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【22-007】中国科技論文統計2021年発表の概要: 世界のトップジャーナルの掲載論文数で世界第2位に

JST北京事務所 2022年02月24日

 2021年12月27日、中国科学技術情報研究所(ISTIC)が中国科技論文統計を発表した。毎年発表されているものであり、本年は、以下の諸点を重要なポイントとして報告している。

1.中国の「卓越論文」数の増加継続

・ 中国科学技術情報研究所は、科学計量学の手法*により、国際的な平均を超える国際論文、国内各分野のトップ1割に相当する国内論文を選び、「中国卓越科技論文データベース」を構成している。2020年の「中国卓越科技論文」は、計46.38万本(国際論文が21.60万本、国内論文が24.78万本)で、2019年に比べ、19.8%増。卓越論文数が最多の分野は、臨床医学、化学、電子・通信・自動化制御、生物学。

・ 発表文によれば、科学技術の管理部門や研究者の関心を論文の数量から論文の質や影響力へと変え、オリジナリティの強いイノベーションを奨励していくことを重視している。従来奨励してきた国際的な場での高水準の論文発表ばかりでなく、国内ジャーナルでの優秀論文の発表も重視するとしている。

*国際論文については、各分野の被引用回数の平均を超えるものを中国卓越論文としている。国内論文については、中国科技論文・引用データベース(CSTPCD)中の中国科技核心ジャーナルに発表され、かつ、累計被引用タイムライン指標(n指数とも呼び、発表n年以内の被引用回数がn回に到達すればnとなる。)の各分野で望まれる値を超えるもの。

2.材料科学等4分野で被引用回数が世界1位 計算機科学では初

・ 2011年~20221年にかけて中国は、10分野の論文数において、世界の2割を超えている。材料科学、化学、エンジニアリング、計算機科学の4分野において被引用回数が世界第1位。農業科学、生物・生物化学、環境・生態学等10分野で被引用回数が世界第2位。

3.世界トップクラスのジャーナルでの論文数は世界第2位に 順位2つ上昇

・ 世界トップクラスのジャーナル15誌(2020年の被引用数が10万回を超え、かつインパクトファクターが30を超えるもの: Nature, Science, New England Journal of Medicine, Lancet, Advanced Materials, Cell, Chemical Reviews, Journal of the American Medical Association, Journal of Clinical Oncology, Chemical Society Reviews, British Medical Journal, Nature Medicine, Nature Genetics, Nature Materials, Energy & Environmental Science.)における2020年の発表論文25,454本中の中国のArticleとReviewは1,833本で世界第2位。2019年に比べて順位が2つアップした[1]

4.高被引用論文数、国際的にホットな論文の数量において世界第2位を維持

・ 2011年から2021年(9月まで)の被引用回数が各分野の世界のトップ1%に入る論文において、中国の論文は42,920本で世界の24.8%を占める。世界でのシェアで約2%上昇。米国が77,068本で第1位。米国は世界の44.5%を占める。

・ 国際的にホットな論文(ここでは、最近2年間に発表された論文であって、最近2か月に多数引用されており、かつ被引用回数が各分野のトップ1%に入るもの。最新の科学における発見と研究の動向を反映していると考えられ、研究の最前線の方向を示すもの。2021年9月までのデータで比較。)のうち中国の論文は1,515本で世界の36.3%を占める。2020年の報告に比べ、論文数が10.2%増加。世界第2位を保持。米国は1,751本で第1位。

・ なお、発表会においては、2011年~2021年(9月まで)の被引用回数が最多の国際論文10本が紹介されたが、5本が2020年に発表された臨床医学分野の論文。タイトルは発表されたスライドに掲載されていないが、Covid-19関連の論文と推定される。他の4本は2012年又は2016年発表の論文[2]

5.国際共著論文が継続して増加。

・ 2020年に中国が発表した国際論文中、国際共著論文は14.45万本。2019年に比べ1.44万本の増加で11.1%増。国際共著論文は、中国発表論文の26.2%を占める。中国の研究者が第1著者であるものが69.3%。協力相手国・地域は169。

