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【20-011】中国法人のリストラクチャリングを考える ―中国の整理解雇にあたる「人員裁減」制度はいかに活用できるか―

2020年07月01日

野村高志

野村 高志:西村あさひ法律事務所 上海事務所
パートナー弁護士 上海事務所代表

略歴

1998年弁護士登録。2001年より西村総合法律事務所に勤務。2004年より北京の対外経済貿易大学に留学。2005年よりフレッシュフィールズ法律事務所(上海)に勤務。2010年に現事務所復帰。2 012-2014年 東京理科大学大学院客員教授(中国知財戦略担当)。2014年より再び上海に駐在。
専門は中国内外のM&A、契約交渉、知的財産権、訴訟・紛争、独占禁止法等。ネイティブレベルの中国語で、多国籍クロスボーダー型案件を多数手掛ける。
主要著作に「中国でのM&Aをいかに成功させるか」(M&A Review 2011年1月)、「模倣対策マニュアル(中国編)」(JETRO 2012年3月)、「 中国現地法人の再編・撤退に関する最新実務」(「ジュリスト」(有斐閣)2016年6月号(No.1494))、「アジア進出・撤退の労務」(中央経済社 2017年6月)等多数。

東城聡

東城 聡:西村あさひ法律事務所 弁護士

略歴

米国系コンサルティング会社勤務を経て、2008年弁護士登録。2008-2012年ブレークモア法律事務所、2012-2016年高井・岡芹法律事務所 上海代表処首席代表、2016-2019 年 瓜生・糸賀法律事務所 上海代表処首席代表としての勤務を経て、2020年1月より現職。中国業務を中心として、新規投資、リストラクチャリング、不正調査・防止業務、会社法・労働法対応を通して日系企 業を支援する。

始めに

 新型コロナウイルス性肺炎感染症(以下「新型コロナ感染症」といいます。)流行という逆境において、数多くの事業者が苦戦を強いられている一方で、インターネットを通じたビジネスを中心とする事業者は追い風を受けているようです。例えば、中国でインターネット販売の巨人であるタオバオでは通販の出店数が急増し[1]、業界第二位の京東では、2020年1月から3月の売上が前年同期に比べて21%増となりました[2]

 中国ビジネスに限った話ではありませんが、今後は様々な業界において、企業の組織の再構築・リストラクチャリングが、新型コロナ感染症の収束後に加速すると予測されます。

 そして、これも中国に限った話ではありませんが、組織のリストラクチャリングに際しては、事業譲渡、合併、分割、株式譲渡、清算といった組織・法人レベルでの大規模なものに止まらず、より小規模な部門単位でのリストラや、更には個々人の労働契約の終了又は解除等を通じて、組織の改編を実現するケースが多くの部分を占めるといえるでしょう。いかなる組織も結局は個人によって構成されており、組織と個人との関係は通常は労働契約で構成されているため、かかる労働契約の扱いが実務上で重要と考えられます。

 本稿では、今後の中国ビジネスで益々必要となるであろう中国法人のリストラクチャリングに関し、労働契約の各種の終了方式を整理したうえで、多数の従業員の一括解雇を想定した法制度である「人員裁減」制度の内容と実務上の活用法をご紹介したいと思います。

1.中国における労働契約の終了又は原因について

 中国のリストラクチャリングに関連する労働契約の終了・解除原因の概要は、次のとおりです。

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①協議解除
 実務上、最も多く利用されているのが、「協議解除」即ち協議による労働契約の合意解除です。従業員との合意により労働契約を解除することで、事後の紛争リスクをほぼ抑えられ、穏便かつ安定した解決方法を指向するものといえます。他面で、各従業員と合意を成立させなければならず、そのための手間とコスト(スムーズな合意を得るため、法定の経済補償金への上積みを行う等)がかかる傾向があります。

②法人閉鎖
 次の「法人閉鎖」は終了原因が明確であり、会社が清算の決定をすれば、それを理由として労働契約を終了させることができます。経営判断により当該法人を閉じても良い場合には、この方法によることで従業員との労働契約を一方的に終了・解除できます。ただ、これに反発した従業員のストライキや法的措置が予想される場合に、それを避けるために敢えて協議解除を用いるケースが少なくありません。

