第42号:環境・エネルギー特集Part 3-地球環境保護の取り組み
中国科学技術月報2010年4月号(第42号) 2010.4.1発行
特集:環境・エネルギー特集Part 3-地球環境保護の取り組み
はじめに
産業革命以後、科学技術は飛躍的に進歩し、それに伴って人間生活も便利になった。今、我々は2万km離れた地球の裏で起きたことをほとんど時間差なしに知ることができるが、一方、便 利さを追求するあまりに自然環境や人間の健康をないがしろにしてきた面も否めない。
排気汚染、排水汚染による環境破壊、健康被害は長年各地で報告されている。世界的に有名なのは「ロンドンスモッグ」と呼ばれる1950年代までのロンドンの大気汚染だ。日 本では1950年代に有機水銀汚水による水俣病が大きな問題となった。経済急成長中の中国では現在もなお各地で汚染が報告されている。地域レベルの環境汚染は発見・認識も対策も比較的早くできる。一方、オ ゾン層破壊、地球温暖化、砂漠化など、国境のない地球規模の環境問題は、発見も遅ければ対処も難しい。
20世紀末になって環境破壊の深刻さがクローズアップされるようになり、市民生活の中でも環境保護に対する意識が高まった。オゾン層破壊、地球温暖化など、国 境のない地球規模の環境破壊が日常のニュースでも聞かれるようになった。国際政府間協力として気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が1988年に設立され、2 007年には環境問題の論客として知られる元米国副大統領アル・ゴア氏とともにノーベル平和賞を受賞した。1 997年の京都議定書や2009年12月に主要国首脳が出席して注目を浴びた気候変動枠組条約締約国会議(COP-FCCC)も1995年から始まった。市 民生活の中に環境保護を取り入れようという動きが見られるようになり、企業や大学の研究者は環境負荷の少ない代替技術や新技術の開発を始めた。豊かさや利便性を維持しつつ、健 康な生活を実現することが21世紀の課題となっている。
今回の特集では、日中両国の地球環境保護対策、国際協力の取組み、および、環境再生の新技術について紹介する。読者の皆様のご理解を深める一助となれば幸いである。
中国総合研究センター
「中国の温暖化政策:二酸化炭素排出削減数値コミットメントを中心に」
日中交流最前線
「黄土高原における生態系回復を目指す中日長期共同研究-中国科学院水利部水土保持研究所の取り組み-」