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【25-19】40位内に中国本土大学5校 英教育誌世界大学ランキング

小岩井忠道(科学記者) 2025年10月28日

 英教育誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション」(THE)は10月9日、「世界大学ランキング2026」を公表した。中国本土から上位40位内に前年より2校多い5校が入った。200位内に前年まで5校だった香港から初めて6校が入ったこともTHEは今回のランキングの特徴としている。

 1位の英国オックスフォード大学、2位の米国マサチューセッツ工科大学をはじめとする上位10大学は順位に一部変動はあったものの前年と全く同じで、英国と米国の大学が占めている。上位200位内に入った大学の数を見ても米国1位、英国2位は変わらない。日本は昨年10月、東京工業大学と東京医科歯科大学が統合してできた東京科学大学が301-350位にとどまったことが響き、200位内の大学数は前回より一つ減って4校となった。

「世界大学ランキング2026」トップ200に入った大学数が上位14の国・地域
(タイムズ・ハイヤー・エデュケーション「World University Rankings 2026」「World University Rankings 2025」から作成):数字の前の=は、同順位(タイ)を示す
国・地域 大学数(前年) 最上位大学名 最上位大学の
世界ランキング順位
米国 55(55) マサチューセッツ工科大学 2
英国 26(25) オックスフォード大学 1
ドイツ 18(20) ミュンヘン工科大学 27
中国 13(13) 清華大学 12
オランダ 11(11) デルフト工科大学 5
オーストラリア 10(10) メルボルン大学 37
カナダ 9(8) トロント大学 21
スイス 6(6) スイス連邦工科大学チューリヒ校 11
香港 6(5) 香港大学 33
韓国 6(6) ソウル大学 =58
フランス 5(4) PSL研究大学 48
日本 4(5) 東京大学 26
ベルギー 4(4) ルーベン・カトリック大学 46
スウェーデン 4(5) カロリンスカ研究所 =53

中国本土大学国際協力では課題も

 上位200位内に入ったアジア・太平洋地域の大学は前年同様13校の中国本土が最も多い。40位内には昨年より2校増えて5校が入った一方、12位清華大学、13位北京大学、36位復旦大学の上位3校が前年と変わらない順位であることも併せてTHEは注視している。さらに香港から200位内に初めて6校が入った(前年まで5校)ことも重視している。一方、THEは中国がグローバルな協力では後れを取っているという編集者の論考も公表した。

 指摘されているのは、国際共著論文の少なさだ。今回のランキングで順位づけされている大学が20校以上ある30カ国・地域の評価指標「研究の質」の評価結果と、少なくとも1人の国際的な共著者がいる学術出版物の割合を比較している。中国は「研究の質」の評価で7番目に高い評価を得ているものの国際共著出版物の割合では下から2番目。これは人口の多い国に拠点を置く学者は、国際的に協力する必要性が低い傾向があるという実態を反映している。同様の傾向はインドや米国にもみられる、との見方が示されている。

 研究の最前線では、中国は非常にうまくやっている一方、国際的に他の学者とつながっていない研究者による質の低い研究も非常に多い。他の科学的に進んだ国ではあまり見られないこうした階層化が中国に存在する、という米国の研究者の見方も論考は紹介している。

(タイムズ・ハイヤー・エデュケーション「World University Rankings 2026: China lags on global collaboration」から)

評価高まるオーストラリアの大学

 200位内に入った大学数がアジア・太平洋地域で中国に次いで多いオーストラリアは、最上位校のメルボルン大学が前年の39位から37位に、次のシドニー大学が61位から53位にそれぞれ順位を上げた。米国と英国の大学に対する評価が全体としてはむしろ低下傾向あるいは低下の兆しを見せている中で、オーストラリアの大学の順位向上が今回のランキングの特徴、との見方をTHEは示している。

統合の効果順位に現れず

 一方、日本はどうか。最上位の東京大学が前年の28位から26位に上昇、東北大学103位(前年120位)、大阪大学151位(同162位)も順位を上げたが、前年55位だった京都大学は61位に下げている。さらに目を引くのは上位200位内の校数が前年の5校から4校に減ってしまったことだ。その理由は昨年10月に東京工業大学(前年順位195位)と東京医科歯科大学(同401-500位)が統合して東京科学大学となり今回初めて評価対象となった結果、得た順位が301-350位にとどまったことによる。

 THE世界大学ランキングの評価法は、「教育(学習環境)」(配点比率29.5%)、「研究環境」(同29.0%)、「研究の質」(同30.0%)、「企業との関係」(同4.0%)、「国際性」(同7.5%)の五つの指標をさらにそれぞれ複数の項目(全体で18)に分けて点数(100点満点)をつけ、総合点で順位づけしている。前年のランキングで東京工業大学の総合点は59.1。五つの評価指標のうち東京科学大学が東京工業大学より高い点数を得たのは「研究の質」だけ。結果として総合点は46.0-49.2にとどまったのが順位にも大きく影響した。

