【24-23】1位北京大学、2位香港大学 QSアジア大学ランキング
小岩井忠道(科学記者) 2024年11月19日
英国の高等教育評価機関「クアクアレリ・シモンズ(QS:Quacquarelli Symonds)」は11月6日、「QSアジア大学ランキング2025」を公表した。1位は北京大学、2位は香港大学、3位はシンガポール国立大学で、上位10位内にはこれまでいろいろな世界大学ランキングで高い評価を得ている中国、香港、シンガポール、韓国の大学が並んだ。これら4カ国・地域に加え、12位のマラヤ大学、20位のマレーシアプトラ大学と、上位20位内に2校が入ったマレーシアの大学の高評価が目を引く。日本は上位50位内の大学数こそ9校と10校の中国に次いで多いものの、東京大学の21位が最上位で、20位内に1校も入っていない。
(QS World University Rankings: Asia 2025から作成:数字の前の=は、同順位(タイ)を示す) | |||
国・地域 | 大学数 | 最上位大学名 | 最上位大学のランキング順位 |
中国 | 10 | 北京大学 | 1 |
日本 | 9 | 東京大学 | 21 |
韓国 | 8 | 延世大学 | 9 |
マレーシア | 7 | マラヤ大学 | 12 |
香港 | 5 | 香港大学 | 2 |
台湾 | 4 | 国立台湾大学 | =26 |
シンガポール | 2 | シンガポール国立大学 | 3 |
インド | 2 | インド工科大学デリー校 | 44 |
カザフスタン | 1 | アルファラビ・カザフ国立大学 | 29 |
インドネシア | 1 | インドネシア大学 | 46 |
タイ | 1 | チュラロンコン大学 | 47 |
中国の高評価変わらず
中国の大学が高い評価を受けているのはこれまでの世界大学ランキングと変わらず、1位の北京大学に続き、5位に復旦大学、7位に清華大学、8位に浙江大学と上位10位内に最も多い4校が入った。香港の大学の高評価も同様で2位の香港大学のほか6位の香港中文大学、10位の香港城市大学と3校が10位内に並ぶ。シンガポールの2大学もシンガポール国立大学が3位、南洋理工大学が4位と高い順位を維持している。
上位50位内に入った大学の数でみると、中国、日本に次いで多いのは韓国。9位の延世大学をはじめ8校が入った。このほかマレーシアが7校、台湾が26位の国立台湾大学をはじめ4校、シンガポールが2校、インドが44位のインド工科大学デリー校をはじめ2校、さらにカザフスタンからアルファラビ・カザフ国立大学(29位)、インドネシアからインドネシア国立大学(46位)、タイからチュラロンコン大学(47位)が上位50位内に入っている。中国の大学の躍進ぶりは近年、さまざまな大学ランキングでも目立つが、QSが6月に公表した「QS世界大学ランキング2025」では上位200位内に入ったアジア地域の大学は前年より2校増えて41校となり、このうち32校が前年より順位を上げていた。今回の結果も中国だけでなくアジア地域全体の大学が影響力を高めている現状をあらためて裏付けたといえそうだ。
「QS Asia Rankings 2025」上位50大学
(QS世界2025順位は「QS世界大学ランキング2025」順位、THE世界2025順位はタイムズ・ハイヤー・エデュケーション「世界大学ランキング2025」順位)
(QS World University Rankings: Asia 2025、QS World University Rankings 2025、Times Higher Education World University Rankings 2025から作成:=は同順位の存在を示す) | ||||
順位 | QS世界2025順位 | THE世界2025順位 | 大学名 | 国・地域 |
1 | 14 | 13 | 北京大学 | 中国 |
2 | 17 | 35 | 香港大学 | 香港 |
3 | 8 | 17 | シンガポール国立大学 | シンガポール |
4 | 15 | 30 | 南洋理工大学 | シンガポール |
5 | 39 | =36 | 復旦大学 | 中国 |
6 | 36 | 44 | 香港中文大学 | 香港 |
7 | 20 | 12 | 清華大学 | 中国 |
8 | =47 | =47 | 浙江大学 | 中国 |
