第十二次五ヶ年計画における緑色発展の実態と動向
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第7章 中国の低炭素・グリーン技術

7.1 低炭素技術

(1) 交通分野

 中国は、輸送効率の高い軌道交通へのシフトを低炭素社会構築に向けての柱と位置付けている。このうち、高速鉄道は日本やフランス、ドイツ等から技術を導入するとともに、国産化を進めている。中国の軌道交通産業において、核心技術は主に外国企業に依存している。軌道交通産業分野のソフトウェアハイテク製品市場はシーメンスやアルストムなどの多国籍企業によって占められており、国内企業は比較的技術レベルの低い製品分野に集中している。[1]

 科学技術部が2010年10月に「国家ハイテク研究発展計画」(863計画)の一環として公募した「現代交通技術領域高速鉄路重大技術及び設備研究開発重大項目」では、①高速列車永久磁石電動機トラクションドライブシステム、②高速鉄道インフラサービス状態検査測定技術、③高速鉄道の振動・騒音低減重要技術――が課題としてとりあげられた。

 国務院の承認を得て、工業・情報化部が2009年3月に公表した「自動車産業調整振興規画」(「汽車産業調整和振興規劃」)では、2011年までを視野に入れた目標や自動車技術の進歩・改造の具体的方向が示された。同規画では、エンジンや変速機、ブレーキ系、駆動系、制御系などの重要部品・技術の自主化を実現し、新エネルギー自動車専用の部品・技術が世界的な先進水準に到達するよう求めた。

 科学技術部が2010年10月に公表した「現代交通技術領域電気自動車重要技術とシステム統合(一期)重大項目」では、ハイブリッド動力産業化技術開発、純電気駆動技術開発、次世代純電気駆動技術開発に関して、全部で31件の研究テーマが提示され研究主体が募集された。

(2) 建築分野

 中国の建築省エネ技術は、①建築物本体(省エネ・エコ建材)、②建築システムと設備(熱供給システム・空調システム・給湯システム)--に分けることができる。このうち、建築物本体については、新型壁体材料や保温・断熱材料、リサイクル関連材料、屋上・壁面緑化に分類することができる。

 中国政府は、「国家重点省エネ技術普及目録」の中で、建築分野に関しては以下の省エネ技術の普及をはかる方針を示している。

  • 壁断熱に用いるスプレーポリウレタンフォーム一体化技術
  • ヒートポンプ省エネ技術
  • セントラルエアコン・スマートコントロール技術
  • サンドイッチ式コンポジット構造の軽量建築構造システムの省エネ技術

 中国政府は、照明分野でもかなりの省エネ・ポテンシャルがあるとの考えから、省エネに優れたLEDの普及を推奨している。国家発展改革委員会等が2009年9月に公表した「半導体照明省エネ産業発展への意見公布に関する通知」(「関于印発半導体照明節能産業発展意見的通知」)では、半導体照明産業が中国の省エネ・排出削減政策において重要な役割を担うとする一方で、LED照明に関する特許取得数や基幹技術が不足しているという課題を指摘した。具体的には、半導体照明の製造にあたって不可欠な技術であるMOCVD(有機金属気相成長法)設備などは基本的には外国から輸入されている。そうした背景には、研究開発への投資不足や基礎理論研究への支援体制の欠如などがある。

 こうした現状を踏まえ、同通知では、半導体照明産業の発展目標として、企業の自主開発能力を大幅に強化することに加えて、大型MOCVD設備や主要材料、7割以上のチップを国産化することなどをあげている。また同通知では、863計画などによって技術開発能力の向上を支持する方針が示された。科学技術部が2010年10月に公表した「新材料技術領域『高効率半導体照明重点材料技術開発』重大項目申請指南」では15件の研究課題の実施主体を公募した。

(3) 産業分野

 2004年に公表された「省エネ中長期専門規画」では、鉄鋼業が省エネの重点領域ならびに重点プロジェクトとして指定された。そして、国内水準から判断してもかなり劣った、立ち遅れた技術や設備の閉鎖を加速するとともに、新規ならびに拡張(増設)工事によってエネルギー消費効率を高める方針が示された。

 国家発展改革委員会が2008年5月、2009年12月、2010年11月にそれぞれ公表した「国家重点節能技術推広目録」(第1回、第2回、第3回)では、鉄鋼業において国が重点的に普及を進める技術を明らかにしている。

 また、工業・情報化部が2010年2月に公表した「鉄鋼業クリーン生産技術推進方案」(「鋼鉄行業清潔生産技術推行方案」)では、2012年までに鉄鋼業において粉塵300万㌧、二酸化硫黄7.5万㌧、COD10万㌧、鉄鋼スラグ800万㌧、尾鉱3000万㌧、廃プラスチック・ゴム120万㌧の排出削減及び1.8億m3の節水を目的として、今後開発・普及すべき技術を紹介している。

