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【24-97】AIが「想像力」を「生産力」に変える(その2)

崔 爽(科技日報記者) 2024年10月24日

「雲栖大会」では、大規模モデルや自動運転、ロボットなどの業界の専門家や従事者が一堂に会し、人工知能(AI)時代におけるクラウド上のイノベーションを共有し、各業界におけるAI技術の応用の現状や今後のポテンシャルについて語り合った。

その1 よりつづき)

AIに関する想像はどれほど膨らんでいるのだろう?

 アリババ集団CEOでアリクラウド智能集団の呉泳銘董事長兼CEOは「AIをめぐる想像は、スマホの画面を超えて物理世界を変えるところまで膨らんでいる。過去30年間、インターネットブームの本質は接続だった。人と情報、ビジネス、工場との接続を通じて、人々のライフスタイルを変え、世界の連携効率化を高め、巨大な価値を生み出した。一方、生成AIは、生産力の供給を通じて世界に価値を生み出すだろう。その価値は、モバイルインターネットの10倍、ひいては数十倍になる可能性がある」と述べた。

 清華大学AI研究院副院長で生数科技(Shengshu Technology)首席科学者の朱軍氏は「AGIの発展は5段階に分けることができる。第一段階を代表するのは『ChatGPT』などのチャットボット。第二段階では『推理者』となり、AIが複雑な問題について、深く考えたり、推理できるようになる。第三段階では、知的エージェントとなり、AIがデジタルの世界から出て、物理世界へと進出するだろう。第四段階ではイノベーター(革新者)となり、新たな知識を発見したり、生み出したりするようになるだろう。第五段階では、AIが組織者となって活動を組織し、協調しながら効率的に運営を行うようになるだろう。現在、AIは第二段階の発展初期にあるものの、加速しながら発展し続けている。今後18カ月の間に、第四段階のブレイクスルーが実現する可能性がある」との見解を述べた。

各業界での応用が加速

 大規模モデル産業は、「百モデル戦争」と呼ばれるAI業界の開発競争を経て、現在は応用・導入が議論の的となっている。今回の大会では、AI技術のさらなる応用を推進するため、数多くの業界におけるAI技術の実際の応用シーンを重視した展示が行われた。

 自動車業界では今、変革が起きている。

 これまで、自動運転技術は主に、人手によってアルゴリズムのルールを入力しなければならず、数十万行のコードを入れても、全ての運転シーンをカバーすることはできなかった。一方、「ポイント・ツー・ポイント」を採用した大規模モデル技術でトレーニングしたAIモデルの場合、膨大な量の人間の運転視覚データをダイレクトに学習できるため、モデルのトレーニング効率が大きく高まっている。

 米半導体メーカー「NVIDIA」の上級副社長を務める自動車事業部責任者の呉新宙氏は「インターネット上の膨大なデータを使ったトレーニングを経た大規模モデルは、物理世界に対する理解を大幅に高めている。このような汎用力を備えると、自動運転の上限は極めて高くなると確信している」と語った。

 今回の大会において、電気自動車メーカー「小鵬汽車」の新型車「小鵬P7+(Xiaopeng P7+)」が注目を集めた。AI大規模モデルを採用することで迅速なアップデートを実現し、未来のスマートモビリティの可能性を示している。

 近い将来、激変すると見られているもう一つの業界がロボット業界だ。呉泳銘氏は「ロボットは将来、工場のロボットアームや工事現場のクレーン、倉庫で荷物を運ぶ作業員、火災現場の消防隊員になったり、家庭のペットやハウスキーパー、アシスタントにもなるだろう」と述べた。

 生成AIは、コンピュータ・アーキテクチャに根本的な変化をもたらすことになりそうだ。中央処理装置(CPU)主導のコンピューターシステムは現在、グラフィックス・プロセシング・ユニット(GPU)主導のAIコンピューターシステムへと加速しながら移行している。

 呉泳銘氏は「新規演算能力市場において、50%以上の新たなニーズがAIの推進により生まれており、AIの演算能力ニーズが既に主流的地位を築いている。この傾向は今後も拡大していくだろう。大量の新規ニーズはGPUの演算能力の推進により生まれており、大量のストックアプリケーションもGPUを使って書き換えられている。バイオ医薬品や工業シミュレーション、気象予測、教育、企業のソフトウェア、モバイルアプリ、ゲームといった分野でも、AIコンピューティングが加速しながら浸透している」と説明した。

 これらを背景に、各業界では、より高性能かつ大規模でAIニーズにより対応したインフラを必要としている。

 アリババクラウドの周靖人最高技術責任者(CTO)は「AI時代のニーズに合わせ、当社は現在、AIインフラの新標準を策定しようとしている。サーバーからコンピューティング、ストレージ、ネットワーク、データ処理、モデル訓練、推理プラットフォームまでの技術アーキテクチャ体系を全面的にアップデートし、データセンターがスーパーコンピューターとなるようにし、AIとその応用に対し、高性能な演算能力サービスを提供していきたい」と語った。


※本稿は、科技日報「AI让"想象力"变成"生产力"」(2024年9月30日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。

 

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