③人員裁減
 次の「人員裁減」は、日本の「整理解雇」に相当する制度であり、ある一定以上の人数の従業員の削減を想定した制度です。労働関連当局又は従業員代表若しくは組合に対して所定の手続を取り、かつ実体上の要件を満たす必要があるため、実行のハードルは低くはありません。しかし3年連続赤字といった実務上の実体要件を満たす場合には、労働関連当局での手続を経ている分、事後的に従業員に争われるおそれが比較的低いという側面もあります。既述のように、日系企業の撤退案件では殆どが協議解除で進められるため、従来あまり多く活用されていない制度ですが、今後より積極的な活用を考えて良いと思われます(詳細は後述)。

④客観事情変更
 「客観的事情変更」に基づく解除とは、労働契約を締結した時点における客観的な事情に重大な変化があった場合に、契約の変更について協議をしたうえで、協議を重ねても合意に至らないときには事前通知することで解除できるという方法です。先述の「人員裁減」とは実体要件で一部重なる部分がありますが、「人員裁減」とは異なり労働関連当局への報告のような手続が不要であり、従業員との協議も個別に行えば良いため、上述した契約終了事由・原因が無いときに代替手段として「客観的事情変更」が利用されることがあります。但し、手続要件が少ないといっても、事後的に仲裁・裁判になった場合に簡単に「客観的事情変更」があると認められるとは限らず、違法解雇と判断されるリスクも十分にあります。

⑤期間満了
 「期間満了」は、個別の労働契約が固定期間とされているときに、期間の満了時に契約を終了する方法です。終了事由が客観的かつ明確であるため、リストラを考える従業員の契約満了期間が近い場合には、積極的な検討が推奨される方法となります。但し、労働契約が1回目又は2回目(地方によって異なります。)の更新を迎える際に、従業員が契約期間の定めの無い契約に切り替えたい旨を希望したらこれに従わなければならないとの制約があります[3]。その後は、労働契約の期間制限がなくなるため、この労働契約終了方法は利用できないことになります。

⑥懲戒解雇
 「懲戒解雇」は、労働契約や就業規則の重大な違反があった場合に労働契約を解除する方法です。就業規則の制定・改正には従業員全体等の討議を経ている必要があります[4]が、これらの手続が実施されたことの証拠を確保しておらず、労働仲裁・訴訟において就業規則の有効性が争われたときに、結局は違法解雇と認定されるというケースが多々ありますのでご留意ください。

2.「人員裁減」の法律要件

 多数の従業員の一括解雇を想定した法制度である、「人員裁減」制度は、労働契約法第41条に規定がされています。その内容と実務上の活用法を解説します。

(1)「人員裁減」の手続要件

 当該要件は以下のとおりです。①~③に分けて説明をします。

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①削減従業員の選定基準
 ①の文言から分かるように、複数の人数の労働契約を一度に解除することを想定した手続です。他の労働契約の終了又は解除原因は、基本的には一対一の個別の解除を前提としており、人員裁減は複数の従業員の一斉解除を前提とした唯一の法的手続となります。
 対象者一人一人を会社が自由に選んで解除できるわけではなく、従業員の選定について、一定の公平かつ従業員保護に立った視点での制約があります。具体的には、以下の者を優先的に残す(即ち削減対象から外す)必要があります。
【優先的に残す必要のある従業員】
(ⅰ) 比較的長期の固定期間の労働契約を締結している者
(ⅱ) 無固定期間の労働契約を締結している者
(ⅲ) 家庭に他に就業者がいないか、扶養が必要な老人又は未成年がいる者

