水稲栽培始まりは長江下流で約1万年前
2017年05月31日
水稲栽培が始まったのは約1万年前、中国の長江下流域で、という研究結果を中国の科学者が発表した。チャイナウオッチが、新華社電を引用した中国通信=共同通信電として伝えた。
中国科学院地質・地球物理研究所の呂厚遠研究員らによる研究結果は、米科学アカデミー機関誌「米国科学アカデミー紀要』(PNAS)最新号に掲載された。
水稲は現在、世界で最も重要な食糧作物の一つで、いつ、どこで栽培化が始まったのかについて学術界で100年余り論争が続いている。インド起源説も中国起源説もあり、さらに中国起源説の中に華南起源説と長江中下流起源説がある。
呂研究員は次のように説明した。現在、世界最古の水稲化石は長江中下流域の少数の考古遺跡で見つかっているだけで、浙江省浦江県の上山文化 遺跡がその一つである。しかし、その年代の判断の多くは陶片の中から取り出した有機物を使った放射性炭素年代測定の結果で、その材料は汚染されやすく、より正確な年代測定方法が必要である。また上山遺跡は最下部地層の中に残っている水稲の化石が少なく、例えば炭化した稲粒、稲殻、稲穂があっても、伝統的分析方法では上山文化遺跡の早期地層に水稲が存在しているのか否か、水稲が栽培化されていたかを確認することは難しい。
最新研究の中で呂研究員らは新たな研究方法と技術を開発し、伝統的な考古学的方法では難しい水稲の起源、栽培化研究でブレークスルーを実現した。1、地層の中から微小化石植物珪酸体を取り出す新たな方法を開発し、植物珪酸体の中の有機炭素を使って炭素年代測定を行った結果、上山遺跡の早期年代は少なくとも9,400年以前のものであることが示された。2、野生と栽培化の水稲の植物珪酸体を判別する方法を見つけ出した。早期地層の中から水稲の植物珪酸体を見つけ、調べたところ、早期文化層の中の水稲化石は野生稲と大きな違いがあり、栽培化過程にあったことが一層明確になった。
植物珪素体は植物が地下水を吸収する際に一定量の珪素を吸収し、その珪素が植物の中で溶け難い顆粒となったもので、吸収した当時の環境情報が保存されている可能性がある。
呂研究員は次のように述べた。上山遺跡の早期植物珪酸体によって年代測定した地層の位置と最下部地層底部との距離や水稲の栽培化速度が遅いことなどを考慮すると、水稲の栽培化年代は今から約1万年前の完新世が始まった時期のはずである。
これらの研究で、長江下流地域の水稲栽培化の時期は世界の他の主要農作物(西アジアの小麦や中南米のトウモロコシ)の栽培化開始の時期と基本的に一致し、約1万年前の東アジア季節風が強まり始め、気候が徐々に温暖化、湿潤化する環境に対応したもので、これは地球の気候状況がこの時期に重要な転換のあったことと関係のあることが明らかになった。
インフラ輸出で中国に対抗へ
2017年05月30日
日本政府は5月29日、「経協インフラ戦略会議」を開催し、電力や鉄道、情報通信などの重要分野については個別に「海外展開戦略」を策定する方針を決めた。チャイナウオッチが伝えた。
「経協インフラ戦略会議」は、官民一体でインフラ輸出の拡大を目指す。関係業界の企業や有識者の意見を反映して実効性を高める。
また、安倍晋三首相が昨年8月のアフリカ開発会議(TICAD)で打ち出した新外交戦略も盛り込み、太平洋からインド洋にかけての発展と安定を重視する方針も打ち出した。今後も安倍首相や関係閣僚がトップセールスを積極的に行い、インフラ輸出拡大に熱心な中国に対抗する。
政府は2010年に約10兆円だったインフラ輸出を20年に約30兆円にする目標を掲げている。15年の実績は約20兆円だった。今後は、計画段階から関与して基本方針や法整備などで相手国の政府と連携し、受注を拡大する。
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人民元ドル相場の基準値設定法変更へ
2017年05月29日
人民元の対ドル相場の基準値を設定する方法が変更される可能性が出てきた。チャイウオッチが、中国メディアの報道を引用した上海発共同通信電として伝えた。
