第173号
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管理・サービス・運営の三位一体―スマート資源を活用する桂林電子科技大学

2021年02月26日 劉 昊(科技日報記者)、王源林(科技日報特派員)

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画像提供:視覚中国

「第13次五カ年計画(2016~20年)」期間中、広西壮(チワン)族自治区の桂林電子科技大学国家大学テクノロジーパークに入居した企業は年平均50社以上に達し、ハイテク企業13社を育成。同校の科学技術研究成果実用化・技術取引額は年平均20%以上のペースで増加し、成果実用化のスタイルと質が大きく向上、技術移転・実用化は急成長の段階に入った。

 広西チワン族自治区の桂林電子科技大学(以下「桂電」)は、「双一流」(世界一流大学・一流学科)を構築している全国の有名大学と同じ土俵に上がり、コンテストで次々に一等賞を獲得している。

 例を挙げると、江蘇省で開催された第7回マイクロメートル・ナノメートル技術「イノベーション・産業化」科学研究成果実用化学生コンテストで、「桂電」の電子エンジニアリング・自動化学院の教師が指導する学生チームによるイノベーションプロジェクト「新型コロナウイルス抗原検査試験紙」が順調に決勝に進出、優勝を果たした。

「桂電」の徐華蕊学長は12月24日、「イノベーション理念を大学の人材育成と成果実用化に盛り込み、すでに初期段階の成果が出始めている」と語った。

 近年、「桂電」は、学長をグループ長とする科学技術研究成果実用化指導グループを立ち上げ、技術移転管理弁公室を管理主体、大学テクノロジーパークを主な技術移転サービス機関、桂林電科大学テクノロジーパーク発展有限公司を技術移転市場化運営機関とする管理、サービス、運営の「三位一体」体系を形成。成果実用化改革を継続的に推進し、科学研究、イノベーションの発展の活力を発揮させている。

 2019年、「桂電」は中国教育部(省)に、第一期の大学科学技術研究成果実用化・技術移転拠点に認定された。認定された広西チワン族自治区の大学は同大学だけだった。

「四創センター」:成果実用化をスタートラインへ導く

 桂林市国創朝陽情報科技有限公司は、「桂電」の「四創(クリエイティブ《創意》、イノベーション《創新》、創造《クリエイト》、創業《起業》)センター」の校友企業の一つだ。同社の梁二苗社長は、「『四創センター』の前身である『イノベーション拠点』は、当社の発展に必要な最初の収入を得た」と語る。

「桂電」花江キャンパスの北西部に位置する「四創センター」は、「クリエイティブ、イノベーション、クリエイト、起業」を一体とする大学生科学教育協同人材育成拠点であると同時に、大学生の研究成果のインキュベーターともなっている。

 梁社長は取材に対して、「私は同センターで最初の起業者であり受益者である。2006年当時、私はまだ学生で、当時、センターの前身である『イノベーション拠点』で、私たちは素晴らしい研究開発チームと共に、非常にクリエイティブな科学研究プロジェクトを行っていた」と語った。

 2007年、桂林市大学生起業パークが桂林情報産業パーク内に設立された。独自研究開発プロジェクトを頼りに、梁社長が登録した会社は、すぐに同パークの第一期入居企業の20数社の一つになった。梁社長は、「ここ10数年にわたり、発展の目標を何度も調整してきたが、私は常に大学の電子情報分野における先端的研究の成果を活用して、会社を発展させ続けている」と説明する。

 現在、同社は広西チワン族自治区の1,000億元(約1.59兆円)産業重要テクノロジー開発プロジェクト「遠隔オンライン検査・モニタリングプラットホーム・情報管理システム」を担当する企業に成長し、国家級、省・部級の12の科学技術プロジェクトを受け持っている。同社は、クライアントに、教育IoT(モノのインターネット)、IoV(車載ネットワーク)のソリューションを提供し、華為(ファーウェイ)、東風柳州汽車有限公司などの企業と、IoTの応用の分野で一歩踏み込んだ連携を実施している。

 梁社長は、「大学が『四創センター』を設立して以降、当社はセンターに入居した第一期の企業50数社のうちの一社だ。当社は大学と共同で、『高精度の北斗衛星ナビシステム対応のIoVのキーテクノロジー、および車載スマートデバイス研究開発』のプロジェクトの登録申請を行い、広西チワン族自治区のイノベーション主導重大特定プロジェクト資金130万元(約2,070万円)を獲得した。加えて、各種横方向の委託プロジェクト経費を累計で200万元(約3,180万円)近くを獲得し、企業の発展に全く新しい力を注入できた」と説明する。

花江慧谷:成果実用化の『ガソリンスタンド』を構築

「桂電」科学技術発展研究院の曹衛平院長によると、「長期にわたり、大学で生まれた大量の科学研究成果は、広西チワン族自治区で十分に応用されてこなかった。その難題を解決するために、大学は桂林市政府と連携して、成果実用化のガソリンスタンド』とも言える、花江慧谷電子情報起業産業パークを構築した」という。

 花江慧谷電子情報テクノロジーパーク(慧谷)(以下「花江慧谷」)の首期建設費は8億9,000万元(約142億円)で、桂林市科学技術研究成果実用化パーク(智谷)と共に、「桂林花江智慧谷」と称され、2022年までに合わせて21億元(約334億円)が投じられる計画だ。

「花江慧谷」も「桂電」花江キャンパスの最も南側に位置し、「四創センター」とは数百メートルしか離れていない。劉建明氏は、「大学の科学研究成果を近隣で実用化できるようにするというのが、キャンパス周辺を選んだ主な目的。それにより、大学の卒業生が近隣で実習、就職できるようになるほか、企業のプロジェクト研究開発者のニーズも満たすことができる。機能という点から見ると、『四創センター』は、科学教育協同人材育成やプロジェクト研究開発の"初期試験"を重視しているのに対し、『花江慧谷』は科学研究プロジェクトの"中期試験"と研究成果の強化を重視している」と説明した。