第7-1-1表

 石油・化学工業において中国政府が重点的に普及を進めている技術としては、以下のようなものがある。

  • 油田機械用放出天然ガス回収液化工程
  • 分解炉空気予熱省エネ技術
  • シフトコンバータガスからアルカリを製造する技術
  • アンモニア合成ループゼオライト省エネ技術
  • 大・中型硫酸生産装置低温部熱エネルギー回収技術
  • 密閉式環境保護型省エネ・カーバイド生産装置
  • 合成アンモニア省エネ改造総合技術
  • 触媒式石炭燃焼省エネ技術
  • ボイラのインテリジェント・スーツブロー最適化・オンラインコークス化事前警戒システム技術
  • 先進ガス化省エネ技術
  • 新型高効率省エネ膜距離イオン交換膜電解技術
  • 大型高パラメータ薄板熱交換技術
  • カーボンブラック生産プロセスにおける余熱利用と排気ガス発電技術
  • グルタミン酸生産プロセスにおける蒸気余熱段階利用技術

 建材工業において中国政府が重点的に普及を進めている技術としては、以下のようなものがある。

  • 製錬煙道ガス余熱回収-余熱発電技術(セメント)
  • セメント・キルン低温余熱発電技術
  • ガラス溶解炉余熱発電技術
  • 純粋酸素燃焼技術
  • ローラープレス研磨システム
  • 縦型研磨設備及び技術
  • 酸素過剰燃焼技術
  • 新型セメント・クリンカー冷却技術
  • 4チャンネル石炭燃焼省エネ技術
  • 高効率省エネ・セパレータ技術
  • 動的高調波抑制及び反応性補償総合省エネ技術

(4) 従来型エネルギーの効率化

 中国は、石炭火力の効率化の一環として、石炭ガス化複合発電(IGCC)、石炭ガス化燃料電池複合発電、新型石炭燃焼・発電、超超臨界圧発電の技術開発を進めており、以下のような863計画を公募している。

  • IGCCに基づいた先進エネルギー技術領域の二酸化炭素の回収・利用・貯留技術研究と実証プロジェクト
  • 燃料電池と分散式発電システムの重要技術
  • 石炭由来の天然ガス製造重要技術研究
  • 石炭分級クリーンエネルギー製造重要技術研究
  • 石炭利用液化製品加工及び石炭液化残渣利用炭素素材製造技術研究
  • 石炭スラリー大型工程化重要技術研究
  • 大型高温/低温FT合成ポリジェネレーション技術
  • 石炭利用オレフィン製造重要技術研究

(5) 新エネルギー

① 原子力

 中国は、2007年11月に公表した「原子力発電中長期発展規画」の中で、「熱中性子炉(PWR)-高速中性子炉-制御核融合炉」の技術路線を堅持する考えを明らかにした。一方で、高温ガス炉についても、自主的に研究開発を行い、技術研究の進展状況に基づいて、試験あるいは実証プロジェクトの建設を行う方針を示した。

 現在、第2世代改良型と位置付けられているCPR1000型、第3世代炉のAP1000とEPRを採用した原子力発電所の建設が着々と行われているほか、AP1000をベースにした、中国が知的財産権を持つ大型PWRであるCAP1400とCAP1700の設計も進められている。高速増殖炉実験炉CEFRも2011年7月に送電を開始した。

 中国には大量のトリウム資源があるとみられることから、トリウムを利用する原子炉の開発もスタートした。中国科学院は2011年1月、戦略的先導科学技術特別プロジェクトの一環としてトリウム溶融塩炉(Thorium Molten Salt Reactor::TMSR)原子力システムの研究を開始することを明らかにした。中国科学院はTMSRの開発を4段階で進めるとしており、2020年~30年にかけて電気出力100MWの実証炉を建設し臨界を達成したあと、2040年までに商業利用段階に持っていくことを計画している。

 国家能源(エネルギー)局電力司核電処は「進行波炉弁公室」を設立し進行波炉技術の研究開発について関係者の意見をまとめたうえで、原子力企業の専門家を選任し準備作業をスタートした。進行波炉(Traveling Wave Reactor)は、1958年に初めて提唱された増殖炉の一種で、理論的には燃料を交換しないで50~100年間の運転が可能という。また、軽水炉から取りだされた使用済み燃料や劣化ウラン、トリウム等を燃料として利用することができる。

② 風力発電

 中国の風力発電業界では、2011年に入って発生した風力発電所の大規模な送電網脱落事故によって、再生可能エネルギーの大量導入にともなう送電網の安全・安定運転に高い関心が集まっている。

 甘粛省の橋西第一風力発電所等では2月から4月にかけて、LVRT(Low Voltage Ride-Through)を備えていいなかったため、多数の風力発電ユニットが送電網から脱落する事故が発生した。LVRTは、何らかの事故が発生して系統電圧が低下しても、風力発電システムが電力系統から解列しないという特性である。中国の風力発電所にはほとんどLVRT機能がない