国の外国為替市場を運営する中国外貨取引センターは26日、中国人民銀行(中央銀行)が発表する人民元の対ドル相場の基準値に関し、為替レートの変動を抑制するため新たな要素を加えた設定方法を検討していると明らかにした。具体的な内容は不明。
今年秋に指導部メンバーが大幅に入れ替わる共産党大会を控え、習近平指導部には経済の安定を図る狙いがあるとみられる。一方、人民元の国際化や金融の自由化に逆行しかねない動きに、外資系金融機関の間で困惑が広がっている。
中国の人民元相場は、当局が一定の範囲での値動きだけを認める管理変動相場制を採用している。朝方発表する基準値を中心に1日当たり上下それぞれ 2%の変動しか認めていない。当局は、前日の相場を反映させて決めていると説明するが、詳細な算出方法は明らかではない。
今回、検討されている新たな設定方法もどのように運用されるのか不透明。基準値への市場の影響力が弱まり、当局の意向がより強く反映される可能性もある。
中国、米国産品の輸入拡大=不均衡是正へ報告書
2017年05月26日
チャイナ・ウオッチが北京発共同通信電として伝えるところによると、中国商務省は25日、米国との経済・貿易に関する研究報告書を発表し、米国から農産物や飛行機などの輸入を増やす用意があるとの見解を示した。輸入拡大に積極的な姿勢を示すことで、貿易摩擦を回避する狙いがありそうだ。両国が協議中の貿易不均衡是正に向けた「100日計画」に盛り込まれる可能性がある。
報告書は、両国間の貿易や投資の現状を分析。企業が国境を越えてサプライチェーン(調達・供給網)を築く中、「両国経済は相互に依存し、強みを補完し合う関係にある」と指摘。対立を避けて「協力し合うことこそが唯一の正しい選択肢だ」と強調した。
不均衡是正の具体策として、中国は今後、米国産の大豆や綿花などの農産物、飛行機やICチップの輸入をさらに増やしたいと明記。米国映画の上映枠拡大などサービス分野の一段の開放も検討するとした。
一方、中国側の要望として、中国企業の米国への投資を妨害しないことや、中国製品に対して、反ダンピング(不当廉売)関税などの貿易救済措置を乱用しないことなどを挙げた。
米中両国は4月の首脳会談で、100日計画の策定に合意。今月中旬には同計画に基づく第1弾の成果として、中国による米国産牛肉の輸入再開など10項目の合意を公表した。
黄金探査と採掘担う武装警察部隊
2017年05月25日
中国に地質 専門家や技術者など1万人余りで構成される武装警察黄金部隊が存在し、30年余りで1,800トン余りの黄金を採掘―。チャイナウオッチが中国紙「新京報」のニューメディア向けサービス「政事児」の記事を引用して伝えた。
新中国の成立後、黄金の産出は長期にわたって低水準にあり、年平均産出量は10トンに満たなかった。1974年の夏、当時病床にあった周恩来首相は王震将軍に対して「金に力を入れてほしい。国づくりは黄金なしではできない」と語った。王震はそれを受け、黄金産出を発展させる一連の政策を制定・実施し、黄金産出は回復、1979年には産出量は20トンの大台を超えた。改革・開放後、鄧小平はふたたび黄金の増産を決定、当時副首相だった王震に再びこの任務を託した。
王震は「中国は金がないわけではなく、足りないのは専門的な金探しの隊伍だ」として、党中央に「軍隊に金を探させよう」と提言。1979年1月、当時副首相だった王震、さらに谷牧の同意を経て、冶金省は「基本建設工兵地質支隊の整理編成に関する報告」を上部に提出した。
その後、国務院と中央軍事委員会は「黄金地質調査、探査を強化し、黄金産出を迅速に発展させるため、中国人民解放軍基本建設工兵黄金指揮部を成立させ、一部の部隊を拡大・整理編成し、専門探査、黄金産出を行うことに同意する」との認可を通達した。
黄金部隊はこうして成立、1985年には武装警察の部隊序列に入り、「中国人民武装警察部隊黄金指揮部」と称され、現在では3個総隊、12個支隊があり、地質、物理探査、化学探査、測量、化学分析など各分野の 専門技術者が1,500人余り、高級専門技術者が170人余り、中級技術者が500人余りいるほか、技術学校、黄金地質研究所もあり、総兵力は 1万人余りに達する。
現在、武装警察黄金指揮部の第一政治委員は国土資源相で党書記でもある姜大明、司令官は郭洛泰、政治委員は謝新義が務めている。発足から30年余りで、武装警察黄金部隊は累計1,800トン余りの黄金を探索・採掘、全国で将兵がお宝を探索する。
