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【24-10】科学技術成果の実用化を阻む「足枷」を外す(その2)

陳 曦(科技日報記者) 2024年09月05日

天津市はこのほど、「科学技術成果の実用化と革新的改革をさらに推進するための若干の措置」(以下「若干の措置」)を発表した。これは、成果実用化の体制やメカニズムに存在する「職務科学技術成果」(大学や科学研究機関などが職務を果たす過程で得た科学技術成果)の管理、権利付与、値踏み出資など7つの重大かつ困難な問題に対し、18の革新的措置を打ち出したもので、科学技術成果の実用化を阻む「小さな足枷」を的確に外すとしている。

その1 よりつづき)

 職務科学技術成果に関して、すでに有益な試みを展開している大学がある。今年初め、天津科技大学の王紅星教授が天科大(天津)科技園有限責任公司(以下「天科大科技園」)に登録した会社が運営開始から1年を迎え、約400万元(1元=約21円)の利益を企業に分配し、天科大科技園はそのうちの5%を受け取った。

 天津科技大学技術移転センター・成果転化科の王維君科長は、「天津科技大学では通常、教員の成果を知的財産権として評価し、株式を形成した後、天科大科技園がその株式を保有する。われわれは科技園というレベルで、市場化を目標とした投資委員会を立ち上げている。こうすることで、成果実用化のメカニズムがより柔軟的で効果的になる。企業の収益は事前に規定した割合で天科大科技園に分配され、大学の研究活動に還元される」と説明した。

 天科大科技園が2021年に設立されてから、知的財産権を値踏みして株式参入した企業は11社あり、収益を得て大学に還元された科学研究費は1000万元以上に達している。特に2023年以降は技術契約の取引額が50%以上増加している。

具体的な実施措置を明確化

 天津市科技局科学技術成果・技術市場処の趙暁鵬副処長は「政策が実施される過程で、政策の説明が少しでも曖昧だと、科学研究機関は実施を躊躇することが分かった。このような状況を避けるために、『若干の措置』では一部の政策について、より明確に説明している」と述べた。

 例えば、「指導的地位にある科学研究者の値踏みによる株式参入を支援する」という措置では、「独立した法人資格を有する科学研究事業機関の正職のトップが、科学技術成果の主な創出者、または科学技術成果の実用化における重要な貢献者である場合、科学技術成果転化促進法の規定に基づき報奨金を受け取ることができるが、原則として、インセンティブとしての株式は受け取ることはできない。また、指導部の他のメンバーや所属する研究院・学部・研究所・内設機関のトップなど、他の指導的地位にある科学技術者で、科学技術成果の主な創出者または成果実用化の重要な貢献者である場合、科学技術成果転化促進法の規定に基づき、奨励や報酬として、現金や株式、出資比率などを得ることができる。株式の所有権によるインセンティブは、企業経営とは見なさない」と明確に説明している。

 趙氏は「この措置は、値踏みによる株式参入について、誰ができて誰ができないかを非常に詳しく説明している。科学研究機関はこの規定に基づいて対応するだけでいい」と述べた。

「若干の措置」ではこのほか、横断的な研究プロジェクトで余った研究費の使用を最適化し、「それを科学技術成果の実用化による収入と見なすことができる」と明確に規定している。さらに科学研究事業機関に対し、横断的な研究プロジェクトで余った研究費と、職務科学技術成果の値踏みによる株式参入を組み合わせた成果実用化の方法を模索することを支援するとしている。つまり、「技術による株式参入」と「現金による株式参入」という方法で、成果の実用化ができることを意味している。

 趙氏は「これまで科学研究事業機関は現金による株式参入が認められず、技術による株式参入しか認められていなかったが、『若干の措置』では、技術と現金を結びつけ、横断的な研究費を使って成果の実用化に出資することが認められている。これにより、成果実用化の資金不足という問題が効果的に解決される」と見解を述べた。

 研究者が科学技術成果の実用化体制メカニズムの改革を積極的に行うよう奨励するために、「若干の措置」では「成果実用化における過失を許容し、責任を免除する」と明確に規定している。また、「関連制度を策定し、プロセスが合法的で、勤勉に責任・義務を全うし、違法な利益を得ていないことを前提に、機関のリーダーの科学技術成果価格に関する意思決定責任を免除する。研究者が科学技術成果の使用、処分、収益で過失を犯した場合、是正を優先する」としている。

 天津市科技局の朱玉兵局長は「2023年、天津市の技術契約の取引額は過去最多の1957億4000万元に達した。4年で倍増し、市の域内総生産に占める割合は中国国内で3番目に高かった。今後は科学研究者に対し、権益共有や税制優遇、業績評価、過失許容・免責などの政策の要点を重点的に解説することで、懸念を払しょくし、成果実用化の積極性と自主性を引き出していく。一部の機関が先駆けて試行し、再現と普及が可能なモデルケースを生み出せるよう模索し、各科学研究機関が互いに学び合い、全面的に普及することを願っている」と語った。


※本稿は、科技日報「解除束缚科技成果转化的"细绳子"」(2024年7月23日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。

 

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