第十二次五ヶ年計画における緑色発展の実態と動向
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第6章 環境問題と対策

6.1 「第11次5ヵ年」期の環境保護実績

 「第11次5ヵ年」期には、中国の環境保護事業は大きな成果を収めた。環境保護部が2011年1月に公表した「2010年全国環境質量状況報告」によると、主要汚染物の排出削減については、同期間中の二酸化硫黄の排出量は2005年比で14.3%減少し、当初の削減目標である10%を上回った。化学的酸素要求量(COD)の排出量も2005年比でマイナス12.45%となり、当初に掲げられた10%の削減目標を上回って達成した。

 同報告によると、水質汚染防止については、地表水モニタリング断面のうち、中国の水質基準で最も汚れた水を指す「V類」を超えた「劣V類」水質断面の2010年の割合が20.8%となり、2005年より5.3ポイント低下した。7大水系におけるI類からⅢ類水質の水質断面の割合は59.6%に達し、2005年より18.6ポイント向上した。大気汚染防止については、大気環境優良日数が292日を超えた重点都市が95.6%となり、2005と比べて26.2ポイント上昇した。

第6-1-1表

6.2 固形廃棄物

 中国では、「第11次5ヵ年」期間中に、固形廃棄物の総合利用率が大幅に向上し、2005年に57.2%であったものが2010年には67.1%まで上昇した。現在、尾鉱や燐石膏、脱硫石膏は技術的、経済的な制限もあり利用量は少ないものの、大型固形廃棄物は貯蔵から利用への転換をほぼ実現した。一例をあげると、2009年の中国におけるセメント原料の25%は大型固形廃棄物の再利用であった。

 また、廃棄物を利用した新型壁材の生産量は壁材総産量の5割を占め、総合利用された固形廃棄物の量は2億㌧を上回った。こうした廃棄物の総合利用によって、貯蔵用の土地が約30万ムー(1ムー=6.67㌃)減少した。

 現在、中国の都市ゴミ発生量は年間約1億8000万㌧に達しており、このうちの90%が埋立て処理されている。焼却処理されているゴミの量は7%に過ぎず、これ以外は堆肥などの方法で処理されている。全国1636ヵ所の県レベルの都市では、毎年のゴミの発生量は約5000万㌧である。全国650ヵ所の都市のうち、325都市にはまだ生活ゴミ処理施設がなく、大量のゴミが集積・放置されている。[1]

 2010年6月末時点では、全国都市部(市、県及び一部鎮)において947ヵ所の生活ゴミ処理施設が建設された。このうち無害化処理施設は816ヵ所であった。また、埋立てガス利用プロジェクトが64件実施され、このうちの大部分は衛生埋立て場で、埋立てガスの収集、処理が行われた。埋立てガス発電ユニットの設備容量は大きく拡大し、埋立てガスによる温室効果の削減に貢献した。[2]

6.3 土壌汚染

 中国では当初、土壌汚染の全国的な実態が分かっておらず、2006年からようやく全国規模で土壌汚染の状況調査がスタートし、2008年末までに全国の31の省・直轄市・自治区で調査が終了した。

 環境保護部がまとめた「2010中国環境状況公報」(2011年5月)によると、2010年末までに土壌や農産品など全国で21万3754個のサンプルが収集され、495万件に達する有効な調査データと218万件の各地の情報データ、写真21万枚が得られ、地図1万1000枚が作成された。

 全国規模で土壌汚染の状況調査データバンクとサンプルバンクが構築され、データの合計容量は1テラ・バイト、バンクに入れられたサンプル数は5万4407に達した。こうした調査を踏まえ、全体報告や特定テーマごとの報告書のとりまとめが計画されている。

 また、重金属や石油、化学工業等の汚染箇所と汚染した灌漑地区の田畑の土壌については、試験的に研究が実施され、12件の試験プロジェクトが完成し、18件の研究報告と7編の汚染土壌修復技術指針のドラフトが作成された。

 代表的な地区の土壌環境調査によると、珠江デルタ、長江デルタ、環渤海などの経済発展地区では、局所あるいは区域ごとに程度の異なった土壌環境品質の低下現象が確認された。重汚染企業区あるいは工業密集区、採鉱区及びその周辺地区、都市と都市近郊地区では、深刻な土壌汚染区とリスクが高い区があった。

