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【22-23】先端技術を体験できる「科学技術館都市」に変身する亦荘ニュータウン

張艷艷(科技日報通信員) 華凌(科技日報記者) 2022年10月04日

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(1)2021年、北京経済技術開発区(亦荘)の中を走る自動運転車

12300回

 2021年、北京の経済技術開発区にある「科学技術館都市」の入場予約回数は延べ1万2300回を超え、各種団体の予約数が500以上で、来場者数は合わせて5000人を超えた。

 トルクメニスタン人留学生のランナさんは科技日報の取材に対して、「自動運転車に乗るのは初めて!とても楽しかった。もっと長く乗っていたかった」と興奮気味に語った。彼女はその前にも、北京経済技術開発区にある小馬智行(ポニー・エーアイ)ハイランク自動運転体験センターで自動運転タクシーの配車サービス・ロボタクシーも体験した。夏休み期間中、たくさんの学生がランナさんのように、北京経済技術開発区でイノベーション文化の魅力を体感した。学生らが見学したのは従来のようなテクノロジー展示館ではなく、さまざまな企業の研究開発拠点、イノベーション創出現場といった、生きた科学教育の現場だ。

 イノベーションの盛んな首都・北京の南東部のこの土地には、企業8万社以上が分布している。新世代情報技術と新エネ車・スマートコネクテッドカー、バイオ技術・総合保健、ロボット・スマート製造が集まるこの先端産業クラスターでは、イノベーションの原動力が、経済の急速な発展をさらに加速させると同時に、多くのイノベーション成果の応用も促している。北京経済技術開発区は、首都の国際テクノロジーイノベーションセンター建設という位置づけに立脚し、エリア内のテクノロジー産業、企業資源を十分に統合し、政府と企業の連携を通して、一般向けの「科学技術館都市」を構築し、各企業が科学教育の「主役」となり、一般の人々に至近距離でテクノロジーイノベーション体験を提供し、イノベーションの魅力を発信している。

豊富な科学知識を立体的に体験できる場所を構築

「昔、衛星測位システムがなかった時代、私たちの祖先はどのように方向を見分けていたのだろう?」。「中国の衛星測位システム・北斗はどのような分野に応用され、どんな変化をもたらしているのだろう?」。そのような疑問の答えを探すために、中国人民大学附属中学亦荘ニュータウン学校の4年2組の学生らは、心をワクワクさせながら「北斗」応用博物館に入り、「科学技術館都市」見学ツアーをスタートさせた。ここ1年ほどの間に、数々の青少年が北京経済技術開発区にある「科学技術館都市」に足を運び、企業、生産ライン、作業場、研究開発実験室を「教室」とし、豊富な科学知識を立体的に体験し、時代の発展の鼓動を肌で感じてきた。

 北京市政府弁公庁が今年3月に通達した「北京市全市民科学素養行動計画綱要(2021--35年)」は、第14次五カ年計画(2021‐25年)期間中、青少年、農家、産業労働者、高齢者、幹部・公務員の5グループを対象に、重点的に科学素養を高める計画を展開し、テクノロジー資源の科学教育プロジェクト、科学教育スマートプロジェクト、イノベーション文化発展プロジェクト、科学教育インフラ整備プロジェクト、末端の科学教育能力向上プロジェクト、科学素養交流・協力プロジェクトという6つの重点プロジェクトを実施するとしている。北京経済技術開発区の「科学技術館都市」では現在、学校と企業の連携や科学教育を通して市民に利益をもたらす取り組みを通して、全市民の科学素養を高めることができるようサポートしている。そして、企業・事業機関や各学校から来た団体、個人が続々と北京経済技術開発区が構築したマルチレベル、マルチ分野の多元化された科学教育の場で、イノベーション文化の「養分」を吸収している。

 会社やコミュニティが予約した団体で北京経済技術開発区の「科学技術館都市」を何度も見学したことがあるという北京市民の丁暁慧さんは、「企業を見学できるだけでなく、第一線で働くエンジニアと技術者の話を直接聞くことができるほか、ドローンの操作や自動運転車を自ら体験したり、使用済みの風力発電用のブレードに触れたりできる......。知識のほか、記憶できるのはリアルな体感で、このような科学教育体験は素晴らしい」と話し、家族や友人にも、このような特別で、新しい科学教育のモデルを体験してみるようよく勧めているという。

 北京経済技術開発区活動委員会宣伝文化部の関係責任者によると、同区が構築する「科学技術館都市」は、先端企業の大規模生産の第一線の現場、またはシミュレーション・縮小であるだけでなく、企業の発展の実際の経験を「科学的に再現」し、一般社会にシェアリングしている。

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(2)2022年、北京亦荘新城浜河森林公園内にある通行人と観光客の休憩用太陽光スマートベンチ

「科学技術館都市」建設を21年からスタート

 北京市全市民科学素養綱要実施活動弁公室がこのほど通達した「北京市綱要実施活動弁公室の『科学技術館都市』建設に関する実施意見」は、同市全域で、「科学技術館都市」建設をスタートさせ、2025年をめどに、100件以上の先端テクノロジー資源科学教育化モデル転換プロジェクトを実施し、1000ヶ所以上の拠点でハイクオリティなテクノロジー教育体験提供を推進し、テクノロジー科学教育ボランティア10万人以上が科学教育サービスに参加するよう動員するという、「百千万」目標達成を目指している。実際には、北京経済技術開発区では、早くから「科学技術館都市」建設に向けた歩みが始まっている。

