東北育才―リーダー人材養成の場
2011年 5月25日
高琛(Gao Shen):東北育才学校 校長
東北育才学校校長兼党委員会書記、遼寧省特級教師、教育学原理博士課程在学中、修士学生指導教官、中国西部地区教育顧問。瀋陽市政府教育監督指導室主任。全国五・一表彰メダル受賞者、全国教育系統先進工作者、全国教育系統女性建勲模範、遼寧省第一回五十名リーダー人材、遼寧省ベストテン校長、瀋陽市教育専門家、瀋陽市十大傑出青年知識分子、瀋陽市人民代表大会代表。学校運営の水準を同校の学校運営史上、全省基礎教育における最も高い水準へ押し上げた。初めてエリート教育の実験領域を広く開拓し、東北育才悲鴻美術学校を創設し、初めて現代的学校制度の建設を模索。教育部の委託を受け、市内で初めて新疆クラスを設立し、少数民族の生徒にエリート教育を受けさせ、同じ年、初めて2つの科学研究プロジェクトがインテルISEFに参加し受賞。また、初めて国内大学入試で省内の文理科トップを独占、初めて国際的名門校への進学者数が百名を突破。全国の中高で初めて「生態科学普及基地」を建設。『東北育才学校運営基準』を編纂。いち早く世界初のユニセフ世界遺産教育実験学校にし、国際名門中高連盟に加盟し、本校を中国国家対外中国語教学指導グループ弁公室の定めた「中国語国際普及小中高基地」にし、「全国教育系統先進単位」にすることに貢献。
東北育才学校は栄えある革命の伝統を持つエリート教育実験校であり、周恩来総理が少年時代に学んだ場所でもある。創立以来60余年、学校の発展はおおよそ次のような三つの主な段階を経てきた。
創立初期の段階:1949年、学校は「原野従軍小学校」を基盤として創立され、張聞天自らが学校のために命名を行い、毛沢東の師・徐特立が自ら学校のために優秀な教師を選んだ。育才の第一期の生徒は主に中国共産党中央委員会東北局、東北政治委員会、東北軍区の指導的幹部の子女及び烈士(訳注:革命に殉じた人)の子弟であり、当時の学校は、革命精神、高い教育レベル、健康な心身を具えた、国家を支える人材の養成を目標としていた。
実験模索の段階:改革開放以来、本校は鄧小平氏の「教育は現代化に目を向け、世界に目を向け、未来に目を向けなければならない」、「必ずしきたりを打破して、傑出した人材を発見し、選抜し、養成しなければならない」、「優秀な人材はまとめて養成しなければならない」という戦略思想と教育思想をあくまでも貫き、1986年からエリート教育実験を実施するとともに、「関心を持つことを学び、創造することを学び、全面的に発達し、才能の芽を出す」という養成目標を定め、1993年、瀋陽市教育局により正式にエリート教育実験学校として認定された。
科学的発展の段階:21世紀に入り、育才は科学的発展観を先導として、エリート教育の改革実験と発展の実情を密接に結びつけ、科学的発展に基づいた人材育成観と全面的エリート観を確立し、全面的に調和のとれた健全かつ持続的な発展段階に入り、学校の養成目標を具体的に、国際的視野を具えたリーダー的資質の人材養成であるとした。2006年、本校はエリート教育を旗印とし、「東北育才」ブランドをシンボルとして、正式に東北育才教育集団を設立した。現在、集団の規模は8校区、13学部にまで発展し、敷地面積66.3万平方メートル、建築面積34.3万平方キロメートルを有し、生徒総数1万人余り、教職員・労働者1千人余りに達しており、就学前教育から高校教育までが相互に連係し、学校・家庭・社会教育が相互に結びつき、公営・民営・連合運営の形態が相互に促進し合う学校運営構造が形成されている。
一、エリート教育――東北育才学校の中核的特色
エリート教育は天才教育、英才教育ともいい、世界では、欧米、日本、韓国、シンガポールなど多くの国がそれに成功しており、我が国では、党及び国家の三代の指導者がいずれも卓越した人材の養成について論述している。ここ数年、教育のバランスのとれた発展にともない、国も良質な教育の発展をますます重視しており、特に教育の優先的発展、人材資源強国の建設という基本国策の下で、エリート教育が各業種のハイエンド人材養成の面で有している広範な現実的意味と社会的価値が、これまでになく人々の注目を集めている。東北育才の「エリート教育」は「天才教育」、「英才教育」とは異なり、少なくとも二つの意味を含んでいる。第一に、それは資質・潜在能力が相対的に優れている生徒のために提供する、その生徒を本物のエリートにする適切な教育であり、教育の対象が資質の相対的に優れた生徒であることと、教育目標の事実としての優秀さを強調している。第二に、それは優秀な人材を養成することのできる教育であり、学校教育資源の良質さを強調している。エリート教育に対する「教育の対象」から「教育の資源と目標」への認識の変化は、エリート教育の持続可能な発展を保証する重要な基盤である。
育才学校のエリート教育は1986年に始まった。この年、本校は中高4年制の才能教育実験クラスを初めて開設し、国内で比較的早期に才能教育実験を展開した中高の一つとなった。実験クラスは集中的学校運営という集団教育モデルを採用し、一次試験、再試験、適応的学習、知能及び心理特性テスト、総合分析評価、1年間の仮入学総合評価、七つの方向別評定、選抜手続きを経て、知能レベルの並外れて高い、非知性的要素の良好な児童に対して特殊教育を展開し、徐々に「並外れて優秀な生徒が、速いスピードで学習する」というエリート教育モデルを作り出した。続いて1989年、1993年に、本校は「単科の強化、能力の転移」、「潜在能力を開発し、並みの状態を超える」という二つのエリート教育モデルを確立した。
現在、エリート教育はすでに本校の発展の中核的特色となっており、うち才能教育は20年余りの実践のいくつかの方面における実験・模索を経て、すでに国際レベルに達しており、中国の才能教育の発展方策を代表している。本校の才能教育実験クラスはまた、独立した管理機構を持つ才能教育実験部へと発展し、外部が東北育才のエリート教育を理解する上での窓口となっており、本校中学部、高校部、国際部やその他の12学部と共に、東北育才の多段階の学校運営という特色を体現している。