・ 2020年中国の研究者が参画した論文中、著者が100人を超え、協力機関数が50を超えた論文が485本。分野は、粒子と場の物理、天文・天体物理、多分野物理、核物理研究等。

6.各分野でトップグループに位置づけられる中国の科技ジャーナルが増加 世界での存在感を強める

・ 2020年、SCI収録の中国の科技ジャーナルは225誌、2019年に比べて17誌増加。Ei(Ei-Compendex)収録の中国のジャーナルは229誌、Medline収録の中国のジャーナルは136誌、SSCI(Social Sciences Citation Index)収録の中国のジャーナルは2誌。2020年に総被引用回数が、当該学問分野のトップ25%に達したものは18誌で2019年に比べ2誌の増。インパクトファクターが各分野のトップ25%に入るのが85誌で16誌の増。

7.中国の科技ジャーナルの影響力が向上

・ 2021年中国科技ジャーナル引用報告(※今回、同時に発表)及び中国科技論文引用データベース(CSTPCD)によれば、CSTPCD収録の中国の自然科学分野のジャーナルは、中国語ジャーナルが1,952誌、英語ジャーナルが132誌。中国の研究者を筆頭著者とする論文は45.16万本。社会科学分野のジャーナルは、397誌で中国の研究者を筆頭著者とする論文は5.00万本。

・ 2021年中国科技ジャーナル引用報告によれば、中国科技コアジャーナル[3]のインパクトファクターは、0.869。2001年以来、年平均6.5%の上昇。ジャーナルの総被引用回数の平均は、1,523回。2001年以来、年平均9.4%増。

8.F5000プラットフォームから中国語優秀論文と中国研究者を世界に発信 国際影響力を拡大

・ 中国の科技ジャーナルの全体的なレベルを上げるため、中国の優秀な学術成果の周知と利用を改善し、国際的な発言と最初の発表の機会・権利を拡大するべきである。科学技術情報研究所では、科学計量指標と評価を合わせ、毎年、中国の優れた科技ジャーナルから5,000本を目安として優秀な学術論文を選考し、「先導者(フロントランナー)5,000-中国の優れた科技ジャーナルのトップ学術論文プラットフォーム(F5000)」を構築している。英文の長文アブストラクトを用いて、中国の優秀学術論文の集中的な対外展示と交流の場としている。国際的な情報サービス機構と国際的な出版社の協力を得て、F5000論文の集中的なリンクや国際的な同業者への発信を行っている。中国語で発表される論文と研究者、中国語学術ジャーナルと国際学術コミュニティとの融合のための効率的なチャンネルとして提供しているものである。

・ F5000プラットフォーム(f5000.istic.ac.cn)は、これまで694.89万回検索されており、米国、ロシア、カナダ等140以上の国のユーザーからのアクセスがある。ユーザーの所属機関の例は、米国コーネル大学、ハーバード大学、英国ケンブリッジ大学、ロンドン大学、オックスフォード大学や著名な国立研究機関等。


1.2020年に発表された2019年のデータでは、2019年の被引用数が10万回を越え、インパクトファクターが30を超えるものとして次の8誌での比較結果が世界第4位と発表されている。: Nature, Science, New England Journal of Medicine, Lancet, Cell, Chemical Reviews, Journal of the American Medical Association, Chemical Society Reviews.
 中国科技论文统计结果2020新闻稿

2.上升2位!我国国际顶尖期刊论文数量排名世界第二

3.中国科技コアジャーナル(中国科技核心期刊):ISTICは、中国科学技術論文の統計と分析を行うため、中国政府科学技術部(MOST)の委託を受けて「中国科技論文及び引用論文データベース」(CSTPCD)を構築し、被引用回数やインパクトファクターなど17種の指標によって国内自然科学分野のジャーナルを収録している。CSTPDに収録されたジャーナルを中国科技コアジャーナルという。

関連リンク

2021年中国科技论文统计报告发布