【22-26】AIで医療用画像処理に革命―人件費を90%削減する「REFERS」開発 香港大学
AsianScientist 2022年07月28日
香港の研究者たちが開発した新しい医療用画像処理方法は、診断効率を向上させると同時に、医療従事者の負担を軽減させることができる。
医療用画像は現代医療で重要な役目を果たし、さまざまな病気の治療で精度、信頼性、発展性を高めている。人工知能(AI)は何年かの間に、処理をさらに高度なものにしてきた。
しかしながら、AIアルゴリズムを使用する従来の医療用画像診断では、モデルトレーニングの判断入力として大量のアノテーション(機械学習で教師データを作成すること)を必要とする。AIアルゴリズムに使用する正確なアノテーションを取得するために、放射線科医は患者ごとに放射線診断書を作成する。その後、アノテーション担当者が、人間が定義したルールと既存の自然言語処理(NLP)ツールを使って、診断書から構造化されたアノテーションを抽出し、確認する。抽出されたアノテーションの最終的な精度は、人間の労働とさまざまなNLPツールの質により異なってくる。この方法は手間暇がかかり、費用も高額となる。
この問題を何とかしようと、香港大学(HKU)の研究者チームは、新しい方法である「REFERS」(Reviewing Free-text Reports for Supervision=判断用フリーテキスト診断レビュー)を開発した。これは、放射線診断の判断入力を同時に数十万も自動取得するので、人件費を90%削減できる。判断の精度は非常に高く、AIアルゴリズムを使用する従来の医療用画像診断を上回る。この画期的手法はNature Machine Intelligence誌に発表された。
香港大学工学部のコンピュータサイエンス学科チームのリーダーであるYu Yizhou(俞益洲)教授はAI対応の医療用画像診断について、「診断時間を短縮させ、微妙な病気のパターン検出し、あるいは他のことも可能なので、医療従事者の作業負荷を軽減させ、診断の効率性と精度を向上させます」と解説する。
「我々は、放射線画像診断書に含まれる抽象的で複雑な論理的な根拠文は、十分な情報を提供し、伝達可能な視覚的特徴の学習は問題なく行えると考えています。REFERSに適切なトレーニングを行えば、アノテーションに人手をかけることなく、フリーテキスト診断書を使い、X線写真に現れるものを直接学習することができます」とユ教授は続ける。
研究チームは、無気肺、心臓肥大、胸水、肺炎、気胸などといった14の一般的な胸部疾患に関する37万のX線画像のほか、放射線診断書などの公開データベースを使用してREFERSのトレーニングを行う。REFERSは、診断書の作成およびX線写真と診断書の照合という、診断書に関連する2つのタスクを実行することで目標を達成する。
「人間のアノテーションに大きく依存する従来の方法と比較して、REFERSには、放射線診断書に記載のすべての言葉から判断入力を得る機能があります。データのアノテーションの量を90%削減し、医療用AIの構築コストを大きく下げることができます。これは、医療用AIの一般化の実現に向けた大きな一歩です」と、論文の筆頭著者であるZHOU Hong-Yu(周洪宇)博士は話している。
発表論文:Generalized radiograph representation learning via cross-supervision between images and free-text radiology reports.
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●Asian Scientist
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