2011年末、国務院、中央軍事委員会は43号文書を通達、武装警察 黄金部隊の基本任務を調整して、これまでの単一の黄金地質探査から、鉱物資源調査、多種金属探査、土砂災害緊急救援、突発事態処理の4種類に拡大させた。 その後、土砂災害が発生した際には、しばしば武装警察黄金部隊の姿が見られるようになった。
2014年8月、雲南省魯甸で地震が発生した後、武装警察黄金部隊は真っ先に被災地に赴き、専門家が災害評価チャートを作成した。2015年8月に雲南省富寧で山津波が発生した際にも現場で地質調査を行った。
2016年1月、中央軍事委員会は「国防深化と軍隊改革に関する意見」を通達、「武装警察の指揮管理体制を調整し、パワー構造と部隊編成を優良化しよう」と呼びかけた。 同年8月、中央弁公庁は「国家情報化発展戦略綱要」を通達、「情報強軍」化を加速し、情報インフラを完備、情報資源開発を拡大し、情報安全防御体系の構築を呼びかけた。武装警察黄金部隊の任務は、全面的に軍事地質調査を展開し、軍隊の戦闘力の発展を保障することに転換した。軍事地質調査は、鉱物資源、地形地勢、軍事工事、軍事情報などの内容を含み、諸軍・兵種連合作戦とその他の軍事行動に時宜にかない、正確で完全な地質情報を提供する任務を負っている。
2016年、部隊は84人の中堅を選び、14の技術難関突破隊を設立、三つの軍事地質調査試験ポイントで探査を繰り広げた。今年から部隊は45種類の任務を実施、陸地から海岸、島礁に至る空間での展開を実現、軍事地質基礎図、通用図、テーマ図、さらに軍事地質データベースを初歩的に形成した。
中国囲碁対局中継取り消し
2017年05月24日
23日中国浙江省烏鎮行われた「世界最強」とされる中国人棋士、柯潔九段と囲碁ソフト「アルファ碁」の3連戦初戦の対局で、事前に予告されていた中国のテレビやインターネッ トでの中継が急きょ中止になった。ネット検閲を巡りグーグルと確執のある中国当局が規制した可能性が高い。チャイナ・ウオッチが北京発共同通信電として伝えた。
この対局は、当初、中央テレビのスポーツチャンネルや、大手ポータルサイト系の囲碁専門サイトで中継が予告されていた。「世紀の対戦」が中継されなかったことで、中国のファンはネット上に「囲碁まで規制するのか」などと書き込んだ。
グーグルは2010年、中国当局によるネット検閲を拒否し、中国本土を拠点にした検索サービスから撤退している。今回の対局は、グーグルなどが共催し浙江省烏鎮で行われたイベントの一環。中国国営通信、新華社は対局で柯氏がアルファ碁に負けた事実を詳しく報じたが、記事にグーグルの社名
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中ロ共同出資で旅客機開発=通路2本の中型機
2017年05月23日
中国国産の中型ジェット旅客機「C919」(基本設計158席)の開発を進めている国有企業、中国商用飛行機(上海市)は22日、客室に通路が2本あるワイドボディー機と呼ばれる中型機(280席)を開発・製造するため、ロシアの航空機製造会社との共同出資会社を上海市に設立した。市場への投入は約10年後になる見通し。チャイナ・ウオッチが中国メディアの報道を基にした上海発共同通信電として伝えた。
中国商用飛行機は5日、客室に通路が1本のC919のテスト飛行を成功させたばかり。航空機製造で実績のあるロシアの企業と組むことで開発スピードを上げるとともに、ロシアが影響力を持つ中央アジアなどで販売面でも成果を上げる狙いがある。
設立された共同出資会社は、中国ロシア国際商用飛行機。ワイドボディー機の開発と製造、販売などを担う。機体は上海で組み立てる。
開発するワイドボディー機の航続距離は約1万2千キロで、欧州のエアバスA350や米ボーイング787などがライバルとなる見通し。
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中国など2チーム暗黒物質の質量推定
2017年05月22日
宇宙で未発見の暗黒物質の質量は陽子の85倍程度だとする論文を、中国とドイツの別々の2チームが米物理学誌に発表した。チャイナ・ウオッチがワシントン発共同通信電として伝えた。
