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【22-68】青空をより青くするために 汚染物と炭素の削減が必須

李 禾(科技日報記者) 2022年12月13日

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中国石化集団北京燕山石油化工有限公司の環境保護観察人員が観測装置を使い、工場エリア内の大気の質をモニタリングする様子(写真提供:視覚中国)。

 大気汚染物質の濃度の持続的な低下に伴い、中国はすでに世界で大気の質の改善ペースが最も速い国になっている。そのため、さらなる大気の質の改善には、カーボンニュートラルとクリーンな空気の協同発展の道を歩む必要がある。
----賀克斌 中国工程院院士、清華大学環境学院教授

 北京市などでこのほど、「中重度」の大気汚染が発生した。生態環境部(省)の劉友賓報道官は、同部が10月27日に開いた記者会見で、「10月はちょうど秋から冬へと移り変わる時期で、昼夜の気温差・湿度差が大きい。京津冀(北京・天津・河北)及び周辺地域は低気圧、高湿度、強い温度逆転などの不利な気象条件の影響を受け、汚染が発生しやすい。北京などの地域で最近生じている大気汚染は、不利な気象条件の影響によるものだ」と述べた。

 第20回党大会報告は、「炭素排出削減、汚染対策、緑化、経済成長を同時進行させ、環境汚染対策を掘り下げ、青空を守る戦いに取り組み続ける。汚染物の協同抑制コントロールを強化し、重度汚染天気などをほぼ解消する」とした。

 2013年から2017年にかけての「大気汚染防止行動計画(通称、『大気十条』)」、また2018年から2020年にかけての「青空を守るための三年作戦計画(通称、『青空三年』)」を経て、中国はいかに青空の純度を高め、青空を守る戦いに取り組み続けるべきなのだろうか。

中国が大気の質の改善ペースが最も速い国に

 中国工程院院士で、清華大学環境学院教授の賀克斌氏は、「この10年における中国の最も重要な2つの大気汚染対策計画は、2013年に始まった『大気十条』と2018年に始まった『青空三年』だ。この2つの計画は多くの重大汚染物排出削減プロジェクトをけん引し、目に見えた成果を手にした。これには石炭火力発電所の超低排出、石炭燃焼ボイラーの総合対策、揮発性有機化合物(VOCs)の総合対策、農村部の分散型の石炭燃焼暖房のクリーン化対策、移動汚染源管理・抑制、農作物の茎の燃焼に関わる農業総合対策、建設現場及び工業鉱山などの粉塵対策などが含まれる」としている。

 また賀氏は、「これらの重大プロジェクトは多くの汚染物の排出を削減した。また中国の産業構造、エネルギー構造、交通運輸構造のモデル転換を促した」としている。

 中国は産業やエネルギーなどの構造調整を大気汚染対策の重要な足がかりとしている。過去10年にわたり中国全土で鉄鋼の生産能力が累計で3億トン弱、セメントが4億トン弱、フロートガラスが1億5000万重量ケース、石炭が10億トン以上淘汰された。中国の石炭が一次エネルギー消費量に占める割合は2021年に67.4%から56%まで低下し、クリーンエネルギーの割合が25.5%まで上がった。そしてクリーンエネルギーと再生可能エネルギーの開発・利用量で世界一を維持している。

 中国環境科学研究院大気研究所副所長の高健氏は、第14次五カ年計画(2021−25年)と第15次五カ年計画(2026−30年)はそれぞれ非常に重要な10年だとし、「今後10年で重度汚染をほぼ解消し、PM2.5が気象からの影響をほぼ受けないようにし、オゾンの増加傾向に歯止めをかけなければならない。これからの10年でオゾン汚染濃度は低下を始めるだろうが、依然としてプレッシャーに直面することになるだろう」とした。

 高氏によると、立ち遅れた生産能力の淘汰、過剰生産能力の解消、エネルギーのクリーン化、交通の低炭素化などの措置を講じた後に汚染物の排出が大幅に改善されたが、現在の主要汚染物の排出は依然として1000万トン級で、かつ排出削減が徐々に難しくなっている。これまでの汚染物排出対策を経て、今や難しい部分しか残されていない。これは排出削減の余地が狭まっていることを意味する。

 生態環境部が発表したデータによると、全国の地級以上339都市のPM2.5の今年1月から9月までの平均濃度は1立方メートル当たり27マイクログラムだった。大気汚染物質の濃度の持続的な低下に伴い、中国はすでに世界で大気の質の改善ペースが最も速い国になっている。賀氏は、「しかしこれは終点ではなく新たな出発点だ。それではさらなる大気の質の改善の駆動力はどこにあるのか。汚染物・炭素削減の相乗効果において、カーボンニュートラルとクリーンな空気の協同発展の道を歩む必要がある」としている。

「ダブルカーボン」の目標達成には努力が必要

 関連の研究によると、中国の窒素酸化物の排出は2030年から2060年の間にさらに67%減少し、二酸化硫黄は83%減少するとしており、2060年までに全国の大半の地域のPM2.5年平均濃度が1立方メートル当たり10マイクログラム以下に低下し、大気汚染問題が根本的に解消されるとしている。