 規制当局である国家電力監管委員会は事故を受け、風力発電ユニットにLVRT機能を備えさせるとともに、すでにそうした機能を持っているユニットに対しても綿密な調査を行い、必要な能力を備えていないことが判明した場合には改良するよう要求した。なお、その際には設備メーカーも協力するよう要請するとともに、これから建設する風力発電ユニットには事前にLVRT機能を備えるよう求めた。LVRT機能を提供する1つの方法は、無停電電源装置(UPS)を使用することである。

 こうしたなかで国家エネルギー局は2011年4月、「国家エネルギー応用技術研究及び実証プロジェクト」の一環として、「大型風力発電システムの型式試験・送電網接続・試験技術の研究及びプロジェクトの応用実証」など3件のプロジェクトで合計14件のテーマの公募を実施した。

③ 太陽熱・太陽光

 現在の太陽熱発電開発の状況は、2000年前後の風力発電と太陽光発電の状況と似ていると指摘する関係者もいる。中国国際工程諮詢公司の李涛氏は、これまでに公表された太陽熱発電プロジェクトの合計は6000MW(600万kW)を超えているとしたうえで、このうちの1950MW(195万kW)が2009年に、また4000MW(400万kW)が2010年に提出されたものであることを明らかにした。[2]

 こうした計画がある一方で、風力発電や太陽光発電と比べると開発のスタートが遅かったため、多くの技術的課題に直面している。北京工業大学教育部伝熱強化・過程省エネ実験室の馬重芳主任は、トラフ式の基幹部品である集熱管についてはすでに製造可能な企業があるものの、集熱管の寿命や信頼性は未知数だと指摘している。また、反射鏡の製造や金属溶接といった工程にも問題があることを明らかにした。

 一方、政府の強力な支援もあり、太陽光発電プロジェクトは大きく動き出している。中国初の10MWの太陽光発電所が2009年9月30日、寧夏回族自治区の石嘴山で運転を開始し、送電網に接続された。同発電所には、太陽光発電所の開発を積極的に手掛ける中国節能投資公司が出資している。

 また、寧夏回族自治区では2010年1月16日、合計で40MWの太陽光発電所が運転を開始し、送電網に接続された。具体的には、中国節能投資公司(10MW)、寧夏発電集団(10MW)、正泰集団(10MW)、華電寧夏分公司(5MW)、寧夏電投集団(5MW)の5か所の発電所で、合計の発電電力量は年間7200万kWhに達するとみられている。

 また、米国のファースト・ソーラー社と中国の関連部門は2009年9月9日、今後10年内に内蒙古自治区のオルドスで2000MW(200万kW)の太陽光発電所を建設する契約を締結した。同発電所の敷地面積は65km2で、総投資額は50~60億㌦と推定されている。

 科学技術部が2010年10月に公募した太陽光発電向けの863計画の公募案件を以下に示す。

  • MW級薄膜アモルファス/多結晶シリコンヘテロ接合太陽電池産業化重要技術
  • MW級柔軟薄膜シリコン太陽電池産業化重要技術
  • 低コスト非真空CIGS太陽電池パイロット技術
  • MW級ハイパワーコンデンサー化合物太陽電池産業化重要技術
  • 新型太陽電池最先端技術研究
  • グリッド接続大型太陽光発電所重要技術研究と設備開発
  • 多種エネルギー源相互補完的太陽光発電マイクログリッド重要技術研究と設備開発
  • 地域太陽光発電建築発電システム重要技術研究と設備開発

④ 海洋エネルギー

 中国科学院広州エネルギー研究所海洋エネルギー実験室主任の遊亜戈氏によると、技術成熟度から見ると、潮汐エネルギー発電技術が最も成熟し商業開発段階に達している。また同氏は、波力と潮流エネルギーは技術攻略段階にあり、温度差エネルギーは研究初期にあるとの見解を示している。

第7-1-2表

⑤ 需給バランス調整

 中国では、発電所の建設拡大とともに、送電網の建設が急速に拡大している。220kV以上の送電線に限っても、2002年当時18万8719kmであったものが、2010年末時点では44万2700kmに増加した。こうしたなかで、中国の電力網の送電ロス(損失)は2010年には6.49%となり、前年から0.14ポイント低下した。中国の送電ロスは下降傾向にあり、2006年7.04%を記録していた。

 国家電網公司は2009年8月から26の省・市で21タイプ、合計228件のスマートグリッド試験モデルプロジェクトの建設を行った。現在、試験モデルプロジェクトが順調に進展している。同公司は、スマートグリッドが世界的に見ても新しい構想であり、現在の技術基準ではスマートグリッドの全ての要求を満足できないとの考えから、系統的で完全かつ開放的、しかも自主知的財産権を有するスマートグリッド技術標準体系の構築を焦眉の急ととらえている。

 国家電網公司は2009年3月、中国電力科学研究院などの機関からの約180名の専門家を召集して特別研究作業チームを設立し、スマートグリッドの技術標準体系の研究作業を開始した。2010年4月には、国家電網公司の「智能電網技術標準体系規格画」報告を作成した。同規画は8つの専門業務部分、26の技術分野、92の標準シリーズで構成されたスマートグリッド技術標準体系となっている。国家電網公司は同規画に従い、3つの段階に分けてスマートグリッド技術標準を制定していく考えである。

