばなければならない」と、氏は日本への強い期待も表した。

 エコ文明建設の設計作業は、国家発展・改革委員会が担当し、必要となる行政手段や市場メカニズムといった制度面のてこ入れは組織部と財政部の協力の下に進める。「重点開発地域」「生態保護地域」など4種類の「主体機能区」というものを設け、「国土空間開発の最適化」を図ることが、エコ文明建設の主要な任務...など、中国新指導部の方針を詳しく紹介した。さらに、今後の具体的な見通しについて、次のように語った。

 「地方政府が土地を使用する工事の際、これまでは中央政府の認可が降りれば自由に使えた。しかし、これからは、工事の際に二酸化炭素の排出量がどれくらいになるかなども考慮されるようになる。例えば内陸地域を都市化する際には環境に配慮し、開発を一方的に行うことはしない。農業地域に関しても保護していくということだ」

白 泉

白 泉(ばい ちゅえん)氏:
中国国家発展改革委員会エネルギー研究所
エネルギー効率センター副センター長、研究員

 中国エネルギー研究会省エネ及びエネルギー管理専門委員会委員、中国低炭素計測技術委員会委員、国際生態発展連盟常務理事、第4回中央国家機関青連委員兼任。主な研究:エネルギー経済、エ ネルギー科学技術戦略

略歴

1997年 清華大学熱エネルギー工程学部卒業、熱エネルギータービン専
2002年 清華大学熱エネルギー工程学部工学博士学位取得
2001年 3月~12月、(独)Siegen総合大学 客員教授
2002年 国家発展改革委員会エネルギー研究所入所
2005年 同研究所副研究員、研究員
2007年 現職
2013年 8月、名古屋大学経済学部客員教授

 主な著書に、『エネルギー節約の経済学』、『中国"十一五"省エネ進展報告』、『中国"十一五"省エネ目標~対策と実施~』、『我が国のエネルギー技術レベルを向上させる戦略的構想』、『 国外GDPエネルギー消費の変化と示唆』など多数。