中国天津市でこのほど開かれた2024年世界スマート産業博覧会で、人型ロボットが改めて注目を集めた。中国新聞網が伝えた。
調査会社「Stratistics MRC」の予測では、人型ロボットの市場規模は2021年の15億ドル(1ドル=約161円)から28年には264億ドルに拡大するという。テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)はこのほど、「2025年に人型ロボット『Optimus(オプティマス、中国名・擎天柱)』の限定生産を開始する予定で、自社工場でヒューマノイドロボットのテストも行う予定だ。人型ロボットは今後、産業の主力になり、その数は人類を上回って100億~200億台に達するだろう」と述べた。
中国国内ではEX機器人公司(エクス・ロボッツ)の共同創業者で総裁の李博陽氏が「弊社は人型ロボットの量産をすでに開始している」と明らかにしている。
ここ数年、中国では人型ロボット技術の発展が続いている。工業・情報化部(省)は「人型ロボットのイノベーション発展に関する指導意見」の中で、「人型ロボットはコンピューター、スマートフォン、新エネルギー車に続く破壊的イノベーション製品になり、人類の生産スタイルと生活スタイルを大きく変えることが予想される」との見方を示している。
人型ロボットはどんなことができるのか。美しい外観をした人型ロボット「小柒」は人とのやり取りの中で「私にできることはたくさんあります。一緒におしゃべりしたり、面白い話を聞かせたり、その日の天気をお知らせしたりできますし、最近話題のレストランを探すこともできます」と答えた。
「小柒」はエクス・ロボッツが開発したもので、人間の出すさまざまな質問に答えるだけでなく、話の内容に基づいて、口の形や表情、身体の動きを変えることができる。
李氏は「小柒は今、主に受付業務を行う。弊社は今年5月に小柒の量産をスタートしており、今年は500台が目標で、すでに数十台がラインオフしている。主なクライアントはチェーン店舗や展示ホールを擁する上場企業だ」と説明した。
人型ロボットはさまざまなシーンで急速に普及しているが、それはここ数年の人工知能(AI)や大規模言語モデルといった技術の飛躍的発展のおかげと言える。
「人型ロボット産業研究報告」によると、中国の人型ロボットはAIやマシンラーニング、コンピュータビジョンなどの先進技術を搭載したスマート化段階に入ったという。
人型ロボット開発会社の優必選(UBTECH Robotics)の焦継超副総裁は「大規模言語モデルの登場により、ロボットの理解力は大幅に向上した。ロボットはより自然に人間との交流ができるようになり、複雑な操作は不要になる。ロボットは自身の理解と推理に基づいて、任務を正確に遂行できるようになった」と述べた。
「人型ロボット産業研究報告」はさらに、「将来を展望すると、中国の人型ロボットは政策や資本、技術などさまざまな角度での活性化を受けて、市場のポテンシャルが加速度的に発揮される見込みだ。2026年の中国の人型ロボット市場規模は100億元(1元=約22円)を超え、30年は1千億元市場へ成長する」と指摘している。
焦氏は「AIの発展に伴い、人型ロボットの感情表現がますます自然になっている。介護や教育の分野で、徐々に言葉での自然なやりとりが出来るようになり、感情を大切にしたやりとりという価値をもたらす」との見方を示した。
エクス・ロボッツの李氏は「今後2年間に大量の人型ロボットの応用プロジェクトが登場し、今後約5年間に小規模な量産化ニーズのピークが到来することになるだろう。ビジネス市場向けの応用がまず登場し、消費者市場の大量応用には少なくとも10年が必要とみられる」と予測した。
現在、エクス・ロボッツの量産型人型ロボットの価格は70万~80万元ほどだ。オーダーメイドなら、大体150万~200万元となる。
李氏は「人型ロボットが一般家庭に普及するようになれば、市場需要は極めて大きくなり、自動車市場よりも大きな需要になるだろう。ロボットが家庭内の重要なハードウェアデバイスになれば、価格は新エネ車並みになるはずだ」と見解を述べた。