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【18-005】中国の知を世界舞台で輝かせる―中国科学技術部国際協力局長葉冬柏氏、新時代の科学技術外交について語る

JST北京事務所 2018年1月30日

 2017年10月に開催された中国共産党第十九回全国代表大会(十九大)の報告では、国際科学技術協力の推進に関する行動指針についても言及されたが、これに関連して科技日報が昨年12月、科学技術部国際協力局長の葉冬柏氏にインタビューを行った。本記事ではその概要をまとめる。

 「中国はすでに158の国・地域と国際機関との間で科学技術協力関係を築き、111件の政府間科学技術協力協定を結び、50余りの国・地域と国際機関の70を超える在外公館へ科学技術担当のアタッシェを派遣している……」

 科学技術アタッシェ事業を主管する科学技術部国際協力局長、葉冬柏氏は、科技日報記者のインタビューに、国際科学技術協力分野の「グループメンバー」を詳しく数えた上、「在外公館の科学技術担当アタッシェ(外交官)たちは、中国が世界の科学技術ネットワークへ溶け込むために変わりない活躍をしている。十九大以降、科学技術アタッシェたちはあらためて一連の新しい業務、使命と課題を迎えることになるだろう」と述べた。

新たな業務―人類運命共同体構築の促進

 「2017年の2つの大事件は、将来の国際科学技術協力の筋道を立てたほか、科学技術アタッシェへも新たな任務を付与した」と、葉氏は語った。

 (その1、2017年)5月14日に北京で行われた「一帯一路」サミットフォーラムにおいて、習総書記は「一帯一路」をイノベーションの道へ発展させようとの主張を示し、「一帯一路」科学技術イノベーション行動プランといったイニシアチブを始動した。これによって、科学技術分野の人的交流、共同実験室の共創、サイエンスパーク間の協力、技術移転という4つのアクションを実施し、「一帯一路」沿路国との科学技術イノベーション協力を深く推進することになった。

 「世界2番目の経済大国として、中国の発展速度は高く注目されている。世界の中国に対する見方や期待はかつてと変わっている一方、中国も世界の中心へ進出し、国際ルール制定への参与、発言力と影響力の向上を高めたと同時に、大国としての責任を負い、自らの発展の経験を友好国と共有することによって、世界の発展のための本当の貢献者になっている」と、葉氏は説明した。

 葉氏は、海外から技術成果を導入・消化・吸収して再イノベーションを創出する中国の能力は、多年にわたって経済開発へサポートを与えながら更に発展していることと同様、経済や社会の発展途上にある「一帯一路」沿路国も、先進技術を現地で転化するニーズがあると指摘し、「いかに効率的に転化し、回り道を避けることができるか? ここにこそ中国の経験はその価値がある。そして、互いに利益が得られウィンウィンとなるイノベーション共同体の構築において、科学技術アタッシェたちは、責任を負って新しい任務を担当していく」と述べた。

 (その2、2017年)10月18日、習総書記は十九大の報告に掲げられた「新時代における中国の特色ある社会主義思想と基本方略」について、人類運命共同体の構築を堅持しなければならないと強調した。

 葉氏は、「例えば気候変動に関し、報告では、『気候変動対応の国際協力を牽引し、地球エコ文明を整備する重要な参加者、貢献者と引率者になろう』との提言があった。そして、我々が今年8月に主催した第8回世界クリーンエネルギー閣僚会合において、世界でも先進的な温室効果ガス排出削減策略を打ち出し、前向きに実践を遂行した。今後、我々はイニシアチブを取って、環境とエネルギーをテーマに国際的な科学技術協力を系統的に推進していく」と述べた。

新たな使命―中国の知を生かすための国際化舞台の土台作り

 「科学技術アタッシェたちは、我が国の科学技術外交と国際科学技術協力イノベーション協力を担当する重要な力である。彼らが中国の知を生かすための国際舞台を築く努力は、世界の中国を観る視線を変えている」と、葉氏は科学技術アタッシェの核心使命について簡潔に述べた。

