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【24-10】日本人の中国親近感過去最低 「関係良好と思わない」も9割に

小岩井忠道(科学記者) 2024年02月13日

 中国に親しみを感じる日本人は前年に比べ5.1ポイント減り12.7%と、これまでで最少となったことが内閣府の調査で明らかになった。親しみを感じない日本人も86.7%と前年に比べ4.9ポイント増え、過去最多となった。

 1月19日に公表された「外交に関する世論調査」は、全国18歳以上の日本国籍を持つ3000人を対象に昨年9~10月に郵送法で実施され、1649人から有効回答を得ている。最初の調査が実施されたのは1975年で、主要国・地域に対する親近感を問う調査項目が入ったのは1978年から。日中間では日中平和友好条約の署名や、鄧小平副総理の訪日などがあった年だ。以後、対象国・地域の一部を変えながら毎回、共通の調査項目となっている。中国に対し「親しみを感じる」(「親しみを感じる」と「どちらかといえば親しみを感じる」の合計)日本人がこれまで最も多かった年は、華国鋒首相が来日し、日中科学技術協力協定が署名された1980年。「親しみを感じる」が78.6%、「親しみを感じない」(「親しみを感じない」と「どちらかといえば親しみを感じない」の合計)が14.7%だった。

 しかし、その後、途中浮き沈みはあるものの親近感の低下傾向が続く。2014年10月と2016年1月の調査で、「親しみを感じる」は14.8%まで落ち込む。その後、回復時期が4年間続いたものの2021年9月の調査から再び低下に転じている。その後もこの流れは止まらず、今回の調査でついに過去最低値を2.1ポイント下回る12.7%となった。「親しみを感じない」50.7%と「どちらかといえば親しみを感じない」36.0%を合わせた数も86.7%と、これまでの最高値を上回った。

 中国に親しみを感じない日本人は、すでに前年の調査でも前々年に比べ2.8ポイント減の17.8%となっている。この理由としては「親しみを感じる」人が比較的多い20歳代(2016年調査からは18~29歳に拡大)の大きな変化が指摘されていた。前々年に41.6%と年齢別では飛びぬけて多かった「親しみを感じる」20歳代が28.0%と大幅に減ったことだ。今回の調査では20.4%とさらに減っている。「親しみを感じない」20歳代も前回調査でも前々年の58.4%から72.0%へと大幅に増えていたが、今回は79.6%とさらに増え、30歳代以上の年齢層との間に見られていた大きな差が大幅に縮まっている。

中国に対する親近感

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(内閣府「『外交に関する世論調査』の概要」から)

関係良好と思う日本人5.6%

「現在の日本と中国との関係は全体として見ると良好だと思うか」を聞いた問いに対する答えも同様に悪化した。「良好だと思う」「まあ良好だと思う」を合わせた数は5.6%と前年の11.0%から大きく減少し、「良好だと思わない」「あまり良好だと思わない」を合わせた数も、前年の84.4%から90.1%に増えている。「良好だと思う」の5.6%は、日本政府が尖閣諸島の国有化を閣議決定し、日中両国の対立が激しくなった2012年調査時の4.8%に次いで少ない。「良好だと思わない」の90.1%も同じ2012年の92.8%と翌2013年の91.0%に次いで多い。

現在の日本と中国の関係

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(内閣府「『外交に関する世論調査』の概要」から)

日中関係の発展重視も減少

 さらに「今後の日本と中国の関係の発展は両国、アジアおよび太平洋地域にとって重要か」を聞いた答えも、「重要だと思う」と「まあ重要だと思う」を合わせると68.2%で前年の73.5%から5.3ポイント低下した。「重要だと思わない」「あまり重要だとは思わない」を合わせた数も27.8%と前年の22.1%から5.7ポイント増えている。

今後の日本と中国の関係の発展(両国、アジアおよび太平洋地域にとって)

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(内閣府「『外交に関する世論調査』の概要」から)