 しかし専門家によると、この変化を実現するためには、中国の多くの地域は相当な努力が必要だとしている。

 杭州湾は長江経済ベルトや長江デルタ一体化発展などの多くの国家戦略が交わるエリアに位置し、上海金山や寧波鎮海などの4大石油化学生産拠点を擁する。港の貨物取扱量は世界トップレベルで、汚染物の排出量が多く、大気汚染の状況が複雑だ。杭州湾地域の大気の質は、近年の大気汚染対策により大幅に改善された。そのうち二酸化硫黄は低濃度水準で安定し、PM2.5の濃度が大幅に低下し、国家2級標準に達した。二酸化窒素も低下傾向を示しているが、オゾンの濃度が増減しており、さらなる排出削減の模索が必要となっている。

 杭州湾は石油化学工業が産業として集中しており、VOCsの排出量で長江デルタ石油化学工業業界全体の43%を占めている。VOCsはオゾンの重要な前駆体だ。また港と船舶も杭州湾の重要な大気汚染物質及び温室効果ガスの排出源となっている。杭州湾地域には大気汚染物質及び温室効果ガスの排出源が共通するという特徴があり、汚染物と炭素を同時に削減する必要がある。上海市生態環境局科学技術処の施敏処長は、「ダブルカーボン(双炭、二酸化炭素排出量ピークアウトとカーボンニュートラル)の目標を受け、杭州湾大気汚染物質及び温室効果ガスの同時削減の模索には、長江デルタ全体、さらには全国の汚染物・炭素削減活動に対して重要な模範と参考の意義がある」としている。

 杭州湾地域は個別のケースではない。賀氏は「研究によると、中国の現行のクリーン空気政策は、2030年までに汚染物の排出削減を維持できる。全国の大半の地域のPM2.5の年平均濃度が1立方メートル当たり35マイクログラムに達する。しかしその後は排出削減の潜在力が大幅に低下するため、さらなる排出削減措置を講じる必要がある」としている。

汚染物と炭素を同時削減し、青空を守る

 専門家によると、青空の純度をさらに高め、青空を守る戦いに取り組み続けるためには、汚染物・炭素削減の相乗効果が必要となるとしている。

 賀氏は、「国際エネルギー機関(IEA)は、未来の全世界の新エネ資源量は発展の需要を十分に賄えると分析している。これは化石エネルギーの長期発展に対する資源面の制限をある程度解消する」としている。

 新エネには、エネルギー利用において炭素削減をより良く実現できるという、さらに大きなメリットがある。しかし専門家は、新エネを活用し炭素削減、汚染物削減、経済成長の目標を達成するためには、技術的サポートが必要だとしている。

 賀氏は、「風力や太陽光資源はどの国も手にできるものだが、将来的にどの国がそれをより有効的に利用できるかについては、大規模かつ安定的にこれらの新エネを使用できる技術体系をどの国がより早い段階で完成させられるかによって決まる。経済発展も炭素削減も技術に依存してモデル転換を行っている。これは大きな流れでもある」とした。

 IEAの分析によると、世界の新エネ資源量は発展の需要を十分に賄えるが、現在の新エネ関連技術はまだ十分な水準と規模に達していない。世界的な新エネ応用を見ると、約50%の炭素削減技術が成熟し、すでに実用化されているが、残りの半分がまだ成熟していない。欧州特許庁の分析によると、伝統的な風力、太陽光、地熱、水力発電などの新エネ特許出願件数が現在減少しているが、学際領域のバッテリー、水素、スマートグリッド、炭素回収・利用・貯留(CCUS)などの特許出願件数は増加している。

 賀氏は、「新エネを活用し排出削減を実現するためには技術競争が重要で、特に中核・基幹技術のイノベーションの促進が必要だ」としている。

 高氏によると、汚染物・炭素削減の相乗効果を発揮させるためには、技術サポートへの需要もますます細微にわたってくるようになるとしている。例えば北京・上海・広州・深圳のような超大都市が持続的な排出削減を実現するためには、産業クラスタなどの各方面の管理の需要をさらに細かくしていく必要がある。炭素と窒素、炭素とVOCs、炭素と新汚染物の共同対策をより詳細かつ科学的にし、低リスクを基礎とした上で高い汚染物・炭素削減効果を発揮させるべきだ。

 国家気候戦略センター戦略計画部主任の柴麒敏氏は、「現在、汚染物・炭素削減はすでに相互強化の段階に入った。今後はその経済の質を高め、けん引する効果が顕在化してくることになるだろう。新エネ車、太陽光・風力発電装置製造、グリーン建材・新材料、デジタル経済・産業などの汚染物・炭素削減と関連する多くの新興産業がすでに、経済成長に対して巨大な促進作用を生みだし始めている。ダブルカーボンも汚染物・炭素削減も、観念の真の変化が必要で、技術革新により発展と排出削減の間の深い問題を解消しなければならない」としている。


※本稿は、科技日報「譲藍天更藍,需減汚降碳協同増効」(2022年11月1日付8面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。