②従業員に対する説明
 従業員に関連する手続です。
 事前に、工会又は全ての従業員に状況を説明する必要があります。但し、同意を取得する必要はありません。
 その次に、工会又は従業員の意見を聴取する必要があります。工会は、日本の労働組合にあたる従業員のための組織です。工会が社内に存在しない会社も多数ありますが、その場合は、従業員全体に向けて説明をする必要があります。さらに「意見の聴取」に関し、後に労働関連部門(会社所在地域の人力資源管理及び社会保障局)に提出する書面に、工会又は従業員の代表のサインが求められる地域も多く見られます[5]
 したがって、工会又は従業員代表が予め選出されていれば問題ありませんが、こうした組織が無い場合には、この②の要件の手続ができないと判断される可能性があります。前述の文言上は全従業員への説明及び意見聴取で足りるように見えますが、先述のように地域によって従業員の代表のサインが求められることがあるからです。
 日系企業の中には、工会の設立について消極的に考えている会社が少なくありません。しかし、こうした手続を含めて従業員を一方的に解除する場合には、工会への通知が必要とされていますし、工会の協力を得て従業員のリストラクチャリングが柔軟に進んだケースもあります。
 工会の設立は直ちには困難であっても、少なくとも従業員代表の選出は、会社と従業員の関係が良好なうちに早めに行っておいた方が良いでしょう。

③当局への「報告」(多くの地域では実態は許可制)
 会社の工商登記所在地の人力資源管理及び社会保障局への報告の手続となります。報告については、地域によって報告の形式が決まっており、また法律では「報告」とされているものの、多くの地域では、手続又は内容面で一定の要件を課しており、それを満たしていない場合に報告書面の受領を拒絶されることがあります。当局の受領を証明する書面[6]が無い場合、後に当該解除の手続の適法性が争われた際に、「報告」の要件を満たしたことが主張立証できなくなってしまいます。単なる「報告」を前提に手続を進めてみたところ、実体は許可制であったために人員裁減を実施できないという事態とならないよう、事前の調査・確認にご留意ください。

(2)「人員裁減」の実体要件

 実体要件は次のとおりです。

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①について
 記載どおりの要件です。

②経営の「重大な困難」について
 かつて、労働法にも同様の人員裁減の規定がありました。
 これを受けて、例えば北京市では、「連続三年して赤字が続いており、かつ赤字の額が増加している場合、又は債務総額が総資産額を上回っており、80%の従業員が生産・業務停止しており、最低生活費標準にしたがって労働者の生活費を6ヶ月間支払続ける能力が無い場合」が「重大な困難」にあたると解釈していました[7]。上海市[8]や深圳市でも同様の規定がありました。
 こうした規定は、現在では廃止されています[9]が、各地域の実務上では、労働関連当局が解釈する際の指標とされています。例えば上海市で、「重大な困難」があるとして人員裁減を報告する際には、当局から会社に三期連続で赤字が続いているかという点の確認がなされます。
 その立証のための証拠資料としては、会計書類の他、顧客企業からの注文の取り消しについての証明、納税証明による納税状況、新聞報道等が考えられます。

③「企業生産転換」、「経営方式の調整」、「重大技術の革新」について
 「企業生産転換」及び「経営方式の調整」の例としては、特定の大口顧客からの委託契約を打ち切られて該当する業務を停止したことによる該当部門の閉鎖[10]等が挙げられます。
 「重大技術の革新」の例としては、例えば工場の自動化[11]等が挙げられます。

④「労働契約締結時に依拠した客観的経済状況の重大な変化」について
 これが認められた例としては、生産工場所在の土地が徴収範囲に入れられた事例[12]、経済的な原因と政策の原因からある事業部門を別の省に移転することがあたるとされた事例[13]、小売店の売上の減少が、マクロ経済状況の変化、ネット販売の繁盛及び店舗顧客減少によって生じたことが要件を満たすとされた事例[14]等が挙げられます。
 土地の徴収等の政府の行為について生じた変化については、比較的立証が容易であり、重大な変化として認められる傾向があります。しかし経済的原因が理由である場合には、経営の自主権に影響するとはいえ、契約締結時に依拠した客観的経済状況といえるかが争いになりえます。
 こうした重大な変化があることを立証するために、例えば売上の減少、社内決議、議事録、関連する報道等を証拠資料として出すことになります。

3.活用可能か

(1)手続上の問題点

 既述のとおり、工会又は全従業員の代表のサインが必要になります。工場や大規模な会社であれば工会があるのが一般的であり、それほど問題になりませんが、サービス企業や貿易会社等の小規模の会社であれば、工会を組織していない会社も多いかと思います。工会もなく従業員代表も選出していなかったために、人員裁減を選択できないというケースは、先述のとおり少なくありません。

