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【24-76】「秒速回答で丁寧だけど問題解決できない」AIサービスの解決策は?(その1)

付鋭涵(科技日報記者) 2024年08月16日

 消費者に必要な情報を自動で伝えるスマートサービスシステムが、医療や政務、小売、教育などますます多くの分野に浸透している。

 消費シーンを例にすると、複数のECプラットフォームが消費者の疑問に答える人工知能(AI)ロボットを導入している。だが、こうしたAIカスタマーサービスを利用した一部の消費者からは「すぐに答えが返ってくるし、言葉遣いも丁寧だが、根本的な問題を解決できない」という感想も寄せられている。

 新興技術が急速に普及し、AIカスタマーサービスが各業界で応用される一方で、ユーザーからは意思疎通が難しいという不満の声も聞こえ、顧客体験が大幅に低下している。では、どのようにすれば、AI技術を応用しながら顧客体験を高めることができるのか。この点について、専門家に聞いた。

AIを活用したサービスがトレンドに

 北京航空航天大学公共管理学院の張路蓬副教授は「AI技術は発展し続けており、各業界で幅広く応用されている」と述べた。

 自然言語処理といった基盤技術やアルゴリズムモデルの「集合体」としてのAIサービスシステムは、24時間オンライン状態で速やかに対応でき、大量の反復作業をこなすことができる。張氏は「導入することで企業はコストを削減し、作業効率を高めることができる。また、ユーザーにも一定の利便性をもたらしている」と述べた。

 ある専門家はかつて「アフターサービスの面を見ると、スマートカスタマーサービスは人によるカスタマーサービスと比べ、運営コストを30%以上削減することができる。AIを導入することで、世界のカスタマーサービスセンターは、2026年までに人件費を800億ドル(1ドル=約147円)以上削減できるだろう」と予測していた。

 張氏は「AI技術がサービス分野で応用できるのは、主に2つの条件を満たしているからだ。1つ目はビッグデータや関連技術の発展で、2つ目はディープラーニングだ。ビッグデータはディープラーニングに、十分な量のトレーニングサンプルを提供し、そこからカギとなる情報・要素を整理してまとめる。これが、各種サービスシステムのスマート化を推進する重要な要素となっている」と説明した。

 統計によると、中国のカスタマーサービス業界は、スマートカスタマーサービスソフトウェアが中心となっており、その市場シェアは約80%に達している。2027年までに、中国のスマートカスタマーサービス業界の市場規模は約200億元(1元=約21円)まで拡大する見込みで、スマートサービス時代の到来が加速している。

 AIカスタマーサービスシステムは複数の優位性があるため、企業がサービス効率を高め、人件費を削減する有効な方法となっている。しかし、関連技術は実際の応用過程で課題にも直面している。

 SNSプラットフォームやクレームプラットフォームを検索すると、AIカスタマーサービスに対する不満や「どうすれば(人の)オペレーターに速くつなげてもらえるのか」といった書き込みが少なくない。問題点は主に「意思疎通に時間がかかる」「理解力が低い」「なかなかオペレーターにつなげてもらえない」などに集中していた。

 張氏は「一部のスマートカスタマーサービスは態度こそ丁寧だが、聞いたことに答えてくれない。これは技術レベルで個別の問題に正確に答えられないためだ。ユーザーによって質問の内容が異なるため、それぞれに的確な回答をすることができず、そのため、スマートサービスの提供者はデータ入力やディープラーニング、アルゴリズム設計などの面で改善を続けなければならない」と見解を述べた。

 一部の従来のスマートサービスシステムは、事前に設定された明確なルールや標準化されたコーパスを使用しているため、ユーザーの多様なニーズを満たすことは難しい。生成AIは自ら学習し最適化できるが、全ての企業に自社のビジネスナレッジベースを構築し、モデルに十分な量のトレーニングデータを提供できる能力があるわけではない。一方、アウトソーシングの汎用型サービスシステムでは、さまざまな垂直応用シーンに対応するのは非常に難しい。

 また、企業のサービス意識が低いことや、消費者の権利保護や意思疎通を重視していないことなども、AIカスタマーサービスに不満の声が寄せられる理由となっている。

(その2へつづく)


※本稿は、科技日報「AI服务如何用得上又用得好」(2024年7月5日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。

 

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