本校の数学特進クラスは1989年に募集を開始し、生徒の自主的選択に基づき、学力的に余裕のある、興味関心を持った生徒を対象として総合数学科を開設しており、数学的考え方、数学的方法の養成と数学能力の向上に重きを置き、コンピュータ、物理等の理科教育が適度に深められ、幅広くなっている。これまでに、本校は国際中高生教科コンテストにおいて、金14、銀7、銅7を獲得。うち国際オリンピックでは金8、銀2、銅1を受賞し、これにより学科コンテストにおける東北トップ、全国トップクラスの地位を確立した。数学コンテストでの優秀な成績により、2000年、本校は「中国数学オリンピックトレーニング基地」に認定され、国家集団トレーニングチームの訓練任務を6回にわたり問題なく遂行した。
外国語特進クラスでは、英語クラスの生徒は英語とフランス語を同時に学習し、高校2年時にTOEFLテストを受験しており、旧TOEFLテストの平均成績は630点、新TOEFLテストでは98%の生徒の成績が100点以上となっている。英語クラスの生徒はTEFテスト(フランス語能力認定試験)を受験し、いずれもB1レベルに達することができ、中にはB2レベルに達する者もいる。B1レベルに達するとフランスの理科系大学、B2クラスだと同じく文科系大学に申し込む資格がある。日本語クラスの生徒は英語と日本語を同時に学習し、高2生徒の日本語はいずれも日本語能力試験1級に受かることができ、旧TOEFLの成績はすべて600点に達し、新TOEFLでは100点以上を取っている。日本語特進クラスの生徒は日本の大学入試を受けて、大部分が日本の国立大学に合格し、40%は東京大学と京都大学に入っている。東京大学が毎年募集している私費留学生のうち、本校の生徒は半数以上を占め、『朝日新聞』は2年続けて本校のエリート教育の成果について特別報道を行った。
普通クラスの生徒については、我々は生徒の成長に客観的に存在する最適な発達期をしっかりつかみ、特別な教育条件を作り出し、大脳の潜在能力を十分開発し、並みの状態を超える発達を遂げさせ、優秀な人材にしている。たとえば、射撃、ボートレースなど、特色ある体育課程を通じての養成により、国際2級、さらには1級選手となる生徒もおり、生徒たちは全国の中高卓球、射撃、ボートレース等競技種目において特に優れた成績を収めており、ボートレースチームは3期連続で、ユネスコ中国委員会主催の国際名門校ドラゴンボート招待レースにおいて優勝し、卓球チームは2008年、韓国で中韓スポーツ交流に参加した。さらに本校は「清華大学射撃チーム補欠人材基地」及び「全国スポーツ補欠人材養成学校」に認定されている。本校はまた3年連続で太陽鳥舞踏団を結成して札幌のYOSAKOIソーラン祭に参加し、日本政府・国民の温かい歓迎を受け、地元メディアからも高い評価を得た。本校高校生はさらに、ロシア・イルクーツク市中高生懇親会芸能公演、中国語橋アメリカ小中学校長訪問団歓迎公演などの国際訪問公演に参加し、その素晴らしい公演は毎回、世界の友人たちに深い印象を残してきた。本校はさらにユネスコの「2007東アジア児童芸術祭」活動を引き受け、成功させた。
21世紀に入り、本校は科学的発展観を先導として、エリート教育改革実験と発展の実情をしっかり結び付け、エリート教育の内在的構成要素を絶えず豊かにし、全面的エリート観を確立してきた。すなわち、エリート養成過程において、内容面では、各界のリーダー人材が具えているべきリーダー的資質の養成を特に強調してきた。東北育才の言う生徒のリーダー的資質には具体的に10の側面、すなわち、目標計画能力、高度の責任感、並外れた自信と高い信頼度、強い競争意識と成功意欲、独立した思考能力、指導執行能力、挫折に耐える能力、イノベーション能力、世界的視野、倫理と価値判断能力が含まれている。対象の面では、エリート教育の全面的な、十分な、調和のとれた、個性的な発達という要請にしたがい、一つひとつの教育集団に関心を払い、資質の優れた生徒についてはスタートラインの高い教育を実施すること、普通の生徒については潜在能力の発掘、特長の養成、個性を伸ばすことに注意を払い、学習につまずく生徒については、基礎を固めること、個性・特長の優位性を伸ばすことに注意を払い、有効な転移により、長所を伸ばし短所を補い、すべての生徒がエリートになるための機会と条件を提供し、各人がそれぞれの能力を尽くし、才能を伸ばすようにしている。優秀な者はさらに優秀になるように、普通の者は並みの状態を超えて発達し、多方面で優秀になるようにし、学習につまずく者については補償的教育を受けさせ、長所を伸ばし短所を補い、長所を伸ばし短所を避けることにより、これも優秀になるようにしている。
二、エリート教育サポート体系を構築し、卓越したイノベーション人材の養成を実現
いわゆる卓越したイノベーション人材とは、第一に全面的に発達した人材でなければ
ならず、第二に、全面的に発達した上で、イノベーション意識、イノベーション精神、イノベーション思考、イノベーション能力が高度に発達した人材、自由な個性をもつ、独立して発達した人間でなければならない。卓越したイノベーション人材の養成は一つのシステム工学であり、学校が養成目標、教育モデル、カリキュラム内容、チーム建設など多方面にわたって着実な業務を展開することを必要としている。エリート教育の模索の当初から、本校はそれを「高次なイノベーション型の卓越した人材養成のために基礎を築く中高の全人教育」と定義するとともに、科学技術の精鋭人材育成の面で多方面にわたる模索を行ってきた。
(一)徳育のイノベーション機能を発揮させ、生徒の独創的人格を養成