 上位1000位内の大学は、前年801-1000位だった2校が1001-1200位に順位を落としたため前年の19校から16校に減った。

「THE世界大学ランキング2026」トップ200内のアジア・太平洋大学
(QSランキング2026順位は「クアクアレリ・シモンズ(QS)」が6月に公表した「世界大学ランキング2026」順位)
(Times Higher Education World University Rankings 2026、同2025、同2024、QS World University Rankings 2026から作成:=は同順位の存在を示す ―は順位外)
編集部注:東京工業大学と東京医科歯科大学が2024年10月に統合した東京科学大学は、今回初めて評価対象となった。
世界順位 前年順位 前々年順位 QSランキング2026順位 大学名 国・地域
12 12 12 =17 清華大学 中国
13 13 14 14 北京大学 中国
17 17 19 8 シンガポール国立大学 シンガポール
26 28 29 =36 東京大学 日本
=31 30 32 12 南洋理工大学 シンガポール
33 35 35 11 香港大学 香港
36 =36 44 30 復旦大学 中国
37 39 37 19 メルボルン大学 オーストラリア
39 =47 =55 49 浙江大学 中国
40 52 43 =47 上海交通大学 中国
=41 44 53 =32 香港中文大学 香港
51 =53 57 =132 中国科学技術大学 中国
=53 61 60 =25 シドニー大学 オーストラリア
=58 =58 54 =36 モナシュ大学 オーストラリア
=58 =62 62 =38 ソウル大学 韓国
=58 66 =64 44 香港科技大学 香港
61 55 =55 57 京都大学 日本
=62 65 73 103 南京大学 中国
=70 82 83 KAIST(韓国科学技術院) 韓国
=73 =73 67 =32 オーストラリア国立大学 オーストラリア
75 =80 82 =63 香港城市大学 香港
79 83 84 20 ニューサウスウェールズ大学 オーストラリア
=80 77 70 =42 クイーンズランド大学 オーストラリア
83 =84 =87 54 香港理工大学 香港
87 =102 =145 =126 成均館大学 韓国
86 =102 76 50 延世大学(ソウルキャンパス) 韓国
=103 120 =130 109 東北大学 日本
=122 =134 =164 186 武漢大学 中国
=134 =146 =177 =247 北京師範大学 中国
=141 151 149 102 浦項工科大学 韓国
=131 =152 =168 256 ハルビン工業大学 中国
140 =172 =152 =63 国立台湾大学 台湾
=141 =154 =185 177 同済大学 中国
=145 =180 =193 マカオ大学 マカオ
=145 =154 148 96 シドニー工科大学 オーストラリア
=151 162 =175 91 大阪大学 日本
153 =149 =143 77 西オーストラリア大学 オーストラリア
=156 =189 201-250 61 高麗大学 韓国
=156 =152 =150 65 オークランド大学 ニュージーランド
=160 =183 201-250 =343 南方科技大学 中国
=166 178 180 =138 マッコーリー大学 オーストラリア
=176 =128 =111 アデレード大学 オーストラリア
=176 =166 =158 319 華中科技大学 中国
=195 =530 香港教育大学 香港

東京大学、学習環境と国際性で高評価

 一方、順位を上げた上位大学は何が評価されたのか。2位上昇して26位となった東京大学は、「研究の質」はわずかに評価を下げたものの「教育(学習環境)」と「国際性」の評価が上がり総合点も83.3から85.5に上がった。17順位を上げて103位となった東北大学は「研究の質」と「国際性」で評価を下げたものの、「教育(学習環境)」と「研究環境」で評価を上げ総合点も65.0から65.8に上げた。11順位を上げて151位になった大阪大学は「国際性」と「研究環境」で評価を下げたものの「教育(学習環境)」と「研究の質」で評価を上げ、総合点も61.0から61.8に上げている。

「THE世界大学ランキング2026」上位1000位内の日本大学
(タイムズ・ハイヤー・エデュケーション「World University Rankings 2026」、「同2025」、「同2024」、クアクアレリ・シモンズ「QS World University Rankings 2026」から作成:=は同順位の存在を示す ―は順位外)
世界順位 前年順位 前々年順位 QSランキング2026順位 大学名
26 28 29 =36 東京大学
61 55 =55 57 京都大学
=103 120 =130 109 東北大学
=151 162 =175 91 大阪大学
201-250 201-250 201-250 164 名古屋大学
301-350   東京科学大学
301-350 301-350 301-350 =170 九州大学
351-400 351-400 351-400 =170 北海道大学
351-400 351-400 351-400 =350 筑波大学
501-600 601-800 601-800 順天堂大学
601-800 601-800 601-800 =480 広島大学
601-800 601-800 601-800 =215 慶応義塾大学
601-800 601-800 601-800 =482 神戸大学
601-800 601-800 601-800 会津大学
801-1000 801-1000 1001-1200 和歌山県立医科大学
801-1000 801-1000 801-1000 196 早稲田大学

関連サイト

タイムズ・ハイヤー・エデュケーション「World University Rankings 2026

タイムズ・ハイヤー・エデュケーション「World University Rankings 2025

タイムズ・ハイヤー・エデュケーション「World University Rankings 2024

タイムズ・ハイヤー・エデュケーション「World University Rankings 2026: China lags on global collaboration

クアクアレリ・シモンズ「QS World University Rankings 2026: Top Global Universities

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