暗黒物質は、宇宙全体の質量の約27%を占めるとされながら、まだ見つかっていない。国際宇宙ステーションで捉えた過剰な「陽電子」が、暗黒物質が出した信号である可能性が指摘されている。両チームはそれを手掛かりに2011年5月~15年5月にステーションで観測したデータを個別に分析し、ほぼ同じ結論に達した。
観測では、ステーションに設置されているAMSという装置を使い、宇宙空間を飛び交う粒子を調べた。4年間で検出された電子と反対の電荷を持つ陽電子は約35万個。理論で想定される数よりはるかに多く、暗黒物質が互いに衝突して陽電子を放ったと考えるとうまく説明できるという。
両チームは捉えた陽電子の数やそのエネルギーなどから逆算し、元の暗黒物質の質量を推定した。ドイツチームは最大で陽子の85倍、中国チームは21~85倍だとした。暗黒物質の候補の一つで、未発見の素粒子「ニュートラリーノ」の質量は陽子の30~5,000倍と予想されている。
メタンハイドレート南シナ海で継続試掘
2017年05月19日
次世代のエネルギー源と期待されている「メタンハイドレート」を南シナ海海底で継続的に試掘することに成功した、と中国国土資源省が発表した。チャイナ・ウオッチが北京発共同通信電として伝えた。
18日の発表を報じた新華社電によると、今回の試掘現場は広東省珠海から南東約320キロの神狐海域。水深1,266メートルの海底で試掘を行ったところ、5月10日 から8日連続で1日平均約1万6千立方メートルのガス産出に成功した。姜大明国土資源相は、エネルギー探査で「歴史的な飛躍を遂げた」と述べた。
「燃える氷」と呼ばれるメタンハイドレートは大量の天然ガス成分を含み、将来のエネルギー資源として期待されている。中国メディアは、国土資源省が2007年、南シナ海の海底からメタンハイドレートのサンプル採取に初成功したと報じているが、今回の試掘現場と同じかは不明。
香港マカオ大橋が年内完工=中国、珠江デルタに経済圏
2017年05月18日
チャイナ・ウオッチが珠海発共同通信電として伝えるところによると、香港、マカオと中国本土の広東省珠海を結ぶ「香港・珠海・マカオ大橋」の管理局は17日、橋の建設現場を海外メディアに公開し、今年末に完工予定だと明らかにした。完成すれば、珠江デルタ地帯に大経済圏を構築する中国政府の計画が大きく前進する。現在数時間かかる香港-珠海間は約30分に短縮されるという。
大橋は橋と海底トンネルなどで構成され、全長55キロ。中国メディアによると「世界最長の海上大橋」で、総工費は1千億元(約1兆6300億円)超に上る。2009年12月に着工し、日本やドイツなどの技術も導入されたという。
珠海にある同橋管理局の韋東慶行政総監は「主橋部分は既に連結され、難工事はほぼ終わった。年末までに3地域間の通行条件を整える」と話した。
中国ネット新法に日米欧などの経済団体延期要請
2017年05月17日
「インターネット安全法」が来月1日施行されるのを前に、日米欧などの50以上の経済団体が「経済活動に著しい影響が出る恐れがある」として、中国当局に書簡で施行の延期を申し入れた。チャイナ・ウオッチがAP通信などの報道を引用した北京発共同通信電として伝えた。
ハッカー攻撃からの防護などを趣旨とする安全法は、習近平指導部が体制批判を抑え込むためにネットの検閲強化を図る狙いもあるとみられており、国際人権団体も反発を強めている。
延期を申し入れたのは、欧米の商工会議所や日韓豪などの産業技術団体など。同法は文言が「非常に曖昧」で、中国市場へのアクセスを「不正に」制限するものだと指摘し、世界貿易機関(WTO)規則に沿った内容に修正するよう求めた。
同法は、ネット運用管理者に運用記録の保存や、ネットや携帯電話などの利用者の実名登録を義務付け、公安当局への技術協力も要請している。海外からのエネルギーや交通など重要インフラへのサイバー攻撃・侵入に、財産凍結や制裁措置を取ることも明記した。
インドネシアで日中がインフラ受注合戦
2017年05月16日
交通インフラの需要が高まるインドネシアで日中の受注合戦が続いている。チャイナウオッチがジャカルタ発共同通信電として伝えた。