卓越したイノベーション人材の養成で重要なことは、独創的人格教育である。いわゆる独創的人格とは、科学的な世界観、正しい方法論、我慢強く固い意志など、多くの非知性的要素の有機的結合を指す。このうち、責任を担い、科学を崇拝し、真理を愛し、進歩を追求するという資質は独創的人格の中核的要素であり、それ以上に、イノベーション型人材の成長の原動力、目標、価値基準である。
1. 自主体験、価値の共感
20年余りにわたるエリート教育の実践模索の中で、東北育才は終始一貫して、エリートはまず徳が優っているべきであることを堅持し、徳育が生徒の独創的人格の育成の中で果たす決定的役割を発揮させることに重点を置き、知的徳育、育成的徳育、心情的徳育を統一した自主体験型徳育モデルを作り出してきた。生徒活動の組織の面では、活動の担当募集制を実施して、生徒に担当、主宰をさせ、生徒に構想、立案をさせ、生徒に総括、向上をさせ、学校は自主体験のプラットフォームを組み建てることにより、一人ひとりが参加し、一人ひとりが利益を受けるようにしてきた。
たとえば、学校創立60周年の慶祝期間中、高2生徒は「祖国のために担う」というテーマの18歳成人式典や、「母なる河川を守り、いっそう生態バランスを保つ」環境保護運動を企画することに成功した。式典では、学級担任が生徒のために古式に則って順に「加冠」を行い、保護者は傍らで式に参列した。そのあと、全生徒が両手を挙げ一斉に恩師・両親に向かって拱手の例をし、骨身を惜しまぬ育成の恩に感謝の意を表した。「冠笄の礼」は今では文化遺産と呼ばれているが、無くなったわけではなく、三百年の深い眠りの後、生徒たちが実際の状況に照らし、現代版「加冠の儀」として新たに創造したのである。成人式後、彼らが担った最初の責務は稚魚を放流し、母なる河川を守ることであったが、彼らはそこから、18歳成人の意味は責任と任務であり、恩を知り報いることであることをはっきりと感じ取った。またたとえば、昨年生徒が企画、主宰した「私の心の中の最も素晴らしい先生」という大規模な子弟謝恩活動において、生徒たちは彼らの独自の観点に立ち、生活の中の小さなエピソードから、教師への賞賛と感謝を表現し、教師たちにこの職業の幸せをひとしお感じさせ、感動の後には、それも増して大きな激励を与えた。実践が示しているように、生徒が担当した活動は形態が斬新で、スタイルが独特で、想像力と創造性に富んでいる。一群の生徒リーダーはこのようなトレーニングの中ですでに頭角を現している。
徳育事業において、本校は多様なカルチャーショックの下では、優秀な生徒の徳育の目標は生徒を教育してモラルの最低ラインを守らせることだけではなく、それ以上に、彼らに中国の振興のために勉強するのだという理想と信念を持たせ、祖国の郷土愛のために全力を尽くさせ、大国の振興における責務を負わせることであると、あくまでも考えている。そこで、本校は「関心を持つことを学ぶ」ということを徳育の核心とし、生徒の心情体験を通じて、生徒の人間性の中の最も原初的な同情心と憐憫の情を呼び起こし、育才の生徒たちの常に心を民族とつなぎ、国家とつなぐという責任感、祖国のために担うという大きな愛の心を育てることを堅持している。
2. 社会との対話、担う責任
生徒の環境保護サークル「根と芽」グループは瀋陽渾河の水質調査、渾河沿岸の土壌汚染状況分析など、一連の生態保護活動を展開してきた。陽光ボランティア協会はチャリティバザー、勤工倹学(訳注:学校運営方法の一つ。生徒を一定期間労働に従事させ、その収入を学校運営の資金にする)などの方法によって資金を集め、福祉施設の児童を援助している。一部の生徒は障害のある児童を思いやり、「愛の心 企業家ボランティア活動」に参加している。四川地震発生後、育才の教師・生徒はただちに行動を起こし、わずか2日間で義捐金は50万元を超え、その後も続々と集まって総額122万元に達した。フランスで交流を行っていた育才生、アメリカの大学で学んでいた育才の卒業生も祖国、被災地と心を一つにして、フランスの街頭で積極的に募金を集め、キャンパス内で救援募金活動を行った。何人かの生徒ボランティアは休暇を利用して自費で雲南へ教育支援に出かけ、地震後の北川高校に駆けつけ、復興再建中の四川安県を訪ねた。生徒の行動は、祖国を愛し、人民を愛し、故郷を愛し、自然を愛する彼らの思いやりの心と、喜んで奉仕し、勇敢に担う公民としての責任意識を十分に表していた。
生徒の道徳知を発達させるために、本校はさらに生活と現実社会の中で直面する道徳に関する注目の話題、解決しにくい問題などを徳育活動の対象として、スピーチコンテスト、討論会、弁論大会、テーマ別ホームルーム、テーマ別学校大会など、多様な形態のテーマ活動を展開することを通じ、生徒に調査、分析、討論、評価の中で、問題解決の糸口を見つけさせ、それによって生徒の道徳的思考能力と選択能力を伸ばしている。たとえば、誠実さと有用性、自律と他律等の問題に的をしぼって行う弁論では、生徒たちは正反両方の観点に立って思索、評価、選択を繰り返す。「世界エイズデー」には、生徒たちは街に繰り出し、自分たちのテーマ研究の成果を宣伝し説明した。昨年、本校はさらに東北育才教育集団第1回生徒代表者会議、少年代表者会議を成功裏に開催したが、生徒代表者会議の提案の中で、『キャンパス設計についての私見』は生徒が学校の主人公となり、学校の発展に関心を持つという精神を体現していた。生徒たちが自ら資金を調達して創刊した雑誌『育才人物』、瀋陽市その他の四つの高校と共同で創刊した中高生の雑誌『交点』は、育才人の精神的追求と価値の品位を示すものであり、教師・生徒と保護者の大きな反響を呼び、入手が困難なほどである。こうした様々な活動の中で、生徒は真の意味で徳育の主体となり、徳育の自主体験を実現し、同時に生徒の道徳知も発達し、生徒の独創的人格が作り上げられている。
(二)育才のカリキュラム基準を確立し、人材養成の規格を保証