9 | 56 | =102 | 延世大学 | 韓国 |
10 | 62 | =80 | 香港城市大学 | 香港 |
11 | =47 | 66 | 香港科技大学 | 香港 |
12 | 60 | 251-300 | マラヤ大学 | マレーシア |
13 | 67 | 189 | 高麗大学 | 韓国 |
14 | 45 | 52 | 上海交通大学 | 中国 |
15 | 53 | 82 | KAIST(韓国科学技術院) | 韓国 |
16 | =127 | =102 | 成均館大学 | 韓国 |
17 | 57 | =84 | 香港理工大学 | 香港 |
18 | 31 | =62 | ソウル大学 | 韓国 |
19 | 162 | 301-350 | 漢陽大学 | 韓国 |
20 | 148 | 601-800 | マレーシアプトラ大学 | マレーシア |
21 | =32 | 28 | 東京大学 | 日本 |
22 | 98 | 151 | 浦項工科大学 | 韓国 |
23 | =50 | 55 | 京都大学 | 日本 |
24 | 145 | 65 | 南京大学 | 中国 |
25 | 107 | 120 | 東北大学 | 日本 |
=26 | 68 | =172 | 国立台湾大学 | 台湾 |
=26 | 138 | 401-500 | マレーシア国民大学 | マレーシア |
28 | =181 | 401-500 | マレーシア工科大学 | マレーシア |
29 | 163 | 1201-1500 | アルファラビ・カザフ国立大学 | カザフスタン |
30 | =84 | 195 | 東京工業大学 | 日本 |
31 | =133 | =53 | 中国科学技術大学 | 中国 |
=32 | =152 | 201-250 | 名古屋大学 | 日本 |
=32 | 86 | 162 | 大阪大学 | 日本 |
34 | =167 | 301-350 | 九州大学 | 日本 |
35 | 173 | 351-400 | 北海道大学 | 日本 |
36 | 251 | ― | テイラーズ大学 | マレーシア |
37 | 146 | 401-500 | マレーシアサインズ大学 | マレーシア |
38 | =194 | =134 | 武漢大学 | 中国 |
39 | 210 | 401-500 | 国立清華大学 | 台湾 |
40 | =328 | 251-300 | 慶熙大学 | 韓国 |
41 | =215 | 501-600 | 国立成功大学 | 台湾 |
42 | =219 | 401-500 | 国立陽明交通大学 | 台湾 |
43 | 192 | =154 | 同済大学 | 中国 |
44 | =150 | ― | インド工科大学デリー校 | インド |
45 | =265 | ― | UCSI大学 | マレーシア |
46 | =206 | 801-1000 | インドネシア大学 | インドネシア |
47 | 229 | 601-800 | チュラロンコン大学 | タイ |
=48 | 118 | ― | インド工科大学ボンベイ校 | インド |
=48 | 188 | 601-800 | 慶応義塾大学 | 日本 |
=48 | 331 | 201-250 | 中山大学 | 中国 |
評価法一部変更の影響も
大学ランキングは、QSのほか英国の教育誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)がよく知られているが、QS、THEとも高等教育の変化に対応し、大学の順位付けをより適正にすることを狙って近年、評価法を変えている。QSは前回の世界大学ランキングから「雇用者からの評判」をより重視し、新たに「持続可能性」、「雇用成果」、「国際研究ネットワーク」を評価指標に加えるといった変更を行った。さらに今回の「アジア大学ランキング2025」では、基本的には変更後の世界大学ランキングの評価法によるものの、さらに修正を加えている。「雇用者からの評判」の配点比率を15%から20%にさらに高めたほか、海外から受け入れている交換留学生と海外に送り出している交換留学生の比率に対する評価指標(配点比率それぞれ2.5%)を新たに加えた。アジアの大学の国際化の活動状況をよりよく評価するためとしている。
