【25-030】専門家「全固体電池は2027年に小規模量産へ」
劉 垠(科技日報記者) 2025年04月02日

2024世界動力電池大会の動力電池産業チェーン・サプライチェーン成果展示イベントで展示された全固体ソフトパック電池セル。(撮影:唐文豪)
中国でこのほど、「2025中国全固体電池産学研協同イノベーションプラットフォーム年次総会兼第2回中国全固体電池イノベーション発展サミットフォーラム」が開かれ、参加者が「全固体電池材料イノベーションと研究開発プラットフォームの高度化」というテーマで、全固体電池のブレイクスルーと課題について意見を交換した。
中国人民政治協商会議の常務委員で経済委員会副主任の苗圩氏は「固体電池は既存のフロー電池製品と比べ、安全性やエネルギー密度という面で顕著な優位性を持つ。新エネルギー車のバッテリー航続時間と安全性という課題を解決するため、世界の動力電池における競争の『後半戦』の焦点となる可能性がある」としつつ、「固体電池の産業化には、依然として技術や工法、コストなど解決すべき問題がある」と指摘。「現在、世界の固体電池開発の進捗状況を見ると、量産の技術、工法が成熟していないが、2027年前後に、小規模量産が実現する見込みだ」と述べた。
中国科学院院士(アカデミー会員)で、中国全固体電池産学研協同イノベーションプラットフォーム理事長の欧陽明高氏は、全固体電池のテクノロジー・ロードマップに言及し、「硫化物系電解質をメインの電解質として、ハイニッケル・三元正極とシリコン・カーボン負極を組み合わせたテクノロジー・ロードマップに焦点を合わせる必要がある。性能は、エネルギー密度400Wh/kg、サイクル寿命1000回以上を目標として、2027年までに乗用車に搭載する小規模量産を実現し、2030年までに大規模量産の実現を目指す。これらの目標を達成するためには、まず、業界共通の基礎材料サプライチェーンを構築する必要がある」と述べ、自身のチームの硫化物固体電解質やハイニッケル・三元複合正極、シリコン・カーボン複合負極の開発状況を紹介した。
世界では現在、AI技術が急速に進化する重要な時期を迎えており、大規模言語モデルと「AI for Science(AI の科学への応用)」の融合による開発プラットフォームの進化が、全固体電池の重要材料システムのイノベーションと構築の「加速装置」となっている。欧陽氏率いるチームは既に、業界企業30社余りと連携して、全固体電池の垂直分野における大規模言語モデルの研究開発と最適化を展開。業界全体で共有し合う研究開発公共サービスプラットフォームを構築し、科学研究の新パラダイムを模索することで、最新のAI技術を全固体電池の研究開発や産業化に応用している。
中国科学院院士でアモイ大学教授の孫世剛氏は、「我々は一連の技術的課題に直面している」と強調。全固体電池分野が直面している重要な技術的課題や関連する革新的研究について「材料科学の面から見ると、適切な固体電解質を見つけることがカギとなる。理想的な状態の固体電解質は、高いイオン導電率、優れた化学的安定性、機械的強度を兼ね備えるべきだ。また、界面問題も軽視できず、固体電池中の電極と電解質の界面接触が悪いと、電池の内部抵抗が増す原因となり、電池全体の性能に影響を及ぼす。さらに、製造工程の複雑さやコストの高さという問題も、大規模商業化の足枷となっている」と説明した。
中国第一汽車集団有限公司の首席科学者である王徳平氏は、「ここ数年の発展を経て、全固体電池はすでに重要な技術的ブレイクスルーを果たし、現在は試作機段階にある。今後2~3年の間に、エネルギー密度が400Wh/kgの全固体電池の小規模量産が行われる見込みだ」と予想。「業界は標準策定を加速させ、重要技術のブレイクスルーや学際的工学技術の研究開発の継続により、動力電池分野における中国の先導的地位を維持する必要がある」と訴えた。
深圳市比亜迪(BYD)リチウム電池有限公司の孫華軍最高技術責任者(CTO)は「世界で全固体電池が急速に発展しており、材料のイノベーション、界面の最適化、安全性の向上、コスト管理が重要な課題となっている。産学研の連携で技術の進歩を推進すべきだ。当社は現在、固体電池産業化の実行可能性の検証を始めており、重要材料技術の研究開発、電池セルシステムの開発、生産ラインの建設などをカバーしている。2027年前後に、試験的な車両搭載を開始し、2030年前後には大規模な量産が実現する計画だ」と語った。
※本稿は、科技日報「全固态电池有望二〇二七年小批量生产」(2025年2月24日付8面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。