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【25-06】順位向上目立つアジア勢 QS世界大学ランキング

小岩井忠道(科学記者) 2025年07月01日

 英国の高等教育評価機関「クアクアレリ・シモンズ(QS:Quacquarelli Symonds)」は6月19日、「世界大学ランキング2026」を公表した。シンガポール国立大学が前年と同じ8位を維持し、前年、前々年同様、欧米以外の大学で唯一10位内に入った。香港大学が前年より順位を6つ上げて11位、シンガポールの南洋理工大学が順位を3つ上げて12位と、トップ10に迫っているのが目を引く。上位200位内に入ったアジア地域の大学は前年より2校、前々年より4校増えて43校となった。前年は32校が前々年より順位を上げたが、この流れは今回も変わらず、43校中27校が前年より順位を上げた。

 シンガポール国立大学、香港大学、南洋理工大学に次ぐ上位には、北京大学14位(前年14位)、清華大学17位(同20位)、復旦大学30位(同39位)、香港中文大学32位(同36位、東京大学36位(同32位)、ソウル大学38位(同31位)、香港科技大学44位(同47位、上海交通大学47位(同45位)、浙江大学49位(同47位)が並び、アジア地域上位11校は順位にいくつか変化はあるものの前年と同じ顔触れとなっている。

マレーシア、台湾、インドネシア健闘

 上位200位内の国・地域別数でみると、中国が前年と同じ9校、日本は前年より1減の9校、以下韓国が6校(前年7校)、香港、マレーシアが前年と同じ各5校、台湾3校(同1校)、インド3校(同2校)、シンガポール2校(同2校)、インドネシア1校(同0校)となっている。

 このうち、マラヤ大学58位(前年60位)をはじめ5校すべてが前年より順位を上げたマレーシアの評価上昇が目を引く。これら5校以外でも410位のサンウェイ大学が前年に比べ全大学中で最も大幅な120という順位上昇を遂げており、今回のランキングで特に目立つ結果としてQSは紹介している。台湾も前年から順位を5つ上げた国立台湾大学63位に加え、国立清華大学176位(同210位)と国立陽明交通大学199位(同219位)の2校が新たに200位内に入った。このほかインドネシアから唯一200位内に浮上したインドネシア大学189位(前年206位、前々年237位)の上昇ぶりも目を引く。

「QS世界大学ランキング2026」上位200位内のアジア地域大学
(「THE2025順位」は、昨年10月公表のタイムズ・ハイヤー・エデュケーション「世界大学ランキング2025」順位)
(QS World University Rankings 2026、QS World University Rankings 2025、QS World University Rankings 2024、Times Higher Education World University Rankings 2025から作成:=は同順位の存在を示す ―は順位外)
 編集者注:東京工業大学は2024年10月に東京医科歯科大学と統合し、東京科学大学に名称変更
世界順位 前年順位 前々年順位 THE2025順位 大学名 国・地域
8 8 8 17 シンガポール国立大学 シンガポール
11 17 =26 35 香港大学 香港
12 15 =26 30 南洋理工大学 シンガポール
14 14 =17 13 北京大学 中国
=17 20 25 12 清華大学 中国
30 39 50 =36 復旦大学 中国
=32 36 =47 44 香港中文大学 香港
=36 =32 28 28 東京大学 日本
=38 31 41 =62 ソウル大学 韓国
44 =47 60 66 香港科技大学 香港
=47 45 51 52 上海交通大学 中国
49 =47 =44 =47 浙江大学 中国
50 56 =74 =102 延世大学 韓国
54 57 =65 =84 香港理工大学 香港
57 =50 46 55 京都大学 日本
=58 60 =65 251-300 マラヤ大学 マレーシア
61 67 79 =189 高麗大学 韓国
=63 62 70 78 香港城市大学 香港
=63 68 69 =172 国立台湾大学 台湾
85 =84 =91 195 東京工業大学 日本
91 86 80 162 大阪大学 日本
102 98 =100 151 浦項工科大学 韓国
=103 145 =141 65 南京大学 中国
109 107 113 120 東北大学 日本
=123 =150 197 インド工科大学デリー校 インド
=126 =127 =145 =102 成均館大学 韓国
=126 138 =159 401-500 マレーシア国民大学 マレーシア
129 118 =149 インド工科大学ボンベイ校 インド
=132 =133 =137 =53 中国科学技術大学 中国
=134 148 158 601-800 マレーシアプトラ大学 マレーシア
=134 146 =137 401-500 マレーシアサインズ大学 マレーシア
=153 =181 188 401-500 マレーシア工科大学 マレーシア
159 162 =164 251-300 漢陽大学 韓国
164 =152 =176 201-250 名古屋大学 日本
=170 173 196 351-400 北海道大学 日本
=170 =167 =164 301-350 九州大学 日本
176 210 =233 401-500 国立清華大学 台湾
=177 192 216 =154 同済大学 中国
180 277 =285 インド工科大学マドラス校 インド
186 =194 194 =134 武漢大学 中国
189 206 =237 801-1000 インドネシア大学 インドネシア
196 =181 =199 801-1000 早稲田大学 日本
=199 219 217 401-500 国立陽明交通大学 台湾

THEランキングとの違いも

 今回のランキング結果では、QSとともに毎年、さまざまな大学ランキングを公表している英国の教育専門誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)」の世界大学ランキングとの違いも引き続き、目につく。米国、英国を中心とする欧米の大学が最上位の大半を占め、シンガポールや中国の大学が最上位に食い込もうとしている。こうした結果は今回も似たようなものだが、最上位以外では同じ大学でも順位は相当に異なる。特にアジア地域の大学に対する評価が、QSの方がTHEより相当高いことが今回のランキングでますますはっきりしてきたように見える。

 QS世界大学ランキングの評価手法は、前々回から一部、変わっている。「学術関係者からの評判」(配点比率30%)、「教員一人当たりの論文被引用数」(同20%)、「雇用者からの評判」(同15%)、「学生一人当たりの教員比率」(同10%)、「外国人教員比率」、「留学生比率」「持続可能性」、「雇用成果」、「国際研究ネットワーク」(同各5%)という9項目の評価指標の合計点数で順位付けする。新たな評価指標となった「持続可能性」は環境問題など社会的課題への取り組みを重視する最近の学生の意向に大学がいかに対応しているかを評価する。「国際研究ネットワーク」は研究がいかに国際的につながっているかをみる。「学術関係者からの評判」とともに「雇用者からの評判」も重視する評価法ともなっており、こちらは世界の学術関係者、雇用主を対象に実施した調査結果に基づいている。

 一方、THE世界大学ランキングの評価法は、「教育(学習環境)」(配点比率29.5%)、「研究環境」(同29.0%)、「研究の質」(同30.0%)、「企業との関係」(同4.0%)、「国際性」(同7.5%)の五つの指標によっている。こちらも前々回から一部変更があり、「研究の質」では、被引用数の多い論文の数で評価するだけでなく、引用された論文の重要性など研究の質をより重視する評価法となっている。QS世界大学ランキングの評価法より研究面を重視する評価法と言えそうだ。

関連サイト

クアクアレリ・シモンズ「QS World University Rankings 2026: Top Global Universities

クアクアレリ・シモンズ「QS World University Rankings 2025 results

クアクアレリ・シモンズ「QS World University Rankings 2024: Top Global Universities

タイムズ・ハイヤー・エデュケーション「World University Rankings 2025

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