 中国では、今後のエネルギー貯蔵技術の有力な選択肢として、スマートグリッドの重要な構成要素となる蓄電技術(電力貯蔵)の開発が積極的に進められている。

 科学技術部は2009年10月19日、「973計画・重大科学研究計画2009年プロジェクト実施会」を開催し、中国科学院などが進める「大規模高効率レドックスフロー電池エネルギー貯蔵技術の基礎研究」を「国家重点基礎研究発展計画」(973計画)として立ち上げることを承認した。レドックスフロー電池は電力貯蔵用の二次電池で、電力系統の安定化に寄与すると期待されている。

 また中国科学院の上海ケイ酸塩研究所は2009年10月16日、国家電網公司傘下の上海市電力公司と共同で研究を進めてきた、自主知的財産権を有する大容量電力貯蔵用のナトリウム・硫黄(NAS)電池の開発で重大な成果が得られたと発表した。このNAS電池は、単体で放電深度650Ah(アンペア・アワー)の容量を持つ。

7.2 環境保全分野

(1) 気候変動緩和・予測技術

 炭素の回収・貯留(CCS)技術は、化学工業や発電、地質などの領域を横断したものであると同時にエネルギー戦略の重要な柱でもあるため、「国家中長期科学技術発展規画綱要(2006-2020)」や「中国応対気候変化国家方案」、「国家重点基礎研究発展計画」(973計画)、「国家ハイテク研究開発発展計画」(863計画)でも、CCSを研究・開発の重点課題と位置づけている。

 中国ではCCSはまだ研究・開発・実験段階にあるが、石炭ガス化複合発電(IGCC)とCCSを組み合わせた中国華能の「緑色煤電」プロジェクト、石炭液化(CTL)とCCSを組み合わせた神華オルドス石炭液化プロジェクト、燃焼後に炭素を回収する華能北京高碑店と上海石洞口の炭素回収プロジェクトなどが進められている。

 また2011年4月18日付「人民日報日本語版」によると、清華大学と浪潮集団は15日、地球シミュレータの建設をスタートした。地球シミュレータは、地球規模での自然の変化のシミュレーションが可能なエクサフロップ級(毎秒100万兆回の演算スピード)のスーパーコンピュータで、自然の変化を予測できる。

 中国は今後、このシステムを通じて、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次報告書へ向けた気候シミュレーション、予測などの計算や、海流・大気・地殻のシミュレーション研究を実施し、気候変動の対策制定などに向けた政策決定の根拠を提供し、地球規模の気候研究のためのデータを提供する意向である。

(2) 大気環境保全技術

 中国の酸性雨は、硫酸型から硫酸と硝酸の複合型に変わってきているため、窒素酸化物の排出削減が重要課題と位置付けられている。重点的に取り組みが行われているのは火力発電所からの窒素酸化物の排出削減と汚染防止で、京津冀(北京、天津、河北)や長江デルタ、珠江デルタにおける新規火力発電所については、脱硝装置の設置が義務付けられている。また、2015年までにすべてのユニットに脱硝装置を設置するという目標が掲げられている。[3]

 「国家鼓励発展的重大環保技術装備目録(2011年版)」では、開発奨励技術設備として①石炭燃焼発電所SCR脱硝システム設備、②燃焼石炭排ガス脱硫脱硝一体化設備、③石炭工業燃焼ボイラ脱硫脱硝脱水銀一体化設備、④焼結排ガス複合汚染物総合除去設備が、また応用推進技術設備として、①鉄鋼焼結機排ガス脱硫設備、②循環流動床焼結排ガス多成分汚染物乾式除去設備――がとりあげられている。

 また科学技術部が2010年10月に公表した脱硫・脱硝向け863計画では、「石炭工業ボイラガス連合脱硫脱硝脱水銀コア技術研究及び実証」について公募が実施された。

 このほか、国務院が2010年6月に公表した「関于推進大気汚染聯防聯控工作改善区域空気質量的指導意見」の第4条は、大粒子状物質に対する予防を強化するため、工業ボイラ使用事業者やセメント工場、発電所では、バグフィルターなど高効率の集塵技術を取り入れる必要があると規定した。こうしたことから、高温バグフィルターが大きなビジネスチャンスになるとの見方が出ている。[4]

 「国家鼓励発展的重大環保技術装備目録(2011年版)」では、以下のような集塵技術がリストアップされている。

  • 移動電極式静電集塵設備
  • 転炉ガス浄化回収プラント
  • 電気フィルター複合集塵設備
  • 高温高圧大流量電気集塵機
  • 大流量高温長フィルターパルスフィルター式集塵設備