日本の新幹線案を退け、中国が受注したインドネシア・ジャワ島の高速鉄道事業の融資契約が14日、締結された。現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」の国際会議に合わせて契約に調印し、中国マネーの威力を印象付けた。
中国メディアによると、融資額は45億ドル(約5,100億円)。高速鉄道(約140キロ)は首都ジャカルタと高原都市バンドンを結ぶ。昨年1月に着工式典が開かれたが、用地取得などが難航した。今年1月に工事が始まり、融資契約締結を受けて建設が今後本格化する。ただ、目標の2019年の開業は極めて難しい状況だ。
高速鉄道の受注を逃した日本だが、ジャカルタと東部の大都市スラバヤを結ぶ既存鉄道(約750キロ)の高速化計画については3月、ジョコ大統領が日本へ要請することを決定した。一方、ジャカルタ中心部と南部を結ぶ都市高速鉄道(MRT)は、国際協力機構(JICA)の円借款が充てられ、日本のゼネコンが建設を進めるが、東西路線は中国へ協力を要請する方針だ。
16年のインドネシアへの国別直接投資額では1位がシンガポールで、2位が日本、3位が中国だった。インドネシア投資調整庁のレンボン長官は「中国投資の増加率は劇的だが、まだ伸びる余地がある」とさらなる期待を表明している。港湾や道路、ダム建設などでも中国マネーを誘致したい意向だ。
駐インドネシア中国大使は昨年11月にジャカルタで開かれたフォーラムで、「中国は投資を増やし、インドネシアの経済成長の加速化に貢献したい」と述べている。
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滴滴出行にソフトバンク50億ドル出資
2017年05月15日
中国の配車サービス最大手、滴滴出行にソフトバンクグループが、50億ドル(約5,500億円)を出資したことが分かった。チャイナウオッチが伝えた。
滴滴出行は、スマートフォンのアプリを使った配車サービスで成長した。昨年、米同業のウーバー・テクノロジーズの中国事業を買収し、中国での地位を固めていた。4月には、総額約55億ドルの資金調達を発表しており、出資者にソフトバンクや中国の金融機関の名前が挙がっていた。
ソフトバンクは、2015年にも他の投資家と共同で6億ドルを出資したほか、米アップル も過去に10億ドルを出資している。中国で圧倒的なシェアを持ち、大きな成長が期待できることから有望な投資先と判断したとみられる。
配車アプリのサービスは利用の手軽さや、自家用車を使って有料で客を運ぶライドシェア(相乗り)の考えが受け入れられ、世界中で広がっている。ソフトバンクは世界のITベンチャーへの投資を加速しており、この分野でも14年にシンガポールやインドの企業に出資している。
一方、仮想現実(VR)技術の開発を手掛ける英新興企業のインプロバブルは12日、ソフトバンクグループなどから5億200万ドルの出資を受けたと発表した。
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地震から9年目傷癒えぬ四川省被災地
2017年05月12日
12日に四川大地震発生から9年目を迎えた被災地では、凄惨な記憶が頭から離れないなど、悲しみが消えない遺族の姿がみられる。チャイナウオッチが、共同通信記者の現地ルポとして伝えた。
中国四川省汶川県映秀を震源地として発生した四川大地震(マグニチュード8.0)では、日本の国土面積の1.3倍に当たる地域の4,600万人余りが被災し、死者は約6万9,200人、行方不明者は約1万7,900人に上った。約1万5,600人が死亡するなど壊滅的な被害が出た四川省綿陽市北川県では、観光が震災後の主な産業となっている。観光の売り物は、中心部の曲山鎮で倒壊した行政庁舎や小学校を当時のまま保存した「地震遺跡」などだ。
地元当局は「昨年の県全体の観光客が500万人、観光産業の収入は40億元(約661億円)」と胸を張るが、住民にその実感はない。「訪問客は以前に比べだいぶ減った。今後どうすればいいのか分からない」。閑散とする同遺跡周辺で土産店を営む女性は、わずかな収入がさらに減ったと現状を嘆く。当局関係者も「地震の記憶が被災地以外では忘れられ始めているのは事実だ」と打ち明けた。
