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【15-008】中国の大気汚染防止の法制度および関連政策(23)

2015年 5月 1日

金 振

金 振(JIN Zhen):
科学技術振興機構中国総合研究交流センター フェロー

1976年 中国吉林省生まれ
1999年 中国東北師範大学 卒業
2000年 日本留学
2004年 大阪教育大学大学院 教育法学修士
2006年 京都大学大学院 法学修士
2009年 京都大学大学院 法学博士
2009年 電力中央研究所 協力研究員
2012年 地球環境戦略研究機関(IGES) 特任研究員
2013年4月 IGES 気候変動・エネルギー領域 研究員
2014年4月より現職

 石炭消費量削減は、中国の産業振興政策、環境保護政策、気候変動政策に共通する政策課題である。石炭消費量削減は、大気汚染レベルの引き下げにつながるだけでなく、二酸化炭素(CO2)な どの温室効果ガスの排出の減少にもつながる。中国政府が特に力を入れている省エネ政策に関連して、石炭消費量削減は、発電部門や工業製造部門における省エネ産業の振興を促進し、脱 石炭に伴う新エネ産業の発展にも寄与している。石炭消費量削減政策は、中国の経済社会に大きなインパクトを与えつつ、新たな産業革命の時代を呼んでいる。

石炭総量削減に関する国家目標

 石炭消費量削減に関する中国政府の数値目標は、国家発展委員会が2012年3月に公布した「石炭工業発展第十二次国家計画」において始めて提起された。当初の目標は、2 015年までの石炭消費量を39億トン(2015年目標)までに抑制するものであった(図1)。2014年6月、国務院は「エネルギー発展戦略行動計画(2014-2020年)」を発表し、2 020年までの中期目標を発表した。それは、2020年まで、石炭消費量を42億トン(2020年目標)までに抑えるものである(図1)。

 中国がいつ石炭消費のピークを迎えるか(ピークエア)は、常に国内外の関心のよせどころである。それは、石炭消費量削減に対する中国政府の姿勢のあり方によって、エネルギー、産業、金融、税制、貿 易などのさまざまな社会経済分野に大きな変化が生じるからである。中国のピークエアに関し、国内外の研究者の間ではさまざまな議論があるが、おおむね2020年を支持する意見が多かった。中 国政府が設定した15年目標や2020年目標の背景には、少なくとも2020年までには、中国の石炭消費量は継続的に伸びるだろうというのが大方の見通しであった。

図1

図1 2010年~2014年石炭消費総量、2020年までの石炭消費目標

出典:「2014年中国統計年鑑」、「2014年国民经济和社会发展统计公报」、
「煤炭工业发展“十二五”规划(発改能源[2012]640号)」、「能源发展战略行动计划
(2014-2020年)(国弁発[2014]31号)」等に基づき、CRCCの金が作成

予測より早まったマイナス成長

 しかし、このような見通しは、中国統計局が発表した「2014年国民経済および社会発展統計公報」の結果を受け、再考せざるを得なくなった。つまり、2 014年における中国の石炭消費量は前年比2.9%減少し、35.05億トンとなり、それは、2013年よりおよそ1億トン前後の石炭消費量の削減が達成された計算になる(図1)。このような状況は、数 年前までは常識的に考えられなかった。2015年における石炭消費量が2014年比で11.4%以上増大しない限り、2015年度目標の達成は確実である。中国政府は、す でに2020年に向けたより厳しい削減目標の検討に着手している。

石炭消費量削減に至った貢献要素

 削減に至った貢献要素について、まず、GDP成長の減速に伴う需要の低迷が挙げられる。確かに中国のGDP成長率は2011年の9.5%を記録した後に、2012年から2014年にかけて7%台 にまで下降している。これに対し、石炭消費量は2011年をピーク(前年比9.9%増)として、2012年、2013年にはいずれも3%を下回っており、2014年はついにマイナス成長に転じた。つまり、中 国のGDPの減速率と石炭消費量の低減率は必ずしも連動する関係ではないことを示唆する(図2)。

図2

図2 石炭消費およびGDP成長率

出典:「2014年中国統計年鑑」、「2014年国民经济和社会发展统计公报」に基づき、CRCCの金が作成

 だとすると、考えられるもうひとつの貢献要素は、中国が実施したな石炭消費量削減努力である。この点については、次回から紹介する。

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