韓国への親近感向上

「外交に関する世論調査」は、中国以外の6カ国・地域に対する日本人の親近感も聞いている。「親しみを感じる」が多い国・地域は、米国87.4%(前年87.2%)、西欧(英国、フランス、ドイツなど)74.3%(同71.4%)、東南アジア(タイ、インドネシアなど)71.9%(同71.5%)、韓国52.8%(45.9%)、インド52.7%(同51.3%)といずれも前年を上回る数字となっている。特に韓国は、「親しみを感じる」が50%を超えたのも、「親しみを感じない」46.4%(同53.7%)を上回ったのも、ともに2011年以来となっているのが目を引く。

 一方、ロシアに対して「親しみを感じる」は前年の5.0%よりさらに低下して4.1%、親しみを感じない」も94.7%から95.3%に増え、それぞれこれまでで最低、最高となった。

各国・地域に対する親近感・各国・地域との関係

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(内閣府「『外交に関する世論調査』の概要」から)

中国の印象悪化、他調査でも

 中国に対する日本人の印象が悪化している状況は、昨年10月に公表された非営利シンクタンク言論NPOの「第19回日中共同世論調査結果」からも明らかにされている。中国政府が強く反対している東京電力福島第一原発からの処理水海洋放出が実施された時期を含む昨年9月に18歳以上の男女を対象に訪問留置回収法により実施された調査(有効回収数1000)だ。中国に対して「良くない印象を持つ」と「どちらかといえば良くない印象を持つ」日本人は計92.2%と前年の87.3%に比べさらに増え、2005年の調査開始以来、2番目の高い数字となっている。

 日本にとって日中関係を「重要」「どちらかといえば重要」と考える日本人も、前年の74.8%から65.1%へと大きく減少、「重要ではない」「どちらかといえば重要ではない」と考える日本人も4.4%から7.5%に増えている。現在の日中関係についても「悪い」「どちらかといえば悪い」と見る日本人は計68.4%と前年の56.2%から12.2ポイント悪化した。「良い」「どちらかといえば良い」も昨年の2.8%からさらに低下、わずか0.8%と調査開始以来、最低に落ち込んだ。

 さらに今後の見通しについても「良くなっていく」「どちらかといえば良くなっていく」と見る日本人はわずか4.2%と前年の8.2%からさらに減り、「悪くなっていく」「どちらかといえば悪くなっていく」と見る日本人は前年の37.1%から39.7%と5年連続の悪化という結果となっている。

中国への厳しい目海外も

 内閣府の「外交に関する世論調査」では調査対象となっていない日本以外の国々の中国に対する見方はどうか。公益財団法人新聞通信調査会が2023年2月に公表した「諸外国における対日メディア世論調査」という調査結果がある。米国、英国、フランス、中国、韓国、タイの6カ国を対象に、2022年11~12月に電話、ネットあるいは面接による調査法で実施し、各国1000人から回答を得た調査だ。中国に対して同調査は2015年から毎年実施されており、今回が9回目。中国に対して「好感が持てる」と答えた国民の割合は米国21.0%(前年31.0%)、フランス27.3%(同32.5%)、英国28.6%(同29.2%)、韓国24.5%(同23.0%)、タイ60.5%(同57.4%)となっている。

 2016年と2017年の第2回、第3回調査では、中国に対し「好感が持てる」と答えた人の割合はすべての国で40%台か50%台と高く、2017年12月実施の第4回調査でも韓国が30%台に低下したのを除き、残りはすべて50%台となっていた。好感度の低下が目立つようになったのは、2018年11~12月実施の第5回調査から。今回は前年に比べ、タイと韓国は前年を上回ったものの、タイを除く調査対象国の中国に対する印象は引き続き厳しい現状を示す結果となっている。

各国間の好感度-「好感が持てる」と答えた人の割合

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(新聞通信調査会「第9回諸外国における対日メディア世論調査結果」から)

関連サイト

内閣府「『外交に関する世論調査』の概要

言論NPO「第19回日中共同世論調査結果 中国人の半数を超える人が、世界で核戦争が起きると回答。その理由はロシアのウクライナへの対応 ―第19回日中共同世論調査結果を公表しました

新聞通信調査会「第9回諸外国における対日メディア世論調査結果

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