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【18-17】超急速充電規格を共同開発 EV普及加速で日中企業団体が覚書調印へ

2018年8月24日 小岩井忠道(中国総合研究・さくらサイエンスセンター)

 電気自動車(EV)普及に欠かせない超急速充電器の規格を日本と中国の企業団体が共同で開発することになった。将来は国際規格とすることを目指している。中国の電力関連企業や機関の協同組織である「中国電力企業連合会(CEC)」と、日本の自動車メーカー、電気機器メーカー、電力会社などでつくる「CHAdeMO(チャデモ)協議会」は、28日北京で共同開発の覚書に調印する予定。CHAdeMO協議会が22日、発表した。

 CHAdeMO協議会は、電気自動車と急速充電器の普及推進を目的に2010年に設立された。協議会の活動の柱が、直流型急速充電方式の国際規格であるCHAdeMOの標準化。CHAdeMOは独自の認証制度を確立している世界で唯一の急速充電規格となっている。すでに認証を受けた出力10~50キロワットのさまざまな急速充電器が多くの国内メーカーから販売されている。5月に改定されたCHAdeMO規格では、最大出力400キロワット(最大電圧 1,000ボルト・最大電流 400アンペア)までの急速充電器を認証対象としている。

 共同開発を提案したのは、中国電力企業連合会。さらなる将来の需要を見越し、CHAdeMO規格をさらに上回る最大出力900キロワット(最大電圧1,500ボルト・最大電流600アンペア)という次世代高出力規格を2020年までに共同で開発するのが狙いだ。共同開発ではCHAdeMO協議会の意見を出来るだけ反映し、中国での高出力充電規格とするとしている。さらに東南アジア諸国連合(ASEAN)やインドで採用されることも見越し、その上で将来は国際電気標準会議(IEC)に提案して世界標準にすることを目指す、という提案だった。

 一方、日本にとっても電気自動車普及を促すために国際協力を強化することは大きな課題となっている。28日に調印予定の覚書には、高出力を必要とする大型車や産業用途までも含む電気自動車のさらなる普及のために最適となる次期国際充電規格の策定と、その第一歩として現行技術での最善の規格を研究開発することが盛り込まれる。

 CHAdeMO協議会は、共同開発により、「中国市場への参入が容易になる」「中国と規格を同じくすることで実質の世界標準化が可能」「規格普及状況によって参入容易国が増える」「数量のめどがたちコスト削減が期待できる」というメリットを挙げている。

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志賀俊之CHAdeMO協議会会長

(CHAdeMO協議会ホームページから)

 CHAdeMO協議会の会長は、産業革新機構会長や日産自動車取締役も兼ねる志賀俊之氏。5月に開かれた協議会の会員大会で基調講演し、温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)排出削減の取り組みと技術進化により2030年に販売される乗用車の半数は電気自動車になり、2050年にはほぼすべてが電気自動車と燃料電池自動車になるとの見通しを示している。

 電気自動車の普及は、自動車の二酸化炭素(CO2)排出量を削減するだけでなく、再生可能エネルギー普及を促すことでさらなる温室効果ガス削減の効果が期待できるとされている。蓄電池に充電された電気を走行していない時に逆に電力系統に送電し、電力系統の需給バランス調整に活用しようという利用法だ。九州電力、電力中央研究所、日産自動車、三菱電機などによる実証試験が6月から始まっている。

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