 自動車の排ガス削減技術について2010年11月、大きな進展が見られた。ハルビン理工大学は長年の産学連携によって、自主知的財産権を有する自動車排ガス浄化新技術を完成させた。同技術はレアアース触媒材料を利用し、エンジン発熱を通じて活性触媒気体を発生させ、触媒気体が真空引力(負圧)に伴ってシリンダー内に吸収されて完全燃焼を促進し、ガス発熱量を増強して排ガスによる汚染を低減するというものである。測定データから、60〜90%の削減が見込まれている。この技術は国家発明特許をとっており、広州兆竜環保科技有限公司が量産化している。[5]

 「国家鼓励発展的重大環保技術装備目録(2011年版)」では、大型ディーゼルエンジン排ガス浄化設備を開発奨励分野と指定している。核心技術について、耐硫酸性低温高活性触媒と高温高選択触媒を研究開発すると要求している。

 同目録にリストアップされている大気汚染監視測定技術としては、①揮発性有機物オンライン監視測定装置、②オンライン脱硝効率監視測定技術と設備、③紫外積分スペクトル法二酸化硫黄+窒素酸化物監視測定装置、④臭気自動オンライン監視測定と生物消臭一体化設備――がある。

 また、科学技術部は2010年10月、大気汚染監視測定向け863計画として「焼却ガスダイオキシン類監視•測定及びリスク評価技術」の公募を行った。

(3) 水環境保全技術

 近年、都市汚水処理問題の解決のために、汚水処理場が数多く建設されたが、窒素とリンを除去する要求が高まるにつれ、一部の大型都市汚水処理場の処理技術を改良する必要性が生じた。清華大学環境科学工程学部施漢昌教授は、今後、下記の技術課題に関する開発が必要と指摘している。[6]

  • ① 都市汚水処理場の操業保障技術
  • ② 都市汚水処理場の余剰汚泥の減量化技術
  • ③ 都市汚水処理場の臭気と騒音の抑制技術
  • ④ 中小規模の都市と町の汚水処理適応技術
  • ⑤ 水の再利用技術

 「国家鼓励発展的重大環保技術装備目録(2011年版)」には、以下のような水環境分野関連技術がリストアップされている。

  • ① MBR
  • ② 生活汚水の脱窒素・脱リン用高度処理設備
  • ③ 浸漬式膜処理設備
  • ④ 上吊り移動式スクリーン設備
  • ⑤ 高濃度難分解性有機排水処理設備
  • ⑥ 酸性腐食処理液の電気分解による再生利用システム
  • ⑦ 高濃度難分解性化学工業排水処理設備
  • ⑧ ゴミ浸透液処理設備
  • ⑨ 疎水膜による蒸留技術及び集積設備
  • ⑩ 海水淡水化集積設備
  • ⑪ アオコ除去システム

 また、科学技術部は2010年12月、863計画の一環として「汚水中の炭素源及び窒素・リン・硫黄成分の資源化技術」の一般公募を行った。

(4) 土壌環境保全技術

 現在、中国では土壌の汚染修復研究が実験室から実用段階に移行しつつある。また、掘削処理・埋め立てもしくは溶融固化処分技術がすでに確立されている。しかし、大規模な応用にはまだ時間がかかるとみられている。一方で、中国の土壌汚染は深刻度を増しているため、広範囲に応用でき安全で低コストの土地原位置生物修復技術と物理化学安定技術の開発が求められている。

 このほか、安全性が高く土地再開発利用ができる産業跡地の物理化学修復技術と設備の開発、水土流失と汚染物質の拡散が抑制できる鉱山区植物安定化技術と生態工事修復技術の開発、汚染土壌の修復技術規範、評価基準と管理対策の確立なども必要とされている。現在、土壌修復技術開発に関して、以下のようなプロジェクトが実施されている。

  • ① 高リスク汚染土壌の生物修復とリスク評価(973計画)
  • ② 油田区における石油汚染土壌の生態修復技術とモデル事業の樹立(863計画)
  • ③ 金属鉱区及び周辺地域における重金属汚染土壌の複合修復技術とモデル事業の樹立(863計画)
  • ④ PAHs汚染農耕地の微生物修復技術とモデル事業の樹立(863計画)
  • ⑤ 中低濃度PCBs汚染土壌の生物修復技術と関連設備の開発(863計画)
  • ⑥ 汚泥による汚染土壌の生物修復メカニズムと技術の開発(中国科学院プロジェクト)
  • ⑦ 重金属汚染土壌の複合修復メカニズムと技術の開発(科学技術部国際協力プロジェクト)

7.3 資源環境分野

(1) バイオマス系環境資源リサイクル技術

 国家発展改革委員会、科学技術部、工業・情報化部、国土資源部、住宅都市建設部、商務部は2010年7月1日、「中国資源総合利用技術政策大綱」を共同で公表、施行した。同大綱では、主として資源総合利用技術の開発、推進応用を加速するとともに、関連組織の資源総合利用活動に対して技術的な支援を行い、中国全体の資源総合利用レベルを高めるとしている。

 具体的には、バイオマス系環境資源リサイクルについて、廃棄木質材料を主要原料として、低ホルムアルデヒドかホルムアルデヒドを含まないラミネート材などを生産する技術を推進するほか、農作物剰余物やその他のバイオマス材料を主要原料として、加工固体成型燃料、メタンガスを生産する技術を推進するとしている。