この結果、6月に公表されたばかりの「QS世界大学ランキング2025」と今回の「QSアジア大学ランキング」の各大学の順位には、次のような変化が見て取れる。「QS世界大学ランキング2025」でアジアの大学の最上位は、シンガポール国立大学の8位だった。シンガポール国立大学に替わって1位に浮上した北京大学は、「QS世界大学ランキング2025」ではアジア地域でシンガポール国立大学に次ぐ14位。さらに「QS世界大学ランキング2025」で17位、アジア地域で4位だった香港大学もシンガポール国立大学と15位(アジア地域3位)の南洋理工大学のシンガポール2大学を追い抜いて2位に順位を上げた。
このほか、「QS世界大学ランキング2025」より、評価を上げた大学としては5位の復旦大学(QS世界大学ランキング2025ではアジア地域で9番目の39位)、8位の浙江大学(同12番目の47位)、9位の延世大学(同15番目の56位)、10位の香港城市大学(同18番目の62位)、12位のマラヤ大学(同17番目の60位)、13位の高麗大学(同19番目67位)、16位の成均館大学(同26番目127位)、19位の漢陽大学(同34番目162位)、20位のマレーシアプトラ大学(同31番目148位)などが目を引く。中国、韓国、香港、マレーシアの大学だ。
さえない日本の大学順位
日本の大学はどうか。21位東京大学(同7番目の32位)、23位京都大学(同13番目の50位)、25位東北大学(同24番目の107位)、30位東京工業大学(同21番目の84位)、32位名古屋大学(同33番目の152位)、同じく32位大阪大学(同22番目の86位)、34位九州大学(同35番目の167位)、35位北海道大学(同36番目の173位)、48位慶応義塾大学(39番目188位)となっている。50位内に入った9校のうち、「QS世界大学ランキング2025」のアジア地域大学順位よりも「QSアジア大学ランキング2025」の順位を上げたのは、名古屋大学、九州大学、北海道大学だけ。それも上げた順位はいずれも一つで、残る6校は軒並み順位を下げている。アジア大学ランキングの新しい評価法が日本の大学に有利に働いたとは言えない結果ともなっている。(東京工業大学は東京医科歯科大学と統合し、10月1日から東京科学大学となった)
(QS World University Rankings: Asia 2025、QS World University Rankings 2025、Times Higher Education World University Rankings 2025から作成) | ||
QSアジア大学ランキング2025 | QS世界大学ランキング2025 | THE世界大学ランキング2025 |
学術関係者からの評判(30) | 学術関係者からの評判(30) | 研究の質:論文被引用数と論文の重要度(30) |
雇用者からの評判(20) | 教員一人当たりの論文被引用数(20) | 教育・学習環境:学術関係者からの評判、学生一人当たりの教員比率、博士号持つ教員比率など(29.5) |
学生一人当たりの教員比率(10) | 雇用者からの評判(15) | 研究環境:学術関係者からの評判、研究収入、論文数(29) |
国際研究ネットワーク(10) | 学生一人当たりの教員比率(10) | 外国人留学生比率(2.5) |
論文1本当たりの被引用数(10) | 外国人教員比率(5) | 外国人教員比率(2.5) |
教員一人当たりの論文数(5) | 外国人留学生比率(5) | 国際共著論文比率(2.5) |
博士号持つ教員比率(5) | 持続可能性(5) | 企業からの収入(2) |
外国人教員比率(2.5) | 雇用成果(5) | 研究が引用された特許数(2) |
外国人留学生比率(2.5) | 国際研究ネットワーク(5) | |
受け入れ交換留学生比率(2.5) | ||
送り出し交換留学生比率(2.5) |
関連サイト
クアクアレリ・シモンズ「QS UniversityRankings: Asia 2025」
クアクアレリ・シモンズ「QS WorldUniversity Rankings 2025: Top Global Universities」
タイムズ・ハイヤー・エデュケーション「WorldUniversity Rankings 2025」
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