カリキュラムはエリート教育の最も強力な支えであり、東北育才ブランドの特色を示す重要な媒体でもあり、それ以上に本校のリーダー的資質を持った人材の養成という目標を実現する鍵であって、それは生徒の生涯にわたる発達と、教育の質全体の向上に直接影響を与えている。2008年、本校は文化のレベルからカリキュラム建設という目標を提示したが、それはすなわち、カリキュラム改革の実施推進の助けを借りて、本校のエリート教育実験実施以降のカリキュラム改革の成果を整理、統合し、しっかりと本校の養成目標を中心に据えて、大局的カリキュラム観の下におけるエリート教育カリキュラム体系及び実施戦略を積極的に構築し、カリキュラムの質を絶えず向上させ、カリキュラムが社会の要請とエリート教育の養成目標のために役立つようにし、卓越性の追求を中核とする育才精神を体現するということである。
本校のカリキュラム建設目標を実現し、新たなカリキュラム改革の下での育才の人材養成のレベルと規格を保証するために、本校校長は中堅教師を組織して東北育才カリキュラム基準の編纂に着手した。カリキュラム構造からいえば、育才のカリキュラム基準は三つの部分―『国家カリキュラムの学校ベース化綱要及び実施案』、『学校ベースカリキュラムの開発綱要及び実施案』、『生徒活動のカリキュラム化綱要及び実施案』から構成されている。カリキュラム基準編纂の過程で、本校は事業の重点を優先的に国家カリキュラムの学校ベース化改造に置いてきた。学校ベース化改造の力点は、国家カリキュラム基準の有効な実施を保証するという前提の下で、育才の特質と品格を際立たせることにある。
1. 国家カリキュラムの学校ベース化綱要は、教科を編纂単位とし、育才の数学、英語、日本語等の優勢な教科、特色のある教科によって牽引し、点で面を率い、次第に広げていくというものである。内容編纂においては、「学校ベース化」の内容と国家カリキュラムの関係及び選択の根拠について詳しく述べている。内容面で、新たなカリキュラム基準に基づいた三つの目標は「知識と技能」、「プロセスと方法」、「心の姿勢と価値観」の三つの部分をカバーしており、うち、「プロセスと方法」は生徒の学習の質と思考の質の養成を重点とすることを強調している。こうして人材養成の「ハイレベル化」を具体化し、かつ教室教育の具体的実施方法を提示したことにより、学校カリキュラムは卓越したイノベーション人材養成の必要性を真の意味で満たすようになった。綱要は本校の人材養成の規格を明確にし、東北育才の小学校教育から高校教育に至る各段階の教育実践を統合・整理した。
2. 学校ベースカリキュラムの開発綱要
育才は1995年から、必修科目、選修科目、活動科目の三位一体のカリキュラム構造モデルを徐々に確立し、これとセットになった単位制改革を展開した。1999年、本校は研究的学習を正式に教育計画に組み込むとともに、単位制管理を実施した。カリキュラム改革の直前、本校はすでに100余りの選修科目を相次いで開発するとともに、養成目標を軸として、学校ベースカリキュラム開発の基本原則―すなわち基礎性、多様性、選択性、独自性、補足性を体現すること―を作り上げていた。専門家・学者の講演、講座を主な形態とする小型カリキュラム体系を形作り、どのカリキュラムでも選択履修を希望する生徒が5人いれば、教師を組織して授業を開設するという制度を確立していた。
選修科目には、視野を広げ、思考のレベルを引き上げることを主とした拡張的科目、たとえば「英語学習法指導」、「一緒に数学で遊ぶ」などが開設された。卓越したイノベーション人材の養成という特殊なニーズにかんがみ、先端科学探究、高校生の職業生涯プラン、集団メンタルトレーニング、指導力アップトレーニング、模擬国連などが追加された。このほか、茶道、陶芸は、生徒の教養と道徳修養を高めるためのカリキュラムサポートを提供した。選修科目は非常に豊富で、体育類だけでも、通常のサッカー、バスケットボール、バレーボールのほか、さらに、テニス、射撃、ロッククライミング、水泳、ボートレースなど、特色ある体育カリキュラムを開設している。育才は巣立っていく生徒たちが全員、射撃、水泳、卓球を習得することを望んでいる。
カリキュラムの豊富さは生徒の優秀さを決定づけており、生徒の総合的な資質が向上すれば、彼らは外国の大学への申し込みにおいても、国内の自主的学生募集においても、喜んで受け入れられるのであり、育才の生徒の大らかさ、自信、豊かな教養、高い品性は、社会から広く認められている。アメリカの小中学校長訪中団はかつて二度にわたり育才へ視察と交流に訪れ、育才のカリキュラムは「一人ひとりの子供のために素晴らしい明日を準備している」と評価した。
この数年間、本校は施設建設をさらに完全なものとし、イノベーション人材養成のカリキュラムの拠り所を強化し、遼寧地下資源展示室、生命科学展示室、自動車模擬運転室、建築設計室、ファッションデザイン室などの汎用技術教室を新規に建設し、既存の四つの先端科学実験室とともに、カリキュラム改革と組み合わせた総合実践センターを作り上げた。2009年、本校はさらに敷地15ムーの国内基礎教育では初の生態科学普及基地を建設し、袁隆平院士が同基地のためにその名を題した。育才の科学普及基地は、一方で、少数の生徒を対象に生命科学の研究を展開して、現有の生命科学実験室のために実験基地を提供し、他方で、全生徒を対象に労働教育を展開し、生徒の農業科学に対する興味と情熱を育て、国家のために農業科学分野のリーダー人材を育成することに努めている。
3. 生徒活動のカリキュラム化綱要
学校ベースに基づいて開発した総合実践活動科目は、一つの新しいカリキュラム形式として、新たなカリキュラム改革の実施後、学校の必修科目に組み込まれ、生徒が社会を理解し、社会と対話し、社会に奉仕するための広範なカリキュラム空間を提供してきた。新たなカリキュラム改革の必要に応えるために、東北育才は既存の生徒サークル活動の位置づけを速やかに調整し、「小学校は幅広く、中学校は活発に、高校はきめ細かく」という構想の下に、選修科目、研究的学習、社会実践の結合したサークル組織を作り、豊富で多様なサークル活動を展開し、生徒活動のカリキュラム化を実現している。