 さらに、高い効率の発酵促進剤と反応装置を研究開発し、茎を使った一定規模のメタンガスプロジェクトの技術改良、バイオ酵素転化、分裂分解と液化などの技術を研究開発し、液体輸送燃料や水素、化工製品を生産するなど一定の方向性を示している。

 また、「国家鼓励発展的重大環保技術装備目録(2011年版)」にリストアップされたバイオマス系環境資源リサイクルに関連した技術・設備には、①農村有機廃棄物堆肥と総合利用プラント、②農業廃棄物資源化利用プラント――がある。

 「973計画2011年編報予算書プロジェクトリスト」では、以下のようなバイオマス系エネルギーのプロジェクトがあげられている。

  • リグノセルロース資源高効率生物分解転化における重要な科学課題研究
  • 農業生物技術及び農産品加工の科学課題
  • 主要食糧作物高収率栽培と資源高効率利用の基礎研究

(2) 非金属鉱物系循環資源リサイクル技術

 中国は現在、非金属鉱物系循環資源リサイクル技術について、燐鉱における総合利用技術の研究に重点的に取り組んでいる。「中国資源総合利用技術政策大綱」によると、化工原料の非金属鉱物系循環資源リサイクル技術については、塩湖カリ岩塩総合利用技術、燐鉱総合利用技術、硼素鉱総合利用技術、中低品位蛍石総合利用技術等を推進するとしている。

 また、建材原料非金属鉱物系循環資源リサイクル技術については、ガラス陶磁器原料非金属鉱有効利用技術、添加剤、その他の加工用非金属鉱の合理的利用技術、石英質砂岩の純化技術、低品位マグネサイト、タルク、珪藻土、藍晶石系など非金属鉱の選鉱総合利用技術を推進するとしている。

 一方、廃ガラスリサイクルについて、廃ガラスを原料に平板ガラス、ボトル容器などのガラス製品を生産する直接再利用技術及び廃ガラスを用いて建築と保温遮音などの材料を生産する間接再生利用技術を推進するとしている。

(3) 金属系循環資源リサイクル技術

 工業・情報化部、科学技術部、財政部は2011年1月24日、共同で「再生有色金属(非鉄金属)産業発展推進計画」(「再生有色金属产业发展推进计划」)(工信部聯節[2011] 51号)を通知した。

 同計画では、2015年までに産業界全体の技術設備レベルを顕著に引き上げるとしている。また、中古非鉄金属機械化分解前処理技術の一般応用を進めるとともに、再生銅新型強化熔錬炉の一体化を図るほか、再生アルミ双室反射炉、アルミ液撹拌技術、アルミ直接供給、蓄熱式燃焼などの技術設備を幅広く応用し、前処理破砕選別、鉛ペースト鉛ゲート分類熔錬、低温連続熔錬、回転ショート窯熔錬など先進技術を採用した再生鉛企業の生産能力を80%以上に引き上げるとしている。さらに、前処理や熔錬、省エネ・低炭素等の分野について、今後の再生非鉄金属産業における重点研究開発及び応用を推進する技術設備を明らかにしている。

 中国では、レアアース産業の急速な発展に伴い、粗雑な採掘方式、低い資源利用率、環境汚染などの問題が顕在化しつつある。一例をあげると、包頭のレアアース資源利用率はわずか10~15%に過ぎず、四川徳昌のレアアース選鉱回収率も30%に達していない。

 「中国資源総合利用技術政策大綱」によると、鉄金属鉱物資源総合利用技術については、磁鉄鉱精選作業におけるマグネット・スクリーニングなど高効率利用技術、レアアース含有複合鉱とバナジウム•チタン鉄鉱の総合利用技術などを推進する方針が打ち出されている。

 非鉄金属鉱物資源総合利用技術については、無廃棄物(廃棄物が少ない)採掘技術や大型低品質鉱物自然崩落法採掘技術などを推進するとしている。また貴金属鉱物資源総合利用技術については、金や銀を含有する多金属鉱選鉱の尾鉱における価値のある金属成分の総合回収と非金属鉱資源の加工技術、複雑金鉱循環流体化焙煎技術などを推進する方針を示している。

 希少、希土類金属鉱物資源総合利用技術については、電解プロセスを採用してレアアース•マグネシウム中間合金技術を開発するほか、レアアース尾鉱を総合利用する技術、高効率低毒高純度ユーロピウム酸化物抽出技術、レアアース製錬分離クリーン生産プロセス技術の商業化を推進するという方向性が示されている。

(4) プラスチックと廃油リサイクル技術

 中国の廃プラスチックリサイクル技術の研究はスタートが遅かったものの、多数の大学や研究所、環境保護部門、メーカーなどが研究に参入した結果、大きな進歩を見せた。リサイクル技術は、主に再生回収法と化学分裂分解法に集中している。

