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【20-16】清華大学、北京大学が1,2位占める 英教育誌のアジア大学ランキング

2020年6月08日 小岩井 忠道(中国総合研究・さくらサイエンスセンター)

 英国の教育誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション」は6月3日、中東を含むアジア地区の大学ランキングを発表した。1位は前年に続き清華大学で2位にも昨年の5位から順位を上げた北京大学が入り1,2位を中国が占めた。北京大学は研究環境と企業からの収入に対し高い評価を得た。2016年から2018年にかけ3年連続1位だったシンガポール国立大学は、前年の2位からさらに一つ順位を落とし3位。

 4位、5位は、香港大学、香港科技大学の香港勢が続き、以下6位にシンガポールの南洋理工大学、7位に前年から順位を一つ上げた東京大学が入った。8位香港中文大学、9位ソウル大学と常連の大学に続いて初めて中国科学技術大学が10位に浮上したのが目立つ。

「アジア大学ランキング2020」トップ50
(タイムズ・ハイヤー・エデュケーション「Asia University Rankings2020」から作成)
アジア
順位
前年
順位
前々年
順位
大学名 国・地域
1 1 2 清華大学 中国
2 5 3 北京大学 中国
3 2 1 シンガポール国立大学 シンガポール
4 4 4 香港大学 香港
5 3 5 香港科技大学 香港
6 6 5 南洋理工大学 シンガポール
7 8 8 東京大学 日本
8 7 7 香港中文大学 香港
9 9 9 ソウル大学 韓国
10 12 15 中国科学技術大学 中国
10 10 13 成均館大学 韓国
12 11 11 京都大学 日本
13 13 10 KAIST 韓国
13 14 18 浙江大学 中国
15 16 12 浦項工科大学 韓国
16 15 14 香港城市大学 香港
17 17 16 復旦大学 中国
18 18 17 南京大学 中国
19 24 20 上海交通大学 中国
20 19 24 高麗大学 韓国
21 25 26 国立台湾大学 台湾
22 21 20 延世大学 韓国
23 22 22 蔚山科学技術大学 韓国
24 19 19 香港理工大学 香港
25 26 25 テルアビブ大学 イスラエル
26 23 23 キング・アブドゥルアズィーズ大学 サウジアラビア
27 27 27 エルサレム・ヘブライ大学 イスラエル
28 35 68 アルファイサル大学 サウジアラビア
29 31 40 慶熙大学 韓国
30 31 30 東北大学 日本
31 27 32 カリファ大学 アラブ首長国連邦
32 マカオ科学技術大学 マカオ
33 41 南方科技大学 中国
34 47 57 華中科技大学 中国
35 64 83 台北医科大学 台湾
36 29 29 インド理科大学院 インド
37 42 47 マカオ大学 マカオ
38 33 38 漢陽大学 韓国
38 38 43 中山大学 中国
40 49 71 アラブ首長国連邦大学 アラブ首長国連邦
41 34 35 名古屋大学 日本
42 30 33 東京工業大学 日本
43 38 46 マラヤ大学 マレーシア
44 37 45 武漢大学 中国
45 北京師範大学 中国
46 59 36 国立清華大学 台湾
47 インド工科大学ロパー インド
48 42 37 バボルノシルバニ工科大学 イラン
49 36 サバンジュ大学 トルコ
50 50 53 同済大学 中国

 今回のランキングでも目を引くのが、中国の大学の躍進ぶり。上位20位のうち7大学を占めている。韓国も5大学、香港も4大学と引き続き高い評価を得ており、東京大学のほか京都大学(12位)だけの日本の劣勢が目立つ。ただし、「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション」は、ランキングに入った489の大学のうち、最も多いのは日本(110大学)であることを挙げて、「日本はリーダーであり続けている」と評価している。

 今回のランキングは、417大学だった前年より72大学増えている。新たにランク入りした大学は約80。このうち57位と日本の大学の中で7番目に高い評価を得た産業医科大学をはじめ、32位のマカオ科学技術大学、45位の北京師範大学、47位のインド工科大学ロパー、60位のブルネイ・ダルサラーム大学(ブルネイ)の5大学についてそれぞれ評価を比較した図が示されている。

 教育、研究、論文引用の影響度、国際性、企業からの収入という五つの評価指標のうち、マカオ科学技術大学とブルネイ・ダルサラーム大学は、論文引用の影響度と国際性が高い評価を得ている。産業医科大学とインド工科大学ロパー校は論文引用の影響度が高く評価されている。他方、これら4大学はその他の分野で改善の余地があるとされた。北京師範大学は、五つの評価指標すべてで良好な評価を得た、とされている。

「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション」は、これら5大学の特徴からもみられるアジア地域の大学が持つ長所や短所の多様性を肯定的に捉えている。現在、新型コロナウイルス感染拡大で、世界中の教育と研究に動揺がみられる。新型コロナの結果としてグローバルな学生の流れが変化することで、東アジアが高等教育の中心地として浮上する可能性がある。こうした予測があることを紹介している。

 世界の中でアジア地域の大学の評価が高まり続けている一方、この1年間に香港とインドで学生たちの激しい抗議活動が起きていることも注目している。東アジアのいくつかの国が直面する人口問題にも触れ、大学が自ら対応せざるを得ないこれら多種多様な問題の解決策もまた多種多様であるとの見方も示した。

 アジア大学ランキングで用いられている教育、研究、論文引用の影響度、国際性、企業からの収入という五つの評価指標による評価法は、「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション」が毎年、公表している世界大学ランキングと骨格は同じ。五つの評価指標をそれぞれさらに細分化した合計13項目について点数を付け、合計している。例えば教育については、世界の著名な研究者1万人以上から得た大学に対する評価のほか、教員数に対する学部学生数の割合、学士数に対する博士授与数の割合、教員数に対する博士授与数の割合など計5項目が評価される。

 五つの評価指標のうち、特に重視されているのは教育、研究、論文引用の影響度。世界大学ランキングではそれぞれ30%という高い配点が割り振られている。アジア大学ランキングの評価方法がわずかに違うのは、教育だけが25%に減らされ、その分、2.5%の配分比率だった「企業からの収入」が7.5%に引き上げられていることだ。教育で減らされた5%分は、世界の著名な研究者1万人以上から得た大学に対する評価(15%から10%に)である。こうした調整についてタイムズ・ハイヤー・エデュケーションは「アジアの大学の優先度を反映した」と説明している。アジアの大学は、企業からの収入を他地域の大学より重視していることを考慮したといえる。

 こうした評価手法の調整によって、すでに公表済みの「世界大学ランキング2020」の評価結果との違いもみられる。アジア大学ランキングの上位10位だけでも、順位の入れ替えが起きている。1~4位の清華大学、北京大学、シンガポール国立大学、香港大学は世界大学ランキングの評価順番と変わらない。しかし、5位の香港科技大学と6位の南洋理工大学は世界大学ランキングでのアジア勢の評価順位に比べ、それぞれ一つ順位が上がっている。10位の中国科学技術大学も一つ順位を上げている。代わりに世界大学ランキングではアジアで5位だった東京大学が7位、10位だった京都大学が12位にそれぞれ順位を下げた。

関連サイト

タイムズ・ハイヤー・エデュケーション「アジア大学ランキング2020

タイムズ・ハイヤー・エデュケーション「世界大学ランキング2020

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