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【23-37】南京:成果の実用化が質の高い発展を活性化

張 曄(科技日報記者) 2023年06月02日

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集萃薬康は、マウス遺伝学・ゲノム改変の研究を行う「国家遺伝工程マウス資源庫」と南京大学を拠点として、マウスモデルの研究と産業化応用を展開し、世界最大のマウス品種バンクを構築。独自の知的財産権を持つマウスは2万2000種以上となっている。画像提供:取材対象者

 中国江蘇省南京市は、テクノロジー体制のメカニズム改革を通じ、研究者の負担軽減に注力し、人材の活力と社会の創造力を十分引き出し、技術取引が活発になっている。2022年、同市で認定、登録された技術契約は3万7345件、取引額は856億7000万元(1元=約20円)だった。

成長力に満ちた春の南京

 南京市で今年3月に開催された2023グローバル6G技術大会で、紫金山実験室副主任を務める東南大学の尤肖虎教授は、「当実験室と協力パートナーが提案する既存の3つの5Gシナリオの強化に加え、通信感知一体化、宇宙・地上一体化の新たな応用シーン導入により、5Gから6Gへの円滑な移行が可能になった」と語った。

 2G、3Gで追走し、4Gで並走、5Gで先行するようになり、6Gのイノベーションでリードするために、紫金山実験室は非常に重要な役割を果たしている。省・市が共同で建設する重要科学技術イノベーションプラットフォームとして、紫金山実験室はこれまでに、重要イノベーション成果20件以上を発表。独自開発した世界初の大規模ネットワークOS(CNOS)や世界初の6G光子テラヘルツ波100Gbps通信実験といった一部の最先端ネットワーク技術成果が、産業への応用段階に入るよう推進してきた。

 近年、産学研連携の強化に伴い、イノベーションの「接着」効果が増強され、南京市は体制メカニズム改革の推進、基礎研究の深化、技術革新・産業発展の強化などで、各方面の力を合わせて、ブレイクスルーを次々と実現。科学技術成果をはっきりした生産力に変え、経済・社会の質の高い発展を力強く支えている。

イノベーションの「分裂反応」を起こすプラットフォーム

 重要科学技術イノベーションプラットフォームは、最先端科学と重要技術のブレイクスルーを実現する責任を担っているほか、産業の質の高い発展を支える「強固な基盤」にもなっている。

 1月28日、南京麒麟科技城の「情報高速鉄道総合試験場」プロジェクトの現場では、中科南京情報高速鉄道研究院の研究者が試験設備の調整・テストを行っていた。

 同試験場は、中国初の業界応用分野向けのクラウドコンピューティング、ネットワーク、エッジコンピューティング、ターミナルデバイスが一体化したビッグサイエンス装置で、新世代情報高速鉄道に対して全面的な実験環境のサポートを提供している。

 2022年末までに、同プロジェクトは、体系化された情報高速鉄道オープン実験室を完成させ、計算能力実験室と計算能力ストアという2つのプラットフォームとコア製品である「情報高速鉄道計算能力ネットワーク運営プラットフォーム」を発表。南京や北京、鄭州、重慶などの主要都市間でデータセンターの計算能力の連携が実現した。

 中科南京情報高速鉄道研究院の田霖副院長は「南京は総合的な調整・管理の役割を担っている。各都市の計算能力は今後、ネットワーク化され、電力や水力資源を得るのと同じように、簡単に計算能力資源が得られるようになる」と語った。

 南京の科学技術イノベーションプラットフォーム体系はここ数年、多角的かつ戦略的な配置が展開されている。各プラットフォームがリーダーシップ、オープン性、代替不可能性の向上に力を入れ、能力を集め、それを放出、活性化し、イノベーションの「分裂反応」を起こし、産業イノベーションの追走、並走から先行への発展を加速させている。

 国家第三代半導体技術イノベーションセンター(南京)は今年、中・高圧炭化ケイ素電力・電子の重要技術開発を着実に実行し、多くの独自技術でブレイクスルーを実現。炭化ケイ素製品の太陽光発電、エネルギー貯蔵、電力網などへの導入を推し進め、広範囲における大規模応用を目指している。

 江蘇省科技発展戦略研究院区域イノベーション研究センターの韓子睿主任は「重要な科学研究プロジェクトや重要技術などは難関であり、企業や大学、研究機関などが協力して研究開発に取り組む必要がある。科学技術イノベーションの自主権を握ることで、中国国内の大循環の内生的原動力と成長力を増強させ、国内と国際の『双循環』の産業安全性や戦略的ボトムラインを守ることができる」と語った。