 「中国資源総合利用技術政策大綱」は、以下の廃プラスチックリサイクル技術の開発を推進するとしている。

  • ① 廃プラスチック再生利用と機械化分類技術
  • ② 廃プラスチック活性化無機フィラー改良、繊維増強改良、弾性体増靭改良、樹脂合金改良、チェーン構造改良などの化学再生利用技術
  • ③ 廃ペットボトルを利用してポリエステルチップを生産する技術
  • ④ 廃プラスチック、廃木質材料を利用してウッドプラスチック材料及び関連製品を生産する技術

 科学的に廃油リサイクルを進めることは、中国ではまだスタートしたばかりである[7]。こうしたなかで2010年5月、上海宝冶集団有限公司が住宅した宝鋼発展有限公司再生油産業化プロジェクトがスタートした。同プロジェクトは、宝鋼発展有限公司の4大産業計画における最初のプロジェクトであり、廃油回収及び再生利用に焦点があてられている。

(5) 廃棄物処理技術

 「中国資源総合利用技術政策大綱」は、今後の廃棄物処理技術の推進方向について以下のようにまとめている。

  • ① 中古金属再生利用技術については、機械化手段を用いて中古車、中古船舶などの機械設備の分解・利用を行う。黄雑銅(主な成分は黄銅スクラップ)から高精度板、帯、管を直接生産する技術などを推進する。
  • ② 中古家電及び電子製品再生利用技術については、加熱析出、触媒分解などによって液晶パネル上の液晶物質と貴金属インジウムを回収して無害化処理する技術、エコ型侵食、酸化水分解、電解、製錬などの技術でチップなど貴金属含有廃棄物を処理して金、銀、パラジウムを回収する技術などを推進する。
  • ③ 中古ゴム、タイヤ再生利用技術については、ゴム粉の活性と利用率の向上を実現するゴム粉活性化技術などを推進する。
  • ④ 中古段ボールと古紙再生利用技術については、中古段ボールの高濃度連続破砕、繊維分級処理、中高濃度選別などの技術、中古新聞及び塗料、印刷インクなどインク紙を処理する高濃度スクリーン、高濃度漂白等の技術を推進する。
  • ⑤ 廃棄プラスチック再生利用技術については、廃棄プラスチックの物理的再生利用と機械化分類技術、繊維増強改良、弾性体靭性増強改良など化学再生利用技術等を推進する。
  • ⑥ 廃棄ガラス再生利用技術については、廃棄ガラスを原料として平板ガラスやボトル容器などガラス製品を生産する直接再生利用技術などを推進する。
  • ⑦ 建築廃棄物再生利用技術については、コールタール混合再生道路材料改良製造技術・設備を推進し、建築ゴミの減量化抑制技術及び建築プロジェクトにおける建築ゴミ再生材料の応用プラントを研究開発する。
  • ⑧ その他の廃棄物資源総合利用技術のうち生活廃棄物資源総合利用技術については、都市生活ゴミや汚泥の高効率焼却と排ガス処理技術、重金属残留などの問題を解決する都市汚泥を用いた有機肥料の生産技術、都市汚泥による焼結レンガの生産技術を研究開発する。養殖廃棄物の資源総合利用技術では、エビや蟹の殻などの廃棄物を利用して関連生物製品を開発する技術を研究開発する。

 科学技術部が2010年11月に公表した「大量工業固体廃棄物総合処理・資源化核心技術重大プロジェクト申請指南」では、以下のような研究課題が公募された。

  • 石炭灰から酸化ケイ素を抽出して高稠密文化用紙を生産する技術
  • 石炭化工フライアッシュを用いて低エネルギー消費でアルミ系塩化物を製造する技術
  • 石炭くずに含まれるケイ素、アルミ、炭素の資源化高付加価値利用技術
  • スラグ活性成分の固化と資源化利用技術
  • 皮革製造固体廃棄物で環境保護タイプの軽工業向け添加物を生産する技術

7.4 自然生態管理分野

(1) 生態系の観測・評価・予測技術

 中国では現在、多くの先端技術や手法が生態モニタリングに応用されていないため、一層の開発と実施が当面のモニタリングの重点となっている。とくに、実用性の高い生態モニタリング指標体系と方法の構築及び生態類型モニタリング技術を進展させることが必要となっている。

 中国における生態モニタリングの発展方向は、以下のようにまとめることができる。

  • リモート・センシング技術と地表の監視測定技術を統合し、マクロとミクロの両面から全面的に生態の品質を審査・判断する。
  • グローバルな生態の品質変化に配慮し、生態品質の評価に際して現状評価からリスク評価に転換する。
  • 情報管理における基準化、規範化を強化し、国家間の協力を強化する。

(2) 陸域管理・再生技術

 中国政府は近年、大規模な植樹造林を奨励するとともに、砂漠化防止策として政府の主導による緑化活動も推進している。中国における生態システムに関する陸地管理と再生技術の重大プロジェクトとしては、科学技術支援計画や973計画、国家自然科学基金等によって各種のプロジェクトが実施されている。具体的には以下のようなものがある。

