【23-010】《論文統計》中国科技論文統計2022年発表の概要
JST北京事務所 2023年02月06日
同統計の定義による国際的にホットな論文数で初の世界第1位に
2022年12月29日、中国科学技術情報研究所(ISTIC)が中国科技論文統計を発表した。毎年発表されているものであり、本年は、後述する諸点を重要なポイントとして報告している。
1.国際的にホットな論文の数量において初めて世界第1位。高被引用論文数では世界第2位を保持、シェアは3%近くアップ。
・ 国際的にホットな論文(ここでは、最近2年間に発表された論文であって、最近2か月に多数引用されており、かつ被引用回数が各分野のトップ1%に入るもの。最新の科学における発見と研究の動向を反映していると考えられ、研究の最前線の方向を示すもの。2022年9月までのデータで比較。)のうち中国の論文は1,808本で世界の41.7%を占める。2021年の報告に比べ、論文数が19.3%増加。順位を一つ上げ、初めての世界第1位。米国は1,730(1,751[1])本で第2位。
・ 高被引用論文(ここでは、2011年から2021年[2](9月まで)の被引用回数が各分野の世界のトップ1%に入る論文)において、中国の論文は4.99万本で世界の27.3%を占める。世界第2位を保持。2021年統計報告に比べ、3%近く上昇。米国が7.85万本で第1位。米国は世界の42.9(44.5)%を占める。
2.世界トップクラスのジャーナルでの論文数は世界第2位を保持。より幅広い高水準の国際ジャーナルの論文数では世界第1位を保持。
・ 世界トップクラスのジャーナル18誌[3](2021年の被引用数が10万回を超え、かつインパクトファクターが30を超えるもの)における2021年の発表論文3.21万本中の中国のArticleとReviewは2,045本で世界第2位を保持。2020年の順位を維持。
・ 各分野における国際的に代表的なジャーナル(ここでは、インパクトファクターと総被引用回数がともに当該分野のトップ10%に位置し、かつ毎年の掲載ArticleとReviewの数が50本以上のジャーナル)371誌に発表される論文(高水準国際ジャーナル論文)は、22.87万本。第一著者の第一所属機関を用いた分析による中国が発表した高水準国際ジャーナル論文は8.05万本、世界でのシェアの35.2%を占め、世界第1位。
3.5分野で被引用回数が世界第1位 農業科学では初
・ 被引用回数の統計において、22分野のうち、農業科学、材料科学、化学、計算機科学、エンジニアリングの5分野において被引用回数が世界第1位。生物・生物化学、環境・生態学、地学、数学、微生物学、分子生物学・遺伝学、総合、薬学・毒物学、物理学、植物学・動物学の10分野において世界第2位。2012年~2022年の論文数において、中国は12分野で世界の2割を超えている。
4.「中国卓越論文」数の増加継続
・ 中国科学技術情報研究所の「中国卓越論文」の意義について、発表資料では、次のとおり述べている。
科学技術の管理部門や研究者の関心を論文の量から質と影響力へと変えていくためにオリジナルなイノベーションが奨励されている。中国では、既に国際的に高レベルな論文を発表することが奨励されているが、中国内発行のジャーナルにも優秀な論文を発表することも重視されている。中国科学技術情報研究所の「中国卓越論文」は、国際・国内双方の論文から選出[4]している。
・ 2021年、「中国卓越論文」は、総計48.05万本(国際論文21.13万本、国内論文26.92万本)となり、2020年に比べ、1.67万本、8.6%増加した。2021年の分布では医学領域が比較的多く、「中国卓越論文」が2万本以上なのは、臨床医学、化学、環境科学、電子・通信・自動制御、計算技術、生物学、農学、地学の8分野。
5.国際共著論文が継続して増加。中国が主体的な共著論文が高被引用論文の約3分の1を占める
・ 2021年に中国が発表した国際論文中、国際共著論文は14.92万(14.45万)本。2020年に比べ0.46万(1.44万)本の増加で3.3(11.1)%増。国際共著論文は、中国発表論文の24.4(26.2)%を占める。中国の研究者が第1著者であるものが68.3(69.3)%。協力相手国・地域は173(169)。共著論文が多い上位6か国は、米国、英国、豪州、カナダ、ドイツ、日本。
・ 2021年中国が発表した被引用回数トップ1%論文のうち、中国が主となって発表した共著論文が3,643本、33.13%。2018~2021年の期間、被引用回数が各分野のトップ1%論文となる共著論文のうち中国の研究者が主となって発表した共著論文の割合は年々上昇し、2021年は72.9%に達した。
・ 2021年に中国の研究者が参画した論文中、著者が100人を超え、協力機関数が50を超えた論文が532(485)本。9.7%の増加。テーマは、粒子と場の物理、天文・天体物理、多分野物理、核物理研究等。
6.中国の科技ジャーナルの国際影響力が向上 国際的な検索データベースにおける収録、各分野で上位となるジャーナルが増加