「桂電」の発展計画処の潘開林処長は、「花江慧谷は全体が完成すると6,000人以上が同時に研究開発や事務を行えるようになる。今後10年以内に、各種デジタル経済・ハイテク企業約100社をインキュベートできるだろう。現在、花江慧谷一期に入居する企業は20数社。それら企業は『桂電』の大学生4万人以上のスマート資源を活用すると同時に、大学が10億元近くかけて導入した器具・設備資源を十分に活用している」と説明する。

「花江慧谷」に入居している企業は科学技術プロジェクト登録申請やハイテク企業育成アフター補助を活用して、多額の社会金融融資を獲得した。2018年、「桂林睿之菱医療科技有限公司」は、代理店を通した株式譲渡によって、桂林健一粤普医薬咨詢有限公司から100万元の融資を受けた。2020年、「桂電」の許睿教授が率いるチームは広西チワン族自治区桂林緑帆環保膜科技有限公司と、「高濃度アンモニア態窒素廃水に使われるサイクル式ショートカット硝化脱窒反応器およびそのシステム」の技術成果を、1,500万元(約2.38億円)で譲渡する契約を締結した。

 入居企業は、大学と共同でプロジェクトの登録申請を行い、科学技術プロジェクト資金支援を獲得することができる。桂林永成医療科技有限公司の首席科学者・陳真誠氏は、「当社は大学と連携してプロジェクト『慢性疾患モニタリング・モバイルスマートデバイスの研究開発・産業化応用モデル』の登録申請を行い、広西チワン族自治区イノベーション主導重大特定項目発展資金800万元(約1.27億円)を獲得した」と説明する。

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実験室で実験の指導をする2020年広西チワン族自治区の「最も美しい科学技術者」に選ばれた、桂林永成医療科技有限公司の首席科学者・陳真誠氏(左から2番目)。画像提供:取材対象者

 2020年、同社は、大学と共同でプロジェクト「現場でスピーディーに新型コロナウイルスの検査を行える試験紙の研究開発・応用」の登録申請を行い、広西チワン族自治区科技庁から300万元(約4,800万円)の支援を獲得した。2020年「広西チワン族自治区の『最も美しい科学技術者』に選出された陳氏は、受賞の感想を述べた際、「この資金援助は非常にタイムリーで、試験紙研究開発は2月に成功し、4月にEU(欧州連合地域)の『CEマーク』を獲得し、速やかに市場で応用されるための強力なサポートを提供した」と話した。

大学テクノロジーパーク:政府と連携して業界のリーディングカンパニーを育成

 研究成果の実用化の効率を向上させるため、2019年末、中国教育部の第一期大学科学技術研究成果実用化・技術移転拠点に認定されているという優位性を活用して、「桂電」は率先して、広西チワン族自治区大学科学技術研究成果実用化聯盟を立ち上げた。広西大学、広西医科大学など、63大学が加入し、大学の研究成果の実用化を集約して力を発揮している。

「桂電」国家大学テクノロジーパーク(以下「大学テクノロジーパーク」)の陳岳林パーク長は、「当校は、一連の制度を打ち出して、研究成果の実用化促進に力を入れている。契約の審査の流れや収益分配、人材へのインセンティブなどの分野で明確な規定を制定している。現在、当パークに入居する企業の95%以上はテクノロジー型企業で、業界の分野は電子情報、先進的製造、バイオ医薬品、医療器械、環境保護などをカバーしている。当パークが政府と連携して育成する業界のリーディングカンパニーも少なくない」と説明する。

 広西智度信息科技有限公司は、「インターネット+」やビッグデータ技術を応用してスマート政務ソリューションを提供するハイテク企業で、2018年に、広西チワン族自治区科技庁に「ガゼル企業」に認定された。

 同社の李霊巧社長は取材に対して、「大学テクノロジーパークに入居して以降、大学と連携して広西チワン族自治区科技庁の重点研究開発計画プロジェクトの登録申請を行い、プロジェクトを立ち上げた。そして、2016年に、中国『インターネット+』大学生イノベーション起業コンテストで、広西チワン族自治区の金賞を受賞し、翌年には中国イノベーション起業コンテストの決勝に進出した。大学、科技庁、桂林市が提供する各種研究開発支援金150万元以上を獲得し、当社は研究開発への資金投入を強化することができたので、『ガゼル企業』に認定されるための堅い基礎を築くことができた」と説明した。

「桂電」の張文涛副学長は、「『第13次五カ年計画』期間中、年間平均50社以上が、『桂電』大学テクノロジーパークに入居した。また、ハイテク企業13社を育成し、うち1社が『ガゼル企業』に認定された。当大学の研究成果実用化に関する技術取引額は年間平均20%以上のペースで増加し、優秀な広西チワン族自治区技術移転モデル機関に2回も認定された。当大学の研究成果実用化のスタイル、実用化の質は大きく向上し、成果移転・実用化は急成長の段階に入ることに成功した」と成果を強調する。

 徐学長は、「今後は、中国--東南アジア諸国連合(ASEAN)という主要な場と中国国内の電子情報業界の主戦場に照準を合わせ、さらに多くの大学の研究成果が実際の生産に実用化され、広西チワン族自治区の質の高い発展の実践において実際に根を下ろすことができるように取り組む」と語る。


※本稿は、科技日報「管理、服務、運営三位一体 盤活高校智慧資源」(2020年12月28日付7面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。