復旦大学脳型知能科学・技術研究院の加福民氏のチームは、脳・脊髄インターフェース技術を開発し、低侵襲手術で麻痺患者の脳と脊髄に電極チップを埋め込み、脳と脊髄の間に「神経のバイパス」を構築した。新華社が伝えた。
電極チップは脳から出る運動信号を正確に取得し、アルゴリズムを用いて信号を高度に解析した上で、特定の周波数と強度を持つ電気刺激へと変換する。これらの電気刺激は脊髄に埋め込まれた電極チップを通じ、損傷した脊髄の下方にある神経組織に作用し、下肢の指令による運動を活性化する。その結果、患者は自ら筋肉を制御し、下肢による直立や歩行機能を取り戻すことができるようになるという。
患者の林さんは2年前に事故で胸椎骨折、椎体脱臼、脳出血と診断され、その後は車椅子生活となった。同大学が患者を募集しているのを知り、昨年10月に応募。今年1月、一括立体特定方向頭蓋内電極挿入手術と脊髄神経刺激電極挿入手術を受ける初めての患者になった。
復旦大学附属中山医院神経内科の丁晶主任は「林さんは術後、目覚ましい変化を遂げた。1日目には右足をゆっくり曲げ、3日目には自らの脳制御下で両下肢の運動を実現した。8日目にはスタンディングフレームの補助下で直立の訓練を開始。10日目には重力サスペンションのサポートで歩行モードに徐々に適応し、自らの制御により両下肢の歩行を実現した。14日目には運動反応能力が徐々に上がり、右足を上げて障害物を越えることができるようになった。15日目にはサスペンションを用いた状態でスタンディングフレームを使い、単独で5メートル以上歩行できた。49日目にはサスペンションのサポートを受けながら歩行器を用いた独立歩行が可能となった」と解説した。
林さんに続き、河北省の趙さんと山東省の温さんも2月に手術に成功した。彼らも術後1日目に、機械の電源を入れてから1時間後には脳制御で足を持ち上げることができるようになった。
中国の脊髄損傷患者は約374万人で、毎年約9万人増加している。脳・脊髄インターフェース技術の新たなブレイクスルーは、麻痺患者に新たな希望をもたらすと見られる。
加氏は「さらなる普及はまだ難しい」と述べつつも、「人体に埋め込める成熟した電極チャンネル数が少なく、情報量が限定的な状況下で、運動信号のリアルタイムかつ高精度の解析は最も大きな課題となっている。また、脊髄の生理的構造は人によって異なる上に、人体の運動も非常に複雑で、立っている時と座っている時では足を上げる際の脳波信号が異なる」と説明した。
現在開発されている脳・脊髄インターフェース設備は大人の患者にしか適用できず、臨床試験に参加する患者は毎日5~7時間のリハビリを行わなければならない。そのため、患者や家族の積極的な協力が必要だ。
加氏のチームは今後も臨床機関と協力して臨床概念実証を進め、より多くのデータを蓄積してアルゴリズムのさらなる改良を図るという。また、頭蓋内埋め込み型脳・脊髄インターフェースの小型デバイスを改良し、製品登録に向けた臨床試験の準備を進めていく。
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