【18-016】中国科技論文統計の概要
JST北京事務所 2018年12月4日
2018年11月に中国科学技術情報研究所が2017年の中国科技論文統計を発表した。以下の諸点を重要として報告している。
1.世界トップクラスのジャーナルでの論文数は世界第4位
・世界トップクラスのジャーナル7誌(2017年の被引用数が10万回を越え、インパクトファクターが35を超えるもの: New England Journal of Medicine,Chemical Reviews, Lancet, Journal of the American Medical Association, Nature, Chemical Society Reviews. Science)における発表論文10,803編中の中国の論文は699本で、6.5%。世界第4位。Article とReview に限った場合は、443本でやはり世界第4位であり、2016年発表論文についてのデータに比べて一つ順位を上げた。
・Science, Nature, Cellの3誌においては、2017年に発表された5,697本の論文中、中国の論文は309本、世界第4位であり、2016年発表論文についてのデータに比べて一つ順位を上げた。Article とReview に限った場合は、242本でやはり世界第4位であり、この点でも2016年発表論文についてのデータに比べて一つ順位を上げた。
2.高被引用論文、ホットな論文において世界第3位を保持
・2008年から2018年の被引用回数が各分野の世界のトップ1%に入る論文において、中国の論文は24,825本で世界の17.0%を占める。2017年の報告に比べ、23.3%増加し、世界第3位を保持。
・国際的にホットな論文(ここでは、最近2年間に発表された論文であって、最近2か月に多数引用されており、かつ被引用回数が各分野のトップ1%に入るもの)のうち中国の論文は842本で世界の27.6%を占める。これも世界第3位を保持。米国は1,629本で第1位。
3.材料科学の被引用回数は2年連続で世界1位、このほか10学科が世界第2位
・被引用回数世界第2位の学科は、農業科学、化学、計算機科学、エンジニアリング技術、環境・生態学、地学、数学、薬学・毒物学、物理学、植物学・動物学。今回の報告で初めて世界第2位になったのは、地学(順位が一つ上昇)、植物学・動物学(順位が2上昇)。
4.各分野のトップジャーナルでの論文数は、8年連続世界第2位
・各分野のトップジャーナルでの論文数は、8,259編で2016年に発表された論文についてのデータと比較して403本の減少。世界で15%のシェア。4 7.1%が国家自然科学基金委員会の支援を受けたもの。
→各分野のトップジャーナルに掲載された論文数が減少しているとのことだが、1に示すように世界トップクラスのジャーナルで、Article とReview に限った場合の順位を上昇させている。
5.国際論文の被引用回数の順位では世界第2位を保持
・2008年から2018年10月まで中国の研究者が発表した国際論文の被引用回数は2,272.40万回。2017年の統計に比較して17.4%増で世界第2位。
→2008年から2018年の論文数20万本を超える22の国家・地域のうち、中国は論文数と被引用回数で世界第2位。論文あたりの平均被引用回数では第16位。日本は、論文数で第5位、被引用回数で第7位、論文あたりの平均被引用回数で第13位。
6.国際科技論文数は9年連続世界第2位
・SCI(Science Citation Index)収録の中国の論文は36.12万本、世界の18.6%。中国の研究者が第一著者であるものは、32.39万本。米国は52.40万本で中国の1.45倍、世界の27.0%を占め、世界第1位。
7.国際共著論文が国際論文の4分の1を超え、国際的なビッグサイエンスの協力プロジェクトに参与した論文は継続して増加
・2017年に中国が発表した国際論文中9.74万本が国際共著論文で27%を占める。中国の研究者が第1著者であるものが69.7%。協力相手国・地域は155あり、上位6か国が米国、英国、豪州、カナダ、日本、ドイツ。米国とのものが国際共著論文の43.9%を占める。
・総合的な国力と科学技術の実力の増強に伴い、中国は国際的なビッグサイエンスの協力に参加する能力を有している。2017年中国の研究者が参画した論文中、著者が1,000人を超え、協力機関数が150を超えた論文が218本(2016年発表のものに比べ3.11%低下)。著者が100人を超え、協力機関が50を超えた論文が508本で分野は高エネルギー物理、天文と天体物理。生物学、医薬衛生等。中国の研究者が筆頭著者であるものは40本。
→中国の国際共著の傾向として、米国との共著が多く、中国の研究者が第1著者となることが多いことを示すグラフを以下に挙げる。
(※青が中国の研究者が第一著者、赤が他国の研究者が第一著者になっているもの。横軸の国名は、順に米国、英国、豪州、カナダ、日本、ドイツ。)
http://conference.istic.ac.cn/cstpcd2018/正文2018_2国际.pdf(資料中のページ番号でp9)
8.三方特許数で世界第4位に上昇
・2018年10月発表のOECD統計によれば、2015年の中国の三方特許(Triadic patents:同一発明・同一申請者又は発明者の同一発明による日本、米国、欧州特許)は2,889、世界の5.2%。2014年のデータに比べ、韓国を抜き、日米独に次ぎ世界第4位。
9.中国の科技ジャーナルの影響力は継続して向上、各学科でトップグループに位置づけられるものが増加
・CSTPD(中国科技論文・引用データベース)によれば、2017年CSTPD収録の自然科学のジャーナルは2,029誌、中国の研究者が第1著者の論文が47.23万本。社 会科学のジャーナルは394誌、中国の研究者が第1著者の論文が5.95万本。
・自然科学のジャーナル2,029誌のインパクトファクターの平均は、0.648。2001年以来、年平均5.8%の増加。各ジャーナルの総被引用回数の平均は1,381回で2001年以来、年平均10.6%の増加。
・SCI収録の中国のジャーナルは173誌、2016年のデータに比べて11誌増加。
・EI(EI-Compendex)収録の中国のジャーナルは221誌、Medline収録の中国のジャーナルは132誌。SSCI (Social Science Citation Index)収録の中国のジャーナルは2誌、Scopus収録の中国の雑誌は640誌。
・SCIに登録された中国ジャーナルの総被引用回数が各学科のトップ25%以内に入るのが12誌、インパクトファクターが各学科のトップ25%に入るのが46誌。
→中国発のジャーナルの育成にも重点を置いている中国の姿勢を示すものと言える。
なお、米国国立科学財団(NSF)が2018年1月に発表した"Science&Engineering Indicators 2018"では、2016年発表の論文数で米国を抜き世界トップとしている。
(
https://www.nsf.gov/statistics/2018/nsb20181/digest/sections/global-science-and-technology-capabilities , http://spc.jst.go.jp/news/180104/topic_4_05.html)
関連リンク
中国科技論文統計結果