第8章 国際協力

8.1 日本

 1972年の「日本国政府と中華人民共和国政府の共同声明」によって日中の国交正常化が成立して以降、日中両国間における経済、科学技術、文化等における協力は着実に進展した。環境分野では、1 994年3月に「環境の保護の分野における協力に関する日本国政府と中華人民共和国政府との間の協定」が締結され協力が本格化した。同協定では、以下の分野における協力が盛り込まれた。

  • ① 大気汚染及び酸性雨の防止
  • ② 水汚染の防止
  • ③ 有害廃棄物の処理
  • ④ 環境悪化の人体及び健康に対する影響
  • ⑤ 都市環境の改善
  • ⑥ オゾン層の保護
  • ⑦ 地球温暖化の防止
  • ⑧ 生態系及び生物多様性の保護

 また、2007年2月には日中両国の首相が環境・エネルギー分野における協力推進について合意し、「日本国政府と中華人民共和国政府との環境・エネルギー分野における協力推進に関する共同コミュニケ」を 発表した。また、2008年5月に東京で署名された「日本国政府と中華人民共和国政府との気候変動に関する共同声明」では、①省エネ、エネルギー効率の向上、新エネルギー及び再生可能エネルギー、②クリーン・コ ール・テクノロジー、③メタンの回収と利用、④二酸化炭素の回収・貯留(CCS)、⑤気候変動への適応――等の分野で技術協力を行うことで合意した。

 環境・エネルギー分野における日中協力は、日中友好環境保全センターや、日中省エネルギー・環境総合フォーラム、「クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ」(APP)と いった枠組みの下で着実に進められている。

 京都議定書に盛り込まれた「クリーン開発メカニズム」(CDM)に関しては、有効化審査件数、登録申請・登録済み件数、発行済み件数とも、ホスト国は中国が最も多くなっているが、中 国がホスト国の場合の関係締約国については、日本は英国に次いで、スイスとともに2位グループを形成している。

 中国CDMにおける日本のプロジェクトの種類としては、水力発電や廃ガス・廃熱利用、メタン回収・利用、バイオガス、風力発電などが上位を占めている。

8.2 米国

 中国と米国は、クリーンエネルギー技術と効果的な環境政策の設計に焦点を定め、1990年代半ばから環境分野での二国間協力を積極的に進めてきた。2 004年からは米中エネルギー政策対話によって両国間のエネルギー関連の交流が強化された。2007年9月には、米国エネルギー省(DOE)と 国家発展改革委員会が工業分野のエネルギー効率向上に関する協力覚書を締結し、工業分野におけるエネルギー効率向上に協力して取り組んでいく意向が表明された。

 また、2008年6月の第4回米中戦略経済対話では、「10年間のエネルギー・環境協力枠組み」(Ten Year Cooperation Framework on Energy and Environment)に両国が署名し、環境面での持続可能性、気候変動、エネルギー安全保障という課題との取り組みを強化することになった。以下の5つの目標が掲げられている。

  • ① クリーンで効率的、しかも安全な発電と送電
  • ② クリーンで効率的な輸送
  • ③ クリーンな水
  • ④ クリーンな大気
  • ⑤ 森林と湿地生態系の保護

 2009年7月に締結された「気候変動、エネルギー、環境の協力を強化するための了解覚書」は、クリーンで効率的なエネルギーを促進し環境と自然資源を保護し、環 境面で持続可能な低炭素経済の成長をサポートすることを目的として掲げており、エネルギーの節約とエネルギー効率、再生可能エネルギー、石炭のクリーン利用、送電網高度化等を協力分野として指定した。

 2009年11月に設立された米中クリーンエネルギー研究センターのもとで、①建築物のエネルギー効率、②クリーンコール、③クリーン自動車――の3件のプログラムが進められている。

 また米国のオバマ大統領と中国の胡錦濤国家主席は2009年11月、「米中再生可能エネルギー・パートナーシップ」に着手すると表明するとともに、「米中シェールガス資源イニシアチブ」の スタートを発表した。同イニシアチブは、温室効果ガスの排出を削減するとともにエネルギー安全保障を強化するにあたって中国を支援することに加えて、中国市場で米国企業が商機をつかむ手助けをすることにある。 