 2021年2月、北京経済技術開発区は、都市表現と『科学技術館都市』建設案を明確化し、北京経済技術開発区の先端産業クラスターや企業にイノベーション資源が十分揃っているという特徴を十分に活用して、亦荘ニュータウンを、全域が開放され、特色がはっきりした「科学技術館都市」へと発展させる目標を掲げた。その2ヶ月後、同区は、「シチュエーション都市を創り出し、テクノロジーの未来を享受」をテーマにした記者会見を開催し、「科学技術館都市」がそのミステリアスなベールを脱いだ。

 中国初の一般向けに公開されている産業級無人ヘリコプターテーマ展示館や中国初の再生可能エネルギーカーボンニュートラルスマートパーク、中国初の「北斗」応用をテーマにした博物館・体験館、世界最大の自動運転・路車協調の応用テスト拠点など、北京経済技術開発区は第1弾として、企業50社や区内の博物館、科学技術館、体験館、文化・観光資源などは「科学技術館都市」に組み入れられた。

 その後、北京経済技術開発区は、亦荘ニュータウンに分布する「科学技術館都市」と組み合わせて、「先端的イノベーションin亦荘ニュータウン」や「テクノロジー研究・学習in亦荘ニュータウン」、「無人テクノロジーin亦荘ニュータウン」、「歴史の学習・実践in亦荘ニュータウン」、「ロハス・ハッピーライフin亦荘ニュータウン」という厳選5ルートを打ち出した。新型コロナウイルス対策の影響で、同区の「科学技術館都市」が正式に打ち出されて以降、オフライン見学開放の予定が一時的に調整されることこそあるものの、2021年、その入場予約者数は延べ1万2300人を超え、各種500団体が予約し、来場者数は合わせて5000人を超えた。こうした数字は、多くの一般の人が科学教育コンテンツを見学することを強く願っていることのほか、経済技術開発区が構築する「科学技術館都市」のモデルは、非常に魅力があることも示している。

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(3)2019年、北京経済技術開発区「5G亦荘」始動イベントで披露されたセキュリティロボット

「科学技術館都市」建設の新モデル構築

 北京経済技術開発区栄華街道天華園三里コミュニティの微信(WeChat)のグループチャットに最近、「住民の皆さん、225万平方キロの亦荘ニュータウンが『科学技術館都市』へと変身しています。今年はちょうど、北京経済技術開発区建設30周年にも当たり、天華園三里コミュニティは今後、『共に未来に向かって』をテーマにしたシリーズ動画を送信し、皆さんをクラウドで各『科学技術館』へと案内し、優秀なテクノロジー企業を通して、亦荘ニュータウンを知ってもらい、その発展の目撃証人となってもらいたいと思っています」というメッセージと共に、シリーズ1本目の8分の動画「アストラゼネカ科学技術館」が送信され、住民の間で話題となった。動画を見ると、コミュニティ職員の張晶さんがスマホを使って撮影しながら、解説を行い、阿斯利康(アストラゼネカ)医薬科技(北京)有限公司の末端スマート医療イノベーションセンターの中を案内している。

 天華園三里コミュニティが企画したこのクラウド見学シリーズ動画は、「科学技術館都市」を体験する新たなモデルの一つだ。北京経済技術開発区の「科学技術館都市」は1年以上の発展を経て、政府が筆頭となり、企業が参加し、社会一般が共に建設するという有機的発展モデルが築かれている。「科学技術館都市」の建設モデルにより、企業がそこに集まって一つの「池」となり、豊富な科学教育展示ホール、科学教育ボランティア、科学愛好者が企業の資源を活性化し、科学教育のインスピレーションが触発され、一般の人々とテクノロジーの間にある壁が打破され、一般の人々が、自国の先端テクノロジーに対する認知・理解を増強し、イノベーション文化に対する自信を深めると同時に、民族の誇りを強く感じることができるようになっている。

 北京経済技術開発区は今年、計画に基づいて、第2弾となるテーマ展示館50館の建設を着実に推進している。例えば、スマート建築やデジタル化分野の最新技術成果を知ることができる「ABBスマート建築クライアント体験センター」やパナソニックの製品やその100年の発展の歴史を体験できる「パナソニック健康生活体験館」、中国内外の各大学のアーティストが製作した版画関連の作品を観賞できる「版画芸術館」、異なるタイプの湿地を通して自然の魅力を体感できる「新鳳河安南湿地環境保護展覧館」などがある。現時点で、新たなテーマ展示館30館が「科学技術館都市」マップに組み込まれ、一般公開されている。

 北京経済技術開発区活動委員会宣伝文化部の関係責任者は、「今年末までに、当区の『科学技術館都市』の展示館の数を100ヶ所にまで増加する計画だ。第14次五カ年計画の終盤までに、当区は工業テクノロジー観光シーンを作り出し、複数の特色ある企業科学技術館やアート工業パーク、文化クリエイティブ観光産業パークなどを発展させ、当区の常住人口1万人当たりの科学技術館の数を2.8館にする目標の達成を目指す。当区は、強力な総合実力を誇る産業、特色がはっきりしたテクノロジーイノベーション、集まっている業界のリーディングカンパニー、良好な発展を遂げる新興業態、奥深い文化を誇るニュータウン、グリーンで美しい生態環境といった優位性を十分に活かし、『科学技術館都市』という媒介を構築し続け、科学者の精神を通して良好な社会の気風をリードし、一般の人々が科学素養を高めることができるようサービスを提供し、北京が世界に対する影響力がさらに高い国際テクノロジーイノベーションセンターを構築できるようサポートしていく」と説明する。


※本稿は、科技日報「工廠変為展庁,尖端技術化作科普体験 北京亦荘新城正変身"科技館之城"」(2022年8月25日付7面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。