被災住民を移住させて、遺跡から約20キロの場所に造った新市街地も人の姿はまばら。飲食店街では閉鎖された店舗も目立つ。近くに住む無職の男性(64)は「観光業だけじゃ無理だ」と指摘した。地震後に税制優遇措置を受けて進出した企業の撤退もあり、2人の息子は広東省などに出稼ぎへ行っていると言い、同県で新たな産業の育成が必要だと話す。
「今でも胸が張り裂けそうになる」。当時の人口の約半数に当たる約6千人が亡くなった、震源地でもある同省汶川県映秀鎮。観光客向け飲食店店員として働く尚星鳳さん(35)は当時4歳だった一人娘、付倩文ちゃんを失った傷が癒えない。倒壊した幼稚園のがれきの下敷きになり、地震から2日後に尚さんが遺体を発見した。
尚さんは10年に再婚し、翌年には新たに娘も生まれた。前向きな気持ちになれたが、傷ついた付倩文ちゃんの遺体を目の当たりにした震災時の記憶はなお鮮明という。遺体が眠る共同墓地へのお参りは気が進まず「今年も行けない」と尚さん。目に涙をうっすらと浮かべ、うつむいた。
トヨタ2年連続減益へ=中国、東南アジアで販売強化が鍵
2017年05月11日
トヨタ自動車は、2018年3月期連結決算の売上高が17年3月期に続き2年連続減収減益になるとの見通しを発表した。主力の米国市場に陰りが出ている影響が大きく、安定的に成長するには、欧米勢に水をあけられている中国に加え、東南アジアで販売を強化できるかが鍵になるとみられる。チャイナウオッチが伝えた。
トヨタ自動車が10日発表した2018年3月期連結決算の見通しによると、売上高は前期比 0.4%減の27兆5千億円、本業のもうけを示す営業利益は19.8% 減の1兆6千億円となる。営業利益は、大方のアナリストが予想した2兆3千億円程度を大幅に下回った。2年連続の営業減益になれば18年ぶりという。
稼ぎ頭の米国は、需要の先食いなどから17年に入り急激に頭打ち傾向が出た。10日の決算会見でも幹部が「市場は前年より若干減る」と見込んだ。トヨタは新型車を投入するが、見通しは前年並みの245万台と据え置いた。販売店に支払い、車の値下げの原資となる報奨金は、競争激化から米国で高止まっている。18年3月期は宣伝費などと合わせ1,300億円の減益要因となる見込みだ。トランプ米大統領は貿易不均衡を問題視し、政治リスクも残る。
鍵を握るのは、世界最大の自動車市場となった中国や、今後も伸びが期待できる東南アジアの開拓だ。中国ではライバルのドイツのフォルクスワーゲンや米ゼネラル・モーターズが16年に共にそれぞれの世界販売の4割に当たる400万台を売り上げた。これに対しトヨタは120万台余りにとどまった。3社は世界全体の販売では1千万台前後と肩を並べるが、中国でのトヨタの劣勢は否めない。
豊田章男社長は会見で、東南アジアでの販売拡大を念頭に、小型車のてこ入れに乗り出す考えを強調した。トヨタがこれまで苦手としてきた低価格で競争力のある車造りも急務だ。
農民工1.5%増加2億8,171万人に
2017年05月10日
中国の農民工(出稼ぎ農民)は、昨年424万人増えて昨年2億8,171万人に達した。前年に比べると1.5%の増で、増加率は前年を0.2ポイント上回る。チャイナウオッチが、北京発新華社電を転電した中国通信=共同通信の報道として伝えた。
国家統計局が4月28日発表した「2016年農民工モニタリング調査報告」によると、 農民工の構成は「本地農民工」〈出身地で農業以外に6カ月以上就労〉が 1億1,237万人で、前年に比べ3.4%増え、増加率は前年を0.7ポイント上回った。「本地農民工」の増加は農民工全体の増加の88.2% を占めた。
出身地別でみると、西部地区の増加が農民工全体の増加の43.6%を占めた。出稼ぎ先別にみると、「外出農民工」〈出身地から出て6カ月以上就労〉の増加率が引き続き低下し、一級行政区を越えて流動する農民工が引き続き減少している。基本的特徴をみると、女性農民工の占める比率が引き続き高まり、また配偶者のいる農民工の比率が高まっている。