たとえば、創立60周年の慶祝期間中に、本校は案内ボランティア、解説ボランティアなどの活動科目を開設し、北京オリンピック、上海万博の期間には、多くの生徒が積極的にそれらに参加した。生徒はカリキュラムの要求にしたがって活動任務を果たしさえすれば、科目の単位を得ることができる。またたとえば、本校の模擬国連科目は、教師の指導の下に、生徒サークル模擬国連協会を設立し、サークルの普段の活動と選修科目を結び付けるとともに、期末に校内で模擬国連大会活動を展開し、一部のサークルメンバーは招待を受けて、アメリカ、オランダで開かれた国際模擬国連大会に参加した。生徒たちはさらに「ゼロ予算」の原則にもとづき、校内において数千人の参加する盛大な「地球村」活動を組織し、多くの外国大使館・領事館員の関心と賞賛を集めた。2009年、生徒は呼びかけを行い、世界遺産青少年保全者全国連合会を設立した。世界遺産教育の面で上げた業績により、2007年には、国連ユネスコ事務局長松浦晃一郎自身から、本校に「国連ユネスコ世界遺産教育実験学校」の扁額とメダルが授与され、東北育才はこの栄誉を受けた世界で唯一の学校となった。
カリキュラム基準は『東北育才学校運営基準』の一側面の内容でしかない。2007年より、本校はエリート教育の学校運営成果を真剣に総括したうえで、キャンパス建設基準、カリキュラム基準、陣営基準、管理基準という四つの面から学校運営品質の固定化に着手し、東北育才学校の独自規格の事業基準を作り上げた。この事業は業界専門家の関心と好評を呼び、『中国教育報』は我々の方法と経験を宣伝し、普及を行った。学校運営基準は校長の業務マニュアル、教職員の行動指針であるだけでなく、東北育才が質の優れた教育資源を周囲に広げ、遼寧省の教育のために役に立つ重要な保障でもある。特に2008年、本校は「教育サービス委託管理」という方式を創造的に採用することにより、東北育才撫順学校を設立し、集団非緊密層の発展ための第一歩を大きく踏み出した。東北育才撫順学校設立の成功は、育才のブランド、学校運営基準、中核的陣営の送出によるところがきわめて大きい。
今年度に公布実施された『国家中長期教育改革及び発展計画綱要(2010~2020)』は、「教育の法則と人材成長の法則を守り、教育改革を深化させ、教育方法の新機軸を打ち出し、様々な養成方式を模索して、各種の人材が輩出し、卓越したイノベーション人材が絶えず大量に現れる局面を作り出す」と指摘している。イノベーション人材養成の新たなモデルをさらに模索するために、1年余りにわたる検討を経て、今年度、本校は中3の本校内部進学生を対象に、42名を公開で選抜し、高校にイノベーション実験クラスを開設した。イノベーション実験クラスのカリキュラム構造は「基礎+専門必修+方向性を持った専門選修」と定められ、うち基礎カリキュラムは国の各教科カリキュラム基準の比較的高い要求に達しており、思考技能課程、創造技法課程、創造活動課程等の専門必修課程及び、ソフトウェア科学、インテリジェント機器とロボット、生命科学など、方向性を持った選修課程を重点的に際立たせている。イノベーション実験クラスの発展を支え、本校の人材養成規格を保証し、本校のイノベーション型陣営建設を支えるのに有利となるように、本校はさらに全国で初の、研究、訓練、評価を主な職能とするイノベーション教育研究所を設立した。
(三)国際教育の進展を推し進め、人材養成のレベルを引き上げる
今日、経済の一体化は教育の国際化という趨勢の急速な変化を促しているが、世界的名門校の建設に力を入れる東北育才について言えば、チャンスをつかみ、教育理念を転換し、グローバル教育という背景の下で教育の国際化戦略を実施し、国際教育の協力と競争に積極的に参加し、国際教育とリンクしたカリキュラム体系を構築し、生徒の開かれた意識、国際的参加精神、国際競争力の養成を重点とすることによって、初めて世界の潮流に適応し、経済・社会の発展のためにより多くの、より優れた世界に通用する人材を提供することができるのである。したがって、資質の高い世界市民を養成する教育プロセスの中で、東北育才は主体的に中国と西洋の教育理念を融合させ、人材養成とイノベーション発展の面で世界とリンクしており、かつ中国文化を継承することによって、東北育才の先進的文化が国際教育の中で十分体現されるようにし、大国の振興における一名門校としての責任を担っている。
1. ハイレベルな国際交流プラットフォームを構築する
まず初めに、本校は中国と西洋の教育の優位点を融合させ、アメリカ、ドイツ、日本、韓国、シンガポール等国々の14の英才教育校と友好校関係を打ち立て、さらにドイツゲーテ学院、アメリカ・イリノイ州数理アカデミー等の国際機関・学校とともにプロジェクト協力を展開してきた。次に、本校は全方位、多分野にわたる、ハイレベルな国際協力と交流を積極的に推進してきた。ここ数年、本校は毎年平均して世界の来訪客延べ200人余りを受け入れ、教師・生徒延べ70人余りが国際交流に参加してきた。頻繁な国際交流は、育成生のリーダー的資質を鍛える幅広い舞台となっている。
2004年から、育才生はアメリカ・イリノイ州数理アカデミーの生徒と、世界経済や中米両国関係などの問題をめぐってテーマ研究を展開している。2005年、本校生徒の蘇小恬は代表として、中国教育部と日本日中友好会館の共同開催による「中国高校生100名第7次訪日」活動に参加した。訪日期間中、当時の高校部生徒会副会長であった蘇小恬は優れた総合的資質と、英語と日本語の二つの外国語をマスターしているという特徴により、100名近くの優秀な生徒の中で頭角を現し、訪問団の中で唯一の中央テレビ特約少年記者となり、訪日活動の全行程にわたる追跡報道を行った。2008年、さらに生徒環境保護サークル「根と芽」グループは唯一の高校生団体として招待を受け、エール大学が中国で展開した「都市環境危機管理」生態プロジェクト研究に参加した。アメリカ・シカゴ市のデイリー市長も本校を訪問後、「東北育才の生徒の様子から、私は次世代の中国人の生活の質を見てとることができた」 と評価した。国際交流に参加する教師・生徒、外国留学を志す生徒の数が年々増加するのにともない、本校は2009年、国際交流指導センターを設立して、学校の国際交流プロジェクトの開発を専門に担当し、国際交流への参加や留学によって造詣を深める生徒のために働き、生徒が世界へと向かうためのより広いプラットフォームを構築している。
