【21-062】中国の企業名称および国際会議の名称について
JST北京事務所 2021年12月28日
1.概要
中国の研究機関と初めて交流をする際に、主催者が公的機関であるのか純粋な民間資本により設立された研究機関であるのかが名称から判別しにくい場合がある。また同様に国際会議の中国側主催者が公的機関であるのかどうかの判別が難しい場合がある。
中国の企業名称や会議名称で公的機関のような印象を受ける可能性を有する字句について規制等があるが、本稿では判別の至便のため指標のひとつとして紹介する。
(以下の法令等にも関わらず、必要な承認を得ずに特定の名称を使用する企業等があり、当局から撤回を要求される記事も散見される。本情報は実態を保障するものではないため留意のこと。)
2.中国の企業名称を規制する主な法令の推移
1989年に「企業の年次検査と再登記に係る若干の問題に関する国務院が承認した国家工商行政管理局の意見通知」が発表され、企業名に「中国」「中華」「国際」の名称を使用するためには、国家工商行政管理局に報告の上、再承認される必要があることが法令で明記された[1]。
そして1995年には「企業名に『中国』等の文字を使用する問題に関する国務院弁公庁の通知」が発表され、今後国務院が設立を決定した企業以外、その他の新設企業(その他の各種経済実態を含む)は企業名の冒頭に「中国」「中華」「全国」「国家」「国際」等の名称をつけることが禁止された[2]。
また前後して、1991年に公布、2012年に初回改定の「企業名称登記管理規定」において、改めて上記1995年の国務院通達で禁止された名称を含む特定名称(外国国家(地区)、国際組織、政党、その他の法令で使用が禁止されている名称)の使用が禁止され、続く2020年2回目改正「企業名称登記管理規定」においては、外国企業の名称中に「(中国)」という語句を含めることが可能であることが追記された[3]。なお、企業名称の体系についても、以下のように規定されている。
①「行政区画名称(行政区划名称)」+②「商号(字号)」+③「業種または経営特徴(行业或者经营特点)」+④「組織形態(组织形式组成)」(例:「①北京②AAA③不動産管理④有限公司」)。
(補足)複数の行政区画や業者を跨いで総合的経営する場合は、当該要素を含まなくてもよい。
3.中国で「中国」「中華」「全国」「国家」「国際」等の名称をつけることが可能な企業
以下の企業において「中国」「中華」「全国」「国家」「国際」等の名称をつけることが認められているようである[4]。
(1)全国に展開されている企業
(2)国務院または権限を有する他の機関により承認された大規模輸出入企業
(3)国務院または権限を有する他の機関により承認された大規模企業グループ
(4)党や軍により設立または承認された企業等
4.中国で開催される国際会議における名称のルールについて
「关于在华举办国际会议的管理办法(中国で国際会議を開催する際の管理方法)」(中办发〔2006〕10号)という党中央・国務院の規程があるが、現在公開情報として見つけることができない。ただし本規程を受けて制定されたと思われる実施細則を公開しているサイトもあり、そこからある程度概要を推測できる。また各研究機関で定める規程[5]も本規程に準拠していると思われる。
実施細則からは、以下の語句について国務院および省・部レベルの事前承認が必要である旨が明記されている。(政治的に敏感なテーマでなく、外国人が30人以下の小規模な自然科学技術に係る国際会議であれば事後報告)
「サミット(峰会)」「国際フォーラム(国际论坛)」「世界大会(世界大会)」「グローバル大会(全球 大会)」「ハイレベル(高层会议)」「第1回(首届)」等
また、2008年に流通した「国際会議企画の流れ」において、「中国国際〇〇大会」「中華〇〇大会」のような名称とするには、実態を伴う必要がある旨の記載がある[6]。
「グローバル(全球)華人〇〇大会」「華人〇〇会議」等の名称とするには、国際学術会議(ISC。リンクの記載はISCの前進のICSU)の原則に基づく国際科学活動の趣旨に沿っている必要がある旨の記載があり、各大学等において、国際会議を主催するには、事前に大学内の国際交流担当部局等を通じた政府関係部門(大学は教育部)への申請と承認が必要であることが規定されている。
例として北京大学の「中国で開催する国際会議申請ガイド[7]」において、「会議の格上げを目的とする、サミットや国際フォーラム、世界大会、ハイレベル会議などの名称の無断使用は許さない。」とも規定されている。
なお、国際会議開催可否の承認ルートについて、中国科学院の規程によれば[8]、中国国内での国際会議開催可否の承認は、会議の主催者の性格や参加者の格など開催の趣旨によって、省(所在の地域)・部(所管の中央省庁)と国務院の二つのレベルに分けて所掌される。
(1)国務院の承認を得る必要がある会議は、①国連傘下機関や各専門機構主催の会議、②政府ベースと非政府ベースの重要な国際機関主催の会議、③中国の核心的利益および重要な敏感問題、国際問題に関連する会議、④他国の大臣およびそれ以上の官僚または元国家元首・政府首脳が出席する国際会議、⑤外国人参加者300人以上または全参加者800人以上の自然科学技術分野の専門・学術的国際会議とされる。
(2)上述した国務院の承認が必要な会議以外の国際会議は、省・部レベルの承認を得る必要がある。だが、政治やイデオロギー、台湾問題などに触れる会議の場合、外交部や台湾事務担当役所に照会し、了承を得る必要もある。
以上
1. 法律图书馆"国务院批转国家工商行政管理局关于公司年检和重新登记注册若干问题意见的通知"
2. 国务院办公厅关于公司名称冠以"中国"等字样问题通知(国办发〔1995〕36号)
3. 中華商標協会2021年3月1日"对照表|《企业名称登记管理规定》"
中华人民共和国国务院令第734号"企业名称登记管理规定"
4. 国家工商行政管理局关于国家工商行政管理局登记注册公司(企业)的范围和有关年检换照、重新登记注册问题的通知(1990年3月12日)
(補足)本通知の根拠となる「中華人民共和国企業法人登記管理条例」は、「中華人民共和国市場登記管理条例」が2022年3月に施行されたことにともない同時廃止された。「中華人民共和国市場登記管理条例」には特定名称が認められる要件についての明記はないが、現在も本通知に明記された要件の考え方に基づき実務が運用されているものと思われる。
6. 会议杂志2008年11月27日"国际会议策划的流程"
7. 北京大学2018-11-22"在华举办国际会议申办指南"