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【23-19】設置するだけでなく、活用可能な充電ポールを

裴 宸緯(科技日報実習記者) 2023年03月13日

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画像提供:視覚中国

 現時点で、中国の充電ポールと新エネ車の間には構造的問題が存在している。言い換えれば、中国の充電ポールの数は十分であるものの、新エネ車のドライバーは「それを見つけて使うことが難しく、見つけることができても充電がおそい」というのが問題となっている。

 劉永東中国電力企業連合会副事務局長兼電動交通・エネルギー貯蔵分会会長

 今年の春節(旧正月、今年は1月22日)期間中、新エネ車で帰省したあるドライバーの苦い体験が、ネット上で大きな話題となった。メディアの報道によると、そのドライバーは、実家に帰るのに車で8時間の道のりが15時間かかったという。充電に時間がかかったことが主な原因の一つで、ドライバーは「途中で3回充電し、1回当たり約2時間並び、充電に1時間かかった」と、そのやるせなさを語っている。

 このドライバーの経験は個別事案ではない。中国の新エネ車保有台数が急増するにつれて、「充電」が多くのドライバーが直面する「問題」となっている。

複数の要素が重なって新エネ車の充電が「困難」に

「充電が困難」というのが一般的になっている以上、充電ポールを増やすのが、この難題を改善する最も簡単な方法だと思われるかもしれない。しかし、「道路を多く増やしても、根本的に渋滞を緩和することができない」のと同じように、ひたすら充電ポールを増やしても、「充電が困難」な問題を根本的に解決することはできない。

 中国電力企業連合会の副事務局長で、電動交通・エネルギー貯蔵分会の会長を務める劉永東氏は取材に対して、「現時点で、中国の充電ポールと新エネ車の間には構造的問題が存在している。言い換えれば、中国の充電ポールの数は十分であるものの、新エネ車のドライバーは『それを見つけて使うことが難しく、見つけることができても充電がおそい』というのが問題となっている」と指摘した。

 中国公安部(省)の統計によると、2022年末の時点で、中国全土の新エネ車保有台数は1310万台。うち、バッテリー電気自動車(BEV)が1045万台となっている。また、中国国務院新聞弁公室が今年1月18日に開催した2022年工業・情報化発展状況に関する記者会見で、中国工業・情報化部のチーフエンジニアを務める田玉龍報道官は、「2022年末の時点で、中国全土の充電ポールは累計で521万台に達した」と明らかにした。つまり、中国全土の新エネ車2.5台につき、1本の充電ポールが配置されている計算になる。

 大部分の新エネ車のドライバーは、都市内での移動にそれを利用している。都市内の移動は数十キロ以内であることが一般的で、充電の頻度が低く、稼働率が低い充電ポールがたくさんある。

 中国電気自動車充電インフラ促進連盟・中国自動車工業協会充電・バッテリー交換分会の仝宗旗副事務局長は取材に対して、「現在、都市内の充電ポールの社会利用率は平均10%未満。高速道路の充電ポールの社会利用率はさらに低く、1%未満の可能性がある」と説明する。

 苦境に直面しているのは公共の充電ポールだけではない。「個人用充電ポールを団地内に設置するのは困難」というワードが近年たびたび、微博(ウェイボー)などの検索ランキングに登場している。例えば、一部の新しい団地は、安全問題を理由に、新エネ車のドライバーが充電ポールを設置することを拒否している。また、一部の古い団地には固定の駐車スペースがなく、建設計画当時、新エネ車の充電が考慮に入れられていないので、充電ポールを設置することができない。

理に適った計画で需要と供給の問題解決を

 中国電気自動車充電インフラ促進連盟は、今年、中国では新規購入の新エネ車に合わせた充電ポールが340万本増加し、新規購入の新エネ車に合わせた保有数が681万2000本に達すると予測している。専門家は、将来的に充電ポールの建設は加速期間に入り、市場は1千億元(1元は約19.4円)を超える規模にまで拡大する可能性があるとみている。雨後の筍のごとく増加する充電ポールは、理に適った展開が差し迫って必要で、異なるタイプの充電ポールを最大限に活用してはじめて、資源の浪費を回避し、重要と供給の問題を解決できるのだ。

 まず、異なるシーン、異なるニーズを満たせるよう、異なる技術的特徴を持つ充電ポールの設置を計画しなければならない。劉氏は取材に対して、「直流急速充電技術を採用した充電ポールは出力が高く、新エネ車に急速充電できるため、高速道路のサービスエリアや商業施設といった充電のニーズが高い場所に、公共充電ポールとして設置するのに適している。公共充電ポールの展開は、ガソリンスタンドのように、点と面を組み合わせ、できるだけ広い地域をカバーするほか、道路や駐車場といったインフラ整備とも歩調を合わせなければならない。自家用新エネ車や電動路線バス、電動大型トラックといった異なるタイプの車両の異なる充電ニーズに合わせて、異なる技術規格の公共充電ポールを設置できるよう計画することもできる。一方、交流普通充電技術を採用した充電ポールは、新エネ車の充電にかかる時間こそ直流充電より長いものの、自家用車の使用習慣にはぴったりであるため、個人用充電ポールとして団地の駐車スペースなどに配置するのに向いている」との見方を示した。