 重金属汚染は、「第11次5ヵ年」期において極めて重大な環境問題と位置付けられた。中国政府は財政資金を投入して重金属汚染防止の強化に乗り出した。2010年の「重金属汚染防止専門資金」の財政支出は約10億元となり、鉛や水銀、カドミウム、クロム、ヒ素などの重金属汚染企業の総合整備、クリーン生産プロセスへの改造、汚染防止新技術の試験・普及プロジェクトを支援した。[3]

6.4 自然生態

 「2010中国環境状況公報」によると、2010年末時点で、中国国内に建設された各種の自然保護区は2588ヵ所、総面積では1億4944万㌶に達している。陸地自然保護面積は国土面積の約14.9%を占めている。このうち、国家級の自然保護区は319ヵ所、面積は9268万㌶に達する。

 同公報によると、湿地保護に関しては、2010年に中央財政による初の湿地保護補助プロジェクトが立ちあげられ、2億元が充当された。国際重要湿地、湿地自然保護区、国家湿地パークの補助金として利用され、湿地モニタリングや生態の修復作業等が実施される。中国ではすでに各級の湿地自然保護区が550ヵ所建設されているほか、国家湿地パーク試験地が145ヵ所、国際重要湿地が37ヵ所に達している。

6.5 草原・森林

 「2010中国環境状況公報」によると、中国の草原面積は4億㌶に達し国土面積の41.7%を占める。内蒙古、広西、雲南、チベット、青海、新疆、陝西、甘粛、寧夏、重慶、四川、貴州西部を合計した草原面積は3.3億㌶に達し、全国の草原面積の84.4%を占める。また、遼寧、吉林、黒龍江の草原面積は0.17億㌶で全国の4.3%、その他の省(直轄市)は0.45億㌶で割合は11.3%となっている。

 中国政府は「第11次5ヵ年」期間中、草原生態建設を強化し、造林緑化のスピードを加速した。具体的には、草原を保護するために放牧を制限するとともに北京と天津で風と砂ぼこり対策整備を行い、西南溶岩地区では草原の整備と遊牧民の定住など草原保護プロジェクトを実施してきた。

6.6 「第12次5ヵ年」期の環境対策

 「第11次5ヵ年」期間中には、中国の環境保護事業は顕著な進展を見せた。しかし、中国の環境問題は、依然として深刻な状況にある。汚染物質の排出量は依然として非常に多く、環境負荷を上回っており、一部地域の環境品質は国家基準を満たしていない。

 特に関心が高まってきているのが重金属汚染である。重金属汚染は「第11次5ヵ年」期の重大な環境問題として位置づけられ、「第12次5ヵ年」期においても、各種の国家規画の1つとして「重金属汚染総合防止『第12次5ヵ年』規画」(「重金属汚染総合防治“十二五”規劃」)が策定されることになった。同規画については、すでに国務院の回答が得られている。環境保護部の周生賢部長は、同規画では2015年までに重点区域において鉛、水銀、クロム、カドミウム等の重金属汚染を2007年比で15%削減する目標を盛り込む考えを明らかにした[4]

  「国民経済・社会発展第12次5ヵ年規画綱要」では、同期間における環境対策と具体的な環境保護目標を定めた。それによると、主要汚染物質の排出量を8~10%削減、森林蓄積量を6億m3増加、森林率を21.66%まで引き上げることなどが明記されている。また、中国政府は「第12次5ヵ年」期において、これまで通り化学的酸素要求量と二酸化硫黄の排出量を拘束目標とすると同時に、新たに窒素酸化物とアンモニア性窒素の削減を拘束目標として計画に組み入れた。

 これを受け国家発展改革委員会は2011年3月29日、2011年の資源節約と環境保護の主要目標を公表した(第6-6-1表)。「第12次5ヵ年」期に掲げられた環境保護目標はすべて、中国政府が2009年に国際社会に公約した内容と関連している(第6-6-2表)。

第6-6-1表
第6-6-2表

[1]「垃圾填埋VS焚烧:究竟谁更可怕」(章轲,「第一财经日报」,2010年5月19日)

[2]「我国城市生活垃圾无害化处理率已达71.3%」(张春莉、「人民政协报」,2010年9月21日)

[3]「拿什么拯救海洋重金属污染」(王海燕、「科技日报」、2011年3月31日)

[4] 「重金属汚染総合防治“十二五”規劃獲批復」(http://www.china.com.cn/policy/txt/2011-02/19/content_21956713.htm