【21-18】シンガポール、中国の大学高評価 QS世界大学ランキングでも
2021年06月14日 小岩井忠道(科学記者)
高等教育の世界的評価機関であるクアクアレリ・シモンズ(QS:Quacquarelli Symonds)は6月9日、世界大学ランキング2022を公表した。米国のマサチューセッツ工科大学(1位)、英国のオクスフォード大学(2位)をはじめ、上位10校を欧米の大学が占める図式は、昨年公表済みの英教育専門誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)」の「世界大学ランキング2021」と変わらない。しかし、アジア地域からもシンガポール国立大学が前年同様11位を維持し、12位にも前年から一つ順位を上げた同じシンガポールの南洋理工大学が入っている。続いて清華大学17位、北京大学18位と中国の大学が入り、20位以内のアジア地域の大学は前年より一つ増え4大学となった。
アジア地域では、このほか22位に香港大学、23位に東京大学、31位に復旦大学、33位に京都大学、34位に香港科技大学、36位にソウル大学、39位に香港中文大学、41位にKAIST、45位に浙江大学、50位に上海交通大学と香港、日本、中国、韓国の大学が名を連ねている。上位50の大学数は前年同様14大学。前年の48位から53位に下がった香港城市大学に代わりに前年53位だった浙江大学が新たに加わった。これら14大学のうち8大学が前年より順位を上げ、2大学が順位を維持しており、アジア勢の健闘が目立つ。
THE2021順位:タイムズ・ハイヤー・エデュケーションの「世界大学ランキング2021」順位 (QS World University Rankings 2022、同2021、Times Higher Education World University Rankings 2021から作成) |
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世界順位 | 前年順位 | THE2021 順位 |
大学名 | 国・地域 |
11 | 11 | 25 | シンガポール国立大学 | シンガポール |
12 | 13 | 47 | 南洋理工大学 | シンガポール |
17 | 15 | 20 | 清華大学 | 中国 |
18 | 23 | 23 | 北京大学 | 中国 |
22 | 22 | 39 | 香港大学 | 香港 |
23 | 24 | 36 | 東京大学 | 日本 |
31 | 34 | 70 | 復旦大学 | 中国 |
33 | 38 | 54 | 京都大学 | 日本 |
34 | 27 | 56 | 香港科技大学 | 香港 |
36 | 37 | 60 | ソウル大学 | 韓国 |
39 | 43 | 56 | 香港中文大学 | 香港 |
41 | 39 | 96 | KAIST | 韓国 |
45 | 53 | 94 | 浙江大学 | 中国 |
50 | 47 | 100 | 上海交通大学 | 中国 |
53 | 48 | 126 | 香港城市大学 | 香港 |
56 | 56 | 301-350 | 東京工業大学 | 日本 |
65 | 59 | 301-350 | マラヤ大学 | マレーシア |
66 | 75 | 129 | 香港理工大学 | 香港 |
68 | 66 | 97 | 国立台湾大学 | 台湾 |
74 | 69 | 167 | 高麗大学 | 韓国 |
75 | 72 | 351-400 | 大阪大学 | 日本 |
79 | 85 | 187 | 延世大学 | 韓国 |
81 | 77 | 151 | 浦項工科大学 | 韓国 |
82 | 79 | 201-250 | 東北大学 | 日本 |
97 | 88 | 101 | 成均館大学 | 韓国 |
98 | 93 | 87 | 中国科学技術大学 | 中国 |
109 | 142 | 201-250 | キング・アブドゥルアズィーズ大学 | サウジアラビア |
118 | 110 | 351-400 | 名古屋大学 | 日本 |
131 | 124 | 111 | 南京大学 | 中国 |
137 | 124 | 401-500 | 九州大学 | 日本 |
143 | 132 | 601-800 | マレーシアプトラ大学 | マレーシア |
144 | 141 | 601-800 | マレーシア国民大学 | マレーシア |
145 | 139 | 501-600 | 北海道大学 | 日本 |
147 | 142 | 601-800 | マレーシアサインズ大学 | マレーシア |
156 | 146 | 351-400 | 漢陽大学 | 韓国 |
163 | 186 | 501-600 | キング・ファハド石油鉱物資源大学 | サウジアラビア |
177 | 172 | ― | インド工科大学ボンベイ校 | インド |
180 | 168 | 351-400 | 国立清華大学 | 台湾 |
183 | 211 | 351-400 | カリファ大学 | アラブ首長国連合 |
185 | 193 | ― | インド工科大学デリー校 | インド |
186 | 185 | 301-350 | インド理科大学院 | インド |
191 | 187 | 1001~ | マレーシア工科大学 | マレーシア |
198 | 177 | 201-250 | エルサレム・ヘブライ大学 | イスラエル |
上位200までを見ても中東を含むアジア地域の大学が43校に上る。最も多かったのは日本で8校、次いで中国と韓国各7、香港・マレーシア各5、インド3、シンガポール・台湾・サウジアラビア各2、アラブ首長国連合・イスラエル各1となっている。
QS社と、ともによく知られるTHEの大学ランキングを比較して今回の結果からも明らかなのは、QS社の方がTHEよりアジアの大学を高く評価していること。QS社のランキングで上位200に入った中東を含むアジア地域の43大学中、THEの世界ランキングより順位が低かったのは、わずか2大学のみ。特に日本の大学がTHEの世界ランキングより軒並み高い評価を受けているのが目立つ。56位の東京工業大学がTHEでは301~305位、75位の大阪大学が351~400位、82位の東北大学が201~250位、118位の名古屋大学が351~400位、137位の九州大学が401~500位、145位の北海道大学が501~600位という具合だ。
こうした差が生じるのはなぜか。THEが13項目もの指標で評価しているのに対し、QS社は6項目の指標と、よりシンプルな評価手法を採用しているのが理由とみられる。QS社の指標のうち最も配点比重が高いのは「学術関係者からの評判」。世界13万人以上の学術関係者を対象にした調査結果に基づいたもので、配点比率は40%に上る。次いで「教員一人当たりの論文被引用数」、「学生一人当たりの教員比率」が各20%、「雇用者からの評判」10%、さらに国際化の程度をみる「外国人教員比率」と「留学生比率」が各5%という配点比率だ。「雇用者からの評判」は7万5,000人以上の雇用主を対象にその大学が有能な卒業生をどれだけ送り出しているかを尋ねた調査に基づいている。
これら6項目はいずれもTHEの評価項目13項目に含まれている。ただし配点比率は「学術関係者からの評判」が18%、「教員一人当たりの論文被引用数」30%、「学生一人当たりの教員比率」4.5%、「雇用者からの評判」15%、「外国人教員比率」と「留学生比率」各2.5%。おおまかにいうとQSランキングはTHEに比べ「学術関係者からの評判」と「学生一人当たりの教員比率」の比率が特に高く、「外国人教員比率」と「留学生比率」も高い。一方、「教員一人当たりの論文被引用数」の配点比率は低く、THEの評価指標となっている「博士号取得者と学士号取得者の比率」、「博士号取得者数と教職員数の比率」さらに教員一人当たりの研究助成金などの収入、論文数、国際共著論文数、産業界からの収入といった指標は評価の対象となっていないという違いがみられる。
こうした評価法の違いによって、特に日本、マレーシア、サウジアラビアなどの大学がQSランキングでTHEの世界大学ランキングより高い評価を上げていることがうかがわれる。
関連サイト
QS World University Rankings 2022
Times Higher Education World University Rankings 2021
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