 また従業員との関係が悪化している場合には、従業員への説明及び意見徴収がスムーズにいかず、意見を徴収した旨の書面への押印の取得が困難になるかもしれません。一方、工会又は従業員代表と安定的な関係が築かれていれば、所定の手続を進めるうえで一定の協力が期待できます。日系企業を中心に工会(又は従業員代表大会)を置くことをリスクとして捉える会社も多くありますが、従業員とのコミュニケーションのツールとして積極的に利用している会社の方が、必要なリストラクチャリングを実施する際に、大きな混乱を避けられているように思われます。

 そして、従業員への説明・意見徴収がうまくいったとしても、会社の所在地域の人力資源管理及び社会保障局に対して「報告」をする必要があります。中国語原文でも「報告」となっていますが、実際には当局は、後述の実体要件について従業員側に立った視点からコメントをしてきたり、ときには報告書の受領拒絶をすることがあります[15]

 手続上は、説明会・意見聴取から30日経過を待ってから当局に報告をする必要がありますが、その前に匿名ベースで又は非公式に当局と早めに協議を行い、受領拒絶される可能性があるかを確認することが推奨されます。

(2)実体法上の問題

 前述の実体要件のうち①は明確であり、②も赤字が3年連続続く等の事情があると立証は容易ですが、③、④については要件の妥当性及び立証が困難であり、司法手続で必ず証明できるとは限らないため、事後に紛争になる可能性がほぼ無い協議解除手続を取ることが可能なときは、そちらを選択するケースが多く見られます。

(3)労働契約法第40条第3号との関係

 また、④の労働契約法第41条第1項第4号の要件と同法第40条第3号は、要件が類似しているため、両者をどのように使い分けるかで実務上議論になることがあります。

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 条文の文言上では、前者は「客観的経済状況に重大な変化」があった場合であり、後者は「客観的状況に重大な変化」であり、この「経済」の有無で対象の事由が異なるかという点が問題になりえます。

 しかし実際には、会社にとって労働契約の前提とする事実は経済に関連するものであり、「土地収用」、「政策の変化」、「マクロ経済の変化」、「小売店からネット販売への業界の趨勢の変化」、「生産設備の自動化」等、非常に様々な変化が含まれるため、重大変化の内容は、この二つのリストラクチャリングの方法を使い分ける決定的な事由とはならないと思われます。

 むしろ、手続的な違いが実質的に二つの手続方法の差となっているといえるでしょう。前者は、前述のとおり従業員・労働関連部門に対する各手続が必要です。一方後者は、労働契約の内容の変更についての労働者との協議が必要ですが、協議さえすれば、後述のとおり工会に一方的に通知[16]をすれば良く、手続は比較的簡単です。特に労働関連部門による手続上の関与がなくなるため、実務上では、労働関連部門に人員裁減の手続の事前「報告」のため訪れたところ、むしろ第40条第3号の手続によることを強く薦められたケースもあります(「報告しても受領しない」という言葉の裏返しとしてですが)。

 実際にどちらの手続を選択すべきかを比較する場合、もちろん事実関係次第ではありますが、従業員及び関連労働部門に対する手続を経たうえで行われることから、可能であれば、人員裁減を優先して行うことが推奨されます。そのうえで、人員裁減を行うことが困難な事情があるときは後者の第40条第3号の手続を考えるという流れが、会社にとって有利となる場合が比較的多いように思われます。

(4)労働契約法第43条との関係

 労働契約法第43条は、一方的解除をする際に、解除の理由を工会に通知することを要求しています。したがって、第41条に基づく一方的解除であっても、第40条に基づく一方的解除であっても、会社内に単位工会がある場合、この単位工会に事前に通知すれば問題ありません。実務上しばしば問題となるのは、会社内に工会が無い場合です。

 これは、第43条が社内に工会があることを前提としており、工会が無い場合の扱いを規定していないところ、実際には単位工会が無い会社も多く存在するため問題となります。

 この場合、法律の要件を手続上満たすことでリスクを減少させる見地から、会社の登録地区内の上部工会にあたる総工会に通知することで対応をするケースが見られます。ただ、このような対応をしたものの、当該総工会からこのような通知の受領を拒絶されたケースもあります。また、労働仲裁において、会社に工会が無いために当該通知をしていないことが大きな争点となったケースは不見当です。しかしながら、念のためこのような通知をしておいた方が、仲裁手続において相手方から手続瑕疵を指摘される可能性を少しでも減らすことができるため、通知を行うことが推奨されます。

