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【19-008】中国科技論文統計2019年発表の概要

JST北京事務所 2019年11月25日

 2019年11月19日、中国科学技術情報研究所(ISTIC)が中国科技論文統計を発表した。毎年発表されているものであり、本年は、以下の諸点を重要なポイントとして報告している。

 データに表れる質の高い中国論文の増加のみならず、自国内に優れた論文発表のプラットフォームを構築することを志向していることがうかがわれる。

1.中国の「卓越論文」数が増加。研究成果は質の高いものに転換

・中国全土の研究機関や研究者・技術者にハイレベルな科学上の発見や研究成果の産出を奨励し、優れた学術環境をつくりだし、総書記の提言する祖国・中国で論文を書くことについての要求を実現するため、研究者に国際的にハイレベルの論文発表を行うばかりでなく、中国内ジャーナルでの優秀な論文を発表することが奨励されている。このことは、SCI(Science Citation Index)のみが評価の標準となることなく、学術的な対話と発信の権利を把握することにつながる。

・中国科学技術情報研究所は、科学計量学の手法*により、国際的な平均を超える国際論文、国内各分野のトップ1割に相当する国内論文を選び、「中国卓越科技論文データベース」を構成している。2018年の「中国卓越科技論文」は、計31.59万本(国際論文が14.45万本、国内論文が17.15万本)で、2017年に比べ、12.4%増。「国際卓越論文」は、中国の国際論文の36.4%を占める。

*国際論文については、各分野の被引用回数の平均を超えるものを中国卓越論文としている。国内論文については、中国科技論文・引用データベース(CSTPCD)中の中国科技核心ジャーナルに発表され、かつ、累計被引用タイムライン指標(n指数とも呼び、発表n年以内の被引用回数がn回に到達すればnとなる。)の各分野で望まれる値を超えるもの。

・臨床医学、化学、生物学、電子・通信・自動化制御の卓越論文数が最多。上海交通大学、北京大学、浙江大学、清華大学が卓越論文の高産出機関となる。中でも清華大学の卓越論文は、同大学の全論文の54%に達する。

2.高被引用論文において世界第2位、順位が一つ上昇

・2009年から2019年の被引用回数が各分野の世界のトップ1%に入る論文において、中国の論文は30,755本で世界の20.0%を占める。2018年の報告に比べ、23.9%増加し、順位を一つ上げ、世界第2位となった。世界でのシェアで3%上昇。米国が73,663本で第1位。米国は世界の48.0%を占める。英国が第3位で27,905本、世界シェア18.2%。ドイツとフランスが、第4位と第5位、それぞれ18,896本と12,415本、世界シェアで12.3%と8.1%。

3.国際的にホットな論文の数量において世界第2位、順位が一つ上昇

・国際的にホットな論文(ここでは、最近2年間に発表された論文であって、最近2か月に多数引用されており、かつ被引用回数が各分野のトップ1%に入るもの。最新の科学における発見と研究動向を反映していると考えられ、研究の最前線の方向を示すもの。2019年9月までのデータで比較。)のうち中国の論文は1,056本で世界の32.6%を占める。順位を一つ上げ、世界第2位。米国は1,562本で第1位。世界全体の48.2%を占める。英国が830本で第3位。ドイツが511本で第4位。フランスが830本で第5位。

・中国で最も引用数の多かったホット論文は、清華大学の研究者による「973プロジェクト」(中国政府の研究プログラムの名称)の研究成果で2019年10月までに710回引用された。

4.各分野のトップジャーナルでの論文数は世界第2位、順位不動

・各分野のインパクトファクターが最高のジャーナルが、最も影響力の大きなジャーナルと言える。これらのトップジャーナル155誌での論文数は、61,420本。中国の論文は11,318本で2017年に比較して3,059本の増加。世界で18.4%のシェアで世界第2位。7,574本、66..9%が国家自然科学基金委員会 の支援を受けたもの。米国は、22,017本でシェアは35.8%。

5.世界トップクラスのジャーナルでの論文数は世界第4位で変わらず

・世界トップクラスのジャーナル8誌(2018年の被引用数が10万回を越え、インパクトファクターが30を超えるもの: Nature, Science, New England Journal of Medicine, Lancet, Cell, Chemical Reviews, Journal of the American Medical Association, Chemical Society Reviews.)における2018年の発表論文12,172編中の中国の論文は828本で、6.8%。世界第4位。Article とReview に限った場合は、547本でやはり世界第4位であり、2 017年発表論文についての結果と同じ順位。