1980年以降に生まれた新世代農民工の比率は5割近くだが、平均年齢は多少上がった。同時に教育水準が上がり、高校卒業以上の比率が前年より1.2ポイント上がった。技能訓練を受けた農民工の比率は小幅低下した。就業先をみると、製造業と建設業の比率が顕著に下がった。平均月収は 3,275元(1元=約16円)で、前年より203元、率にして6.6% 増え、伸び率は前年を0.6ポイント下がった。
1日の就業時間が8時間を超える農民工は全体の64.4%、1週間の 就業時間が44時間を超える農民工は全体の78.4%で、それぞれ前年に比べ0.4ポイントと1ポイント下がった。労働契約を結んでいる農民工の比率が下がり、昨年、雇用主または事業者と労働契約を結んだ農民工の比率は35.1%で、前年に比べ1.1ポイント下がった。このほか昨年、未払い賃金のあった農民工は236.9万人で、前年に比べ14.1% 減った。未払い賃金額は1人平均1万1,433元で、前年に比べ16.8%増えた。
報告によると、都会で働く農民工の余暇の使い方をみると、テレビやインターネット、休息が主で、文化・娯楽・スポーツが6.3%、読書や新聞が3.7%で、学習、訓練はわずか1.3%だった。
農民工は戸籍が農村にあり、6カ月以上出身地内で農業以外の産業に就労あるいは出身地から出て就労する労働者を指す。
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サービス分野の外国人に永住権=北京市が新政策
2017年05月09日
北京市サービス業開放拡大総合実験モデル区の出入国管理を改革する「新十条」が同日から実施された。北京でサービス業に従事する外国人の「永住」「長期ビザ」と「現地ビザ」の手続きが一層容易でスピーディーになることを示すもの。2日発北京発新華社電を引用した中国通信=共同通信電としてチャイナ・ウオッチが伝えた。
2日午前、北京市朝陽区と順義区の外国人出入境服務大庁〈出入国サービスホール〉が正式にオープンした。
北京市商務委員会の申金昇副主任は、朝陽区、順義区のサービス業分野の外国籍ハイレベル人材、起業チームの外国籍メンバーと外国籍経営管理・技術人材、外国籍華人、外国籍学生の4グループが「新十条」の重点対象だと述べた。
「新十条」の特色は、第一にサービス分野に焦点を当て、受益者群がより広い、第二に受理権限を下部に移し、処理がよりスピーディー、第三に革新・起業を奨励し、複数レベルの人材が恩恵を受ける、第四に合計点評価〈ポイント〉制度を作り、市場原理を導入していること。
2015年に北京でサービス業開放拡大の総合実験が始まった後、朝陽区と順義区が相次いで実験モデル区に認定され、「本社」「ビジネス」「金融」「文化」および「臨空経済」などのサービス業分野が両モデル区の重点になった。
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天山山脈の氷河融解急激に
2017年05月08日
天山山脈のウルムチ川源流にある1号氷河が、汚染物質や過度の放牧による土壌退化による影響で50年後には消失するのでは、という懸念が強まっている。チャイナウオッチが、ウルムチ発新華社電を転電した中国通信=共同通信の報道として伝えた。
中国科学院天山氷河観測試験所の李忠勤所長は深刻な表情で「気温が上昇し、雪線が上昇したことで、天山山脈のウルムチ川源流にある1号氷河は年間13.5メートル後退しており、50年後に完全消失する可能性がある」と述べている。
中国科学院西北生態環境資源研究院の科学研究スタッフ20人余りは 連日、末端海抜3,800メートルの1号氷河に登頂し、氷河の物質バランス、厚さ、温度、運動速度、氷河末端の変化に関するデータを観測するとともに、大量のサンプルを採集している。これまでの測量の結果、以下のことが判明した。
1号氷河は2016年4月から17年4月までの1年間に東部支流が約7.2メートル、西部支流が約6.3メートル退縮した。中国科学院天山氷河観測試験所の王飛騰副所長は、氷河が急激に融解しているため、1号氷河の末端は1993年に東部支流と西部支流に分離しており、近年は退縮傾向が鮮明になっていると説明した。
