【22-09】産業とエネルギー構造のダブルモデル転換を図る新疆カラマイ
劉紅艷 張兆耕(科技日報通信員) 朱彤(科技日報記者) 2022年07月04日
カラマイ市独山子区ハイテク産業パーク内の企業「新疆海潤科学技術有限公司」で、自動充填装置を使ってオイルをドラム缶に充填する作業員。撮影・李浩然
10億7600万元
第13次五カ年計画(2016‐20年)以来、新疆維吾爾(ウイグル)自治区克拉瑪依(カラマイ)市のテクノロジーイノベーションへ投じられる資金・生産高は増加の一途をたどっており、市級のテクノロジー計画・プロジェクトは235件に、地方財政からテクノロジーに投じられた資金は1億1900万元(1元は約20.0円)に達し、地方の企業がテクノロジーに投じた資金も10億7600万元に達した。そして、相次いで国家や自治区科学技術賞や特許賞177件を受賞し、人口1万人当たりの高価値特許保有件数は2.2件と、新疆ウイグル自治区で上位に名を連ねている。
窪地にある礫岩やオイルシェールの探査理論・技術におけるブレイクスルーから、1千トン級の重質油スラリー床水素充填、PX/MX循環分離のパイロット生産技術検証成功、さらに、初の国産官能基化スチレンブタジエンゴムの工業化生産、アジアで一番深い超深度掘削油井、中国最大の油田汚泥処理装置に至るまで、カラマイは近年、テクノロジーイノベーション分野の素晴らしい成果をあげ続けている。また、革新駆動型発展戦略を一歩踏み込んで実施し、資源型都市へのモデル転換、発展のための効果的なチャネルを見出している。カラマイの質の高い発展のため、テクノロジーイノベーションが、強力な動力となり前進を続けている。
都市に溶け込むイノベーションの遺伝子
66年前、ある地質科学研究者が、油田探しのアプローチを覆し、探査技術を改良して、カラマイ油田を発見した。カラマイの発展史は、イノベーションの歴史でもあり、テクノロジーイノベーションの遺伝子は早くからこの都市に溶け込んでいたといえる。
しかし、「資源型」であるため、経済構造が単一的であることや産業チェーンが不足すること、経済が不安定であることといった問題が、カラマイの経済、社会の質の高い発展における足かせとなってきた。
そのため、産業のモデル転換・高度化を加速させて、経済構造調整を促進することがが急務である。
発展を牽引する一番の原動力としての「テクノロジーイノベーション」は、カラマイの経済、社会の質の高い発展を牽引する強力な「エンジン」となっている。
カラマイ市党委員会の趙文泉書記は、「イノベーション創出は、発展を意味し、イノベーションを計画することは、将来について計画しているということだ。テクノロジーイノベーションは、現代化経済体制を建設する重要な戦略的サポートであるだけでなく、困難に打ち勝つための有力な武器でもある」と言う。
カラマイは近年、革新駆動型発展戦略を一歩踏み込んで実施し、新疆ウイグル自治区副中心都市構築の歩みを加速させ、同自治区北部の西部エリア中心都市という位置的優位性や石油都市の資源賦存といった強固な基礎を十分に生かし、「一主多元」という発展のアプローチを打ち出して、それを積極的に実行し、国家級資源豊富エリアモデル転換・イノベーション試験区建設、シルクロード経済ベルト中核エリアにおける石油・石油化学産業の質の高い発展モデルエリア建設加速といった機会を逃さず、石油・石油化学工業の基礎固め、効率強化、モデル転換・高度化推進を加速させ、飛躍的発展を実現している。
また、カラマイ市は産業構造とエネルギー構造の「ダブルモデル転換」を実施し、テクノロジーイノベーション、新エネルギー、デジタル経済、開放型経済といった重点活動に大々的に取り組み、シルクロード経済ベルト中核エリア建設に一歩踏み込んで参加し、それに溶け込み、カラマイの特色を備えた近代的な産業体系を積極的に構築し、資源型都市の質の高い発展の新たな道を見いだした。
テクノロジーイノベーション能力の継続的増強
基礎、特色、優位性があるということが近年、カラマイのテクノロジーイノベーションの面で上がった成果に対する簡単な総括だ。テクノロジーイノベーションがたゆまず深化し、その環境も継続的に最適化され、体制、メカニズムがさらに円滑化されている。
カラマイは2015年、「研究院/公司+基金+拠点+世界技術協力ネットワーク」という「四位一体」のイノベーションモデルを構築し、「先進科学技術連合研究院」(以下「先科院」)を発足させた。この「四位一体」という近代的なテクノロジーイノベーションモデルは、地域のエネルギー・化学工業分野の技術研究開発や高度化を加速させながら推し進めるという面で、強力な促進的役割をもたらし、今では中国で最も先進的なモデルの一つとなっている。
2021年11月、中国科学技術部(省)、新疆ウイグル自治区、深セン市が中国科学院と共同で推進し、自治区科学技術庁、カラマイ市、中国科学院新疆分院が共同で建設したシルクロードイノベーション発展研究院がカラマイで発足した。これは、カラマイが「4者協力メカニズム」を継続的に採用して、実行した重要な成果で、中国東部と西部のテクノロジー協力を促進し、新型研究開発機関を構築するモデルケースで、新疆ウイグル自治区において屈指の取り組みとなっている。