2. 学校ベースカリキュラムの国際化戦略を立てる
経済のグローバル化、世界の情報化という背景の下で、文化の多様性、相互融和が趨勢となっているため、近年、東北育才は学校ベースカリキュラム建設の国際化戦略を適時に提示してきた。学校運営体系の面で、本校には外国語特進クラスと国際部が、集団には外国語学校と2か国語学校があり、「中国人生徒が出て行き、外国人生徒が入って来られる」という国際化運営構造ができあがっている。これらの学校運営実体の存在も、本校の構築するカリキュラム体系の国際化の度合いを高めてきた。
現在、本校国際部はすでにIB、AP等の国際科目を導入し、主に外国籍在華子女を対象に開設しているが、本校の高校生は自分の興味や好みに基づき、カリキュラムの選修に参加することができる。このほか、本校はさらにSAT、TOEFL、SDP(ケンブリッジ大学国際技能拡張カリキュラム)等の国際科目を導入し、世界文化遺産と若者、模擬国連、ドイツ語など、さまざまな学校ベースカリキュラムを開設するとともに、特に外国へ行く意思のある生徒を対象としてゴルフを開設しており、今後はさらに野球、ソフトボール等の国際科目を開設し、卓越したイノベーション人材の国際的視野を広げ、生徒の生活体験を豊かにしていく所存である。
東北育才では、学校ベースカリキュラムの国際化は、学校内部のカリキュラム建設に表れているだけでなく、国際化カリキュラムが内容とタイプの面でともに多様性、豊富さという特色を示し、また学校ベースカリキュラムの国際的輸出及び引用として表れており、たとえば、本校が自主編纂したオリンピック競技指導、対外中国語教育等の方面に関する講義録は、すでにシンガポール、アメリカなど国外の学校によって採用されるとともに、外国の学校における中国語科目の開設を一対一で支援している。2010年以来、本校はアメリカ・ミシガン州オックスフォード学区、ペンシルバニア州 EPSCOPAL ACADEMY姉妹校と提携し、相次いで孔子学堂を設立してきたが、これらは遼寧省が海外で最も早く設立した孔子学堂となっている。
3. 学校ベースの国際化理念に基づいた訓練
近年、本校はさらに国際化戦略の中で、学校の国際化によって促される新時代の教員の専門性発展を、かつてない高さにまで引き上げてきた。これまでに全校教師の20%が外国へ行ったことがあり、うち英語教師は100%が最低1回は外国へ行っており、その他の教科にもおしなべて同様の状況が見られる。出国したことのある百余人のうち、半分の教師が参加したのは1か月以上の国外特別訓練や交流であった。
2010年には、4名の教師がSDP(ケンブリッジ大学国際技能拡張カリキュラム)の教員訓練に参加した。SDPカリキュラムは、特に中国人生徒の学習技能方面及び素質の相対的な弱さに焦点を定めて設計開発された短期技能強化カリキュラムであり、趣旨は中国人生徒の思弁能力、イノベーション能力、独立して学習・研究する能力、集団精神、交流及びデモンストレーション能力を養成することにある。国際訓練や交流に参加することを通じ、教師は先進的な教育理念、教育技能を持ち帰り、教師間で自分たちの収穫を交流、共有するとともに、実際と結びつけて自分たちの教育業務の中に活用しており、新カリキュラム改革を効果的に実施する能力が大いに高まっている。
4. プロジェクトを拠点として国際的ブランドの建設を推進
東北育才は資質の高い世界市民を育成する教育過程において、生徒が郷土愛を持つよう感化することを十分に重視し、中国文化の尊重と継承を強調し、本校が国際化の中で「外国を参考にする」ことに関心を持つだけでなく、「外国に送り出し」、中国の名門校の先進文化を世界へと打ち出すことをより重視している。そのため、本校はハイエンドプロジェクトの実施を拠り所として、東北育才ブランドの建設という国際化の歩みを絶えず推し進めている。
一方で、中国国家対外中国語教学指導グループ弁公室の定めた「中国語国際普及小中高基地」として、本校は同弁公室を拠り所に、中国語を学びに来校する外国の小中高生を受け入れ、中国語教師及びボランティアを外国に派遣し、現在、すでに教師たちがそれぞれ韓国、ロシアなどに赴いて教職に就いており、中には1年間に及んでいる者もいる。同時に、外国人生徒の夏季キャンプ活動を積極的に引き受け、2009年の中朝国交樹立60周年に当たっては、「中国語橋―朝鮮人高校生夏季キャンプ」代表団の受け入れに成功した。今年、本校はさらに中国国家対外中国語教育指導グループ弁公室を拠点として、アメリカ・ミシガン州ケンブリッジ学区と共に「世界高校生平和楽団」を組織するが、本校はこの機会を利用して民族器楽団を設立し、同弁公室の専門家の援助により、生徒を世界の中高生の芸術公演ではトップレベルの舞台に立たせることになっている。本校もこれをプラットフォームとして、生徒の国際的視野をさらに広げ、生徒の多元的発育を促進していく所存である。
