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【21-025】《量子技術》NSFC、第二世代量子システムに関する研究計画公募ガイドラインを公表

JST北京事務所 2021年03月23日

1.概要

 中国国家自然科学基金委員会(NSFC)は、量子研究の2021年公募ガイドラインを2月20日に公開した[1]。この主要な研究計画は、量子もつれや重ね合わせの量子状態等の量子挙動を示す第二世代量子システムの構築とその操作を通じて、量子情報科学の将来を見据えた基礎研究を実施し、数学、情報、工学材料、化学等の学際的研究を促進し、量子コンピュータ等の量子技術の実現のための物理的基盤を築くことを目的としている。

2.研究プロジェクト名

 2021年度「第二世代量子システムの構築と操作に係る重大研究計画」

3.科学的な目標

(1)量子コンピューティングや量子検出に使用可能となる高品質の材料を探索の上、量子状態の正確な構築を実現し、新しい量子システムを探索する。

(2)量子状態の測定と操作技術を発展させ、検出と制御の精度を高め、新しい技術的方法を探求する。

(3)誤り訂正可能なソリッドステート量子コンピューティング、高温超伝導構造、トポロジカル量子システムに焦点を当て、低次元量子システムに関する展望的な研究を実施し、いくつかの方面で重大な科学的ブレイクスルーを達成する。

4.キーとなる科学的問題

(1)主要な量子機能材料を制御可能とする装置と量子状態システムの精密な構築

(2)量子状態の正確な検出と操作の実験技術および理論的方法

(3)超伝導等のソリッド量子コンピューティングに関する研究

(4)新しい量子コンピューティングシステムと実装スキームの探索

5.2021年度に予定される重点支援研究の方向性

 本重大研究計画において、2021年度は量子コンピューティングに向けた物理体系に関する展望と基礎研究に重点を置いており、第二世代量子システムの構築と操作をめぐって「探索課題」と「重点支援課題」の方式で助成する。良好な研究成果を有し、第二世代量子システムの構築と操作研究において重要なブレイクスルーが期待される申請に対しては、重点支援課題で助成する。重点支援課題の方向性は以下の通り。

(1)量子機能材料を制御可能とする装置と量子状態システムの精密な構築

 ① 量子コンピューティング機能材料の設計と制作

 ② 非アーベルランダム統計性を実現する材料およびデバイスの設計と製作

 ③ 各種量子状態に基づく量子システムの構築

(2)量子状態の正確な検知と操作の実験技術および理論

 ① 単一量子状態の検知技術と方法

 ② 量子状態のもつれと量子ゲートの操作技術およびスキーム

 ③ 量子コンピュータに係る誤り訂正理論、方法および量子アルゴリズムの研究

 ④ 超低温量子制御と検知技術の独立した研究およびそれらの統合

(3)ソリッドステート量子コンピューティング

 ① コヒーレンス時間が長い超電導体や半導体等の量子コンピューティングデバイス

 ② 量子ゲート制御の精度向上

 ③ 量子ビットの集積

(4)新型量子コンピューティングシステムと実現スキームの探索

 ① マヨナラ粒子のゼロエネルギー束縛状態での非アーベル統計性の決定論的証明

 ② トプロジカル量子ビットの設計と実装。

6.課題選考の基本原則

 全体的な目標の実現を確保するために、本重大研究計画では、すべての申請が第二世代の量子システムの構築と制御に焦点が当たっている必要がある。具体的な要件は以下のとおり。

(1)フロンティア分野における主要な量子機能材料の制御可能な装置と量子状態システムの正確な構築に係る研究を優先して支援する。

(2)量子状態の精密な計測と操作実験技術および理論的手法に係る研究を展開し、対応する独創的な技術と手法の開発を奨励し、重大な応用研究がなされることが期待される。

(3)超電導等のソリッド量子コンピューティングに向けた研究を展開し、独創性のある全面的に新たなスキームの探索を奨励する。

(4)新型量子コンピューティングシステムと実測スキームの探索を支援する。例として、マヨナラゼロエネルギーモデル等のエニオンによるトポロジカル量子ビット物理システムの構築等が挙げられる。

(5)学際的で実質的な相互協力による研究、特に情報、工学、材料科学および化学分野における第二世代量子システムの分野横断的な学際研究を奨励する。

(6)理論と実験が有機的に組み合わされていることに注意すること。

7.2021年度資金計画

 申請期間:2021年3月20日-3月25日16時

(1)探索課題

 ・ 16課題程度

 ・ 1課題あたり平均直接経費:80万元

 ・ 研究期間3年(2022年1月1日-2024年12月31日)

(2)重点支援課題

 ・ 9課題程度

 ・ 1課題あたり平均直接経費:350万元

 ・ 研究期間4年(2022年1月1日-2025年12月31日 )

8.申請条件および注意事項

(1)申請条件

 本重大研究計画の申請者は、以下の条件を備えていなければならない。

 ① これまでに基礎研究課題を担当したことがあること

 ② NSFCに登録している研究機関に所属し、高級専門技術職(職名)を有すること。ポスドク研究者および大学院生は、申請人になることはできない。

 ③ 申請に際しては、「2021年度国家自然科学基金プロジェクトガイド[2]」における「申請規程[3]」を遵守すること

(2)注意事項

 ① 申請者と委託機関(編者註:所属先の研究機関)は、本プロジェクトガイド、「2021年度国家自然科学基金プロジェクトガイド」および「2021年度国家自然科学基金プロジェクト申請および完了等の関連事項に関する通達[4]」を精読の上実行しなければならない。

 ② 本重大研究計画の申請は、ペーパーレスにて行う。情報システムを介して電子申請書と添付資料を提出する。

 ③ プロジェクトの学術交流を強化し、プロジェクトグループの形成と学際交流を促進するため、本重大研究計画は毎年1回支援プロジェクトの年度学術交流会を開催し、また関連分野の学術セミナーを随時開催する。資金提供を受けたプロジェクト責任者は、本重大研究計画の指導専門家グループと管理ワーキンググループが主催する上記の学術交流会に参加する義務がある。


1. 国家自然科学基金委員会2020年2月20日付 "第二代量子体系的构筑和操控重大研究计划2021年度项目指南"

2. "2021年度国家自然科学基金项目指南"

3. "申请规定"

4. "关于2021年度国家自然科学基金项目申请与结题等有关事项的通告"