第3節 地域分布と現状
第1項 地域分布
2008年12月現在、22カ所に設けられている国家バイオ産業基地の地域的な分布を下表に示す。
No | 地域 | 名称 | 所在地 |
1 | 北京 | 北京国家バイオ産業基地 | 北京市 |
2 | 天津 | 天津国家バイオ産業基地 | 天津市 |
3 | 上海 | 上海国家バイオ産業基地 | 上海市 |
4 | 重慶 | 重慶国家バイオ産業基地 | 重慶市 |
5 | 吉林 | 長春国家バイオ産業基地 | 長春市 |
6 | 通化国家バイオ産業基地 | 通化市 | |
7 | 河北 | 石家荘国家バイオ産業基地 | 石家荘市 |
8 | 山東 | 青島国家バイオ産業基地 | 青島市 |
9 | 徳州国家バイオ産業基地 | 徳州市 | |
10 | 河南 | 鄭州国家バイオ産業基地 | 鄭州市 |
11 | 江蘇 | 泰州国家バイオ産業基地 | 泰州市 |
12 | 浙江 | 杭州国家バイオ産業基地 | 杭州市 |
13 | 江西 | 南昌国家バイオ産業基地 | 南昌市 |
14 | 湖北 | 武漢国家バイオ産業基地 | 武漢市 |
15 | 湖南 | 長沙国家バイオ産業基地 | 長沙市 |
16 | 広東 | 広州国家バイオ産業基地 | 広州市 |
17 | 深セン国家バイオ産業基地 | 深セン市 | |
18 | 広西 | 南寧国家バイオ産業基地 | 南寧市 |
19 | 四川 | 成都国家バイオ産業基地 | 成都市 |
20 | 雲南 | 昆明国家バイオ産業基地 | 昆明市 |
21 | 陝西 | 西安国家バイオ産業基地 | 西安市 |
22 | ハルピン | ハルピン国家バイオ産業基地 | ハルピン市 |
また、上表を図で示すと次のようになる。
図5.3 国家バイオ産業基地の地域分布
出典:現地情報をもとに技術経営創研が作成(背景図:Copyright © 2003-2004 中国まるごと百科事典)
第2項 事例
ここでは、上海張江国家バイオ医薬産業基地と広州国家バイオ産業基地について説明する。
まず、上海張江国家バイオ医薬産業基地(国家上海生物医薬科技産業基地)は1996年に中国科学技術部、中国衛生部、中国科学院、国家食品薬品監督管理局、上海市人民政府の5者連合の「協力協定」の下で、l l i i i i i F 張江国家ハイテク産業開発区内に設立された国家バイオ産業基地である。
上海張江国家ハイテク産業開発区は、上海浦東新区に属し、陸家嘴金融貿易区の東南側に位置し、計画面積は25平方kmである。同区は1990年代初めに創立された国家級ハイテク産業開発区の一つであり、半 導体、ソフトウェア、バイオ・製薬の3大産業分野を柱に位置づけている。すなわち、上海張江国家ハイテク産業開発区では設立当初から「バイオ製薬産業」を重要な柱産業の一つとして位置づけている。
上海張江国家バイオ医薬産業基地は、これまで国内大手製薬会社または有望なバイオハイテクベンチャーの他、海外各国の大手製薬グループを中心に誘致を進め、大きな成果を上げてきた。「世界知名( Well-known Worldwide)、亜洲一流(Top in Asia)、中国第1(No.1 in China)」と言う目標を掲げ、バイオ製薬や生命科学などの 「研究開発センターの誘致」を 中心に、基地の拡大も含めて展開している。
2007年現在、300余りのバイオ製薬関連プロジェクトを立案・導入し、400余りの生命科学分野に従事するハイテク企業や研究機関などがバイオ医薬のイノベーションに取り組み、産業グループ、研 究開発、インキュベーション、教育訓練、専門サービス、リスク投資といった6つの機能を集約してきた。
上海張江国家バイオ医薬産業基地は、上海市市長が責任者、中国科学技術部副部長などが副責任者を務める指導グループの下で、国内最大の生命科学クラスター、バイオ製薬の研究開発基地、国 際的にも影響力のあるイノベーションのプラットフォームとなることを目標として、日夜取り組みを進めている。2007年4月現在、バイオ製薬企業は110社、化学製薬企業は60社、医療機器メーカーは35社、伝 統的な漢方薬企業は15社余りが入居しており、世界ランキング10社の内、5社が研究開発センターを設けている。
2007年5月17日、上海張江高科技園区の設立15周年記念イベントがスタートした際、中国科学技術部部長の万鋼、上海市副市長の楊など多くの要人が開幕式に参加した。今日、上 海張江全体はハイテク産業のみならず、文化産業にも注目し、産学官連携や地域連携などを通じて多角的な取り組みを前進させ続けている。
次に、広東省広州市は、中国華南地域最大の貿易都市であり、広東省の省都である。また、日系製造業が最も多く集まっている。広州市と日本の福岡市は、古くから通商港として栄え、1 979年に友好都市協定を締結した。過去20数年間、広州からパンダを借りたお礼に、福岡市がジェットコースターを広州に贈るなどの交流の他、百貨店やテレビ局、大学同士の交流も盛んに行われている。
広州国家ハイテク産業開発区も1991年に中国国務院の承認により設立された。他の国家ハイテク産業開発区と違って、国務院の承認により設立された広州経済技術開発区、広州保税区、広 州輸出加工区と言った合計4つの区域が同一の「開発区管理委員会」によって統括・運営されている。また、広州は、中国「国家バイオ産業基地」の一つとして、香港の「漢方港」と呼応する構想で、バ イオハイテク産業開発プロジェクト「広州国際生物島(バイオ島)」の開発を本格的に進めている。
国家計画委員会(現国家発展改革委員会)の批准により設立された広州国際生物島は、前述した広州経済技術開発区、広州ハイテク産業開発区、広州輸出加工区などの協働の下で営まれている。広 州ハイテク産業の多角化を加速させる戦略の一環として、製薬、医療、食品、保健、環境などの関連産業の新たな集積を構築する構想により、同生物島は、広州を中心とした香港、深セン、珠 江デルタ地域の一体化を進めている。具体的には研究・開発と生産エリア、技術や生活のサービスエリア、居住エリアにより構成されている。
2005年現在、広州におけるバイオ産業の総生産高は既に182.70億元に上り、その内、バイオテクノロジー製品は163.08億元となっている。このことから、広 州バイオ産業の規模は中国の上位にあると言える。また、2005年現在の広州における各種バイオ企業は300社余りにまで増加している。その内、75%が医薬業界に属し、50%が民間企業である。
特記すべきは、広州の中国科学院南海海洋研究所、生物医薬と健康研究院、南海海洋生物技術国家工程研究センター、広 東微生物研究所技術産業化基地なども広州ハイテク産業開発区の高成長を支えていることである。また、著名な大学発ベンチャー企業として知られている「中山達安基因公司」の 技術総監が開発に成功した蛍光定量PCR法に関する特許が中国発明大賞で金メダルを授与されたことである。