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【22-06】「台湾9、中国5、アジアが最多に 最も革新的企業・機関トップ100」

2022年03月01日 小岩井忠道(科学記者)

 国際学術・特許情報調査・コンサルティング企業「クラリベイト」は2月24日、保有する特許の価値や量などから最も革新的と評価された世界の100企業・研究機関を「Top 100グローバル・イノベーター2022」として発表した。毎年、日本と米国の企業が大半を占めているが、昨年より6社増え35社となった日本が今回、企業・研究機関数で2年ぶりの1位に返り咲いた。9社・機関の台湾、5社の中国と韓国を合わせると、半数以上の54社・研究機関がアジアからの選出。「世界のイノベーションにおけるアジアの優位性が高まっていることが今回の特徴」と「クラリベイト」は言っている。昨年42社が選ばれ1位だった米国は、18社へと大きく減らし、2位となった。

 日本、米国に次いで選出企業・研究機関が多かったのは、台湾とドイツ(各9)、フランス(8)、中国と韓国(各5)となっている。分野別でみると、電子機器・コンピューティング分野が最も多く、28社に上る。ここでも26社を占めるアジアの優位性が際立っている。次いで、技術開発が加速する自動車関連企業から昨年の倍の12社が選ばれた。このほか化学薬品・材料関連企業が昨年の7社から10社へ、航空宇宙・防衛関連企業が3社から6社に増えているのが目立つ。一方、通信、ソフトウェア・メディア・フィンテック、製薬関連企業が大きく数を減らした。

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(クラリベイト・アナリティクス・ジャパン発表資料から)

高まるアジア企業の評価

 今回、台湾から選ばれたのは8社と1政府研究機関。8社は電子機器や半導体メーカーで、熊本県に工場建設が決まっている台湾積体電路製造(TSMC)が8年ぶりに選ばれたのをはじめ、半導体メーカーからリアルテック・セミコンダクターが初めて、メディアテックが5年ぶりに選出された。エレクトロニクス・コンピューター機器メーカーからは、7年連続選出の鴻海科技集団、4年連続選出の広達電脳(クワンタ・コンピュータ)、初選出の友達光電(AUオプトロニクス)、緯創資通(ウィストロン)、デルタ電子が名を連ねている。国際的に評価が高まっている電子機器、半導体分野での台湾企業の力量を裏付ける形となった。

 中国からは、7年連続8回目の選出となる華為技術(ファーウェイ)のほか、電子機器メーカーの京東方科技集団、TCL科技集団、さらに電子商取引をはじめ幅広い事業を展開する阿里巴巴(アリババ)、上場延期が大きな話題となったデジタル決済などの大手、アントグループが初めて選ばれた。アリババとアントグループは、今回の評価方法変更で大幅に減ったソフトウェア・メディア・フィンテック分野からの数少ない選出企業となっているのも目を引く。

 韓国からは、11年連続選出のLGグループ、サムスン電子、昨年に続き連続選出のSKグループのほか、現代自動車と起亜自動車が初めて選ばれている。

発明の独自性、発展性重視

 選出された企業の顔ぶれ、その分野に大きな変化が見られた理由として、今回から評価手法が変わったことが挙げられる。「クラリベイト」の評価手法は、卓越した組織には以下の三つの実績が必要、との考えに基づいている。①世界の仕組みや市場概念に大きな変化をもたらす②優れたアイデアを創造するだけでなく、影響力や具体性があり、既成概念を覆すような重大な発明を継続的かつ大規模に生み出している③現代のイノベーションを定義し、未来のアイデアの方向性を示す―だ。

 具体的には500件以上の特許を出願し、直近5年間で100以上の特許を登録した企業・機関が選出対象になる。これらの企業・機関のうち、直近5年間に登録特許が他社に何回引用されたか、さらにどれだけの国に登録特許があるか、特許出願先国数をいくつあるかなどを見て、保有する発明の価値を評価している。ここまでは昨年までと同じだが、今回から各発明の独自性や、技術的可能性をより重視する新たな評価指標が追加された。

 この結果、昨年までに比べて評価が高まり、選出企業・機関数も増えた分野と、逆に減った分野が顕著に分かれた。初めて選ばれた企業が28社に上ったほか、この中に有名企業が含まれているという変化がみられる。昨年から6社増えた自動車関連企業ではゼネラルモーターズ(米国)、フォルクスワーゲン(ドイツ)、現代自動車(韓国)、起亜自動車(韓国)が初めて選出されたほか、フォードも8年ぶりの返り咲きとなった。3社増えた航空宇宙・防衛関連では、ロールス・ロイス(英国)が初めて、エアバス(フランス)が8年ぶりに選ばれているのが目を引く。

 米国企業が前年の42社から18社に大きく減ったのも新しい評価法の影響とみられる、と櫻井諭クラリベイト・アナリティクス・ジャパン社長は記者会見で語っている。

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(クラリベイト・アナリティクス・ジャパン発表資料から)

日本5社初選出、11年連続9社

 日本企業で初めて選ばれたのは、キオクシア、コニカミノルタ、京セラ、SCREENホールディングス、シマノ、住友化学の5社。村田製作所は10年ぶり、ファナックは9年ぶり、ブラザー工業、デンソー、リコー、東京エレクトロンは7年ぶりの選出となった。一方、富士通、日立製作所、本田技研工業、日本電気、パナソニック、信越化学工業、ソニー、東芝、トヨタ自動車の9社は1回目から11年連続で選ばれている。

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(クラリベイト・アナリティクス・ジャパン発表資料から)

関連サイト

 クラリベイト「Top100 グローバル・イノベーター2022を発表

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