他方で、国連ユネスコクラブの学校として、本校は積極的に世界遺産教育を推進し、2009年には、国家「第11次5か年計画」のテーマ『中核的価値観の視覚閾における世界遺産教育実施戦略についての研究』の申告に成功し、現在、本校の『世界遺産教育と中高カリキュラムの整理統合』、『世界遺産生徒サークル』の二つの事例はすでにテーマ成果に入れられている。今後、本校はさらに中国ユネスコ全国委員会の指導の下、ユネスコ世界遺産教育実験学校及びユネスコクラブ学校という身分を拠り所として、東北育才における世界遺産青少年教育センターの設立を申請し、東北育才の東部3省、さらには全国の世界遺産青少年教育における先導的役割を発揮し、同時に第1回「中国世界遺産国際青少年冬季キャンプ」を引き受ける態勢を整え、生徒の発達のために国際的プラットフォームを構築し、生徒のグローバル意識と、異文化間交際能力を高め、本校の国際教育における影響力を高めていく所存である。
(四)名教師養成プロジェクトを実施し、教師の専門性の発展を促す
教師はカリキュラムの実践者であり、カリキュラム改革の要であり、教師陣の建設に力を入れることは、新たなカリキュラム改革を推進し、本校の養成目標を実現するための最も根本的な戦略的準備である。育才は長年にわたる教師の学校ベースの訓練経験を踏まえて、2005年、集団内の名教師養成シリーズプロジェクトを正式にスタートさせ、全教職員の専門性の発展を推し進め、「自己を乗り越え、卓越性を追求する」という学習型、研究型陣営を作り上げてきた。
このプロジェクトには、本校の全教師が参加し、自身の成長状況に基づき、適任、中堅、教科リーダー、名教師という四つの段階基準にしたがって、実現可能な目標を自主申告している。我々の評定基準では、育才の「適任」教師はすべてカリキュラム改革が教師に提示している基本的要求を必ず満たしていなければならず、「中堅」ランク以上の教師は必ずカリキュラム改革の中核、カリキュラム改革のパイオニアとして、学校ベースカリキュラムを開発し、カリキュラムの実施を指導する能力を必ず具えていることが必要である。
プロジェクトのスムースな実施を保障するために、本校は教師の専門性発展基金を設けている。教師が成功を競い合えるよう助けるために、本校はさらに計画的に的をしぼって、学習、訓練、研究活動を展開してきた。2006年、カリキュラム改革の正式なスタートの前に、本校は教師を組織して、新カリキュラムとマッチする『東北育才名門教室』を編纂。内容は九つの教科をカバーし、計32冊、600万字近くに達し、瀋陽出版社から出版された。この叢書の編纂を通じて、教師らはより深く、より速く新カリキュラムを認識し、新カリキュラムを会得し、教師たちの専門的資質と、新カリキュラムへの対応能力が大いに高められた。2008年から、本校が再び教師を組織して育才カリキュラム基準を編纂し、彼らに国家カリキュラム基準を基礎として、現代教育とカリキュラム改革の方向に基づき、東北育才生の特色に合った基礎カリキュラム実施綱要を作らせてきたことには、大きなチャレンジ性があったが、しかし本校は、カリキュラム基準編纂の助けを借りて、教師に教育実践の中で教育の知恵を鍛えさせ、彼らの専門的資質と、新カリキュラムを実践し、エリート教育を実践する能力を高めることを望んでいるのである。
任務によって学習を後押しするほか、本校はさらに「名教師教壇」を開設し、瀋陽師範大学と共同で大学院生学位クラスを組織し、教師を国内外へ視察学習に派遣している。名教師プロジェクトの実施過程で、校長、専門家、学部評定チームは教室に入り,聴講、講義評定指導を行い、評定に参加した教師を招き個別に話し合いを行ってきた。参加教師は専門性発展計画の作成、教育体験または論文の執筆、論文口頭試問への参加といった練磨を経ることにより、専門性発展の途上で、程度の差こそあれ、それぞれ感動、収穫、成長を得てきた。
2009年、本校は名教師プロジェクトの第3次評定を終えたが、教室に焦点を合わせ、検討交流を行うことにより、中堅クラス以上の教師の教科教育、学校ベースカリキュラム開発における模範的・指導的役割がしだいに発揮されるようになってきた。現在、本校の中堅クラス以上の教師はすべて、最低一つの選修科目を開設する能力を具えている。歴史の教師は茶道の科目を開設し、政治の教師はファッションデザインの科目を開設し、国語教師は太極拳の科目を開設している。我々はさらに集団内の資源共有を実現し、国際部、小学部の教師はすべて中高の生徒のために選修科目を開設し、中高の新たなカリキュラム改革のために働き、育才の卓越したイノベーション人材の養成のために働いている。
(五)社会の隠れた教育資源を掘り起こし、人材養成の共同の力を形成
開かれた学校運営は現代の学校制度建設における一つのきわめて重要な内容として、生徒の独創的発達に有利な一切の教育力を整理統合するのに有利である。長年にわたり、東北育才は現代の学校制度建設の模索の中で、あくまでも人を根本とし、開かれた学校運営の度合いを拡大し、教育資源の深いレベルでの開発と利用を行い、エリート教育理念の下における卓越したイノベーション人材の養成にとって、重要な推進作用を果たしてきた。
1. 社会の教師人材を吸収し、教師陣のレベルを上げる
2010年に公布実施された『国家中長期人材発展計画綱要(2010~2020)』では、「ハイエンドな先導」を人材養成の指導方針の一つとし、人材集団建設におけるハイレベルな人材の先導的役割を十分に発揮させなければならないことが提起されている。長年にわたり、東北育才はエリート教育の「ハイレベルな卓越したイノベーション人材の養成のために基礎を築く」という教育目標を実現するために、社会の教師人材を積極的に吸収し、青年エリートの成長を共に先導してきた。中でも、「先端科学実験室」の学校内外におけるイノベーション人材共同育成の面での実践と模索については、国務委員・陳至立がこれを賞賛し、育才の開かれた学校運営の実践経験を北京等で普及することを提起した。