同院が発足して、運営が始まったことで、カラマイのイノベーション能力や実力が継続的に増強され、新疆ウイグル自治区北部地域のテクノロジーイノベーションセンター、中国西北地域のテクノロジーイノベーション重要拠点、シルクロード経済ベルト沿線において影響力あるテクノロジーイノベーション都市の構築のために強固な基礎が築かれただけでなく、同自治区全域の経済発展、産業のモデル転換・高度化に、ハイレベルなシンクタンクのサポートを提供し、再現可能な改革、イノベーションのモデルケースを提供している。
このほか、カラマイには、自治区重点実験室、自治区工学技術研究センターといった各種テクノロジーイノベーションプラットフォームが23あり、西北地域で2ヶ所目となり、同自治区では初となる国家級知的財産権保護センター「中国(カラマイ)知的財産権保護センター」が発足し、クリーンエネルギー国家実験室(計画)パイロット生産拠点が完成して稼働するにつれて、カラマイハイテクパークの昇格事業も重要な進展を遂げている。
先科院やシルクロードイノベーション発展研究院を代表とする特色が鮮明で、多種多様な機能があり、理に適った配置の複数のイノベーション拠点がカラマイで設置・運営され、一体化されたオールチェーン型イノベーションメカニズムの建設が加速し続けると同時に、同市の「政産学研金服用(政府、産業、学術、科学研究、金融資本、サービス(服務)、ユーザー(用戸))」という理念の融合深化が促進されていると言うことができる。
第13次五カ年計画(2016‐20年)以来、カラマイ市のテクノロジーイノベーションへ投じられる資金・生産高は増加の一途をたどっており、市級のテクノロジー計画・プロジェクトは235件に、地方財政からテクノロジーに投じられた資金は1億1900万元に達し、地方の企業がテクノロジーに投じた資金も10億7600万元に達した。そして、相次いで国家や自治区科学技術賞、特許賞177件を受賞し、人口1万人当たりの高価値特許保有件数は2.2件と、新疆ウイグル自治区で上位に名を連ねている。
カラマイのテクノロジーイノベーションの主体とイノベーション人材陣も近年、ますます発展している。
同市には現在、テクノロジー型中小企業が100社、ハイテク企業が83社、市級「科学技術小巨人企業(高い成長性または大きい発展のポテンシャルを持つテクノロジーイノベーション中小企業)」が1社ある。また、「第13次五カ年計画」以来、各種市級イノベーション人材192人が育成されてきた。2020年、カラマイで研究開発(R&D)に関わる研究者の数は1725人で、1万人当たりのその数は35人となっている。さらに、四川とカラマイ、上海とカラマイという「1+4+N」の地域協力新メカニズムが構築され、カラマイは一層深く、幅広いテクノロジー協力・交流を展開するようになっている。
カラマイ市のテクノロジーイノベーション能力は継続的に増強され、現時点で、テクノロジー進歩の寄与率は65.2%に達している。
テクノロジーイノベーションは、カラマイの発展に途切れることなく原動力を提供し続け、同都市の発展の活力はさらに増し、その質も高まり、社会は新しく変わっている。
「車線を変えてオーバーテイク」し優位性を確保
近年、革新駆動型発展戦略が一歩踏み込んで実施されているのを背景に、カラマイは発展のチャンスをしっかりと掴み、「オーバーテイク」を実現している。だが、カラマイがそれで満足することはない。
都市のモデル転換・高度化や経済の質の高い発展推進の過程で、カラマイは、経済の面で遅れを取り戻し、追いつき、追い越すためには、車線を変えてオーバーテイクしなければならないとしみじみと感じるようになっている。
趙書記は、「革新駆動型発展戦略を引き続き実施し、当市の経済の質の高い発展や都市のモデル転換を、資源要素主導から、イノベーション主導へ転換し、テクノロジーイノベーションを質の高い発展の最大の原動力として強化し続けている。また、テクノロジーイノベーションが都市のモデル転換・高度化、質の高い発展にエンパワーメントすることにより、当市は新疆ウイグル自治区のイノベーションの発展の地となり、『車線を変えてオーバーテイク』し、発展の優位性を確保している。当市は今後、自治区重要テクノロジーイノベーション拠点、産業技術イノベーション重要拠点、イノベーション人材集積重要拠点、開放型協同イノベーション重要拠点からなる『1拠点3重要拠点』構築に取り組み、都市のイノベーション能力と実力を継続的に増強する」と語る。
最近開催されたカラマイテクノロジーイノベーション会議では一連の目標が打ち出された。例えば、2025年に、石油・石油化学工業の特色ある地域テクノロジーイノベーションセンターを建設する。2035年に、西北地域テクノロジーイノベーション先進地、中央・北アジアに対して影響力あるテクノロジーイノベーションセンターを建設し、イノベーション発展の地の構築を加速させ、同市の質の高い発展のために、有力なテクノロジーのサポートを提供する計画だ。まだ、2025年に、財政のテクノロジー支出が一般公共予算に占める割合を、『第13次五カ年計画』終盤の全国の各省(区・市)の平均水準である2.76%に、R&D経費支出が域内総生産に占める割合を全国平均の2.5%に達成し、登録されている国家テクノロジー型中小企業の数を250社、ハイテク企業の数を150社、「科学技術小巨人企業」の数を20社に増やし、国家級重点実験室を1ヶ所建設し、自治区級重点実験室を数ヶ所建設することを目指す。
※本稿は、科技日報「産業、能源結構双転型 新疆克拉瑪依"換道超車"」(2022年5月27日付7面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。