冬は雪が降り、氷河が堆積する。夏は気温が上昇し、氷河が融解する。氷河は「固体ダム」として河川の「増水を緩和し、減水を補う」大きな役割を果たしている。「中央アジアの給水塔」と呼ばれる天山山脈は新疆の乾燥地域のオアシス経済の発展と寒冷地域の生態環境の安定化を確保する重要な水源である。世界的に温暖化が進むなか、氷河の融解が急激に進み、短期間のうちに河川の水量を増やすことができるが、長期的にみると、融解が蓄積を上回れば氷河が退縮し、さらには消失を招くことになる。
近年の観測データによると、人類の活動が氷河の融解に影響を与えている。李氏は「1号氷河に含まれる氷塵が大幅に増えていることが、近年、 最も顕著な現象の一つだ」とし、次のように説明した。氷塵顆粒は氷河の表面に付着している汚染物質で、氷河の光熱反射に影響を与えることで氷河の退縮が加速する。1号氷河付近の工場や鉱山、国道216号を走行する車両がまき散らす汚染物質、過度の放牧による土壌退化が氷塵増加の原因だ。
1号氷河はウルムチ市から約130キロの場所にある。氷河から数十キロ離れた後峡には複数の発電所、鉱山が道路沿いに点在し、一部は閉鎖されているが、煙突から煙が出ているものもある。「氷河保護区、3軸以上の車両、7座席以上の車両、汚染物質高排出車両は迂回してください」と書かれた標示板のある道路では、現在も複数の大型トラックが頻繁に往来している。
李氏は「世界で温暖化が進むなか、何もしなければ氷河の融解は加速し、1号氷河は50年後には失われる。保護を強化すれば、氷河の命を70~90年延ばすことができる」と語った。さらに、氷河の利用と保護は政府の管理能力に対する試練だが、社会全体の努力にかかっているとし、「われわれの目標は氷河の融解をできるだけ食い止めることだ」と話した。
中国、6兆円減税へ=景気刺激、財政政策頼み
2017年05月02日
チャイナ・ウオッチが北京発共同通信電として伝えるところによると、中国国務院(政府)は1日までに、2017年通年で3800億元(約6兆1500億円)規模の減税を実施すると発表した。企業の負担を減らして景気を支える。不動産バブルの懸念があるため金融政策は緩和しにくくなっており、中国の景気刺激策は財政政策への依存が鮮明になっている。
7月から日本の消費税に似た「増値税」を簡素化し、4段階に分かれている税率を一つ減らす。これに伴い農産品や天然ガスなどの税率を現在の13%から11%へと引き下げる。
このほか、小規模・零細企業に対する企業所得税の優遇措置の範囲を広げ、中小企業のハイテク技術に関する研究開発費の税控除も拡大する。
中国の1~3月期の財政収支は1551億元の赤字だった。17年度予算では通年で国内総生産(GDP)比3%の財政赤字を認めているものの、中国の財政収支が1~3月期から赤字になるのは異例。一部の減税措置を先行して実施し、景気対策を狙ったインフラ投資も早めに実施したためとみられる。
一方、中国人民銀行(中央銀行)は金融市場に資金を供給する際の短期金利を引き上げるなど、金融引き締めに動いている。不動産バブルを防ぐほか、米利上げに伴って元安圧力が高まるのを打ち消す狙いもある。
積極的な財政政策の効果もあり、1~3月期のGDP成長率は6・9%に加速した。5年に1度の共産党大会を控え、経済の安定を重視していることが背景にあるが、市場では景気刺激が強過ぎると懸念する声も出ている。
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中国配車大手「滴滴出行」6千億円調達
2017年05月01日
中国の配車サービス最大手、滴滴出行は4月28日、総額約55億ドル(約6,100億円)の資金を調達すると発表した。チャイナウオッチが上海発共同通信電として伝えた。
中国のニュースサイト「財新ネット」によると、資金調達先にはソフトバンクグループや中国の銀行が含まれる。
滴滴出行はスマートフォンのアプリを使った配車サービスで急成長した新興企業で、昨年に米国のウーバー・テクノロジーズの中国事業を買収した。中国の配車サービス市場で圧倒的な存在で、「中国版ウーバー」として知られる。
滴滴出行は資金を海外事業の拡大や技術開発、電気自動車業務などに使う。3月には米シリコンバレーに研究施設を開設したと発表した。財新ネットによると、調達先にはソフトバンクに加え、中国の大手銀行、24 交通銀行や招商銀行、米投資ファンドが名を連ねる。
ソフトバンクは「コメントは差し控える」としている。