 次に、異なる都市の土地資源賦存量に合わせて、理に適った充電ポールの配置を計画しなければならない。劉氏は取材に対して、「充電ポール配置を計画する時、重要な要素となるのは往往にして土地資源だ。中国の国情は複雑で、土地資源賦存量は都市によって異なる。土地資源が少ない都市は、公共充電ポール、特に高出力の充電ポールの設置に力を入れて、1本当たりのサービス能力を高めることができる」とする。

 また、充電ポールが提供するサービスは精密化に向かって発展しなければならない。仝副事務局長は、「2021年以降、中国では、自家用車を代表とする個人ユーザー市場(消費者市場)向けの新エネ車の割合が高くなり続けている。消費者市場のユーザーは、往往にして、精密化されたサービスを望んでいる。そのため、充電ポールを設置する場合、的確な立地選定をするほか、充電スタンド付近に、ゆっくりと休憩ができる場所や図書コーナーまたはカフェ、コンビニを設置するなど、新エネ車のドライバーを対象とした付加サービスを提供する必要がある」との見方を示す。

 最後に、仝副事務局長は、「新エネ車のドライバーは出かける前に、どこで充電するかを考えておかなければならない。多くの大都市の場合、高速道路の出口付近に、公共充電スタンドが設置されている。ドライバーは、各種アプリを通して、充電ポールの使用状況を事前にチェックし、理に適った計画を立て、高速道路のサービスエリアで充電するために列に並ぶことをできるだけ避けることができる」と注意を呼び掛ける。

新技術を駆使して難題解決を

 もちろん、理に適った計画のほか、充電ポール及びインフラの技術革新も、充電をめぐる難題を解決し、充電ポール産業が継続的、かつ健全に発展するための重要な手段の一つとなる。

 公共充電ポールのサービス対象は、社会全体または一部の一般車両であるのに対して、個人用充電ポールのサービス対象は、比較的固定した個人だ。新エネ車の数量分布や車両の使用頻度、航続距離といったさまざまな要素が重なり、個人用充電ポールの数は公共充電ポールを大きく上回っているが、稼働率は比較的低い。そのため、個人用充電ポールのシェアリング発展にとっては、追い風となる。

 仝副事務局長は、「以前、新エネ車に付属してくる充電設備のほとんどは、通信モジュールのないタイプだった。その後、多くの新エネ車メーカーが、通信モジュールを追加できるスマート充電設備を提供するようになった。通信モジュールを追加すると、個人用充電ポールはインターネットに接続できるようになり、公共充電ポールのように、スマホのアプリや各種プラットフォームで見つけることができるようになる。そうなると、個人用充電ポールの持ち主は、自分が使わない時間に、団地内や団地に入って来る新エネ車のドライバーに有料で使ってもらうことができる」と説明する。

 古い団地の場合、電気容量が小さい問題について、劉氏は「秩序に基づいた充電技術を採用して、電力負荷を緩和することができる。一部の古い団地はかなり前に建設されたため、電気容量が小さく、使用する電力量が多い電気製品をたくさん設置することはできない。そのような充電ポールは、出力が非常に高い家電のようで、団地のキャパシティーを超えると、住民が正常に電気を使うことができなくなり、潜在リスクとなる可能性さえある」と指摘する。

 そして、「従来の充電ガンの場合、差し込むとすぐに出力固定で充電されるのと違い、秩序立てた充電技術は、ユーザーの実際の充電ニーズに合わせて、送電網の負荷の変化傾向を感知し、動的に充電時間と出力を調整してくれる。分かりやすく言えば、新エネ車のドライバーで充電が終わる時間と目標充電量を設定しておくと、残りはシステムのバックグラウンドがいつ充電を始めるか、どれほどの出力で充電するかなどを決めてくれる。それは、古い団地での新エネ車充電問題の緩和になる」と説明する。

 このほか、電力供給技術が成熟するにつれて、電気料金の市場化も続いており、太陽光発電、エネルギー貯蔵、充電、バッテリー交換、バッテリー診断などを一体化させたワンストップサービスを提供するのも、実行可能な充電ポール運営案となる。このような総合エネルギースタンドは、クリーンエネルギーを貯蔵して、その場で利用し、高出力の充電が電力網に与える負担を緩和できる一方で、多元化した充電、バッテリー交換インフラを整備して、新エネ車ドライバーのニーズを満たし、便利でグリーンな移動を実現することもできる。


※本稿は、科技日報「充電樁:既要建得好,還要用得上」(2023年1月31日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。