・Science, Nature, Cellの3誌においては、2018年に発表された6,641本の論文中、中国の論文は429本(前年に比べ120本増加)、世界第4位であり、2017年発表論文についての結果と同じ順位。米国が2,588本で1位。英国とドイツが続く。ArticleとReviewに限った場合は、317本でやはり世界第4位であり、2017年と同じ順位。

6.国際論文の被引用回数の順位では世界第2位を保持

・2009年から2019年10月まで中国の研究者が発表した国際論文は260.64万本で、引き続き世界第2位。数量では、2018年発表の統計データに比べ、14.7%増加。総被引用回数は2,845.23万回、25.2%増加し、世界第2位。米国が世界第1位を保持。

7.材料科学等3分野で被引用回数が世界1位

・中国は、6分野の論文数において、世界の2割を超えている。この6分野は、材料科学、化学、エンジニアリング、計算機科学、物理学、数学。

・材料科学、化学、エンジニアリングの被引用回数は世界第1位。化学とエンジニアリングは、今回初めて第1位となった。このほか、9分野が世界第2位であり、その分野は、農業科学、生物・生物化学、計算機科学、環境・生態学、地学、数学、薬学・毒物学、物理学、植物学・動物学。

8.国際共著論文が継続して増加。国際的なビッグサイエンス協力プロジェクト論文への参画も大きく増加

・2018年に中国が発表した国際論文中11.08万本が国際共著論文。2017年に比べ1.34万本の増加で13.8%増。国際共著論文は、中国発表論文の26.5%を占める。中国の研究者が第1著者であるものが69.1%。協力相手国・地域は157あり、米国とのものが国際共著論文の55.79%を占める。

・2018年中国の研究者が参画した論文中、著者が100人を超え、協力機関数が50を超えた論文が583本で前年に比べ75本の増加。分野は高エネルギー物理、天文・天体物理、医薬衛生、生物学等。中国の研究者が筆頭著者であるものは45本。

9.各分野でトップグループに位置づけられる中国の科技ジャーナルが増加

・2019年中国科技ジャーナル引用報告(※今回、同時に発表)によれば、中国科技核心ジャーナルのインパクトファクターは、0.689。2001年以来、年平均5.8%の向上。ジャーナルの総被引用回数の平均は、1,410回。2001年以来、年平均11.6%増。

・2018年、SCI収録の中国の科技ジャーナルは187誌、2017年に比べて14誌増加。Ei(Ei-Compendex)収録の中国のジャーナルは223誌、Medline収録の中国のジャーナルは128誌。2018年に総被引用回数が、当該学問分野のトップ25%に達したものは15誌で前年に比べ3誌の増。インパクトファクターが各分野のトップ25%に入るのが50誌で4誌の増。

10.中国語優秀論文と中国研究者がF5000プラットフォームから世界に発信

・中国の科技ジャーナルの全体的なレベルを上げるため、中国の優秀な学術成果の周知と利用を改善し、国際的な発言と最初の発表の機会・権利を拡大するべきである。科学技術情報研究所では、科学計量指標と評価を合わせ、毎年、中国の優れた科技ジャーナルから5,000本を目安として優秀な学術論文を選考し、「先導者5,000-中国の優れた科技ジャーナルのトップ学術論文プラットフォーム(F5000)」を構築している。英文の長文アブストラクトを用いて、中国の優秀学術論文の集中的な対外展示と交流の場としている。国際的な情報サービス機構と国際的な出版社の協力を得て、F5000論文の集中的なリンクや国際的な同業者への発信を行っている。中国語で発表される論文と研究者、中国語学術ジャーナルと国際学術コミュニティとの融合のための効率的なチャンネルとして提供しているものである。

・F5000プラットフォーム(f5000.istic.ac.cn)は、開設以来、641.4万回検索されており、米国、カナダ、イギリス、ロシア、日本、ドイツ等50か国からのユーザーのアクセスがある。米国からのアクセスは10万回を超える。ユーザーは、主に各国の大学、研究関係機関、重要な研究室等である。

・2019年、F5000プラットフォームは、国際的な学術ジャーナルの関心を得て、826のジャーナルのサイトからリンクが貼られた。これらのジャーナルには、Science, Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, Journal of the American Medical Association, British Medical Journal, Journal of American Medical Association, British Medical Journal, JAMA International Medicine等の国際的に著名な学術ジャーナルが含まれる。

・2019年、中国科学技術情報研究所F5000プロジェクトと騰訊基金会は協力して、F5000の研究者を「科学探索賞」に推薦した。4名のF5000研究者が「科学探索賞」を獲得。清華大学の3名とハルビン工科大学の1名である。F5000は、ますます研究者たちのよく知るところとなり、代表的論文を探し、評価するための新しいツールとなっている。