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【22-16】イノベーションを通して資源を活用し特色ある発展の道を歩む青海省

張 蘊(科技日報記者) 2022年06月24日

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「青豫直流」超高圧送電拠点405万kW新エネルギープロジェクト。
(画像提供:国家電投集団黄河川上水電開発有限責任公司)

 青海省のテクノロジーイノベーションの歩みを振り返ると、キーテクノロジーのブレイクスルーを次々に実現し、社会、民生、健康などをめぐる難点、弱点を次々と解決し、新産業の先端問題にスポットを当てた重点実験室が続々と設置され、人材をどんどん呼び込み、育成し、科学研究の活力を存分に発揮させる新政策が次々と実施されてきた。テクノロジーイノベーションが現在、青海省の経済発展に、途切れることのない活力を注入している。

 青海省のテクノロジーイノベーションの取り組みはここ数年間、習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想を貫き、習総書記が青海を視察した際の重要談話の精神を徹底し、イノベーション主導発展戦略を大々的に実施。テクノロジーイノベーション体制・メカニズムを整備し、キーテクノロジーの研究開発を推進し、テクノロジーイノベーションの主体を育成し、イノベーションプラットフォームの構造を最適化し、テクノロジーイノベーション体制建設を強化し、テクノロジーイノベーションの水準を全面的に向上させ、「第14次五カ年計画(2021‐25年)」の幸先の良いスタートを切った。

テクノロジーが先陣を切り改革のボーナスを放出

 2016年以降、習総書記は2度、青海を視察した。チャルハン塩湖や太陽光発電工場、青海湖の湖畔などで、習総書記は、一連の指示を出し、青海が質の高い発展を実現するためのはっきりとした青写真を描いた。「テクノロジー体制、メカニズムの改革を加速させ、テクノロジーイノベーションサポートや成果の転換を強化し、イノベーション型人材の育成を加速させ、イノベーションの活力を呼び起こさなければならない」という習総書記が青海を視察した際の重要談話や指示の精神を見ると、テクノロジーイノベーションに話をするたびに言及しており、その必要性を強調している。

 青海省科技庁の党組書記を務める莫重明庁長は取材に対して、「最も難しいのは0から1への飛躍。先手を打ち、テクノロジー体制改革のための一連の対策を講じるというのが、当省のテクノロジーイノベーション原動力を全面的に呼び起こすためのカギだ。当省はここ数年、テクノロジーイノベーションをめぐる先見性ある計画や改革の牽引を強化し、テクノロジー体制改革を持続的に深化させ、テクノロジー分野の『放管服改革(行政のスリム化と権限委譲、緩和と管理の結合、サービスの最適化)』20条、イノベーション体制建設18条、テクノロジーイノベーションの活力を呼び起こすための16条を打ち出し、科学技術奨励の方法、実施細則を改正した。また、『揭榜掛帥(イノベーションプロジェクトのリーダーの年齢・職位にとらわれない自薦による公募)や『リーダー人材・科学者責任制』などの試験事業を企画・実施し、科学研究経費の『請負制(詳細な予算を作成する必要がなく、経費総額を決めればよいこと)』の範囲を持続的に拡大し、4分の1近くの科学研究プロジェクトの管理プロセスを簡素化し、記入する必要のある予算の表が50%減り、年間を通してプロジェクトの届出ができるようになり、段階的に、集中して受理する体制を実現し、改革のボーナスが効果的に放出されるよう取り組んでいる」と説明した。

 河湟谷地(黄河と湟水の流域の肥沃なデルタ地帯)から青南牧場まで、そして、長江・黄河・瀾滄江の水源(三江源)から、ズラリと並ぶ太陽光パネルに至るまで、青海省がテクノロジー体制改革を通して、エネルギー工業、スマート農牧業、国家公園モデル省、世界レベルの天文拠点の発展を促進する勢いを感じることができる。

 2021年、静かな青海省の冷湖鎮は、世界に向けて、世界一流の天文観測拠点になったことを宣言した。元々はひっそりとした石油で栄えた冷湖鎮は、天文をめぐるチャンスを掴み、中国の天体探索の新たな希望がそこで生まれた。青海省は近年、国の科学研究の分野の大きなニーズに目を向け、同省重要テクノロジー特別プロジェクト「天文ビッグサイエンス装置を冷湖に設置するモニタリング・先導科学研究」の成果の力強いサポートの下、冷湖地区の優れた光学観測環境を活用して、冷湖天文観測拠点建設を進め、斬新な天文テクノロジー事業発展の道を歩み、青海省の経済社会や国の天文事業の質の高い発展促進のために、テクノロジーのサポートを提供している。

 現時点で、冷湖天文観測拠点で実施された光学天文望遠鏡プロジェクトは累計9件で、投資総額は20億元(1元は約19.6円)近くに達している。

イノベーションチェーンを伸ばして技術の空白を埋める

 重要な生態的地位を有する青海省は、テクノロジーイノベーションを頼りに、特色あふれる発展の道を歩んでいる。世界でも独特な塩湖の自然資源やクリーンエネルギーの資源、生態資源、天文資源、中医学・チベット医学で用いられる生物資源など、第13次五カ年計画(2016‐20年)実施以来、至る所に「宝」が散らばる青海省は、現地の状況に合わせた措置を講じ、長所を活かして、短所を避け、明晰に検討・判断し、国家戦略に主体的に溶け込み、テクノロジーイノベーションを中心とした全面的なイノベーション推進に力を入れ、資源賦存を頼りに、イノベーション発展の新たな章を書き加えている。