8.3 EU

 中国と欧州連合(EU)の気候変動及びクリーンエネルギー分野の協力は1994年にスタートした。2003年には副大臣級の環境対話がスタートし、5 年に及ぶ中国とEUのエネルギー及び環境プロジェクトが始まった。同プロジェクトには双方が4500万ユーロを投入し、こ のうちの一部は中国中央政府と地方政府のエネルギー政策の最適化やエネルギー関連新技術の現地適応性研究に投じられた。

 2005年9月に発表された「中国とEUの気候変動共同声明」の中で「気候変動に関するEU-中国パートナーシップ」の設立が盛り込まれた。同パートナーシップの重点領域は、① エネルギー効率と省エネルギー、②新エネルギーと再生可能エネルギー、③クリーン石炭技術と二酸化炭素の回収・貯留によるゼロエミッション発電、④メタン回収利用、⑤水素エネルギーと燃料電池、⑥ 発電と送配電システム、⑦CDMとその他市場化を基礎とする排出取引の活用、⑧気候変動影響及び適応性の研究、9.能力建設、制度建設、国民意識の改善――である。

 中国とEU間では、「EU-中国クリーンエネルギー・センター」が設立され、①クリーンコール、②持続可能なバイオ燃料、③再生可能エネルギー資源、④エネルギー消費におけるエネルギー効率(建築物、製 品、工業)、⑤持続可能で効率的な流通――の分野で協力して取り組みが行われている。

 また、EUが1000万ユーロを出資し、華中理工大学に「中欧クリーン・再生可能エネルギー研究院」が設置され、2011年から毎年100名の学生を募集して中国のクリーンエネルギーの技術・政 策関連人材を育成することになった。 [1]

 「気候変動に関するEU-中国パートナーシップ」に盛り込まれたNZEC(Near Zero Emissions Coal)プロジェクトは、2009年10月にフェーズ1が終了した。同 プロジェクトは、炭素の回収・貯留(CCS)によって排出量がほぼゼロの先進的な発電技術を2020年までに開発、実証するというもので、N ZEC技術の実証に焦点をあてたフェーズ2にはEUが最大で700万ユーロを拠出し2012年までに終了することになっている。

 一方でEU側は、中国の大型風力発電プロジェクトにおいて差別的な待遇を受けたと主張するなど不満を強めており、中国にあるEU商工会議所が発表した「European Business in China Position Paper2010-2011」では、中国側に対して以下のことを求めた。

  • ① 国家風力発電基地プロジェクトと洋上風力発電の特許権の面で、外国と国内の風力発電メーカーに公平な競争環境を提供すること。
  • ② 透明な入札制度を採用・保持し、経済面で実行可能な方法で国家風力発電基地と洋上風力発電プロジェクトを開発する。
  • ③ 業界企業(外国開発企業と設備供給企業を含む)が重要な産業政策の策定や提案に参加することを奨励する。
  • ④ 外国開発企業が中国の洋上風力発電プロジェクトの開発に参加することを許可する。
  • ⑤ 外資風力発電プロジェクトに中国の独自資本による風力発電プロジェクトと同じ待遇を与える。
  • ⑥ 外資持株企業がCDM プロジェクトを行うことを許可する。
  • ⑦ 風力発電設備産業化補助金の申請を許可する。

8.4 クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ

 「クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ」(Asia-Pacific Partnership on Clean Development and Climate: APP)は 米国の提唱によって2005年7月に立ちあげられた地域協力のパートナーシップであり、日本、オーストラリア、カナダ、中国、インド、韓国、米国の7ヵ国が参加している。APPの特徴は、官民が一体となって、エ ネルギー効率の向上やそのための技術移転に向け具体的な取り組みを進め、民間の能力を活用して省エネ型社会を目指すというものである。

 APPは、京都議定書を補完するものと位置付けられているが、実際はポスト京都議定書をにらんだ実験台的な協定との見方もある。2006年1月にシドニーで開催された第1回閣僚会議で、A PPが正式に立ち上げられた。同会議では、コミュニケ、憲章、作業計画について合意するとともに、クリーンで効率的な技術の開発、普及、移 転を行うことによって温室効果ガスの排出削減等を効果的に実施するため官民によるタスクフォースが設立された。具体的には、「アルミニウム」、「セメント」、「石炭鉱業」、「再生可能エネルギーと分散型電源」、「 建物及び電気機器」、「よりクリーンな化石エネルギー」、「発電及び送電」、「鉄鋼」の8分野である。


[1]「EU委員会が国・EUクリーン・再生可能エネルギー学院の建設を批准」(人民網、2 009年3月http://world.people.com.cn/GB/9055436.html)



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