【20-004】教育部、基礎学科重視の大学学部生採用制度を実施
JST北京事務所 2020年1月29日
中国教育部は1月15日、「一部の大学において基礎学科を対象とする生徒募集改革の試行に関する意見」(「強基計画」ともいう)を発表し、国の重要な戦略領域における基礎学科の優秀な人材育成を強化していくとみられる。以下にその要旨をまとめる。
「強基計画」のねらいは、国の重大な戦略ニーズに向け、総合素養が優れるまたは基礎学科で能力抜群な学生を選抜・育成することである。対象領域は、ハイエンドチップ・ソフトウェア、インテリジェント技術、新材料、先進製造、国家安全等のコア領域および国家にとって切迫して人材を必要とする人文社会科学分野等とし、数学、物理、化学、生物および歴史、哲学、古文書学等は「強基計画」で重点的な基礎学科と指定される。最初の段階では、北京大学、清華大学、中国人民大学等36大学(別添参照)は試行校として選ばれ、2020年より「強基計画」に基づいて関連学科で学生採用を実施する。従来の一部の大学で実施していた大学が自ら基準を決めて学生を採用する「自主募集制度」は、同新制度の導入に伴って今後実施しないことになる。
新しい制度に基づき、試行校に選ばれた大学は、「強基計画」で定められた重点学科の募集において、既存の大学入学統一試験(高考)で「1本」(下注参照)の最低採用点数に達し、かつ同校に願書提出の受験生に対して総合評価を行い、そして受験生の総合素養評価(高校より提供)も考慮した総合的な評価を踏まえて付けた総合点数(注:統一入試の点数が総合点数に占めるウェイトは85%を下回らないこと)を基準とし、この点数順に採用することとする。また、同募集制度の対象にランク入りできないが、関連学科で特別に優秀である受験生に対し、大学は規定外の制度を設けることも可能という。
試行校は、「強基計画」制度で採用した学生に対する教育において、以下の趣旨に合った特別な養成計画とインセンティブメカニズムを導入するよう求められる。
・クラスを単独に編成し、一流の教員を配置し、一流の学習環境を提供し、一流の学術的環境と雰囲気を創造し、指導教官制を導入する
・修士課程へ試験免除による進学推進、(修士課程を飛び越して)博士課程への直通進学および奨学金配布等において、成績の優れた学生に対して優先的に配慮する。
・学士課程、修士課程と博士課程を結びつけた養成モデルの構築
・同制度で採用した学生らの国家実験室、国家重点実験室、フロンティアサイエンスセンター等への参与を促進し、重要な研究課題に直結する人材養成の仕組みを探索する。
・科学的かつダイナミックでいくつもの段階で出入可能な体制を作り、学生に対して総合評価を行い、科学的に配置転換する。
・在校生と卒業生を対象とする追跡調整の制度と人材成長データベースを整備し、「強基計画」による募集・教育の改善へ寄与する。
試行校の選定および試行校毎の「強基計画」に基づく募集の対象学科、採用人数等は、教育部が専門家による該当大学の総合評価を踏まえて決めるという。
注:中国では統一入試の結果を踏まえて、第1期本科採用(1本と通称する)、第2期本科採用(2本)、第3期本科採用(3本)という順番で3回に分けて学生の採用が実施されるが、各陣の最低採用点数が先に全国(広東省等一部の地域を除く)で統一的に定められる。そして、各大学がどの陣で募集するかは、同校の総合レベル等によって予め決められている。
参考:「強基計画」試行校リスト:(36大学)
北京大学、中国人民大学、清華大学、北京航空航天大学、北京理工大学、中国農業大学、北京師範大学、中央民族大学、南開大学、天津大学、大連理工大学、吉林大学、ハルビン工業大学、復旦大学、同済大学、上海交通大学、華東師範大学、南京大学、東南大学、浙江大学、中国科学技術大学、アモイ大学、山東大学、中国海洋大学、武漢大学、華中科技大学、中南大学、中山大学、華南理工大学、四川大学、重慶大学、電子科技大学、西安交通大学、西北工業大学、蘭州大学、国防科技大学
関連サイト
教育部 教育部关于在部分高校开展基础学科招生改革试点工作的意见(2020年1月15日付)