 青海省は産業チェーンを通して、イノベーションチェーンを配置し、複数のキーテクノロジーのブレイクスルーを実現し続けている。

 青海省科技庁の関係責任者によると、同省は近年、基礎研究や科学研究をめぐる難関攻略を強化し、青海アブラナ「青雑」シリーズの交雑アブラナの品種16種類を中国全土の80%以上のアブラナ栽培エリアや「一帯一路」参加国に推進・拡大しているほか、「青薯」シリーズの馬鈴薯の品種を中国全土で推進・拡大して、栽培面積が66.66万ヘクタール以上に達し、ヤク・チベット羊の効率的な繁殖技術の難関攻略を展開し続け、ヤクは「年に1回」、チベット羊は「2年に3回」の繁殖を実現し、子ウシと子ヒツジの生存率はそれぞれ、90%と99.3%以上に達している。また、「黒土地帯」の改善技術を研究開発し、三江源地区にある約34.67万ヘクタールの「黒土地帯」で技術が応用して改善が実施され、標高が高く、寒冷地域の「黒土地帯」改善をめぐる難題を完全に解決した。さらに、産業チェーンを中心にして、イノベーションチェーンを配置した青海省は、重要テクノロジー特別プロジェクトや重点研発計画を実施し、複数のキーテクノロジーのブレイクスルーを実現することにより、技術をめぐる多くの空白が埋められている。

 三江源スマート生態畜産総合情報クラウドプラットフォームが、省全域の畜産業の情報化、スマート化など的を絞った効率的な発展を促進している。水力と太陽光の相互補完や、風力と太陽熱蓄熱技術の難関攻略により、中国初の100MWの太陽光発電実証拠点と世界最大の複数のエネルギーがミックスされた発電拠点が建設されたほか、初の大型商業化槽式太陽熱発電所が発電開始した。また、中国最大規模の重要設備・多機能鍛造プレスの研究開発に成功し、多結晶シリコン、光ファイバープリフォームといった新材料の生産ラインのほか、中国初のIBC(インターデジタルバックコンタクト)電池生産ライン、中国初の1万トン級の高性能・高精度極薄リチウム電池用銅箔生産ラインなどを建設した。

資源を活用してクリーンエネルギーの先進地を構築

 青海には、とりわけ恵まれた太陽エネルギー資源があり、それを頼りに産業の先進地を構築している。

「太陽光発電+砂漠化防止」や「太陽光発電+生態系対策」、「太陽光発電+農牧業」、「太陽光発電+観光」、「太陽光発電+建築」、「太陽光発電+総合スマートエネルギー」、グリーンエネルギーへの替代、スマートフィールド、ゼロカーボンパークといった新業態、新スタイルが続々と登場している。青海は現在、模索しながら、実践し、クリーンエネルギーの質の高い発展を全般的にサポートしている。

 6年前を振り返ると、2016年8月23日に、習総書記が青海省を視察した際、国家電投黄河水電太陽能電力有限公司(以下「黄河公司」)西寧支社(現在は「国家電投集団黄河上游水電開発有限責任公司西寧太陽能支社)を訪問。太陽エネルギー電池の生産現場に足を運び、製品の展示をチェックしたほか、製絨、エッチング、フィルムコーティング、シルクスクリーンプリント、高温焼結などの生産工法を見学した。

 黄河公司は長年、太陽光発電産業の多くのカギとなる部分において、重要な技術のブレイクスルーを実現し、太陽電池の変換効率、太陽光発電所システムの効率、複数のエネルギーをミックスさせた効果的な利用といった面で、世界トップレベルに達している。

 黄河公司の電力協同産業部の董鵬部長は科技日報の取材に対して、「ここ6年、当社の独自のイノベーション能力は目に見えて増強された。高純度多結晶シリコンプロジェクトは、効率的な電池研究開発の需要などを満たし、太陽電池の量産効率が24.2%に達した。ペロブスカイト/タンデム型電池実験室の効率は28.08%にまで向上し、太陽光発電は836.02万kWと、2016年比で229%増となり、新エネルギーシステムの発電量が目に見えて増加している」と説明した。

 2021年に稼働が始まった世界初の太陽光発電、蓄電の屋外実証実験プラットフォームでは、太陽光発電、蓄電の新技術、新製品、新プランの実証・実験、検査・測定を展開することができる。実証実験スマート管理及び展示プラットフォームや新エネルギーテクノロジー研究開発センター、新エネルギー科学教育拠点なども建設中で、黄河公司は現在、新エネルギー産業のスマート、研究開発、科学教育といった面の先進地を構築している。

 中国の結晶シリコン太陽光パネルの寿命が来て一斉に廃棄物が出るという問題に合わせて、黄河公司は、太陽光パネルのエコな処理や回収のためのキーテクノロジー、設備の研究を展開しており、2021年12月に、全体の回収率が90%を超えるとともに、年間11万点の処理能力を持つ、中国初のパネル回収パイロット生産ラインを建設した。そして、多結晶シリコンやシリコンチップ、電池、パネル、架台、太陽光発電所の計画・設計及び建設、運営・メンテナンス、検査評価、パネル回収の垂直一体化太陽光発電オール産業チェーンがクローズド・ループを作り出し、太陽エネルギー、太陽光発電産業の生態環境に対する影響を小さくするために、技術のストックを進めている。


※本稿は、科技日報「用創新激活資源禀賦"江河之源"走出特色発展」(2022年05月13日付5面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。