  • ヤチダモ林の育成核心技術についての研究とモデルプロジェクト(「第11次5ヵ年」科学技術支援計画)
  • 羊河下流荒漠化の過程と水・土壌の総合作用メカニズムについての研究(973計画)
  • 大亜湾海域における細菌成長効率の昼夜変化規律とその影響要因に関する研究(国家青年科学基金)
  • 台風前後の浮遊植物群落の構造変化とその影響構造に関する研究(国家自然科学基金)

(3) 陸水管理・再生技術

 973計画や国家自然科学基金等を通じて、内陸部における水域管理と再生技術分野の重大プロジェクトが実施されており、下記のようなものがある。

  • 湿地水環境機能退化及び総合回復メカニズム(973計画)
  • 海河流域生態変化と回復メカニズム(973計画)

 中国は現在、非金属鉱物系循環資源リサイクル技術について、燐鉱における総合利用技術の研究に重点的に取り組んでいる。「中国資源総合利用技術政策大綱」によると、化工原料の非金属鉱物系循環資源リサイクル技術については、塩湖カリ岩塩総合利用技術、燐鉱総合利用技術、硼素鉱総合利用技術、中低品位蛍石総合利用技術等を推進するとしている。

 また、建材原料非金属鉱物系循環資源リサイクル技術については、ガラス陶磁器原料非金属鉱有効利用技術、添加剤、その他の加工用非金属鉱の合理的利用技術、石英質砂岩の純化技術、低品位マグネサイト、タルク、珪藻土、藍晶石系など非金属鉱の選鉱総合利用技術を推進するとしている。

 一方、廃ガラスリサイクルについて、廃ガラスを原料に平板ガラス、ボトル容器などのガラス製品を生産する直接再利用技術及び廃ガラスを用いて建築と保温遮音などの材料を生産する間接再生利用技術を推進するとしている。

(4) 海洋管理・再生技術

 国家海洋局が2006年11月に公表した「国家『第11次5ヵ年』海洋科学技術発展規画綱要」では、重点的に開発する海洋モニタリング技術として以下のようなものをあげている。

  • 海洋リモートセンシング・モニタリング技術
  • 近海環境モニタリング技術
  • 遠海環境モニタリング技術
  • 海底環境モニタリング技術
  • 海洋モニタリングデータ伝送・情報応用技術

 また、海洋環境と災害の早期警報・応急保障技術としては以下のようなものがある。

  • 近海海洋災害早期警報技術
  • 遠海及び世界海洋環境早期警報技術
  • 海上突発事件応急早期警報技術
  • 海洋災害及び海上突発事件の応急保障総合集成技術

 このほか同綱要では、重点的に取り組む海洋エネルギーと鉱産資源技術、海洋生物資源開発技術、海洋生態・環境保全技術を盛り込んでいる。

7.5 低炭素技術特許の国際比較

 1990年から2009年にかけて、全世界では低炭素技術に関連して約11万件の特許文献が公開された。とくに、2004年以降、低炭素技術の特許申請が急激に増加してきている。太陽エネルギーや先進交通手段、建築と工業省エネ関連技術は、申請量が最も多い分野である。

 各分野とも、日本や米国などの先進国の申請件数が多くなっている。中国は建築や工業省エネ技術分野の申請件数が比較的多いが、先端交通手段に関する技術分野での申請件数は少ない。

 また、中国の特許申請はほぼ大学によるものであり、企業による申請件数は少なく、しかも分散している。中国企業による各分野での先端技術特許の申請件数はすべて100件を超えておらず、先進国の数百や数千件規模の申請件数とは顕著な違いがある。

 トムソン・ロイターのダーウェント世界特許インデックス(Derwent World Patent Index:DWPI)に収録された特許のうち、1990年から2009年までに公開された低炭素関連特許は約11万件に達した。これらを、国際エネルギー機関(IEA)が2009年12月に公表した「Global Gaps in Clean Energy Research, Development, and Demonstration」の低炭素技術分類に基づいて分類してみると、太陽エネルギー、先端交通手段、建築と工業省エネ関連技術分野における特許件数が全体の76%を占めた。[8]

第7-5-1表

[1] http://www.crtis.ibicn.com/enterprise/archive/201005/009661207355659263789.html

[2] http://www.china5e.com/show.php?contentid=176378

[3] http://finance.sina.com.cn/stock/stockptd/20100429/09347849969.shtml

[4] http://finance.ifeng.com/stock/hybg/20100625/2343393.shtml

[5] http://www.chinadaily.com.cn/dfpd/xinjiang/2010-11-11/content_1187978.html

[6]「中国汚水処理技術の研究と発展」(施漢昌、「中国科学技術月報No.33」、科学技術振興機構中国総合研究センター)

[7] http://www.chinafeiyouzs.com/UpFilePath/2011031941052581.pdf

[8]「全球低炭素技術専利発展態勢分析」(国家知識産権局規画発展司、「専利統計簡報 2010年第10期」、2010年5月10日)