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【15-007】中国における統一不動産登記制度について

2015年 4月 3日

康 石

康 石(Kang Shi): 森・濱田松本法律事務所 パートナー、
外国法事務弁護士(中国法)、ニューヨーク州弁護士

1997年から日中間の投資案件を中心に扱ってきた。
2005年から4年間、ニューヨークで企業買収、証券発行、プライベート・エ クイティ・ファンドの設立と投資案件等の企業法務を経験した。
2009年からアジアに拠点を移し、中国との国際取引案件を取り扱っている。

一、はじめに

 中国において、「不動産登記暫定条例」(以下、「本条例」という)が国務院により2014年11月24日に公布され、2015年3月1日より施行された。

 中国では、2007年10月1日より実施された「物権法」において、不動産に対して統一登記制度を実施する(同法第10条第2項)と規定されていたにもかかわらず、今までかかる制度は確立されていなかった。本条例は、中国における不動産登記制度を統合し、統一登記制度を確立することを目的とするものである(第3条)。

 以下に述べるように、従来の登記制度の弊害は明らかである。土地、建物、林地、海域等の不動産について、異なる部門が異なる基準によって登記を行っており、また、都市と農村の不動産について、更に異なる担当部署による異なる登記実務が行われていたため、重複登記、登記漏れ、登記された不動産の間の境界線の不明等の問題が発生し、権利者に多大な不便をもたらしていた。これらは一見形式的な問題のように見えるが、実は、実体的権利の保護や取引安全性に繋がる深刻な問題であった。したがって、不動産統一登記制度の導入は、不動産権利の保護、取引安全の保障等の面において重大な意義を有する。

 不動産登記制度の統一とは、①登記根拠(これには、更に、登記対象と登記手続の統一化が含まれる)、②登記機関、③登記簿及び登記証書・証明、並びに④情報プラットフォームといった四つの面の統一を指す。以下では、これらの四つの側面を中心に、本条例の主要内容を概観することとする。

二、主要制度

1.登記の対象及び範囲

 本条例は、土地、建物、森林・林木、海域等の四種類の不動産の、所有権、用益物権(土地請負経営権、建設用地使用権、地役権等)、担保権等の権利の(第5条)、初回登記、変更登記、移転登記、抹消登記、訂正登記、異議登記、事前登記(仮登記)、差押登記等(第3条)に適用される。

2.登記機関

 国務院国土資源主管部門は全国の不動産登記業務を指導・監督し、県レベル以上の人民政府は、一つの部門を統一の不動産登記機関として指定するとともに、上級の登記機関の指導監督を受けさせる(第6条)。かかる規定によって、登記機関の統一を図っているが、これは、登記基準と登記実務を統一する上で重要な一歩である。

 2015年3月上旬の時点で、中国全国において、26の省、30以上の市、70以上の県において、不動産登記機関の統一・統合・新設作業が完了している。国家レベルでは、国土資源部地籍管理司が、不動産登記局としての機能を兼任するようになり、全国レベルの不動産登記制度関連法令の制定を行う。また、元の中国土地鉱山法律事務中心(国土資源部土地争議調停事務中心との名称も有している)が国土資源部不動産登記中心と名称変更し、不動産登記局の業務に協力する体制を作っている。

3.登記簿及び登記証書・証明

 登記される不動産単位毎に唯一の固有のコードが割り当てられる。登記機関が保有する不動産登記簿(原則電子媒体とすることが要求され、条件を具備できない地域では紙媒体とすることが認められている)には、不動産の位置・境界線・面積・用途等の自然状況、権利主体・類型・内容・出所・期限・権利変化等の権利状況、権利制限・注意事項その他事項を記載する(第8条、第9条)。登記簿については、専属人員をして保管する制度、安全責任制度、永久保存制度等についても規定されている(第12条、第13条)。権利者や利害関係者に対しては、不動産権利証書(不動産権利者の場合)や登記証明(異議登記、事前登記、抵当権登記、差押登記の申請者の場合)が発行される(第21条)。

 2015年3月1日の本条例の施行に備えて、国土資源部は同年2月15日に新しい不動産登記簿、証書・証明の様式・記入説明を公布した。

4.登記手続

 本条例は、過去の不動産登記実務において有効と認められた各制度を条文化した。特に、権利者の不動産登記に便益を与える観点からの制度が多数規定されている。例えば、一般的に取引双方が共同で登記申請を行うべきとの原則を規定したうえで、その例外、即ち、一方の当事者の申請で登記できる場面(例えば、初回登記、相続による権利承継、裁判・仲裁文書による権利変更等、抹消登記、訂正登記・異議登記等)について規定するとともに(第14条)、申請時に提出すべき資料について規定することで(第16条)、当事者側で十分な事前準備を行ったうえで登記に臨むことを可能にした。また、申請資料における誤りについて、できるだけ受付時に、その場において訂正させたうえで受理する制度、補足資料に関して一括で通知する制度を設けることで(第17条)、権利者が登記機関に何度も足を運ぶことを避けるための制度を設けている。他にも、実施調査が必要な場面(第19条)、30日以内の登記手続を完了すること(第20条)、不登記の事由(第22条)等についても規定している。

5.統一情報プラットフォーム

 本条例は、統一の不動産登記情報管理プラットフォームを構築することにより、国家、省、市、県の四つのレベルにおける登記情報を当該プラットフォームにおいて共有可能にするとともに、登記部門と管理部門、並びに、各行政部門(国土資源、公安、民政、財政、税務、工商、金融、監査、統計等)間の情報共有を図るべきとした(第23条~第25条)。また、権利者又は利害関係者は、登記資料の照会、複製ができる(第27条)。

 統一不動産登記情報プラットフォームは、不動産情報の照会を可能にすることにより、取引促進につながるとともに、不動産に関連する管理のための有効な手段(例えば、かかるプラットフォームの構築は、将来不動産保有税や相続税を導入するための必要条件とも言われている)も提供することになる。

三、おわりに

 本条例に関する記者会見によれば、本条例の実施に伴う不動産統一登記制度の最終的な実施までに(特に、統一不動産登記情報プラットフォームを全国範囲で共有するまで)更に数年間がかかる見込みとのことである。但し、統一不動産登記制度が最終的に確立されるまでの間でも、従来の制度下において発行された各種権利証書は引き続き有効とされており、また、証書の交換も強制されず、今後取引や変更が生じる段階で、新しい制度による登記がなされ、登記証書が発行されることになる(本条例の実施に関する国土資源部の通知、2014年12月29日公布施行)。 

 本条例によれば、国土資源主管部門が関連部門と共同して本条例の実施細則を制定することとなっており(第34条)、今後公布される予定の更に具体的な制度に注目する必要がある。



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