育才の先端科学実験室は2000年に設立され、同年、本校は中国科学院金属研究所、中国科学院瀋陽応用生態研究所、中国科学院瀋陽自動化研究所、東北大学ソフトウェアセンターと協力して、材料科学研究実験室、生命科学研究実験室、インテリジェント機器・ロボット研究実験室、ソフトウェア科学研究実験室を立ち上げ、科学者を中高キャンパスに招聘し、先端科学分野の研究実験を中高キャンパスに導入した。それにより、生徒が中高時代から先端科学分野の実験研究プロセスを理解し、これに参加し、科学者の指導と薫陶を受け、科学への興味を育て、遠大な理想を抱き、科学的資質を高め、イノベーション精神、実践能力、責任感のある創造力を伸ばすことができるようにし、彼らが将来、先端科学分野のハイレベルなイノベーション型人材となるための基礎をしっかりと築いた。
これまでに、科学実験室に参加した生徒たちは教員の指導の下、数百万字に上る論文を書き上げている。四つの科学研究プロジェクトはインテルISEFに参加して賞を受け、延べ3人が全国「明日のこども科学者」奨励活動1等賞を受賞した。生徒に対する科学的資質養成の影響は暗黙の裡に転移し、多くの生徒は先端科学研究に参加したことによって、自身の一生の進むべき方向を定めている。今年、本校は学校運営の方法をいっそう広く開かれたものにし、さらに中国科学院瀋陽計算研究所、瀋陽機床(集団)有限公司、瀋陽(国家)アニメーション漫画産業基地など七つの大学、科学研究院・研究所、イノベーション型企業とともに育才科学教育協力単位となった。
科学実験室が社会の教師人材を吸収することに成功し、力を合わせて卓越した人材を養成してきたことを基盤として、本校は「教師陣営の社会化を実現し、社会資源を十分に利用し、高資質・高水準の非常勤教師陣営を確立する」という陣営建設目標をいっそう明確に提示した。一方、本校の小型カリキュラム体系は、しだいにこの目標を支える最も主要な媒体となっている。たとえば、「新東方」の創始者兪敏洪先生の英語学習報告、中国科学院院士蘆柯教授の「科学者は我々からどれくらい離れているか」という激励報告、アメリカの中国系女性科学者鐘端玲の「科学の成功へと向かう道」という科学技術報告など。社会の人的資源が入って来ることは、成功した有識者との「ゼロ距離」接触の機会を生徒のために作り出し、生徒を各分野の巨匠と対話させ、ひいては彼らの成功への意欲をかき立てている。
2. 家庭教育の力を借りて、社会に報いる
人材の養成には社会システム全体のサポートが必要であり、それには家庭からのサポートも含まれている。東北育才について言えば、学校の意思疎通の意義は家庭の教育水準を高めることだけにあるのではなく、本校の卓越したイノベーション人材の養成という教育理念を家庭に伝え広め、根付かせることに力を入れ、家庭教育と学校教育の価値基準が一致を保つように努め、それによって保護者の教育のエネルギーと教育への情熱を活性化し、学校と家庭が力を合わせてイノベーション人材を養成するという人材育成の状況を真の意味で作り上げることにある。
2006年、「一人の優れた生徒の背後には、必ず一つの優れた家庭がある」という認識に基づき、本校は学校運営の構想を開かれたものとし、毎週1回「両親と教師の約束」という一連の特別テーマ活動を展開した。「両親と教師の約束」は優秀な卒業生の保護者の力を借りて、科学的な家庭教育理念を伝え広め、活動現場を社会に向けて無料で開放している。登壇して講演を担当するのは保護者、教師、専門家のほか、優秀な卒業生などで、内容的には家庭教育指導、学校との意思疎通、学習法指導、成功事例分析をカバーしている。「両親と教師の約束」を通じて、保護者が経験に頼る人材育成から科学的な人材育成へ、知識・進学の偏重から高尚な人格の養成へと変わるよう導き、家庭教育のレベルを高めるだけでなく、特に本校の学校運営理念、価値基準を豊富な事例、平等で調和のとれた方法によって、保護者と社会に伝えることにより、卓越したイノベーション人材の養成のために家庭のサポートを提供してきた。現在、本校はすでに「両親と保護者の約束」の講演原稿の一部をまとめて、『共に子供の未来を先導する』を出版している。「両親と保護者の約束」は本校の三位一体の開かれた学校運営構造の一つの節点であり、本校の教育方式及び学校運営方式の転換と職能拡大の重要な体現である。育才にとり、「両親と保護者の約束」の価値は生徒の育成そのものだけに限られたものではなく、それ以上に、育才が地方の名門校として、社会に向けて教育の力を送り届ける責任を主体的に担ってきたことを示している。
60年にわたる開拓と変革、24年にわたるエリート教育の模索と発展を経て、東北育才は民族、さらには世界のために多数の若きエリートを育成してきた。生徒たちの学科コンテスト、科学技術イノベーション、スポーツ・芸術など国内外の各級各種の競技における成績は際立っており、国内外での大学入試成績は常に省内トップクラスにあり、毎年、百名余りの生徒が高額の奨学金によってケンブリッジ大学、ハーバード大学、東京大学など、世界の名門に入学し、エール大学だけでも本校から7名の卒業生が採用されている。さらに、栄えある「ゴールドマン・サックス・グローバル・リーダーズ賞」を受賞し、日本で初めての中国人弁護士となった王嶺、アメリカ大統領選の期間中、オバマの選挙運動のために働いた岳千荷、中国人留学生で唯一「アメリカ・ハーバード大学優秀卒業生」に選ばれた叢林など、数十名の国際競争力とイノベーション能力を具えた典型的育才生がいる。本校は「全国教育系統先進単位」、「国家教育品質管理モデル基地」、「中国創造学会創造教育実験基地」など多くの栄誉にも輝いており、また先進的な学校運営理念、卓越した学校運営の質によって、省内外、国際社会において一定の影響を与えている。日本の海部俊樹元首相、羽田孜元首相、元ドイツ首相、ホーク元オーストラリア首相、日本の国会議員、アメリカ・シカゴ市長など、世界の要人や、アメリカ・エール大学、プリンストン大学、イギリス・オックスフォード大学、ケンブリッジ大学、カナダ・マギル大学など、世界の名門大学の募集担当責任者も、本校を訪問後、一様に大きな賞賛の声を寄せている。2009年に本校を訪れた羽田孜氏は、「東北育才は世界でも稀にみる質の高い学校だ。生徒は各領域をカバーし、各分野で際立った成果を上げている」と評価した。