【23-40】急速に発展する吉林省の医薬健康産業
楊 侖(科技日報記者) 2023年06月08日
中国吉林省長春市は4月になると、春の気配が日増しに濃くなり、万物が活気にあふれる季節となる。省内の重要プロジェクトの建設現場では、プロジェクト推進を加速させ、できるだけ早く稼働させようと、作業員が急ピッチで工事を進めている。
4月18日、医薬健康分野の重要産業プロジェクト集中着工・工事再開式典が、同省延辺朝鮮族自治州敦化市のメイン会場と長春市、通化市のサブ会場を結ぶ形で行われた。
吉林省は工業の基盤が固く、薬用資源が豊富である。そのため、ここ数年、豊富な資源と良好な発展基盤を活用し、医薬健康産業クラスター構築に力を注いでいる。医薬健康産業の発展の機先を制し、医薬産業が地域の質の高い発展の新たな成長分野となっている。
産業プロジェクト建設が勢いよく進む
長春から東に向かい、遼源、梅河口、通化、白山、延辺といった地域を点で結ぶと「長遼梅通白延・医薬健康産業回廊」が浮かび上がってくる。
医薬品の香り漂うその産業回廊において、医薬健康産業プロジェクトが次々と実施されている。
敦化市で着工した吉林敖東・中医薬配方顆粒プロジェクトの敷地面積は7万6000平方メートル、総建築面積は8万3000平方メートル、総投資額は10億元(1元=約20円)となっている。中医薬の前処理・抽出作業場、製剤作業場、倉庫、総合研究開発棟などが建設される計画で、完成後は、中医薬材を毎年5500トン加工し、中医薬顆粒を15億6000万袋生産でき、売上高が年間12億6000万元、税引き前利益が3億7000万元に達すると見込まれている。
吉林敖東延辺薬業股份有限公司の李安寧副総経理は「プロジェクトの順調な実施は、当社の中医薬の現代化モデル転換・高度化を加速させ、中医薬の研究開発水準と製造能力の向上、吉林省の中医薬の質の高い発展を加速させるモデルケースになる」と語った。
プロジェクトは発展基盤、産業の柱、経済発展にとって、生命線や足掛かりとなる。今回は、72件のプロジェクトが集中的に着工・工事再開し、総投資額が396億8000万元、年間計画投資額が95億1000万元となり、中医薬材加工や新薬研究開発、総合健康製品、スマートパーク、現代物流、デジタル化建設などの産業チェーンの重要部分をカバーする。うち新設プロジェクトは12件で、総投資額41億8000万元、年間計画投資額18億元となっている。継続プロジェクトは60件で、総投資額355億元、年間計画投資額77億1000万元となっている。
吉林省科技庁医薬健康産業処の李明石処長は「今回、集中的に着工・工事再開したプロジェクトには主に3つの特徴がある。1つ目は投資面で、プロジェクトの規模が大きく、投資額が1億元以上のプロジェクトが65件あり、全体の90.3%を占めている。総投資額は392億3000万元で全体の98.9%を占めている。2つ目はプロジェクト内容で、中医薬、バイオ医薬品、化学薬品、医療機器という4つの重点分野に全てが集中している。3つ目は分布地域で、長春市、通化市、延辺州という産業発展の勢いが際立っている地域に集中している。この3地域のプロジェクト着工数と総投資額はそれぞれ省全体の81.9%と84.2%となっている」と説明した。
テクノロジーが産業の基礎固めを牽引
長春新区の聖博瑪吉林省院士ワークステーションと西諾生物吉林省院士ワークステーションがこのほど、正式に認可された。
長春聖博瑪生物材料有限公司は、世界的に有名な高分子化学と高分子物理学の学者が集まる国家級「専精特新(専門化・精密化・特徴化・新規性)」の小巨人企業(高い成長性または大きい発展のポテンシャルを持つテクノロジーイノベーション中小企業)だ。同社の技術担当者は「当社は技術的難題を解決し、材料の生分解性を制御できないなど数多くの問題をクリアし、分子内多核相乗触媒作用や配向結晶自己強化加工といった技術を開発してきた」と説明した。
長春新区には、長春高新や金賽薬業、百克生物といった複数の医薬品企業が集まっており、イノベーション能力や科学研究能力が企業のコアコンピテンシーへと転換しつつある。2022年に中国科技部(省)が発表した「全国バイオ医薬品パーク産業総合力ランキング」で、同エリアは全国16位となっており、中国のバイオ医薬品産業パークで上位グループに入っている。
長春市で着工した長春吉原生物科技有限公司のヒドロゲル材料産業拠点プロジェクトでは、線形電子加速器2台、生産ライン12本、研究開発センター、検査センターが建設され、医療健康や重要設備製造で使われるヒドロゲル材料・製品が生産される計画となっている。同社の郭慶輈総経理は「プロジェクトでは、技術レベルが世界トップクラスかつ最大規模で、施設が最も整ったヒドロゲル材料産業化プラットフォームが建設され、年間売上高10億元を見込んでいる」と述べた。
吉林省はここ数年、「一主(長春経済圏計画)六双(双廊・双帯・双線・双通路・双拠点・双協同)の質の高い発展戦略」に焦点を合わせ「長遼梅通白延・医薬健康産業回廊」を実行主体として、テクノロジーイノベーションによる牽引を堅持。各エリアの空間配置や機能の位置づけ、産業発展を統一して計画し、各地域の優位性と特色に立脚して、重要産業プロジェクトの展開を進め、産業発展の新たな原動力を引き出して良い成果を上げている。2022年、同省の一定規模(年売上高2000万元)以上の医薬品・健康工業企業の総生産高は前年同期比3%増の780億7000万元だった。
※本稿は、科技日報「吉林医药健康产业开启"加速跑"」(2023年4月24日付7面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。