(5)第40条3号に基づく一方的解除の場合の留意点

 本稿では、整理解雇にあたる人員裁員について述べてきましたが、上述のように第40条3号に基づく一方的解除が行われる例もあるため、かかる解除の際の留意点も簡単に紹介します。

 まず、実体上の要件としては、「契約締結の際に根拠とした客観的な状況に重大な変化が生じていること」が必要です。この実体上の要件については、非常に様々なケースが考えられるところですが、一般的にいうと、労働契約において、業務内容、業務場所、その他業務に関する条件を明確に記載しておけば、こうした条件の変更が労働契約締結の際に根拠とした客観的状況であると主張することが比較的容易になります。但しその反面で、会社が従業員に対して、経営の必要性に応じた業務内容又は業務場所の変更を要求したものの同意が得られない場合に、一方的にこれらの条件を変更することが、より難しくなるといえます。

 次に、手続上の要件としては、会社が事前に従業員との間で、労働契約について「協議」していることが求められています。そこで会社としては、「これなら何とか雇用を継続できる」というぎりぎりの労働契約の条件を提示し、この提案を従業員が拒絶したときは、「協議を行った」ということができます(ここでは、双方の合意は必要とされていません。)。この「協議をした事実」は会社側が証明責任を負うため、協議の過程を書面、録音又は録画等で証拠化しておく必要があります。

最後に

 上述のように、人員裁減は、多数の従業員を解除するリストラクチャリングのための法的手続です。もし三年連続赤字等の明確な実体要件を満たしており、工会又は従業員代表がいる場合は検討に値する手続です。その場合であっても、労働仲裁等の法的手続に進むリスクが相対的に少ない協議解除が可能なのであれば、そちらを推奨するケースが多いといえます。紛争リスクをコントロールし易いリストラクチャリング方法という視点では、やはり協議解除がベストの選択であり、人員裁減は、従業員と協議解除の交渉をする際の「BATNA」(Best Alternative to Negotiated Agreement、交渉決裂時の代替案)に過ぎないともいえます。

 ただ、こうした代替案が無いと、往々にして相手から交渉時に足元を見られたり、決着点が見いだせずに交渉が長引くことが多いのも事実です。

 実際にリストラクチャリングを実施する際も、こういったことを勘案しつつ悩みながら一歩一歩を進めることになります。

以 上


※本稿は「西村あさひ法律事務所中国ニューズレター」(2020年6月24日号)より転載したものである。


1. SankeiBiz「中国、通販サイト『タオバオ』の出店急増」2020年2月21日

2. 日本経済新聞「中国ネット通販の京東、売上高最高に」2020年5月15日

3. 労働契約法(2013年改正施行)第14条第2項第3号の「労働契約を2回連続して締結」については、各地方で解釈が分かれています。

4. 労働契約法第4条

5. 例えば上海市に関して人力資源及び社会保障局「雇用単位の法律による人員削減の実施の報告に関する通知」(沪人社関発(2009)3号)報告表参照。

6. 「回執」と呼ばれます。

7. 1995年施行「北京市企業経済性裁減人員規定」

8. 2000年施行「上海市企業実施経済性裁減人員規定」

9. 地方法規は廃止されていますが、労働部が1994年に発布した「企業経済性裁減人員規定」(労働部発【1994年】447号)は有効です。但し、ほぼ労働契約法第41条及び42条の内容と同じです。

10. (2014)三中民終字第04420号

11. (2015)沪一中民三(民)終字第906号。なお、訴訟の請求としては会社側が敗訴しています。

12. (2016)沪民申1253号

13. (2015)朝民初字第68205号

14. (2017)京03民終11318号

15. なお1994年に発布された労働部の「企業経済性裁減人員規定」では、報告の後に、労働行政部門の意見を聞き取ることが要求されています。

16. 労働契約法第43条