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【20-010】中国、新型コロナウイルス特異性免疫血漿製品を臨床使用へ

JST北京事務所 2020年2月19日

 中国の医薬分野で最大手の国有企業である国薬集団傘下の中国生物技術有限公司(以下「中国生物」と称す)は、新型コロナウイルス肺炎患者の臨床治療に利用可能な特異的免疫血漿の調製に成功したと、自社WeChat公式アカウントを通して発表した。

 中国生物は新型コロナウイルスに対応すべく、特異的免疫血漿製品と特異的免疫グロブリンの整備に取り掛かっている。これに備えて研究チームを結成し、1月20日より武漢地域で治癒したコロナウイルス肺炎患者を対象に血漿の採取を行い始めた。採取した血漿を用い、厳格な生物学的安全性の検査、ウイルスの不活化処理、および抗ウイルス活性の検測等を踏まえたうえ、臨床治療に用いる特異性免疫血漿を調製した。同社は、政府が制定した「新型コロナウイルス肺炎診療方案(試行第5版)」に基づき、自社の武漢生物製品研究所、国薬集団武漢血液製品有限公司、武漢市江夏区第一病院、武漢血液センター、中国科学院武漢ウイルス研究所、中国食品・薬品検定研究所等から協力を得て、2月8日より重篤・重症患者向けの臨床治療に進んだ。これまで10人を超えた重篤・重症患者に実施した治療の状況から見れば、同治療を受けて12~24時間後、実験室における検査の諸指標の下降が著しく、リンパ細胞の比例が上がり、血中酸素飽和度とウイルス量等の重要な指標も全面的に改善し、バイタルサインと症状に明らかな好転が見えた。

 専門家によると、治癒した患者の大多数の身体に、抗新型コロナウイルスの特異性抗体ができ、これは同ウイルスの失活化に有効であり、ワクチンや治療の特効薬に欠ける現状において、このような特異性免疫血漿製品を用いて対応することは、最も有効な手段として、重篤患者の死亡率を大幅に下げられるという。

 同研究は、「2019-nCoV感染快復期患者の特異性血漿・特異性免疫グロブリン調製」プロジェクトとして、中国科学技術部(MOST)の「公共安全リスク予防対策・応急技術装備重点プログラム」に採択され、湖北省科学技術庁と衛生健康委員会にも支援されている。また、中国生物は、特異性免疫血漿製品と免疫グロブリンの研究開発のほか、同社董事長(取締役社長)で、元「863計画」首席科学者である楊暁明氏を研究代表者とし、新型コロナウイルス失活ワクチン、新型コロナウイルス遺伝子組み換えワクチン、新型コロナウイルス単クローン等の開発にも取り組んでいる。その中でも、中国生物の子会社上海捷諾生物技術有限公司で開発された新型コロナウイルス核酸分子測定試薬キットは、すでに国家薬品監督管理局(NMPA)で登録し承認を得た。

関連サイト

中国生物《重磅消息!中国生物治疗性新冠特免血浆制品投入临床》2020-2-13