 12月8日、デリーザ・メイ英国首相とジャン・クロード・ユンカー欧州委員会委員長は、EU(欧州連合)の研究者が英国に残る条件等のEU離脱協定の課題について合意に達した。ちょうどこの2日前の現地時間12月6日に、中国科学技術部の王志剛党書記・副部長と英国ビジネス・エネルギー・産業戦略省のジョー・ジョンソン大臣が、「科学技術イノベーション協力に関する覚書」を締結し、中英科学技術イノベーション協力戦略を発表した。この中国が他国と共同制定した初めての二国間科学技術イノベーション協力戦略の締結現場に、葉氏は立ち会った。「これは、40年近く続く両国の科学技術イノベーション協力を基に、新たなステージに上がったことを表している」とコメントした。

 科学技術アタッシェを経験した葉氏は、「科学技術アタッシェは、我が国の科学技術力を熟知し、駐在国の科学技術状況にも詳しい。双方の科学技術イノベーションにおける協力が広く、深く、全面的に進むよう、主な使命として国際的なプラットフォームを構築することを求められている」と指摘した。

 中国は既に、米国、ロシア、イスラエル、EU等主要国と効果的な政策対話制度を設け、国際イノベーションパーク、国際共同研究センター、国際技術移転センター、国際科学技術協力パイロット基地を含む国際科学技術協力拠点を642か所持っている。

 このほか、科学技術イノベーションフォーラムや若者を対象とするイノベーション・創業コンテストの開催、合同実験室や合同研究センターの設立等による各種の人的交流制度の実施を通じて、中国科学技術人材の国際科学技術協力舞台へのアクセス促進に尽力している。

 「各国は本国の人材育成にさまざまな取り組みを導入している。中国は、かつては人材の純流出国であったが、今は人種を問わず、世界中から有用な人材を引き付け、その才能を発揮させるよう取り組んでいる」と、葉氏は、科学技術人材の誘致と交流推進も科学技術アタッシェの最重要な業務であることを強調した。

新しい課題―国際ビッグサイエンスプログラム・プロジェクトへの参与

 世界から中国科学技術への関心はますます高まり、中国の科学技術が世界で活躍する場もますます広がっている。

 葉氏は例を挙げながら、「最近、国際熱核融合実験炉(ITER)計画の理事長から、中国の研究チームは未来の科学技術、経済、社会発展へ重要な知恵と力で貢献していると評価された。従って、中国研究者による国際ビッグサイエンスプログラムとビッグサイエンスプロジェクトへの参与支援も、科学技術アタッシェたちが臨む新しい課題である」と述べた。

 現在、我が国の研究者はITERへ参加しているほか、地球観測に関する政府間会合(GEO)、国際深海科学掘削計画(IODP)、スクエア・キロメートル・アレイ電波望遠鏡(SKA)においても重要な役割を果たしている。また、中国はイニシアチブを取って、北京スペクトル分光装置(BES III)国際グループ、大亜湾ニュートリノ実験等の国際ビッグサイエンスプログラムを実施し、中国の科学技術イノベーションの世界での影響力向上へつなげている。

 「国際的なビッグサイエンスプログラムとビッグサイエンスプロジェクトを主導するには、世界で影響力を持つ科学者がいることが重要である」と、葉氏は「中国の研究者は既に国際的な科学技術組織で役員を務めている者がいるが、中国の大国としての地位の割にはまだ少ない。テーマや思想の提起にたける戦略的科学者と国際化を主導する科学技術管理人材は足りない。そこで、世界から各分野のトップ人材を引き付けるために、科学技術アタッシェたちに交流・連絡役を果たすよう求めている」と語った。


出所:

2017年12月20日 科技日報《让中国智慧闪耀国际舞台——科技部国际合作司司长叶冬柏谈新时代科技外交事业》
http://digitalpaper.stdaily.com/http_www.kjrb.com/kjrb/html/2017-12/20/content_384372.htm?div=-1

2017年12月12日 科学技術部HP《中英科技创新合作战略为深化两国合作翻开新的篇章》
http://www.most.gov.cn/kjbgz/201712/t20171212_136740.htm