・ 2021年に総被引用回数が、当該学問分野のトップ25%に達したものは21誌で2020年に比べ3誌の増。インパクトファクターが各分野のトップ25%に入るのが108誌で23誌の増。
・ 中国の国際科技ジャーナルのインパクトファクターの平均は6.115。前年比42.4%の増。インパクトファクターが10以上のジャーナルは38誌。前年比17誌の増。インパクトファクターが20以上のジャーナル14誌。前年比17誌の増。中国の国際科技ジャーナルの平均総被引用回数は、4,063回、22.4%増。総被引用回数が1万超のジャーナルは19誌で12誌増加。2万超のジャーナルは5誌。
7.中国の科技ジャーナルの影響力が継続的に向上 国家の重要ニーズに応え、高水準の論文を呼び込む力を継続して強化
・ 2022年中国科技ジャーナル引用報告(※今回、同時に発表)及び中国科技論文引用データベース(CSTPCD)によれば、CSTPCD収録の中国の自然科学分野のジャーナルは、2,126(2,084[5])誌、発表論文数は45.90万本。社会科学分野のジャーナルは397誌、論文数5.05万本。
・ 2022年中国科技ジャーナル引用報告によれば、中国科技コアジャーナルのインパクトファクターは、0.972(0.869)。2001年以来、年平均7.1(6.5)%の上昇。ジャーナルの総被引用回数の平均は、1,574(1,523)回。2001年以来、年平均9.6(9.4)%増。
・ 2021年は2,018誌で国家重大プロジェクト、重点研究開発計画から生み出された論文が4.18万本掲載された。主要分野は、農学、臨床医学、環境科学、地学、計算技術・電子・通信・自動制御等の分野。
8.F5000プラットフォームから中国語優秀論文と中国研究者を世界に発信 国際影響力を拡大
・ 中国の科技ジャーナルの全体的なレベルを上げるため、中国の優秀な学術成果のよりよい周知と普及を図り、国際的な学術交流を展開していくべきである。科学技術情報研究所では、科学計量指標と評議による評価を合わせ、毎年、中国の優れた科技ジャーナルから5,000本を目安として優秀な学術論文を選考し、「先導者(フロントランナー)5,000-中国の優れた科技ジャーナルのトップ学術論文プラットフォーム(F5000)」を構築している。英文の長文アブストラクトを用いて、中国の優秀学術論文の集中的な対外展示と交流の場としている。国際的な情報サービス機構と国際的な出版社の協力を得て、F5000論文の集中的なリンクや国際的な同業者への発信を行っている。中国語で発表される論文と研究者、中国語学術ジャーナルと国際学術コミュニティとの融合のための効率的なチャンネルとして提供しているものである。
・ F5000プラットフォーム(f5000.istic.ac.cn)は、これまで733万(694.89万)回検索されており、米国、ロシア、カナダ等140以上の国のユーザーからのアクセスがある。ユーザーの所属機関の例は、米国ハーバード大学、カリフォルニア大学、英国オックスフォード大学、ケンブリッジ大学や著名な国立研究機関等。
1. ( )内に記載した統計に関する数字は2021年統計報告の数値。以下、この記事において同じ。
2. 発表資料の記載は2011-2021年であるが、昨年の発表資料と同じ記載であり、2012年から2022年の誤りと考えられる。ISTICに確認予定。
3. Nature, Science, New England Journal of Medicine, Lancet, Cell, Advanced Materials, Chemical Reviews, Journal of the American Medical Association, Circulation, Journal of Clinical Oncology, Chemical Society Reviews, British Medical Journal, Nature Medicine, Nature Genetics, Nature Materials, Energy & Environmental Science, Nature Methods, Gastroenterologyの18誌。2021年統計報告に比べ、Circulation, Nature Methods, Gastroenterologyが追加されている。
4. 国際論文については、各分野の被引用回数の世界的な平均を超えるものをベースとし、高水準国際ジャーナル論文、高被引用論文、国際的にホットな論文、各分野における最も影響力のある論文(ISTICは、計量的手法と専門家の評価を結合して国際論文、国内論文それぞれ100本を選出している。)、世界トップジャーナル掲載論文など異なる視点で選出した論文を加えている。中国卓越論文としている。国内論文については、中国科技論文・引用データベース(CSTPCD)収録対象の中国科技核心ジャーナルに最近5年以内に発表され、かつ、累計被引用タイムライン指標(n指数とも呼び、発表n年以内の被引用回数がn回に到達すればnとなる。)の各分野で期待される値を超えるもの。
5. 2021年科技論文統計発表資料に記載された自然科学分野の中国語ジャーナルと英語ジャーナルの計。