実用化の「ラストワンマイル」を埋める

 有人宇宙船「神舟15号」の飛行士らが、中国が独自開発した宇宙ステーションの2光子励起顕微鏡を使用し、軌道上での実証実験任務を実施した。この顕微鏡は、宇宙飛行士が今後、軌道上で健康モニタリング研究を行う上で全く新しいツールとなる。

 今回の実証実験を行った宇宙ステーションの2光子励起顕微鏡プロジェクトチームは中国科学院院士(アカデミー会員)で北京大学教授の程和平氏が率いた。程氏が設立した北京大学分子医学南京転化研究院やそのインキュベーション企業である北京超維景生物科技も参加している。

 北京大学分子医学南京転化研究院の趙婷副院長は「人が都市に定住する場合、まず住む場所が必要だ。江北新区科技投資集団はわれわれに、公共サービスプラットフォームと研究設備の強力な支援を提供し、当院が『住む場所』を持つようになった。2019年、当院は江北新区に入居し、学校と地域が協力して科学研究成果の実用化拠点を構築している」と説明した。

 同研究院は設立以降、「最先端生物医学イメージング設備」と「重大疾患イノベーション新薬」という2つの研究開発の方向性に合わせ、最先端脳イメージング、新薬研究開発を主体とした公共技術サービスプラットフォームを構築。インキュベーション企業である和其瑞医薬や北京超維景生物科技が南京に進出し、研究成果の産業化を加速させてきた。

 同市はここ数年、ハイレベル新型研究開発機関の建設を推進し、科学技術成果の実用化のボトルネック打破に取り組んでいる。

 2018年以降、南京市では市級新型研究開発機関が401機関設立され、インキュベーション・誘致した企業は7209社に達した。これらの売上高は累計1540億元、知的財産権申請件数は累計1万7932件、承認件数は5972件となっている。

 現時点で、南京の新型研究機関プラットフォームは、ノーベル賞やチューリング賞の受賞者8人を含むトップクラスの人材を次々と呼び込んでおり、彼らが南京でイノベーションの創出と起業に取り組んでいる。新型研究開発機関の母体401機関のうち、203機関が上位企業に成長し、市全体の新型研究開発機関の51%を占め、21機関が一定規模以上(年間売上高2000万元以上)の企業へと成長している。

体制改革がテクノロジーイノベーションの後ろ盾に

 医療実験用マウスを作製する研究院が昨年、上場を果たした。2022年4月、南京大学の高翔教授率いるチームと江蘇省産業技術研究院が共同で設立したヒト化モデル・薬品スクリーニングイノベーション技術研究院(江蘇集萃薬康生物科技股份有限公司)は、上海証券取引所のハイテク企業向けの株式市場「科創板」に上場し、時価総額は110億元に迫った。

 科学研究界が注目するのは、大学から生まれた集萃薬康公司の人材チームがテクノロジー・ロードマップの決定権を持つだけでなく、モデル動物のマウス研究開発に集中することができ、さらに、技術成果の所有権、処置権、収益権を持っていることだ。チームの持株が65%に達しているため、研究者のイノベーション創出のための労働とその利益収入のマッチングが本当の意味で実現し、研究開発チームの巨大なイノベーションの活力が引き出されている。

 科学研究のイノベーション成果が実験室から市場に出るのは、決して簡単なことではない。「0」から「1」への画期的なブレイクスルーが必要なだけでなく、「1」から「10」への持続的な積み重ねも必要となる。

 南京は近年、科学技術成果の権限付与改革を推進し、南京大学や南京工業大学、省産業技術研究院を組織してテストを実施している。「低コストで長期的な権限付与」「一括権限付与」「試験的に使用してから移譲」「複数の権限付与による実用化促進」「混合型権限付与」といった改革案をまとめ、研究者のイノベーション活力を大いに引き出している。

 南京工業大学では、テクノロジー成果を実用化して得た収益を、研究者の収入に反映させている。

 南京工業大学科学研究処で働く王璐氏は「若手教員を例にすると、現在、科学技術成果の研究開発に参加している教員は、成果が実用化された後、関連収益が給料として支払われ、給料に占める割合が20%以上になっている。以前は、成果実用化関連の収益が、若手研究者の収入に占める割合は約5%だった」と説明した。

 南京工業大学の過去約5年間の特許出願件数は4656件、特許取得数は2833件、実用化特許は365件となっている。また、科学研究成果の実用化額は26億元を超え、年平均伸び率は20%以上となっている。


※本稿は、科技日報「校企"拧绳聚力" 南京:成果转化赋能高质量发展」(2023年4月14日付7面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。