地熱は冷房の他、北方地域のクリーン暖房にも使用できる。地熱資源が豊富な一部地域では、地熱水による温泉・ヘルスケア産業が発展している。また高温地熱資源を持つ地域では発電源として他のエネルギーと相互補完し、電力消費の安定性を確保している。人民日報海外版が伝えた。
中国河北省雄安新区雄県にある中国石油化工集団緑源公司人材家園熱交換所では、所長の張虎氏が設備の「健康診断」をしていた。張氏は「暖房供給シーズンになる前に熱交換設備のメンテナンスに取り組む。設備のサビを取り除き洗い、潤滑油を差すなどして、冬の順調な暖房供給を保証する」と説明した。
地下に位置する熱交換所は敷地面積が広くないが、団地内の3000世帯余りの冬の暖房供給を保証している。暖房源は地下に隠れた地熱だ。張氏によると、「当熱交換所では、地熱水は水中ポンプによって汲み上げられ、デサンダーによって砂が取り除かれ、板型熱交換器で熱交換を行う。つまり地下の高温水の熱を抽出し、熱源として冬の暖房に利用している」と語った。地熱水から得た熱エネルギーはパイプを通じて各世帯に送られる。
中国石化緑エネルギー地熱エネルギー開発有限公司の高小栄総経理は、「エアコンで冷房を行うのではなく浅層地熱エネルギーを用いる」と語った。団地の緑地と道路の下には深さ120メートルほどの浅い竪穴が約280本あり、地下の熱エネルギーはパイプによって運ばれ、ヒートポンプユニットの働きで水と地下の岩体の冷熱交換を行う。高氏は「冬は岩体の熱を取り出し室内の暖房に用いる。この際に地下の岩体が熱源となる。夏は室内の熱を取り出し岩体の中に放出し、約11℃の冷水を作る。そして循環ポンプによりこれをファンに送り、冷たい風を吹かせることで、冷房の役割を果たしている」と述べた。
データによると、中国の2020年末時点における地熱直接利用規模は40.6ギガワット(GW)に達し、世界の38%を占め、複数年連続で世界一となっている。中国の地熱エネルギーの暖房・冷房面積は13億9000万平方メートルで、過去5年の年平均伸び率は23%となっている。
地熱はなぜ注目されているのか。業界関係者によると、これは広く分布し、埋蔵量が多く、安定性と信頼性が高く、炭素排出削減効果が顕著であることと関係している。中国のエネルギー資源の分布には通常、地域的な偏りがある。例えば西北部は石炭や風力、太陽光などのエネルギー資源が豊富で、南部は水資源が豊富だ。それに対し、地熱エネルギーは広く分布し、使用プロセスで炭素をほぼ排出しない。「ダブルカーボン」(CO2排出量ピークアウト・カーボンニュートラル)の目標により、クリーンな地熱エネルギーが注目されるようになっている。
チベット地熱産業協会の王善民会長は「地熱エネルギーは異なる温度に基づき段階別で利用できる。中・高温地熱エネルギーが豊富な雲南省大理市弥渡県を例にすると、45℃以下の地熱エネルギーは温泉や入浴などのヘルスケア産業の開発が可能だ。45~60℃は暖房に使用でき、60~90℃前後は、暖房利用後のエネルギーを温室栽培などに利用できる。一方、90℃以上の地熱エネルギーはクリーン発電に使える。温度が高いほど発電の効果が大きく、経済的だ」と述べた。